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まどかの王子様。


そんなわけで初恋に敗れた私は、ママの読んでくれる絵本に夢中になりました。絵本に出てくるお姫様は見目麗しく、王子様は聡明でふたりの間にどんな困難があろうとも乗り越え、やがて出逢い結ばれるのです。絵本の中の素敵なハッピーエンドに胸を躍らせ私はママに毎日、絵本を読んでもらいました。


その隣にはよく玲くんが居ましたが、私はもうあまり玲くんには関心がありませんでした。玲くんは玲くんでひとりっ子なので歩いて3分の同じくひとりっ子の私のお家はちょうどいい暇潰しになったのでしょう。それにウチのママは玲くんに甘々で絵本を読んだあと必ず美味しいおやつを出すんです。


「玲くん、まどか、おやつにしましょう。さあ、どうぞ。今日はドーナツとミロね。」


ママは玲くんがウチでおやつを食べるとき、私よりちょっとだけ多めに出します。今日は、ドーナツの大きさは一緒だけど、ミロの入っているマグカップが私のより一回り大きい。パパのマグカップです。まぁいいんですけど。


「うわぁい。つぶちゃんママ、ありがとう。」


そう言って玲くんは、目を輝かせおやつの乗せられたテーブルに走りより


「いただきます。」


と手を合わせ、あっという間にペロリ。

綺麗に平らげました。

これでママのハートはイチコロです。


「やっぱり男の子はいいわねぇ。早くまどかをお嫁さんにしてね。」


「うん!!」


「やっぱり玲くんはまどかの王子様よね。」


「そうだよ。つぶちゃんは僕のお姫様。大きくなったら僕らは大きなお菓子のお城を建ててふたりで仲良く暮らすんだ。」


ママは玲くんにデレデレで玲くんは、そんなママに調子良く合わせます。とばっちりを受ける私。最悪です。私はお姫様だとしても、玲くんみたいな王子様とは困難なんて乗り越えられそうにないし、お菓子のお城なんて作ったら、余計に丸々しちゃうでしょう。冗談じゃありません。私にだって選ぶ権利はあるのです。


これは、玲くんに口止めされている私と玲くんの秘密なのですが、玲くんはお家に帰ってからも玲くんママの出してくれるおやつをやっぱりペロッと平らげるそうで。そりゃ丸々してくるはずです。


不思議な事に玲くんは天使の様な外見からどんどんかけ離れて行くのに回りの大人はそんな玲くんを可愛い、可愛いと褒めちぎります。時には熊さんみたいとまで。もはや人間じゃありません。動物です。


私はウエディングドレス姿で、熊さんと一緒にお菓子のお城前に立つ大人になった私を想像してプルプルと頭を振りました。そして大好きなシンデレラの絵本を持ってママと玲くんの座っているテーブルへ行き、舞踏会のページを開きふたりに見せ、王子様を指差し言いました。


「違う。」


ふたりは意味が分からないようでポカンとしています。

やがてママが言いました。


「そうね。玲くんじゃないわね。でも、安心して。まどかの王子様は玲くんだから。」


それを聞いて玲くんはへへへっと笑っています。

私の真意は全く伝わりませんでした。


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