13 : いただきますを教えよう
「ふわぁぁぁ〜〜、よく寝た……。……おはようユニ」
「おはようございますタクトさん!」
初めて迎える異世界での朝。
窓から差し込んでくる柔らかな日差しが心地いい。
まだ眠気の残っている目を何とか開けながら、天井に向かって背伸びをする。
結局、毛布を床に敷いてそこで俺が寝て、ユニがベットに寝ることになった。
私は絶対床で寝ますと言っていたが、じゃあ家に泊めないぞと言うと、渋々ベットで寝たようだった。
「まったく、タクトさんは強情なんですから。今日こそはベットで寝てもらいますからね」
「そりゃお互い様だな。近いうちにもう一つベットを用意するか……。って、この良い匂いは?」
「朝ごはんを作ってみました。材料が一種類しか無かったのでロクな料理が作れませんでしたが……。一緒に食べましょう!」
そう言うと、ユニはテキパキと机の上に皿を並べていく。
そこには枯死草のスープや炒め物、スムージーがあった。
「おお……!スープ以外にこんな用途が」
「逆に今までスープだけだったんですか。タクトさんの生活力が心配になってきますよ」
俺が席につくと、食器を並べ終わったユニも席についた。
食事前、いつものように手を合わせて。
「いただきます」
「……なんですかそれ」
ジト目で不思議そうにこちらを見つめてくる。
ああそうか、この世界ではいただきますの文化がないのか。
「俺のいた世界……じゃなかった村ではな、食事の前に手を合わせていただきますって言うんだ。食材や作ってくれた人への感謝の意味がある」
「へぇーー、良い文化ですね!感謝の意を示せるのは素敵です……。私も今日からやってみたいです!」
楽しそうに目を輝かせるユニ。
あれ、なんだか自国の文化を教えるの楽しいぞ。
少し気分が上がってきたので、食器棚から箸を2本取り出して机の上に置く。
「この箸って知ってるか?俺の村ではいつも使ってた食事用の道具なんだが」
「知ってますよ。中指と人差し指を上手く使うやつでしょう?」
なにっ、いただきますの文化は無いのに箸の文化はあるのか……っ!
これがジェネレーションギャップ……!?
俺がショックを受ける中、ユニは気にせずフォークで枯死草の炒め物を掬うと。
「ところで、今日は何をしますか?さっき家の前を少し歩きましたが岩だらけで何もなかったですし、この家にも足りないものが色々とありますし」
「何から、なぁ……」
何もかも無さすぎて、何から手をつければいいのか分からない。
スローライフを送る為に必要なものが色々と足りないのだ。
サバイバルの鉄則によれば水、火、食べ物、シェルターの順に大事なんだっけ?
だとすれば。
「まずは水周りを整えよう。幸い地下水を発見したから、そこから水は引けるはずだ」
「分かりました!ならまずはご飯をいっぱい食べて、力をつけないとですね!」
枯死草の炒め物を口いっぱいに頬張り、うっとりとした表情で味を噛み締めるユニ。
俺も炒め物を食べてみると、枯死草の出汁と調味料のバランスが絶妙で、スープ以上の旨味がはっきりと感じられた。
「美味しい……。ユニって料理上手いんだな」
「料理は昔から好きでしたから、子どもの頃からよく使っていたんですよ。でも料理のことで褒められるのって久しぶりです。なんだか嬉しくなっちゃいますね」
顔を赤くして恥ずかしそうにするユニの顔は、どことなく嬉しそうだった。




