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新地へ

 

 始めに目に入ったのは、エルモとフェルモの二人が倒したギャング11人。

 この者達はオレの意識──魂の時だから、まだ殺されてはいなかった。

 ドンとしての命令では殺しの許可は出してはいなかった故に、命拾いした者と言っても良いだろうか。


 ロジータも、こいつらには手を出してはいないようだ。ただし半数以上はまだ意識を失っており、残りは辛うじて目は開いているものの、そのどれもが精神が飛んでしまっている。


 精神崩壊は、エルモとフェルモから与えられた物理的攻撃によるもの──と言うよりかは、その原因はロジータの趣味(・・)にもありそうだ。


 ロジータの趣味、それは──人体裁縫(・・)と人体解剖(・・)



「この短時間で5体もやったのか」


「だって死ぬなら綺麗が良いもの。可哀想よ、バラバラだなんて」



 オレの腕から離れたロジータは、段ボール箱の前に置かれたひとつの人(・・・・・)となった物を背後から抱き上げる。


 初めは段ボールひとつにつき1体ずつ、頭から脚まで関節毎にバラバラに切断されていた死体が入っていた。

 しかし今ロジータが抱き上げたのは、元の形に戻された死体。


 趣味である裁縫。


 斬れたら胴体は特殊な糸で縫い付けられ、完璧なまでに復元されていたのだ。

 だがいくら縫って復元しようが、死体が生き返る訳ではない。抱き上げた死体はだらりと垂れ、まるで上から吊るす手板と糸を無くした操り人形のよう。


 褒めて欲しいと言わんばかりに、ロジータは血塗れの死体を抱いて満面の笑顔を浮かべる。



「上手に出来たでしょう!」


「ああ、上手だ。治してもらえて、その人達も喜んでるよ」



 これは本心でもある。バラバラよりは綺麗な方が良い。

 だがこれで終わらせないのが、ロジータ・ベルテ。人体裁縫と人体解剖が趣味の時点で、この少女も同じく狂った人間なのは間違いないが、5体の死体を円を描くように並べ──当然ながら死体は自立して座る事は不可能──その為に上半身は腰で折れる形。


 その円の中に、唯一生きるロジータが混ざる。

 作られた空間は、死体と1人の少女で出来た()家族──おままごとが開始された。


 ロジータは死体を本当の人形のように扱い、楽し気に声を出してそれぞれの役割を与える。

 それはどう見ても異様な光景でしかない。



「相変わらず悪趣味だな」



 死体とおままごとを始めるロジータを見て、フェルモが理解不能といった声を上げる。

 それには同意を示すよう、小さく頷く。



「ロジータちゃんは何の役?」



 エルモも興味があるのか、或いはただ単にロジータに絡みたいだけなのかは不明だが……いや、きっと後者だな。ロジータに話し掛けて笑っている。



「あたしはお姉ちゃん! エルモなら犬役しても良いわよ? あ、ドンはあたしの旦那様ね!」


「遊んでる場合じゃない、帰るぞ」



 早いところこの廃工場敷地内を出て、警察と救護の者を呼ばなくてはならない。

 その時にオレ達が見付かっては少々面倒だ。


 オレにはやる事が出来た。それには時間が掛かるだろう。

 いずれこの狂った部下達もどうにかしたいが、今は利用し裏社会を生きる悪党を、裏の人間が破壊する。

 こんな身体になったんだ、そんな生き方もありかもしれない。


 ただ本体の魂──チェルソが表に出てしまった場合、この計画がどうなるか。

 チェルソと魂が交代された時、オレは内側から外の様子がわかった。で、あれば──今のこの光景はチェルソも見ている筈。


 ──お前はオレの考えをどう思う? チェルソ・プロベンツァーノ。部下を利用し、更にはお前の造り上げたこの組織もいずれは破壊してやろうと思うこの考えを。お前はそれを阻止するか? それとも……新たな生き方を受け入れるか?



 振り返るとそこには部下が3人。

 ちゃんと後ろを着いて来ているのを確認し別荘兼、避難場となるオレが始めに目覚めた場所へと向かい歩き出す。







「チェルソ・プロベンツァーノ発見」



 廃工場から1キロ離れた所に、建物の屋根の上からスコープ越しにチェルソ・プロベンツァーノを覗く若い男が居た。

 手には重厚なライフルが握られ、スコープから見える十字線の中心にはチェルソの頭部。


 狙いを定めると、ライフルを握る男の指はトリガーに掛けられる。



「ひひっ俺様今なら殺せちゃうかも」



 口元を歪ませ笑うと、ペロリと舌で唇を舐める。

 確実に撃ち抜けるように、十字線はチェルソの額が選ばれた。

 トリガーに掛かる指は徐々に力が増し、ゆっくりと始まるカウントダウンの声。



「3……2……1……ド────ン! なんちゃって、ドンだけに! ひっひゃはははははっ!」



 トリガーに置く指は最後まで押し込められず、代わりに若い男の声が射撃発射の音を真似る。当然ながら、ライフルから弾丸も飛んではいない。

 男は一人、屋根の上で笑い転がり回る。


 そこへもう一人、ライフルを構えていた男と似た顔の者が現れる。

 目は半分しか開いておらず眠たげな印象を与え、印象そのままに眠たげな声で転がり回る男へと口を開く。



「教えて上げるよ、兄さん。それ……全然面白くない」


「ひゃははは……え?」



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