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自分の中学・高校の頃の話をする

 

 僕自身の話でもしようか。


 小学生の頃、僕は優等生だった。クラスで三番目に勉強ができた。中学になった時はまだ優等の部類だったが、高校になると下から数えた方が早くなった。


 中学の頃の友人にT君という人物がいた。眉が太くて体毛が濃くて、お調子者だった。一度、T君と一緒に廊下を歩いていて、はめられた事がある。僕は本を読みながら歩いていた。T君は僕の少し先を行っていた。T君は教室の戸を開けて僕だけを中に入れた。僕は本を読みながら教室に入ったが、教室の半ばまで来て、異変を感じてふと顔をあげた。そこは女子が更衣している教室だった。僕は赤面して、さっさと教室を出た。


 今から考えればその時、咄嗟に女子の下着姿でも目に焼き付けておけばよかったのだが、不思議に一つも覚えていない。ぱっと周囲を見渡して、更衣中だと気付いたのでうつむいて急いで外に出たのだと思う。よく漫画にあるような「キャー」という黄色い声もなかった。特に問題になる事もなかった。


 高校になると、T君は進学高校に行った。僕は平凡な公立高校に行った。T君は確か、医者の息子で金があったのではないかと思うが、おぼろげな記憶だ。高校生になってからT君と再会した事がある。中古ゲームショップだった。T君は僕に学校の成績の事を聞いてきた。中学の頃はT君とは成績で競っていた仲だった。高校に入ると僕は学校の勉強など馬鹿らしいと感じていたので、未だに成績に固執するT君を幼稚に思った。しかし、T君から見れば僕の方が幼稚だっただろう。僕の方がT君より遥かに成績が劣っていたのだから。


 僕は、中学から徐々に、高校では輪をかけて、読書を通じて自分の世界に閉じこもっていった。世界の退屈さが身に沁みていた。それに比べれば、書物の世界は大きく広がっていた。


 その頃、僕にとって疑問だった事が一つある。それは「どうして現実はこんなに退屈なのに、書物の世界はこんなにおもしろいのだろう?」というものだった。そのギャップの意味がその頃、納得できなかった。


 後から、僕は自分なりの答えを見出した。「書物の世界を広大に押し開いた人は、実は現実に退屈さを感じていた人なのだ」と。それは僕にとっては発見だった。世界が大きく回転したかのような感じだった。現実に退屈を感じていた人がやむなく発見した道、それがフィクションとなって僕達の前に現れる。書物の面白さはまさに、現実にうんざりしていたからこそ現れたのだ。僕にとってそれは大きな発見だった。


 しかし、それだけではまだまだ色々なものが足りなかった。僕は人生の中で色々な事を学ばなければならなかった。


 高校の頃に話を戻すと、その頃からようやく、周囲に少しずつ順応する事を覚え始めた。中学生の時は、本能で生きているようなものだった。ちなみに中学の男子ほど愚劣で醜悪なものはこの世にはない。女子にもそういう時期があるのだろうか。


 さて、そのような義務教育を終えたわけだが、そこで僕が理解した事、学んだ事はほとんどゼロに近かった。誰も何も教えてくれないという感じだった。その後、大学に入るのだがーーまあ、大学に入ってからの話はまた今度という事にする。ちなみにここで書いた事は全て実話だが、読者はこれがフィクションだと疑う権利を有している。最終的には読者は、ここで書かれたものが実話であろうと嘘であろうと、全く同じ事だというのに気が付かれるだろう。僕がこうして自分を語ったのは読者がその地平線でこの文章を読むのを期待しての事である。もしそういう読み方をしないのであれば、この文章にはそもそも大した意味がないという事になるだろう。もちろん、読者に読み方を強制する事など、どんな作者にもできないのであるが。

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