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アナザーズ・ストーリー  作者: 武田悠希
第四章 継承される加護編
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第五十八話 バロア牢獄

 深夜。

 ソウマ達は拠点の外で出発の準備をしていた。

 ケンタは馬車の馬に馬具を付け、ソウマ達は馬車の荷台に荷物を積み込んでいた。


「こんな夜中に出発するのかぁぁぁい?」


 マディは頭の上にタマを乗せた状態で、スルスルと歩いてソウマ達に近づいてきた。


「はい。時間が惜しいので、今日のうちに出発します。」


 ソウマはマディに答えた。


「そうかぁぁぁい。僕の薬はちゃんと持ったかぁぁぁい?」


 マディはニコニコしながら頷き、首を傾げながらソウマに尋ねた。


「はい、大丈夫です。再生薬も悪魔化の治療薬も、両方ちゃんと持ちました。」


 ソウマは服のポケットを手で押さえながら言った。


「大丈夫そうだねぇぇぇ。さっき説明した通り悪魔化の治療薬は未完成だから、この点は注意してねぇぇぇ。」


 マディは人差し指を振りながら言った。


「はい、分かりました。悪魔との接触は極力避けるよう気を付けます。」


 ソウマは真剣な表情で言った。


「うん。それともう一つ伝えておきたいことがあるんだぁぁぁ。悪魔が使う闇属性の魔法には気を付けてねぇぇぇ。」


「闇属性の?」


 ソウマは聞き返した。


「そうだよぉぉぉ。闇属性の魔法で攻撃されると、永遠に消えない傷が出来るんだよぉぉぉ。その傷はまるで呪いのように少しずつ体を侵食していって、やがて人を死に至らしめるらしいぃぃぃ。呪いは僕の再生薬でも治せるか分からないから、くれぐれも気を付けてねぇぇぇ。」


 マディは心配そうに忠告した。

 ソウマとマディがそんな会話をしている背後で、クロキは着ているワイシャツの襟首を軽く引っ張り、自分の体を覗いて顔をしかめた。


「分かりました。貴重な情報をありがとうございます。」


 ソウマはマディに礼を言った。


「いやいやぁぁぁ、出来れば呪いにも薬を試したかったんだけど、実験材料も無いし、色々と実力不足でねぇぇぇ。こんな時、大賢者グリアが居てくれたらなぁ、なんて思ってしまうよぉぉぉ。」


 マディは腕組みしながら感慨深げな表情で言った。


「え? 誰ですか?」


 ソウマは不思議そうな顔で聞き返した。


「いや、なんでもないよぉぉぉ。気を付けて行っておいでぇぇぇ。」


「……はい、ありがとうございます。」


 ソウマはまだ不審そうな顔をしていたが、取り敢えずといった感じで礼を言った。


「よし、皆準備出来たな。」


 他の五人が荷台に乗り込んだのを確認し、ケンタは御者台に乗り込んだ。


「じゃあな、マディ。」


 ケンタは御者台からマディを見下ろしながら言った。


「うん、それじゃあねぇぇぇ。」


 マディは一行に手を振った。


「ニャー。」


 タマも一行を見送るかのように一声鳴いた。

 ケンタは馬に鞭を与えて馬車を走らせ、見送るマディから徐々に遠ざかっていった。

 マディは馬車が見えなくなるまで手を振って見送り続け、見送りを終えると頭の上のタマが落ちないように両手で支えながら、寂しそうな表情で拠点に戻っていった。


 ====================================


 ソウマ達が拠点を出発した丁度その頃、捕まったホムラのメンバーはバロア牢獄に囚われていた。

 バロア牢獄は元々洞窟だった場所を牢屋に改造して造られており、薄暗くジメジメとした空気が充満していた。

 洞窟は灰色の岩盤が剥き出しで、壁に備え付けられている蝋燭が仄かにその岩盤を照らしていた。内部はアリの巣のように入り組み、いくつもの部屋に分かれていた。

 部屋には鉄格子が嵌められ、部屋一つ一つが牢屋になっていた。しかし元は自然の洞窟だったため、部屋というよりはゴツゴツとした岩で囲われていた唯の空間だった。

 その牢屋の一室にホムラのメンバーはまとめて収監されていた。

 メンバー達は地面に座りこみ、金属の手枷で両手を後ろ手に拘束されていた。

 みな体中に傷を負い、かなり痛々しい様子だった。


「は~、最悪だよ~。なんでこんな事になるの……。」


 エミリは後ろ手のまま両手をブンブン振り、手枷をガチャつかせながら不満顔で言った。


「エミリ、静かになさい。」


 ミカドはしかめっ面でエミリをたしなめた。

 エミリは「だって~。」と食い下がったが、ミカドは「エミリ!」と一喝した。

 エミリは「む~。」とまだ不満顔で、プクッと頬を膨らませた。


「あのメス、うるせえな。半殺しにしておくか?」


 牢獄を見回る一体の悪魔Aが呟いた。


「駄目だ、手荒な真似は出来ない。口で言って静かにさせるしかない。」


 別の悪魔Bが答えた。


「そうか……。おい、そこのメス、静かにしろ。」


 悪魔Aはエミリに注意した。


「む~、メスとは何よ! メスとは! 女の子です~!」


 エミリは益々怒り、頬をさらに膨らませた。

 ミカドはそんなエミリの様子にため息を一つ吐き、隣のユキオに顔を向けた。


「リーダー、どうします? このままでは私達全員……」


「ああ、間違いなく極刑だろう。だが今はどうする事もできん。」


 ユキオはきっぱりと言った。


「このまま処刑されるのを待つだけでやんすか~!」


 サブリーダーのアキラは喚いた。


「いや、ファナドに行ってるあいつらがいる。ケンタ達が任務を終えて拠点に戻ってくれば、俺達がいないことに気付くはずだ。」


 ユキオは眉間に皺を寄せながら言った。


「しかし、私達がここに居ることは彼らには分からないのでは?」


 ミカドは訝し気に尋ねた。


「幸いな事にマディは捕まってない。あいつが俺達の居場所を知らせてくれるはずだ。リーダーとしては情けない話だが、今はあいつらに頼るしかない……。」


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