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アナザーズ・ストーリー  作者: 武田悠希
第二章 ルシフェル編
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第九話 容疑者

 茶色フードとソウマを乗せた馬は森の中を駆けていた。

 ソウマは白目を剥いて気を失っていたが、やがてゆっくりと目を覚ました。


「んー! んー!」


 ソウマは馬に乗せられている状況に驚き、呻き声を上げた。

 茶色フードは背中に背負っているソウマが起きたことに気付き、馬を止めて地面に降りた。ソウマを背中から降ろした茶色フードは、ソウマを近くの木に寄りかからせた。茶色フードはソウマの顔に巻き付けていた蔦を解き、ソウマは口が利けるようになった。


「あ、あんた一体誰なんだよ!? 悪魔の手先かなにかか!?」


 ソウマは威嚇する猫のように茶色フードを睨み、荒い口調で問いただした。


「違うわ。私はあなたの敵じゃない。信じて。」


 茶色フードはソウマに向かって言った。その声は女性の声で、大人っぽい、どこか艶のある声だった。

 茶色フードはソウマに目線を合わせるようにしゃがみ、フードを取ってソウマに顔を見せた。

 クリーム色の長髪をした、三十代くらいの女性だった。顔立ちは美しいの一言に尽き、キリッとした瞳と厚い唇は、相当プライドの高そうな人という印象を周りに与える。眼鏡をかけているためか、バリバリ仕事の出来るキャリアウーマン、といった感じの雰囲気が漂っていて、女性用のビジネススーツが似合いそうだ。背丈は、今はしゃがんでいるが、立ち上がったら170cm以上はあるだろう。


「じゃあ……一体誰なんだ? 何者なんだよ?」


 ソウマは警戒心を持ったまま茶色フードに聞いた。


「その前に体の蔓を取るわね。」


 茶色フードはローブの内側からナイフを取り出すと、ソウマの胴体に巻きついていた蔦を切断した。

 体が自由になったソウマは、間髪入れずに茶色フードに殴りかかった。

 茶色フードは冷静な表情のまま蔦を出し、ソウマを再びぐるぐる巻きにした。


「ぬあ!」


 両足までぴったり縛られたソウマは、顔面から無様に地面に倒れこんだ。


「落ち着いて。私は敵じゃないわ。」


 茶色フードはソウマをなだめた。


「分かりました! 暴れません! もう暴れませんから! これ、解いて下さい!」


 ソウマは地面に芋虫のように転がりながら、涙目で訴えた。


「お願いよ。」


 そう言いながら茶色フードは蔦を切断した。

 間髪入れずにソウマはまた茶色フードに殴りかかり、それを茶色フードは難なく縛り上げた。ソウマが謝り、茶色フードが蔦を切り、またソウマが飛び掛かる。このやり取りを何度か繰り返した後、最終的にソウマは上半身を縛られた状態で地面に座らされ、むすっとした表情で茶色フードを見上げていた。


「とにかく話を聞いてちょうだい。私は悪魔の手先なんかじゃないわ。むしろ逆よ。」


 茶色フードは乱れた長髪を整えながら言った。


「味方……なんですか?」


 ソウマは半信半疑で聞いた。


「ええ。でも、詳しい話をする前に確認させて。あなた、ソウマ君よね?」


 茶色フードはしゃがみ込み、ソウマの顔を覗きながら尋ねた。


「はい……そうですけど……。」


 ソウマは困惑しながら答えた。


「なら、セントクレア魔法学校で何が起きたかも知っているわよね?」


「はい。」と答えるソウマに、茶色フードは遠慮がちに、


「辛いでしょうけど、話してみてくれないかしら? あなたがソウマ君本人か確認するために、どうしても聞いておかないといけないの。」


 と言った。


「分かりました……。えっと……悪魔が襲って来たんです。バロア悪魔国の奴らが……それで、皆が殺されて……」


 話している途中でソウマは段々苦しくなり、声が小さくなっていった。


「分かったわ、ありがとう。」


 ソウマの気持ちを察したのか、茶色フードはソウマが話を止めたそうにしたタイミングでお礼を言った。


「間違いなく本人のようね。良かったわ。」


 茶色フードは安堵し、薄っすらと微笑みを浮かべた。


「あなたは一体誰なんですか? 何の目的で僕を連れ去ったんですか?」


 ソウマは改めて疑問を投げた。


「私はミカド。あなたを助けに来たの。」


 茶色フードは自身をミカドと名乗った。

「僕を助けに?」とオウム返しするソウマに、ミカドは「ええ、そうよ。」と肯定した。


「助けなんか必要ありません。あの牢獄に居れば僕は安全だったし、ギアス国王が守ってくれます。」


 ソウマは怪訝な顔で反論した。


「いいえ。あそこに居てもあなたは安全じゃないし、ギアス国王はあなたを守ってくれないわ。」


 ミカドは首を振りながら、哀れむような表情でソウマに言った。

「どうしてそう断言するんですか?」と聞くソウマに、ミカドは懐から新聞を取り出して、ソウマの顔の前に持ってきた。


「これを読めば分かるはずよ。」


 ミカドに言われ、ソウマは新聞を読み始めた。

 新聞の見出しには『セントクレア爆破事件、容疑者逮捕』と書かれていた。


「容疑者逮捕って……悪魔達を捕まえたってことですか?」


 ソウマは顔を上げてミカドに聞いた。

「読み進めてみて。」とミカドに促され、ソウマは再び新聞に視線を落とした。


『ギアス国王は今朝、「セントクレア魔法学校爆破事件の重要参考人として身柄を確保していた同校の生徒を、同事件の実行犯として逮捕した」と発表した。

 逮捕されたのは同校に通う男子生徒のソウマ容疑者で、概ね容疑を認める供述をしている。

 この事件は学校の地下倉庫にあった爆薬が爆破の原因と見られており、事件当日ソウマ容疑者が地下倉庫の鍵を所持していたことから、ベリミット軍自警団はソウマ容疑者を重要参考人として事情を訊いていた。

 証拠となる地下倉庫の鍵はベリミット軍自警団が押収している。

 自警団は引き続き取り調べを進め、犯行の詳しい経緯を調べていく予定。』


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