第一話 変わる世界と洗礼
初投稿
1週間前、次世代量子型コンピューター搭載のAI「REGULUS」が暴走を起こした。
仮想現実(AR)ゲームの「ROAD」が世に出されてすぐに爆発的なヒットとなり、全世界の過半数の人間が少なからずプレイをしていた。
REGULUSの暴走はROADを人間の制御から外し、ブロックチェーンが浸透しきった世の中のあらゆる電子制御機器の中にゲーム内の要素を圧倒的な演算能力によって組み込み、まるで新しい世界を構築してしまった。
ROADに登場する生物もNPCもボスもやがては昔からこの地球にいたような振る舞いをするようになる。
ROAD内で扱われていたのは仮想通貨(暗号通貨)。
ガイアという独自の通貨がゲームを有利に進めるために必要不可欠だった。
ガイアは報酬としても受け取ることができるし、現実世界の他の仮想通貨と交換する形で入手可能。これは暴走後でも使用でき、使用できる機会も範囲もROADの浸食に比例するように日に日に増していっている。
そんな世界の豹変を味わっている一人が如月というプレイヤー名で以前のROADを楽しんでいた青年。
如月の祖父は黎明期に今では主流の基軸通貨となった幾つもの種類の仮想通貨を手に入れていた。それらは彼の息子、如月の父に譲られた。
ただ、その父は3か月前から行方不明となり、置き土産のように如月に彼の持っていた仮想通貨を大量に残している。
ガイア換算で全プレイヤー中27位の資産を持つことになった如月はもしかすると1分後には塵になっているかもしれない。本来はレイドボスとして登場するはずの「4つ手の大鬼」が目の前に現れてしまったのだった。
ゲームの敵であるはずなのにその重量も生命力もしっかりと伝わってくる。とてつもない恐怖も。
でも勝機はある。
妖刀ー八岐大蛇ー。
複数の貴重なアイテムを必要とし、作成時に莫大なコストがかかり、扱うためにはプレイヤーも高ランクにならなければならないことからほとんどのプレイヤーが作れずにいた。
ただ、如月は手に入れる条件を全て満たしている。
属性が有利なわけではない。ただ、相性なんて些細なものでしかないと言っているかのような型破りな武器が八岐大蛇だ。
隙を見せればゲームオーバー。防御スキルとシールドを展開してもなお不安が残る。目の前の敵は中級者10人がかりで倒せるかどうかの強敵だが彼はこの刀とこれまでの経験を信じ構えの体勢に入った。