6 : ゴーレムも使いよう
「さすがに……作りすぎちゃったな……」
召喚魔法が楽しすぎてゴーレムを生成しまくっていたら、いつの間にかその数が10を越していた。
ゴーレムはその硬い拳で地面を掘るため、あちこちで岩を穿つ音が木霊している。
というか作ったはいいけど、この地面の下に水なんてあるんだろうか……?
まあ作っておいて損はないだろう。
「『リアニ』!!」
地面を隆起させ人型を作り、そこに魔法の力で魂を吹き込む。
数回も使えばコツが掴めてくるもので、作成するゴーレムの大きさや形はある程度いじれるようになってきた。
今回作ったのは、背丈が1mほどの、小さい個体だ。
「よし、お前にはここら辺の捜索をしてもらう。水辺があったら報告しに戻ってこい」
「ゴレッ」
頷くような動作を取ると、駆け足でどこかへ走っていった。
……ゴーレムって無機質で怖いようなイメージがあったけど、案外可愛い。
他にも数体似たような個体を作り、同じ命令をして野に放つ。
無事に帰ってきてくれるかなあ。
✳︎
「だあぁーーーーっ!!喉渇いたーーーっ!!!」
あれから2時間ちょっと。
地下水を掘れるでも小型ゴーレムが帰ってくるでもなく、ただ時間だけが過ぎていった。
水が無いと人間は3日で死ぬという話を聞いたことがある。
このままじゃスローライフどころか、脱水で死ぬなんてこともありえる。
どんなに汚い水だろうが浄化魔法で綺麗にして飲んでやろうと考えていたが、まさかここまで見つからないとは思っていなかった。
やばいぞ、一体どうしたものか……。
ふと、自分の下半身をチラ見する……。いや、してしまった。
「いやいやいや待て待て待てふじみねたくとよ、流石にそれは……ダメだろう。確かに最高の自給自足だけど、倫理的にさ……それは……」
自分の倫理観と、脱水の危機。
秤にかければどちらが重いかなんて、考えたくはないが考えるまでもない。
「一回分……一回分だけならセーフ……」
浄化魔法は、あらゆる液体、物質を浄化すると魔導書に書いてあった。
ちょうどしたい気分になってきたし……。
一回………だけ、なら…………
「ゴレェェェェェェ!!!!!」
「!?」
そのとき急に一体のゴーレムが低く吠えた。
急いでズボンをあげ、そのゴーレムの元へと走っていく。
そこには深さは30センチくらいだろうか、地面にぽっかりと大きな穴が開いていた。
覗き込んでみると、中からひんやりとした空気が流れてくる。
両手を皿のようにして穴へ入れてみると、
「み、みみみ、水だぁーーーーっ!!」
程よく透き通った水が、両手の上でチャプチャプと動いていた。
念願の水を手に入れて嬉しい限りだが、このまま飲むわけにもいかない。
有害物質や細菌の除去のため、本来は濾過や煮沸をしなければいけないのだ。
だが、俺には浄化魔法がある。
「浄化魔法!!」
そう唱えた瞬間手のひらに光が溢れ、茶色がかった水がみるみるうちに透明になっていく。
光が消えた時には、何の濁りもない透き通った水がそこにあった。
「これで有害成分は取り除けた……はず」
匂いを嗅いでみるが、特に変な匂いはしない。
……というより、あれこれ考えても仕方ない。
手のひらを口へと近づけて、一気に喉に流し込む。
「う……うまい!」
喉に通った水は、嫌味がないどころか微かな甘みすら感じられた。
地下水特有のミネラルとか、そういう物質のおかげだろうか……?
とにかく飲んでも大丈夫だと分かったので、穴の下から湧いてくる水に時折り浄化魔法をかけながら、手のひらで掬って飲みまくる。
「ぷぁーーーっ!!うめぇーーっ!学校帰りの炭酸並みに美味いな……!」
ふと首元を見ると勢いよく飲みまくったせいか、制服の襟に水が溢れてしまっている。
それを袖で拭いて、また水を飲もうと穴を覗き込むと。
「……………なに、これ」
「めう」
穴の中では、手のひらより一回り大きいくらいのもふもふの羊(?)が、ごくごくと水を飲んでいた。




