ネット小説。
2週間にいちどみんなで読む私の小説は意外なほどに好評で特に莉那と香織のふたりは毎回「面白いね。」と言ってくれました。活字がもともとあまり好きではない玲も一生懸命に読んでくれるので俄然やる気が沸いてストーリーはどんどん進んでいき、やがて終わりを迎えました。
「終わっちゃったね。私、この小説好きだな。」
「ありがとう。」
莉那が褒めてくれて少し恥ずかしかったけど、とっても嬉しい気持ちになりました。
「ねぇ、まどか。このサイトにまどかの小説上げてみない?せっかく良く出来てるんだし、私達以外にも読んでもらおうよ。」
香織が差し出したスマートフォンの画面には小説の投稿サイトが表示されていました。登録して投稿すれば誰でも小説家のような気分を味わえるサイトです。
「やってみたいかも。やる!!」
私はひとつ返事で登録を決めました。自分の書いたものが受け入れてもらえるか知りたかったのです。
「じゃぁ、タイトル決めなきゃ。」
玲に言われて小説のタイトルが無いことを思い出しました。これは簡単です。自分の中で決めたタイトルがありました。
「放課後の美容室にしようと思うんだ。」
「放課後の美容室かぁ。」
「放課後の美容室。」
「いいんじゃない?何かちょっと読んでみたくなるかも。」
「そうだね。」
4人で口々に語り合い、小説のタイトルは放課後の美容室に決まりました。私は、早速自分のスマートフォンで登録をして、ノートに書いた小説をだいたい3000字程にザックリ分けてスマートフォンの画面に打ち直し、投稿をしていきました。初日、午後9時に投稿して閲覧者8名。その翌日は10名。なかなか閲覧者は増えません。
『続けて行けばきっと誰かの目に止まるよ。』
『頑張ろう。』
『とりあえずは放課後の美容室の全文を載せていってみよう。』
3人に励まされながら毎日更新を続けていきました。いちどノートに書いたものをスマートフォンで打ち直すのはなかなかに大変な作業です。途中、面白いと思われないから閲覧者が増えないんだという思いで更新がストップしそうになりました。ところが8話、9話、10話と進むうち少しずつ変化が起きました。ブックマークが2つ付いたのです。読んでくれている人がいる。それを知れただけで俄然やる気が沸きました。くる日もくる日も投稿を続け30話。今日で最後の投稿です。最後の投稿はみんなに会う土曜日に決めました。
「まどか、頑張ったね。今日で最後の投稿かぁ。気分はどう?」
「うん、やりきったって感じかな?正直さ、人の目に留まるって難しいんだなって思った。みんなは私の友達だからストーリーを面白いって贔屓目に見てくれるじゃない?私も自分で自信作だって思ってたし。でも、現実は厳しいんだなって身をもって知りました。いい経験だよね。」
「僕は面白いと本当に思ったよ。漫画しか読まない僕が言うんだから間違いない。」
「うん、私達も本当に面白いと思ったよ。」
「ありがとう。じゃぁ、ラストのお話送信するね。」
「うん。」
午後3時、図書館の談話室でスマートフォンを取り囲み、最後の送信ボタンを押しました。4人で最後の投稿を見届けます。
「完了!!」
「お疲れさま!!」
「僕がみんなにご馳走するからジュースで乾杯しようよ。」
「うわぁ。ありがとう!!」
玲の粋な計らいで自販機のジュースで乾杯をすることにしました。ささやかなお祝いです。
「乾杯!!」
アルミ缶を打ち鳴らし、4人で飲んだ缶ジュースはとても美味しくて忘れられない味になりました。
「じゃぁ、またね。」
莉那と香織と別れ、玲と自転車で帰る間も不思議と心は満たされ達成感で一杯でした。