人類は滅ぼすことにしました
「人類は滅ぼすことにしました」
G7、主要国首脳会議の会議中、突如光輝く何かが現れそう告げた。
「え、ええ?」
戸惑う出席者たちを前に、光輝く何かは続ける。
「人類は、他の生物たちにとって脅威でしかない。ですので今すぐ滅ぼします」
「な、なぜこの場でそのようなことを」
「あなたがたが人類の代表であるからです。神託は終わりました。さあ、滅びなさい――」
その瞬間、世界中の人類が一斉に消滅した。
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「あ、あれ?」
消滅した、気がしたのに会議場の面々はそのまま。
「どういうこと?」
首脳同士は顔を見合わす。
そしてまだそこに普通にいる光輝く何かに首を傾げながら、聞く。
「ええっと、実は、滅ぼしたんだよね。そして1ヶ月くらいは経ったんだけど」
その光輝く何かは困ったように話し出した。
「なんか発電所? ってとこが爆発して、そのあとなんか生き物がばたばた死にだしたんだよね。ただ爆発するだけのとこがほとんどなんだけど、たまにすごい毒出るとこがあるんだけど。あれなに?」
首脳たちは、ああ……といった表情でまた顔を見合わせた。
「とりあえず神の炎で焼いてみたんだけど、毒消えなくて。お前たち人間の文明が怖くなってあちこち焼いてみたら、変な爆弾?みたいなのもあちこちで爆発して、世界自体が滅んだんだけど」
首脳たちは理解した。
この神様らしきものは、全然科学的知識や対処能力ないんだ……と。
「ええと、世界が滅んだ、と言われましたが、今いる私たちはどうなっているのでしょう」
「あっそれそれ。人類を滅ぼす直前まで時間を巻き戻したのだ。
この場にいる人類の代表たちに命令をする。
また来年人類を滅ぼしに来る。それまでに、あの毒物と爆弾を消し去りなさい――」
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「……神様?は、いなくなりましたけど…… どうします?」
「どうしましょう…… 滅ぼすという能力は、本物なんですよね?」
「神なのは本当なんでしょう…… ああ、我々はどうすれば」
「核をなくしたら滅ぼさない、じゃなくて、なくなったら滅ぼすんですよね?」
「滅ぼさないのほうであっても、来年までは無理でしょう」
「むしろ放置しておけば、来年も滅ぼされないというわけだ」
「そもそもロシアもイスラエルも中国もいない会議でどうしろと」
「…………」
そして、一年後のG7。
「全く減ってないじゃないですか! むしろ増えてる」
「いやあ、あの発電所を消すのは大変で。今その技術者を増やすために学習用の施設を増やしているところなんです」
「あの爆弾も分解が大変で。まず作れる人材がいないと分解することもできないので作る練習をしています」
「なかなか滅びる準備ができなくて、本当申し訳ないですー」
「……また来年来る」
という訳で、世界から永遠に原子力発電所と核兵器が失われる日は来ないのである。
もちろん、人類も。
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コメディーだよ!