変な客
もう、10年ほど前になる。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━俺の住む村は、名をクルサーガ村と言い総人口98人の小さな村だった。何も無くても人は、優しく、水も空気も綺麗だし住めば都と言う言葉を体現したような場所だった。
ある日の暮れの事、
俺は実家が宿屋をやっていたからその手伝いで買い出しに出た帰りの事だった。いつものあぜ道をいつも通りに自転車を回して帰っていた時。
「なぁ少年何を運んでいるのかね」
フードを深く被った女の人が話しかけてきた。
「家、宿やってるんで明日の仕込みの買い出しに」
「そうか、少年の家は宿をやっているのか」
「そうですけど、」
「それはちょうど良い!その宿に案内してはくれないか?」
「良いですよ」
どうやら、宿を探しているようだが旅の人だろうか?それにしても日も沈みかけてるこの時間に宿探しとは、ちゃんとお金持ってるのだろうか?
「少年!後ろ乗るぞ!」
「えっ?!」
有無も言わさず大量の食材の乗った荷台の隙間に器用に入り込み
「早く出発せんかー少年よ!」
全く変な客だ。そして、重い。このまま坂道が続く道を三十分…やばいな。太ももがご臨終してしまう。
「あの~すみません。坂が続くので、失礼とは思いますが…」
そこまで言った時点で察してくれたのだろう。
「うるさいな、私は降りないぞ少年よ」
そう一言、言い捨て荷台で寝始めた。
一回は、捨ててやろうかとも思ったがそんな事、出来るはずもなく…自転車を一時間必死で漕ぎ続けた。
「お客さん…着きましたよ」
「んっあああ…ようやく着いたか、遅かったな」
眠そうに起き上がると荷台から飛び降り
「少年よ早く行くぞ!」
「すみません、自分厨房に荷物運ばないと行けないんで、」
太ももご臨終してて動けねーんだよ!察しろ!
「なんだ、つまらぬ少年だな」
「すみません、そこはいると直に受付があるのでよろしくお願いします。」
ふぅーようやく開放される。
「じゃあまた後でな!少年よ」
取り敢えず、俺の仕事は終わったし部屋戻るか。
「親父ー買っといた奴、冷蔵庫入れといたから」
俺はそう一言だけ言いそそくさと部屋に戻った。
「はぁーーーーー」
ベッドに仰向けに寝っ転がり今日一日を振り返ると溜息がでてきた。
「変な客…」
飯前だというのに疲労のせいか少し眠くなってきた。
「おい、涼助!寝てんのか!お客様のお食事の時間だぞ」
やばい忘れてた。
「今行く!」
階段を駆け下りたらブチ切れた親父がいた。
「テメー腑抜けてんのか!」
「すみません!直に着換えます。」
「さっさとしろよ!」
急いで着換えを済ませて料理を板さんの所に取りに行くと
「この部屋、涼君ご指名だから持って行ってくれる」
家の宿、指名なんてあったのか?大体予想はつくが
「はぁ…分かりました」
「すみませんー御夕飯をお持ちしました」
襖を開けると見覚えの無い銀色の髪をした顔立ちの良い女の人が座っていた。
「誰?」
「誰?とは、失礼だな少年」
マジか…