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京は怪異日和につき  作者: 神者拓
一日目・酒呑童子
2/10

怪異への第一歩

電車に揺られる事2時間、鬼岳稲荷山神社の最寄り駅に到着した。

京の街から少し外れるとすぐに大自然が広がり、街中のように建物や人が多くあるような場所はない。

しかし、そういった場所に住んでいる妖もたくさん居て、街にいるような妖とは違った生活をしている。

そういう妖を観察するだけでも十分楽しいが、今回は別の目的があるから抑えておこう。


「で、ここからどれくらいかかるの?」


「おおよそ4時間ってとこだな、そこまで道は悪くないとは思うが。」


本当にここが最寄り駅なのだろうかというレベルで離れている。

少し気が遠くなりそうな時間だが、ここまで来て行かないというのは無しだ。

問題は今が真夏で、この先の道沿いには休憩するような店もなければ場所も無いということだが・・・

幸い道の端には木々が生い茂り、近くは沢が流れているような道だ。

暑い夏の直射日光を防いでくれる為、無理さえしなければ暑さで倒れる事はないだろう。


「水分を多めに持ってきておいてよかったー。」


「こんな所に自販機とかあらへんやろうしなぁ。」


いつものように駄弁りながら道を登っていく。

周りは自然に溢れている為、どれだけ登っても遠くが見えるということはない。

逆に言うと、ここまでの自然が現代に残っているというのは、この地が守られてきたという事である。

もっとも、不必要に土地開発をするとその地に住まう妖たちが怒って邪魔をしたり、下手したら呪われるといった事があるようだが。


「そういえば今登ってる山って、あの大江山なんだよね。」


「そうだな。」


京の北部に存在する山、大江山は妖の話が多く残る山である。

陸耳御笠という土蜘蛛がいたという話もあるが、有名なのは酒呑童子だろう。

都に来ては略奪の限りを尽くし、頼光率いる頼光四天王によって退治されたという話だ。

今でもその話は語り継がれているし、酒呑童子に関係のある話も日本の各地に残っている。

その有名さからか、三大妖怪と呼ばれる程の鬼である。

そんな鬼が根城にしていただけあって、妖の集まりやすいような山なのだろう。


「さすがというか、めちゃくちゃ妖がおるな。」


「うん、さっきからすごい視線を感じる。」


2人もこちらをじっと見つめている視線を感じていたようだ。

どうやら、すでに周りは妖たちに囲まれているのかもしれない。

信仰されている神社に続く道だから人が珍しいという訳でもないだろうに。

木の上や草の影、沢の中といったそこら中から見られている。

というか、完全に見えている奴らもいるレベルだ。


「やっぱり街中の妖より、ちょっと可愛いよね。」


「俺から見たらそんなに違いはない気がするが。」


「えー、そんなことないよ。」


奈古がぶーぶーと言いながら違いを熱弁する。

街中にいる奴らと違って何をしてくるかわからないから、正直あまり目を合わせたくない。

本来、妖とはそういうものだ。人を化かすか人を食うか、そういう奴らを人は妖と呼んできた。

こういう人里離れたような場所にいるやつらなんて・・・


「なあ、この先か?鬼岳稲荷山神社っていうんは。」


さっきから俺たちの後ろを着いてきていた小さな妖に匡司が尋ねる。

すると、見られていることに驚いたのか慌ててどこかに隠れてしまった。

どうやら、見える人というのは彼らにとって珍しいらしい。

意外と臆病なのが自然の中にいる妖たちの特徴だ。見られていると知ったら逃げてもおかしくはない。

逃げなかったとしても正確に答えを返してくれるとは限らないのだが。


「ところで、もうどのくらい登ってるの?」


「もう3時間半くらいだな、もうすぐ見えてくるんじゃないかな。」


とは言うものの、消えたと言われている神社が見えてくる訳ないのだが。

少なくとも跡地のようなものくらいはあるのではないだろうか。

そんな楽観的な思いとは裏腹に、神社に向かっているはずの道が途切れていた。

いや、正確には舗装のされていない地面がむき出しの山道へと変わっている。

どこかで道を間違えただろうか、いや途中で曲がるような道などなかった筈だ。


「おいおい、本当にこの先か?」


「そうなんちゃうん?あんな一本道で間違えるわけないし。」


「だよなぁ・・・」


「どうしよう?」


幸い、まだ日は高い。それに、ここまで来て真偽不明というのは何とももどかしい。

俺たちは少し相談した後、このまま先へと進むことにした。


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