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放浪王女と森の守人  作者: 一膳一日
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プロローグ

超久しぶりの投稿になります。初めてファンタジーを投稿しましたが、完走できるかは不安です。

今回はプロローグなので、世界観の軽い紹介程度になっています。

《プロローグ》

 かつてこの世に生命が誕生していない時代。神話の時代と呼ばれる時代が存在した。神々は不毛の荒野と海が広がる大陸を憂い、植物と少しばかりの生き物を作り、解き放った。神々はそれ以降積極的に大地に干渉しようとはせず、天に帰っていった。

 彼らが放った生命達は驚く速さで進化を繰り返し、瞬く間に地上と海は生命で溢れかえった。そんな中、一際異彩を放つ種族が3種いた。彼らは姿形が神々によく似ており、自らのことを人間とエルフとドワーフと呼んだ。彼らは時に語り合い、時に争いあったが、共存を果たし、それぞれに国を興して、栄華を誇った。また、彼らに少し遅れて進化を果たした人型の種族も生まれ、3種族はこれらを亜人族と呼んだ。


 しかし彼らの栄華も長くは続かなかった。今より3500年前、大陸の中心部、火山地帯が広がる、荒れ果てたルイナの地より悪しき魔王「サクリオス」が誕生した。彼は神に匹敵する程の力を持ち、神々が行った様に自ら魔物を生み出し、軍団を形成した。

 サクリオスの軍団の力は強大で、大陸中の国々を攻め立て、あらゆる種族を殺戮し、この世界を手中におさめようとした。


 だがどの種族もただ滅亡を見ていた訳ではない。サクリオスに抵抗できる種族もいた。人間とエルフとドワーフ、一部亜人族の連合軍である。彼らは多大な犠牲の果てに、勢力を持ち返し、3470年前、ルイナの地の目と鼻の先にあるロビナーレ平野で、大陸の命運を懸けた大戦が始まった。

 連合軍は数で勝るサクリオス軍を、それぞれの長所を生かした戦法を組み合わせて圧倒した。サクリオス軍を7割方倒し、勝利は目前に迫っていた。しかし、彼らは危機に瀕することになる。最も倒さなければならない最強最悪の敵が彼らの前に立ちはだかった。

 サクリオスは連合軍の前線の前に姿を現すと、手にしていたメイスを振り上げた。すると数十人の兵士が弾き飛ばされ、絶命した。一撃ごとに圧倒的な力を見せつけられ、前線部隊の戦意は喪失。戦線は崩壊し、サクリオス軍が息を吹き替えし始めた。


 そんな時だった、人間の王族である若き双子が、サクリオスと対峙した。名を兄は「ロニウス」、弟は「テリウス」と言った。彼らはドワーフとエルフが鍛えた武器と防具を身につけ、サクリオスに立ち向かった。しかし幾分かは持ちこたえたが、すぐに限界がきた。テリウスがサクリオスのメイスの一撃を受け、弾き飛ばされた、エルフの魔法がかかった防具を身につけていたため、死にはしなかったが、気を失った。残されたロニウスもメイスで剣を破壊され、その余波で倒れこむ、うずくまる彼の前にサクリオスが立ち、メイスを振り下ろそうとし、全てが終わったかに思えたその時、一本の矢がサクリオスの腕に刺さった。只の矢ではない、エルフの王が放った魔法の矢だ。サクリオスは不意をつかれ、一瞬の隙ができた。

 その時、テリウスが目を覚まし、朦朧とする意識の中、手にしていた剣を投げた。剣はサクリオスの腕を切り落とし、ロニウスの手に収まった。ロニウスは無我夢中で剣を突き出し立ち向かった。そして剣はサクリオスの胸を貫いた。

 サクリオスは目を見開き、何が起こったか信じられないような表情を浮かべ、何語かはわからない言葉を発し、絶命した。連合軍の勝利が決まった瞬間だった。


 ロビナーレ平野の戦いの後、ロニウスとテリウスは英雄と称えられ、全ての種族の憧れとなった。やがてロニウスは人間の王となり、彼の王国は栄華を極めた。しかしテリウスは戦いの後、数年は兄の補佐をしていたが、突然その職を辞し、旅に出た。その後の消息はわかっていない。

 そして悠久の時が流れた。

《プロローグ終わり》


《第1話》

〈人間の国アルマーレ北西部〉

 広大な草原となだらかな丘陵が広がり、今は月明かりが草原を照らしている。人の集落もまばらにしかなく、ましてや夜になると草原を出歩く者もいない。

 しかしその草原を馬で駆ける一団と、それを追随する一団が、今宵の草原の静寂を破っていた。先頭を走るのは十代前半くらいの少女と、その側近のような者が二人だった。

 ふと少女が言葉を漏らす。

「むぅ…あやつらしつこいのぅ」

「姫様!このままではゴブリン共に追いつかれます!我々が奴らを食い止めます!姫様はどうかお先に!」

 だが姫様と呼ばれた少女はその赤髪の側近を制して言う。

「それは駄目じゃクレア!数は奴らの方が多いのだ、みすみす死にに行くようなことは止めよ!」

 だがもう1人の黒髪の大人びた側近が反論する。

「いいえクレアの言う通りです姫様。既にもう一時間以上奴らから逃げています。さすがに馬にも疲労の色が濃くなってきました。馬ではゴブリンの駆るハイエワーフの持久力には勝てません。直に追いつかれるでしょう」

「ならどうすればよいのじゃ!?」

「「こうするんです」」

 そう言うやいなや、少女の両脇の側近達は一斉に鞭で少女の乗る馬の尻をひっぱたいた。鞭をうたれた馬は速度を上げ、1頭だけ突出する。

「何をする!待て、待つのじゃ。お主ら何を考えておる!馬鹿なマネは止めよ!」

「姫様、お行きください!姫様にはこの大陸の未来がかかっています!安心してください。我々もゴブリン共を片付けて必ず合流します」

「総員転回!ゴブリン共を討ち取れーっ!」

「「オオオォォ!」」

 少女は速度を上げた馬から振り落とされない様に精一杯だったが、かろうじてゴブリンと戦闘に突入した味方を見ることができた。

「すまぬ…皆すまぬ…」

 少女は目に涙を浮かべながら、馬を駆り、草原を走っていく。ただひたすらに目的地を目指して。


《続く》

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