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ルイと戦ったことを冥府で誇るがよいぞ!


「――覚悟しなさいっ」


 麗は、風のように長剣を振り下ろしたものの、「こちらのセリフですっ」という激しい声音と共に、がっちりと女戦士に受けられてしまった。


「小癪なっ」


 麗はすぐに間合いを取り直し、二度三度と相手に襲い掛かる。

 その度に相手は綺麗に麗の剣撃を受け止め、しかも、隙あらば即座に反撃に出てきた。おまけに、手にしている武器はどう見ても魔剣である。


 鮮やかな赤い光芒が剣全体を覆い、いかにも切れ味がよさそうだった。


「くっ」


 敵の突きを大きく飛び退いて避けたものの、避けきれずに少し脇腹を掠ってしまった。

 その時点で、麗は気付いた……気付いてしまった。


(エイレーンとやらのこの肉体、元の麗の身体とは、全然違うっ)





「体格が大きく違うわけでもないのに、反応がこんなに鈍いなんてっ」


 体重など感じないほどの、いつもの麗の軽やかな動きと違い、ポゼッション中のエイレーンの肉体は鈍重であり、あらゆる意味でワンテンポ……いや、ツーテンポは反応が遅かった。


 しかも、麗よりだいぶ体力に劣るのか、何合か斬り合っただけで、早くも息切れしてくる始末である。


「なんてことっ。軍人のくせに基礎体力がなってないわ!」

「あらあら……ポゼッション中の肉体のせいにするつもりですかっ」


 剣と剣が激突し、鍔迫つばぜり合い中に、謎の女戦士は薄赤い目を細めて言ってくれた。


「実際、この肉体はハンデなの!」


 すかさず言い返し、麗は逆に問い返す。


「おまえ、何者なのっ。肉体的な不利を別としても、この麗とここまでやり合えるなんて」

「……天命に導かれて覚醒した、勇者の一人ですよ。リュクレールと申します……短い間になりましょうけど、お見知り置きを」


「まだ麗が負けたわけじゃないわっ」


 麗はまなじりを吊り上げ、一気に相手を押し返した。






 この時、潜んでいたUDXから駆けつけた九郎達が、駅前広場に走り込んできた。


「敵だ、新たな敵が現れたぞっ」


 たちまちこちらに気付いた兵士達が、魔導銃や長剣を手に、一斉に駆けてくる。


「ルイっ。敵の迎撃を頼むっ。俺は麗を救うっ」


 九郎は真っ先に命じた。


「心得ましたっ」


 バトルスーツ姿……しかも、よりにもよって目立ちまくりの真紅のバトルスーツを纏ったルイが、爛々(らんらん)と輝く瞳で九郎を見やる。


「時に父上、やはり連中にも手加減は必要ですか?」

「まさか!」


 今回ばかりは、九郎も首を振った。


「あちらさんは、間違いなく俺達を殺そうとしているんだ。遠慮の必要はない、存分に戦ってくれ! 手加減は無用だっ」

「――っ! ご命令、承りましたっ」


 歓喜に満ちた返事と共に、ルイの右手に漆黒の大剣が出現する。

 並の男では持ち上げることすら難しいだろうに、ルイが扱うと、まるで重そうに見えない。

 そのまま疾風のごとく駆け出し、兵士達の集団に突っ込んでいく。



「我が名はルイっ。大陸全土の覇者であり、そして魔王陛下でもあるお方の一人娘だっ。雑兵共よ、このルイと戦ったことを冥府で誇るがよいぞ!」



 名乗りを上げている間にも、魔導銃の弾丸が華々しいオーラの色を引いて先行する彼女に殺到しているのだが、それらは全てルイが風車のごとく振り回す大剣に阻まれて、一発も掠りもしない。


 そして間合いに入った途端、ルイの大剣が唸りを上げて敵を襲った。


「貴様達、戦士のくせに飛び道具など使うのかあっ」


 大喝と同時に、ぶぉんっという風切り音がして、横殴りの大剣が気の毒な兵士達を直撃する。

 たちまち、三名ほどの敵兵が輪切りにされてふっ飛んだ。破壊された肉体をかえりみることなく、ルイはそのまま敵の後続へ突っ込んでいく。


「うわぁ……相変わらずだな」


 自分も刀を手にした九郎は、ルイの見も蓋もない進撃ぶりに、思わず唸った。

 だがもちろん、このような場合には、あの子ほど頼もしい存在はまたとない。


「よし、俺達も行くぞっ」

『はいっ』


 九郎は、狼形態に変化したユウリと共に、まっしぐらに麗の元へと走った。

 

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