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アナザーズ・ストーリー  作者: 武田悠希
第二章 ルシフェル編
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第六話 夢

 ソウマは真っ白な空間に立っていた。

 白い空間は延々と続き、他には何もない。


「ここは……?」


 ソウマは困惑した顔で辺りを見渡したが、何もないことが分かるとそれ以上辺りを伺うのを止め、自分の体を確認し始めた。

 まずは両手を確認した。手の平も手の甲も汚れ一つない。制服も血や泥などの汚れは一切ない。次に胴体、両足がちゃんとあることを確認し、最後に両手を頬に当て、顔がちゃんとあることを確認した。


「全部ちゃんとある……。」


 ソウマはボソッと呟いた。

 その時、ソウマの背後を何者かが通る気配がした。

 ソウマが後ろを振り返ると、緑色の長くたなびく髪が視界の端に映った。ソウマはその緑髪の誰かの姿を目で追ったが、すぐに見失ってしまった。


「誰?」


 ソウマは姿をくらます相手に対して問いかけながら、周囲をキョロキョロと探した。

 ソウマが困惑した顔で辺りを見回していると、再び背後に気配を感じた。

 ソウマは急いで振り返り、緑髪の人物の姿を朧気ながら捉えた。

 その人物は女性のようだった。視界に何度か捉えた緑色の髪は膝下まで伸びている。滑らかなベールのような衣を身に纏い、ふんわりとした着こなしはその人物の神秘的な雰囲気を強調している。

 女性の顔には影がかかり、ソウマはその顔をはっきりと見ることは出来なかった。

 女性はソウマとかなりの距離を空けて立っていた。しばらく両者は無言のまま向き合っていたが、やがてその女性はゆっくりと体を上昇させていった。


「待って! あなたは誰!?」


 ソウマは右腕を伸ばし、遠ざかっていく女性をなんとか引き留めようとした。

 しかし緑髪の女性はどんどん遠ざかっていき、声の届かない所まで離れてしまった。

 やがて右腕を伸ばすソウマの体を白い光が包んでいき、ソウマは周囲の白い風景に同化していった。


 ====================================


「はっ!」


 ソウマは右腕を天井に向かって伸ばした状態で目を覚ました。息を荒げ、顔には嫌な汗をかいていた。

 ソウマは固い岩のベッドの上に寝転がっていた。岩のベッドには粗末な布団が敷かれ、ソウマはその上に寝かされていた。ソウマには簡素なシャツとズボンが着させられていて、制服はどこかへいっていた。

 ソウマはゆっくりと上半身を起こした。薄い布団のせいで岩の固さがダイレクトに伝わっていたのか、ソウマは背中や腕などあちこちを痛がった。

 ソウマは痛む腕をさすりながら周囲を見回し、自分の居る空間に驚愕した。

 ソウマのいる部屋はどう見ても牢獄の一室だった。石造りの四角い部屋で、壁や床は薄汚い灰色をしていた。広さは四畳ほどで、ソウマが寝ている岩のベット以外に家具は何もない。部屋の出入口は鉄格子で閉ざされており、鉄格子の外の廊下にあるランタンの明かりが、ソウマのいる部屋を薄っすらと照らしている。

 薄汚れた部屋と、ジメジメした生乾きの衣服のような空気の匂いに、ソウマは辟易した顔をした。ソウマは廊下の椅子に座って居眠りをしている兵士の姿を見つけた。


「あ、あの……すみません。……すみません!」


 兵士は一回では目覚めず、ソウマが何度か呼び掛けてようやく「はっ!」と目を覚また。


「す、すみましぇん。昨日は飲みくぁいだったもんでほとんど寝てにゃくて……」


 兵士は呂律の回っていない口調でゴニョゴニョ言っていたが、ソウマの姿に気付くと、


「ああ、君か……。何だい?」


 と、腰を落ち着かせて話し始めた。


「あの……ここはどこですか?」


 ソウマは起きて真っ先に浮かんだ疑問をぶつけた。


「ここはベリミット人間国の王都イルナールの牢獄だよ。君が今いるのは地下一階の独房だね。」


 兵士は起き抜けのせいか、やや力のない口調で返答した。


「牢獄……。やっぱりそうですよね。あの……どうして僕、牢屋に入れられてるんですか?」


 ソウマの質問に対し、兵士は「ああ、えっと……そのぉ……」等と歯切れの悪い前置きをしつつ、


「もうじきギアス国王が来るから、国王から直接聞いてくれ。君をここに入れるよう指示したのは国王だから。」


 と自分から明言することは避けた。


「国王が? ……そうですか。分かりました。」


 ソウマは渋々引き下がった。


「うん。君が寝ている間、国王は何度か君の様子を見に来てたよ。きっとまた来ると思うから、そしたら直接――」


 兵士が話している途中で、廊下の向こうからコツコツと足音が聞こえた。

 兵士は音のするほうを振り向くと、「お!」と声をあげた。

 ソウマのいるベッドからは壁が邪魔で廊下の先が見えず、ソウマは足音の主の姿が見えなかった。


「ギアス国王! ご公務、お疲れ様であります! わたくし! 一度も居眠りなどせず! ここで見張りを続けて参りました!」


 兵士は勢いよく立ち上がり、足音の主に堂々と嘘をついた。


「うむ、ご苦労様。彼の様子はどうかね?」


 足音の主は兵士に尋ねた。


「は! たった今、目覚めた模様であります!」


 兵士は返答した。


「おお! そうか。では、さっそくだが彼と話がしたい。すまないが独房を開けてくれるかね? それと椅子を一つ貸してほしい。」


 足音の主は兵士に頼んだ。

「は!」と兵士はきびきびと返事をすると、廊下にある余っている椅子を掴み、ソウマの独房の施錠を外して、中に椅子を運び込んだ。

「どうぞ!」と兵士に促され、足音の主はソウマの独房に入ってきた。足音の主はソウマに話しかけた。


「はじめまして。私はギアス。君はソウマ君……で間違いないかね?」


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