私のコト。
はじめまして。つぶらやまどか16歳です。
漢字で書けば上から読んでも下から読んでも
円谷円
どうでもいいですね。
すみません。
肩書きは女子高生。
もうひとつの肩書きは恋愛小説家。
恋愛経験は1度しかありません。
幼稚園でお隣の席だった吉井玲くん。
お父さんがイギリス人で色素が薄く、色白で栗色の柔らかな髪がふわふわクルクルとカールした様はまるで天使のようでした。純日本人顔の私にはそんな吉井くんが眩しくて、『玲くん』と呼んでいつも側にくっついていました。玲くんが物珍しく美しく見えるのは他の園児も同じで数多の女の子が寄ってきましたが、幼いながらに私は玲くんの隣を誰にも渡しませんでした。そんな私の努力が実り玲くんは私を好きになってくれました。
「つぶちゃん、大人になったら僕と結婚しようね。」
「うん。玲くん約束だよ。」
「もちろんだよ。つぶちゃん。」
玲くんは、私の苗字の円谷からつぶを取ってつぶちゃんと呼んでくれました。名前の円ちゃんじゃないところが特別な感じがして子供ながらに嬉しかったのです。でも、私は吉井くんをよしくんとは決して呼びませんでした。お名前の玲くんの響きがとっても、とっても素敵だったからです。
つぶちゃんと玲くん。
幼稚園生活は薔薇色でした。
若干3歳にして、初恋の玲くんとの恋が実り、将来を約束し、毎日を共に出来たのです。幸いな事に私と玲くんのママも仲良しのお友達で私達の将来を歓迎してくれました。ただひとり大きな壁になったのは私のパパでした。
「結婚の約束なんてまだ早い。まどかはまだまだパパのものだよ。」
ママから私と玲くんの仲良しぶりを聞いたとき、パパは大慌てでよく言ったものです。その度に私はパパに言いました。
「パパのお嫁さんはママでしょう?まどかは玲くんのお嫁さんになるの~。玲くんとも約束したし。」
しょんぼりするパパを見てちょっと可哀想だとは思いましたが、パパとのそんなやり取りも私の気持ちを盛り上げてくれました。
なのに、なのに、なのに玲くんはおやつに目覚め、食いしん坊になり、みるみる大きくなって天使のような面影が薄れ、それと同時に私の恋愛感情だと思われた感情はみるみる萎んでいき、やがて見えなくなりました。玲くんは私にとってただのお友達になったのです。酷だと思うでしょうが、3歳児の恋愛感情なんてそんなものです。思いっきり見た目重視です。玲くんはそんな私の心変わりに気付かず私に付いて回りました。完全に立場逆転です。