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繋がる。


「つぶちゃ~ん。」


玲の声に我に返ると玲はだいぶ前に進んでいました。


「大丈夫?疲れた?」


私を心配そうに覗き込む玲の顔は私なんかよりずっと、ずっと汗だくのどろどろです。私はリュックから凍らせたペットボトルを取り出し玲に渡しました。


「うわぁ。つぶちゃん、準備がいいね。ありがとう。」


「私じゃないよ。ママが持たせてくれたの。」


「そっかぁ。」


玲は感心した様子を見せながらも忙しなくペットボトルの蓋を開け、溶けた中身を飲むと氷の塊の入ったペットボトルを襟から背中に差し入れました。


「うへぇ。冷たい!でも、すごく涼しくなる。つぶちゃんもやってごらんよ。」


そう言う玲の背中を見ると、裾に入れ込んだTシャツがボトル型に膨れていて不恰好です。


「私は嫌。」


「なんだぁ。涼しいのになぁ。それにきっとすぐ溶けて美味しく飲めるよ。」


玲には言いませんでしたが、私はリュックを背負っているので充分涼しいのです。そんな事にも気付かない玲。いつでもどこでもお気楽な玲はいつもの事です。気にせず私はリュックから自分の分のペットボトルを取り出し、蓋を開け、溶け出た中身を飲みました。ひんやりと冷たい液体が体を流れていきます。


「じゃ、行こうか。つぶちゃん。」


「うん。」


玲が私の飲み終わりを確認してから合図をかけ、また二人で自転車を漕ぎ出しました。図書館に着くと莉那と香織が走り寄ってきました。


「まどか~、吉井、おはよう!!」


「おはよう!!」


「吉井、背中びちゃびちゃじゃん?」


「あっ、これ?つぶちゃんに貰ったペットボトルが入ってるんだよ。飯村と岸本も飲む?冷たくて美味しいんだよ。」


「いっ、いらないよ。」


襟から手を入れ、びちゃびちゃのペットボトルを出してきた玲に引き気味のふたり。玲はイタズラっぽくニヤリと笑って


「なんだぁ。残念だなぁ。美味しいのに。それよりさ、飯村と岸本に大ニュースがあるんだよ。」


「えっ、何?」


ふたりはあまり興味無さそうに尋ねました。お構い無しにひとり盛り上がる玲。


「な、なぁんと今日、たぶんつぶちゃんが携帯電話デビューしまーす!!」


「えーっ?!」


莉那と香織、ふたりの目の色が一瞬で変わりました。


「本当に?じゃぁ、みんなでライン交換しようよ。」


「いや、つぶちゃんの携帯、まだ携帯電話ってだけでスマートフォンを買って貰えるかは分からないんだ。」


「そうなんだ。じゃぁ、アドレスと携帯番号まどかに教えておくよ。とにかく暑いから中に入ろう。」


ラインにアドレスにスマートフォン。私にはよく分からない言葉が飛び交います。莉那と香織はメモ用紙にササッと電話番号とメールアドレスを書いて渡してくれました。


「まどか、これ私たちの番号とアドレスね。」


「ありがとう。」


「ちょ、ちょっと待ってよ。僕のも。」


玲が私の手の中のメモ用紙をひったくり、慌てて書きなぐった番号とアドレスが書かれたメモ用紙を手渡して来ました。


「スマートフォンだといいね。そしたらみんなでトークルーム作ろうよ。」


「そうだね。楽しみ。これからは会ってなくても繋がれるよ。」


トークルーム、会ってなくても繋がる。いまいちピンと来ません。


「あのさ、よく分かんないんだけど、そんなに便利なの?めんどくさくない?パパやママにすぐ捕まっちゃうとか。」


私は思い付いた疑問をそのまま口に出しました。

3人は顔を見合わせて、数秒何かを考えるような表情をしたのち笑い出しました。


「あははっ。心配事はそこかぁ。確かにどこに居ても捕まるね。でも、あるとすごく便利だよ。」


「例えばそうだなぁ。」


玲は腕を組み考えるような仕草をしてからすごく良いことを思い付いた様な顔をして言いました。


「手のひらサイズの自分だけのパソコン!!」


パッと私の中にパパのパソコンで本の虫を検索した日の事が思い浮かびました。パソコンは余り触らせてもらえませんが便利なものだと言うことは分かります。


「それ欲しい!!」


自分の中に欲望が沸々と沸き上がりました。


「言うと思った。」


玲は待ってましたとばかりに話し出しました。


「つぶママには絶対にスマートフォンがいいですよって勧めておいたよ。だけど、つぶパパには言ってない。僕がつぶパパに勧めたら却下されそうな気がしたから。」


「今日、携帯を買いに行ったのは誰なの?」


莉那が先を急ぐように質問します。


「・・・・・・パパ。」


間をおいて私が答えると香織が


「じゃぁ、難しいかなぁ。」


落胆した様子を見せ、『そうだねぇ。』と他の3人で声を揃えました。


「けどさ、携帯が買ってもらえるには変わりないよ。つぶちゃんと電話とメールが出来る。」


みんなの落胆を押し退けるように玲が言いました。


「そうだね。簡単に連絡が取れるようになるし。」


香織と莉那も明るく言ってくれます。私は


「そうなんだ。メールはしたことないから楽しみかも。」


と言いながらも心の中ではスマートフォンが欲しくて何だか気が気じゃありませんでした。その日は、玲と莉那、香織の3人から携帯電話レクチャーを受け、どんなに便利なのか教えて貰いました。特に香織に借りて莉那としたラインのやり取りはとても楽しくてこれが家でも出来たら楽しいだろうなぁと思いました。


あっという間にさよならの時間が来て玲とふたり、また自転車で帰りました。途中、休憩にと座ったベンチで玲が私に言いました。


「つぶちゃん、やっぱりスマートフォン欲しいよね?」


「うん。」


私は正直に言いました。玲は真剣な顔で


「もしもスマートフォンじゃなかったら、僕がつぶちゃん家に行ったとき僕のスマートフォンを貸してあげるから莉那や香織とラインするといいよ。もちろんネット機能も使っていいし。」


「私は与えられた機種で我慢するよ。玲のを借りちゃったら玲が出来ないし。みんなでやれなきゃつまんない。でも、ネット機能はたまに貸して。」


正直な気持ちを打ち明けると玲は笑って言いました。


「そうだね。それにつぶちゃんが一番使いたいのはネット機能だもんね。」


私の心を見透かしたように言う玲がちょっと憎たらしくて、私は無言で自転車に跨がり走り出しました。それに慌てた玲がよろけながら自転車を走らせついてきます。


「つぶちゃん、待ってよ~。」


「やーだー。」








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