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愛する君の攻略法  作者: 椛
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001

 

 私、城之内百合亜は普通じゃない。


 どこが普通じゃないのかって聞かれれば、簡単にこうだと答えられはしないけど、とにかく普通じゃない。


 ともかく、まずは自分の自己紹介ぐらいはしておかないとダメだと思う。そう、いろいろこんがらがっちゃうもの。



 私の名前は城之内百合亜。

 高等科三年生。ちなみに生徒会副会長をしている。


 いま私がいるここ、聖ローズマリー学園は鉄壁のガードを誇る、世界最高峰の教育機関。

 都心から車で30分。生徒は校内にある学生寮に住んでいるから外に行くことは滅多にないし、生徒や教員はもちろん、事務員清掃員その他外部講師に至るまでの身辺調査は完璧。


 このセキュリティ一に護られている身ではあるけれどやりすぎじゃないかと疑うほど、本当に安全だと思う。きっと世界で一番安全な学校ってここ。



 まあ、そんなことは置いといて。



 私の普通じゃないところの中でも、群を抜いてちょっと変なのが「生まれ」。


 別に変ないわく付きとかそんなのじゃない。変な呪いとかでも、痣とか痕とかある訳でもない。

 ただ少し、血筋が特殊というか。異端というか。



 少し、身の上話をしよう。

 世界の市場経済を牛耳る「城之内グループ」総帥の孫娘として私、城之内百合亜は生まれた。三歳違う兄が一人と、そのまた四歳年上の双子の兄姉がいる。


 年の離れた兄姉、厳しく厳格な父、優しく朗らかな母。末娘で体も弱かった私は基本的に優しく見守られ、時には祖父母に躾られ。有難いことに経済面に心配することはなく、まるで理想の家庭で育ってきた。その血筋以外は。


 今まで、血筋で困ったことのある人っていうのは、きっとそう少なくはない。探せばそれなりにいると思う。

 だけど私のはまた訳が違う。



 本質的に「血」が違うんだから。



 さて、ここで私の婚約者の話をしよう。

 私の婚約者、完璧超人男こと冷泉院雅玖は吸血鬼の王様。

 私も自分の周りで起こったことじゃなかったら熱にでも犯されてるのかと思う。でもリアルなんだもの。


 あの、よくアニメとかドラマとかファンタジーモノで鉄壁の「吸血鬼」。それで間違いない。



 世界には三種類の人種が存在する。

 吸血鬼の純血、人間の純血、そしてその中間である混血。


 世界の人口の殆どは混血で、これが俗に言われる「人間」。ちなみに人間の純血って言うのは言い難いから、人間の純血のことはそのまま「純血」、吸血鬼の純血のことは「吸血鬼」って呼んでいる。わかりやすいものでは無いけれど、慣れればなかなかわかりやすくなってくる。


 人間は吸血鬼の因子と人間の因子のバランスがよく取れていて、普通に生きてる分にはなんの問題もない。

 吸血鬼の象徴である八重歯を持つ人や、血を見た時ぞくっとした感情を持つ人がいることが混血である証拠。


 まぁ、実際個人差があるから一概にどうとは言えないけど。実に曖昧で、それでいて一番自然なのが混血。




 それで、だ。私たち純血種はそれとは少し訳が違う。

 純血種はそのまま、お互いの因子がひとつも入っていない。


 まぁ、そのおかげで吸血鬼は光が苦手で吸血衝動があるし、純血は吸血鬼の因子に含まれている自然再生能力がないから回復が異常に遅いし、吸血鬼因子の毒気にすぐやられる。


 その他にも違いは色々ある。



 例えば吸血鬼の吸血衝動。

 ファンタジーではお決まりの展開だけど、あれは多少フィクションの力が加わっていて、今現在はそこまでじゃない。


 吸血鬼の世界っていうのは未だにちょっと古くて、貴族制度が残っている。


 王として頂点に君臨するのは一人、公爵位は純血だけ、その他伯爵などなど、血が純血に近いものほど爵位が高い。



 吸血衝動があるのは基本的に侯爵位を持つ者までだと言われていて、その辺に吸血されると起こるのが吸血鬼化現象。

 これは体内に眠っていた吸血鬼因子が活性化することによって起こるもので、私みたいな純血には起こらない。


 このまだ行儀の良いこの吸血鬼化現象とは違って、面倒なのはもう一つの吸血行動。それが俗に言う「喰種(グール)」を生み出してしまう。これまた面倒。


 さっきまでのは、侯爵位までが吸血した場合。それより爵位が低い、吸血鬼の血が薄い者が吸血してしまえば吸血鬼因子が活性化ではなく暴走して喰種になってしまう。そうなるとまぁ面倒くさい。


 喰種は吸血鬼の血が薄いことによって起こる、言わせてみれば暴発事故。だから血を求めて、手当り次第襲ってしまう。それこそ、人間だろうが、吸血鬼だろうが、動物だろうがお構い無しに。喰種は意思も持たないから言葉なんて通じないし、まず意思疎通なんて出来もしない。やめろと言っても、止まりはしない。


 喰種になったタイミングで、不思議なことに存在する全てのデータからその人間が消える。文字通り、記憶からも、書面からも、写真からも。何もかもから関係する全てが消える。


 そのおかげで、処分することに後ろめたさもない。


 否、無くなった。



 実は、これが聖ローズマリー学園が存在する理由でもあるんだけど、この学園の本当の目的はその「喰種化を止める」こと。更には「喰種の処理」。



 喰種化が起こるのは、その多くが学生の頃。また、純血に近い人ほど、その気に当てられる。


 吸血鬼の貴族爵位をもつその殆どが、社会でも一定の地位を得ているものばかり。

 というか、吸血鬼と人間のどちらもの純血を集めやすくするためというか。


 その規定で集めてしまえば、ある一定の層にいる者は全て適した環境で監視することが出来る。

 そして、ちゃんとした統治者の元に、支配することで暴走を止めることが出来る。


 そんなイレギュラーを正当化するためだけに、この地は治外法権が許されているって訳だ。


 こうやって考えてみれば相当バカバカしいけど、それが事実なんだから仕方が無い。

ともかく、私はそんなイレギュラーの中でしか普通になれない、一般社会でいう異端児になってしまった、って訳だ。




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