12 : 仲間の加入!
「……私、家では孤独なんです。一人っ子で頼れる人もいなくて、内気だから友達もいなくて……。それに両親が最近冷たいんです。昔は愛情を注いてくれていた分、最近の冷めた態度が胸に刺さって……」
……なるほど。
ユニもなかなかに苦労していたようだ。
俺も学校では友達もいなくて親も冷たかったし、ユニの気持ちは痛いほど分かる。
「辛かったんだな。家出が正解なんて言えないけど、逃げてみるのはありだと思うよ」
「お優しいんですね、タクトさんは」
ユニが可愛らしく微笑んだ。
今まで暗い顔だったが、やっぱり笑顔がよく似合う。
「そういえば、タクトさんはここにどれくらい住んでいらっしゃるのですか?家を見る感じかなり綺麗なのですが」
「あーー、っと、だいたい10日くらいかな?元々村に住んでて。閉鎖的な雰囲気が嫌でゆっくりした生活をしたかったから、最近ここに越してきたんだ」
「へぇーー、良いですね……。辺境でのゆったりとした生活、憧れます……」
どうしよう、ユニが目を輝かせながら話を聞いてくれてる。
でも昨日まで別の世界にいたけど女神のミスでこの世界に転移しちゃいました、なんて引かれそうで言えないしなぁ……。
「じゃあ農業とか酪農とか、そういったことをしていらっしゃるんですか?」
「あ、いやまだ越してきたばかりで何も。水はなんとか手に入れたけど、それ以外は今日の分もやっとって感じで。明日見て貰えば分かるけど、ここら辺って褐色岩だらけだからさ」
「ふふ、まだまだこれからなんですね。私も明日から手伝いますよ。微力ですが力になれると思います。それに私、こう見えても農業とか開拓とか、そういうの好きなんです」
「それは嬉しいな。明日からぜひ頼むよ」
予期せぬ出会いだったが、転移1日目にしてこの生活に仲間が加わった。
魔法を使えるといっても、1人ではなにかと限界がある。仲間がいてくれると出来ることが広がるし、なにより楽しい。
しかも清楚な美少女。本人の前隠しているが、実のところかなり嬉しかったりする。
「でも2人暮らしかぁ……」
部屋をぐるっと見渡してみるが。
女神が用意したこの家は一人暮らしを前提にしたもので、2人で暮らすにはやや手狭だ。
生活できないことはないんだが、まだお風呂が備わってないし、それに……。
「……ベッドが1つしかないんだけどさ」
「!?」
ユニの朗らかな笑顔が急に赤く染まった。
「そ、そそそれは2人で一緒に寝る、というここことでででで」
「おおお落ち着け!俺は床で寝るからユニがベッドを使ってくれってことだ!」
「えええでもタクトさんに悪いですよ!私が床に寝るのでタクトさんがベットを使ってください!」
「それは良心が痛む!ほらあれだ、レディーファーストってやつだ!」
「ならレディーの私が拒否します!レディーの私が1番なら、私の言うことが1番ですよね!?」
どっちがベッドを使うか、ぎゃーぎゃーと言い合っていると。
「めうっ」
ユニの頭にめうが着地した。
ユニは驚いてめうを掴むと、そのもふもふ感と可愛さに一瞬で魅力されたようだった。
俺の手前にやけ顔を隠しているつもりだろうが、ちょっと漏れているのが見える。
「か、可愛い……。もふもふ……。ふかふか……」
さっきの勢いはどこへやら、今はめうの全身を触りながらそう呟いている。
めうも幸せそうに目を細めてなすがままだ。
この光景は、1人では見られなかったものだ。
小型ゴーレムたちに感謝しつつ。
「ま、色々なことは明日決めるか。きょうはもう遅いし寝よう」
「はい、そうですね」
「じゃ、俺は床で寝るから」
「ダメですってば」
ユニは拗ねたように頬を膨らませた。




