11 : ユニ・ローレンス
少女をベットに寝かせ、目覚めを待つ間に枯死草を使ってスープを作る。
前回のように、味付けは塩だけで十分だろう。
お湯を沸かしている間、この子について少し考えてみる。
ーーこの場所がこの世界においてどの位置にあるのか分からないが、褐色岩を鑑定した際の説明に「果ての地方に多い」とあったので、ここはおそらく端っこの方に位置している、いわゆる辺境の地なのだろう。
そんなところに、こんな上品な少女が1人で来るものだろうか?
襲われた後魔物に運ばれてきたとか、そんな感じなのかもしれない。
そうなると、彼女を家まで帰してあげるのに移動魔法とか必要になるな……。めうを通して女神に頼むか……?
「ふぅっ……うぁ……」
色々と思案してあると、ベットの方から声が聞こえた。
どうやら少女が起きたようだ。
「ん……ここは……」
艶のある黒髪を揺らしながら、上半身だけを起こして辺りを見渡している。
そして俺を見つけると、驚いた表情を見せた。
「あの、貴方は……?」
「俺はこの家の主人、藤峰卓人です。君が家の前に倒れていたから、勝手だけど家で介抱させてもらってたんだ」
「えっ、あっ、その……。ありがとう、ございます……」
しどろもどろの状態で深々と頭を下げる。
今の状況に混乱しているのだろう。
「びっくりしたよ。扉を開けたら君が倒れてたんだから。治癒魔法を使わせてもらったんだけど、どっか痛いとことか無い?」
「あ、はい、体のほうに異常はなにも……。介抱に加え治癒魔法を使っていただき、本当にありがとうございます。……その、最初は貴方に襲われたのかと思って身構えてしまい、申し訳ありませんでした……」
や、やっぱりそう思われてたのか。
まあでも普通そうだよな。
気絶から目が覚めたら男の家のベットの上、なんて状況そう考えない方が無理がある。
「いや、別に大丈夫だよ。色々聞きたいことはあるけど。とりあえず、スープ、飲む?」
枯死草スープを皿によそって、机の上に置く。
彼女はお腹が減っていたのか、お腹をぐぅ〜〜と鳴らすと、恥ずかしそうに席についた。
「じゃあ俺から自己紹介させてもらうね。俺は藤峰卓人、18歳。ここでスローライフ……まあゆったりとした生活を目指して開拓をしてるんだ。君は?」
「私は……ユニ。ユニ・ローレンスです。年はタクトさんの二個下の16です。久々に散歩をしようとしたら魔物に襲われて……」
「目が覚めたらここにいた、と」
「はい……お恥ずかしい話です」
顔を赤らめながらそう呟く。
「いや、魔物に襲われたのは仕方ないよ。無事だっただけ喜ばないとね。ユニの家はどこだい?出来る限り送っていってあげるよ」
「あ、家は、その」
言葉が途切れ途切れになったかと思うと、顔をうつむけてしまった。
もしかして、聞いたらいけないことを聞いてしまったのだろうか?
謝罪をしようとすると、覚悟でもしたような表情で顔を上げると。
「わ、私、家出したんです!家に戻りたくありません!ここに泊めてください!!」
精一杯の声でそう叫んだ。
「いえ、で……」
どうやら異世界にも、家出少女はいるようだ。




