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その2
目が覚めると、私の体は石ころになっていた。
指一本動かせない体になっていた。
路傍に転がる一つの石になっていた。
私はそこで幾日、幾年、幾千年も転がっていた。
不思議と、景色と音は聞こえたが私に話しかけるものはいなかった。
ある日、私の傍に一人の男が腰かけた。
私は、そっと息を殺した。
とうとう、私に気付く人間が現れたと思った。
「どうして、人は分かり合えないのかな」
男はそう呟いて、傍らにいた犬を撫でた。
私は、落胆したが静かに男の話に耳を傾けた。
男の話を聞きながら、私は静かに人間であったころのことを思い出した。
私は、私である。
結局、誰にも理解されない。
私は石、ただの石である。
宝石でもなければ、学術的価値のある石でもない。
ただの石なのだ。
誰にも、理解はされない。
ただの石なのだ。