重課金桃太郎
むかしむかし、あるところに、お爺さんお婆さんが暇を持て余しておりました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきたので、衛生的にどうなの? と思いつつも家へと持ち帰りました。
お婆さんが桃を割ると、中から元気なニワトリが出て来ました。
「コケーッ!(きび団子200個でガチャをやり直せるよ♪)」
お婆さんは排出率0.01%の『渋めのイケメン桃太郎』が欲しかったので、きび団子を惜しげ無く課金致しました。
桃がゆっくりと閉じ、再びお婆さんが桃を割ると、中からメガネが出て来ました。
「…………!(きび団子200個でガチャをやり直せるよ♪)」
お婆さんは無言できび団子を追加しました。
桃がゆっくりと閉じ、再びお婆さんが桃を割ると、垂れ目の元気な男の子が現れました。
「……まぁ、いいか…………」
お婆さんは妥協の末に『垂れ目の桃太郎』で我慢しました。
桃太郎が大きくなると、鬼退治へ向かう事になりました。
お爺さんとお婆さんは桃太郎を見送り、桃太郎は元気よく旅立ちました。
桃太郎が歩いていると、前から犬が歩いてきました。
「きび団子200個で鬼退治のお供を致しましょう!」
桃太郎は袋を覗きましたが、きび団子は3つしかありませんでした。
「ちょっとタンマ……」
桃太郎はコンビニへ走りました。そして魔法のカードを買いました。
再び袋を覗くと、なんときび団子が1003個に増えていました。
桃太郎は犬をお供に加え、鬼退治へと向かいました。
桃太郎と犬が歩いていると、前からキジが飛んできました。
「きび団子250個で鬼退治のお供を致しましょう!」
桃太郎は悩みました。流石に先程犬に課金したばかりなので、財布の紐が固くなっているのです。
「今なら☆3虎徹が付いてきますよ!?」
桃太郎はオマケに負けてきび団子を渡してしまいました。
桃太郎は犬とキジをお供にし、オマケの刀を持って鬼退治へと向かいました。
桃太郎と犬とキジが歩いていると、前からサルがやってきました。
「きび団子300個で鬼退治へお供を致しましょう!」
「結構です」
桃太郎はキッパリと断りました。
「お供が三匹揃うと、スペシャルイベントが発生しますよ!?」
「……いりません」
「鬼ヶ島ガチャで☆5が出る確率が2%上がりますよ!?」
「鬼ヶ島ガチャ?」
「どんな鬼が出てくるかガチャで決めるんです」
サルがガチャのラインナップを広げました。
「……☆5、ビキニ鬼姫、鬼バニー、ナース鬼、ミニスカポリス夜叉、真夏の赤鬼ガール、マッチョ閻魔…………と」
桃太郎は袋を覗きました。残りのきび団子は553個です。サルを仲間にしたら残るは253個です。
「因みに……鬼ヶ島ガチャは一回きび団子何個?」
「初回無料です! 二回目からはきび団子300個ですよ!」
「う、う~ん……」
「10連ガチャなら2000個で大変お得です!」
「いやいや、流石に10連は……」
桃太郎はきび団子2000個と聞いて現実に戻りました。そしてサルをお供に加える事で、一区切りを着けました。
桃太郎は犬とキジとサルをお供に、鬼ヶ島へと向かいました。
ついに鬼ヶ島へと辿り着いた桃太郎は、岩の扉を開きました。
するとそこには、臭いオジサン鬼(☆2)が金棒を持って佇んでおりました。
「……うわ…………」
言葉に詰まる桃太郎は、三匹のお供を見ました。するとお供達はウインクをして課金を無言で迫りました。
「……一回だけだからな」
桃太郎はコンビニへ向かい、小さな魔法のカードを買いました。
きび団子をぶち込み、残すは53個。桃太郎は祈りながら岩の扉を開けました。
するとそこには、普通に強そうな鬼(☆3)が佇んでおりました。
「……よし、終わり! 退治するぞ!!」
桃太郎が虎徹(☆3)を抜き放ち身構えると、水を差すようにサルが声を出しました。
「桃太郎さん! 10連ガチャなら☆5が確定ですよ!!」
「それを早く言えぇぇぇぇ!!!!」
桃太郎はコンビニへガンダッシュしました。あまりの気迫に驚いた店員さんがカラーボールを掴んでいます。
「うおぉぉぉぉ!!!!」
桃太郎は魔法のカードを二つ買いました。袋の中のきび団子は2053個です。
岩の扉を閉め、桃太郎は独自の祈りを捧げて、静かに扉を開けました。
すると、そこには大小様々な雑魚鬼がおり、その奥に眩い光に包まれた──マッチョ閻魔(☆5)が現れました!!
「ちがぁぁぁぁう!!!!」
桃太郎は荒れ狂いました。その後ろでお供達がほくそ笑んでいますが、桃太郎は気が付きません。
「さ、流石に、流石に二回連続は無いだろう……」
桃太郎は悟りを拓いた修行僧のような顔で、コンビニへ向かいました。コンビニへ入った桃太郎を見た店員さんが、何も言わずに魔法のカードを差し出しました。
「こ、これで最後だ……!!」
再びきび団子を2000個使い、鬼ヶ島ガチャ10連に挑みます。
扉を閉めて、念入りにお祈りをし、ついでにトイレへと行って、手も洗わずに扉を開けました。
すると、そこには大小様々な雑魚鬼がおり、その奥に眩い光に包まれた──マッチョ閻魔(☆5)が現れました!!
「………………は?」
桃太郎が振り返りお供達を見つめました。お供達は無言で首を振ります。
桃太郎は運営に問い合わせメールを送りました。
『10連で二回で☆5が被るってなんなん?』
すぐに運営から返事が着ました。
『生きてりゃそういう事もありますよ。これからも宜しくね』
桃太郎はやるせない気持ちになりました。
そして無言で鬼達を成敗しました。
桃太郎は鬼達がせしめた財宝の宝箱を見つけました。
桃太郎が宝箱を開けると…………なんと、空っぽでした。
「ゴメン、課金で使っちった♪」
可愛いから倒さないでおいた、ポニーテール鬼(☆2)が照れ隠しに笑いました。
「……(笑)」
桃太郎は泣きながらポニーテール鬼を斬り捨てました。
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(*´д`*)