10 : なんで少女が
「……なんなんだこの状況……」
傷だらけの少女が倒れている傍らで、水を探すよう命令した小型ゴーレムたちがこちらを見ている。
「よく分からないけど、とりあえず『キュアー』!!」
さっき入手した治癒魔法を使い、少女の傷を治す。
みるみるうちに傷が塞がっていき、着ている純白のドレス以外は完璧に治癒できた。
あとは目覚めるのを待つだけだ。
「とりあえずはこれでよし、と。あと聞きたいんだけど、なんでこの少女がここに?もしかして運んで来てくれたの?」
「ゴレッ」「ゴレッゴレッ」「ゴゴゴ」
あれどうしよう全然理解できない。
ゴーレム語なのだろうか、必死に伝えようとしているのは分かるが低い呻き声にしか聞こえない。
「身振り手振りも使って頑張ってくれてるのは分かるけど……文字は書けるのかな?」
家に立てかけてあったスコップを手渡す。
予想通り、ゴーレムは柄の部分で地面に文字を掘り始めた。
『メイレイドオリ ミズ ミツケタ』
水……?
『ミズ タクサン オッキナ フクロ』
大きな袋……。
「…………そういうことか」
と、ここでようやく意味に気づけた。
化学の授業で習ったことがあるが、人体は約60%が液体で構成されているらしい。
この少女が50kgと仮定しても、その量は30kg。
立派な水の塊だ。
対して、俺が小型ゴーレムに命令したのは「水を探してくること」。
彼らは命令そのまま通りに、大量の水を持って帰ってきてくれたのだ。
「ありがとなゴーレムたち。命令を守ってくれたんだな」
「「「ゴレッ!」」」
嬉しそうにそう言うと、元の岩へと戻ってしまった。
地下水を掘り当てた時もそうだったが、命令を達成したゴーレムは元の物質へと戻ってしまうのだろうか。
まあ、とりあえず。
「この子の看病かなぁ……」
横ですやすやと寝息を立てている少女を見る。
黒の長髪に純白のドレス、スタイルの良い華奢な体に、寝顔でも分かる整った顔。
まるでどこぞのお嬢様って装いだ。
治癒前、切り傷だら検定だったところを見るに、おそらく賊か魔物に襲われでもしたのだろう。
そこで、ゴーレムが水と認識して持ち帰ってくれたのはラッキーだった。
もし放置されていたらーーその結末は考えたくもない。
「ま、ただ散歩してただけのこの子をゴーレムが無理やり連れて帰ってきた……。って考えもあるんだけど」
流石にそれは怪我の具合的にありえないだろう。
倒れている少女をおぶると、家の中へと運んだ。




