TIPS1 ゲームを楽しむための仕掛け
今起こっていることを少しだけ外側から教えてくれる。
でも神なんて万能じゃない。
一分の奇跡を信じる普通の人。
それにやるべきことはなんとなくわかっている。
この世界について私が知る限り話をしよう。
まずは全世界同期型立体映像出力装置(WSSIOD=ウィズィオド)について。
これは最大で30cm立方体に収まるくらいの大きさで重さも1kgないものの世界の景色を一変させた装置だ。
ARと連動した立体映像を映し出すことができ、ゲーム以外にも広告やライブで役に立つ。まあ要するにエンターテイメントさ。
この時代になるとこういった産業の伸びが著しい。
そんなWSSIODを開発したのは米国に本社を置く国際的なコングロマリットのパンゲア社。
IT分野を中心に2040年以降急成長を遂げて今ではほぼ全ての人が知ることになった超大企業だね。
時価総額も世界3位まで上り詰め、10年後は頂点に君臨しているとまで言われている。WSSIODを娯楽に留めずインフラの領域まで推し進め、今やAR・MR分野を実質の独占したと言っていいだろう。
ちなみに大人気ゲーム「ROAD」を開発運営しているのはパンゲアの子会社だ。
ここまでは未来がどんどん変化していくようで目を光らせてその進歩を眺め、関わっていたんだが問題が起きた。
そう、REGULUSの暴走だ。
これによってWSSIODも全てその支配下に置かれ、モンスターが街中を制限なく闊歩するようになってしまった。
あくまでゲームの幻だからいい、なんてのんきなことは言ってられない。どういう訳かROADに関連した影響は現実でも受けてしまう。
これを見てくれ。
あざになっているだろう?先日ゴブリンにやられたんだ。まあ返り討ちにしたけどさ。
本当は物理的に攻撃なんてされていないはずなんだが脳が攻撃されたと認識してしまったんだ。
この技術は完全にアレだな。
「新・世界システム計画」の偶然の産物。
今となっては偶然なのか必然なのかも分からんがね。
この計画は電子基板脳間無線接続ネットワーク(BEBWICON=ビブワイコン)を完成させるために39年前に発足、2年前に数多の影響が危惧されて凍結したはずだったんだがどうやら例のAIにデータが盗まれてしまったらしい。
電子上のデータと人間の脳を無線で接続する夢のような技術だがこれが悪用されてしまった。
ROADに人間の意志が引きずられつつあるんだ。
だから痛みを感じることもあるし、ほら。こんな花見たことないだろ?ゲーム限定の花なんだがかすかに触った感触がある。薄い薄いカーテンに触れるような感触だがこれからが問題だ。
そう、われわれの脳は刻一刻とROADと現実との区別がつかなくなっているんだ。私はこれを複合現実融合強度(MRFS)と呼んでいる。
今はまだ最低レベルのクラス1ってところかな。だから余裕はあるしあーあれはゲーム内のモンスターなんだなーって俯瞰して眺めることもできる。恐怖もそれほどない。
まあ比較なんてできないんだからあくまでこの格付けは便宜上さ。
今回はこれくらいで終わっておこう。
まだまだ話し足りないことがあるんだがまだ私にはやらなければならないこともあるんでね。
それに皆も‟あの子”がとんでもないピンチを迎えているからそっちの方が気になってしょうがないんじゃないのかな。
では。
定期的に知っていることをこれからも話そうと思う。