表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/96

俺を倒す算段が付いているわけだ

 ほとんど森川が一人で作ってくれた、豪華夕食を頂いた後、九郎達は隠れ家を出て秋葉原へ向かった。

 森川も一緒に来たがったが、さすがにそれを口にして九郎を困らせるようなことはなかった。


「行ってくる」


 出る前に、九郎は森川の手を握ってわざと明るい笑顔を見せた。


「前にちょっと話した通り、森川の護衛に、新たなファミリアを待機させてるから、安心して待っててほしい」

「ええっ」


 森川の代わりにユウキが声を上げた。


「新たなファミリア!? わ、私は聞いてませんがっ」

「いや、別にユウキの許可はいらないだろう」


 九郎は玄関口で苦笑して返した。


「創造魔法は久しぶりだが、まあこれは必要なことだからな」





「新型ファミリア登場で、哀れユウキは、オールドファッションのド旧型に成り下がったな」


 さっきの恨みか、すかさずルイが皮肉を言う。

 というか、麗もぐさっと来る一言を畳みかけた。


「我が君唯一のファミリアの座も、はかなく消えましたねー」

「なんですか、貴女達はっ」


 たちまち膨れたユウキが、二人を睨む。


「特に麗さんっ。天罰で、儀式が失敗しますよ!」

「麗の神は九郎さまなので、九郎さまがお叱りでなければ、全然関係ありませんわ」


 言い争う三名を置いて、九郎は森川の手をようやく離した。


「じゃあ、明日戻るから。戻れなきゃ、連絡する」

「はい……待ってますね」


 名残惜しそうに森川が告げてくれた。






 立ち入りを禁じられている秋葉原までは、どうせ交通機関は使えない。

 そこで、三名とも飛んでいくことにしたが、九郎と麗が二人してギフトのシークレットガーデンを発動させ、ユウキとルイはその恩恵に預かることとなった。


「秋葉原まではすぐだが……このギフト、どこまで確かかな?」

「少なくとも、麗が授かって以来、シークレットガーデンできわどい思いをしたことはありませんっ」


 暗い夜空を飛びつつ、麗が頼もしいことを述べてくれた。


「そうか……でもまあ、明日の午後一時……つまり、十三時だったか? その時にはさすがに使い処を考えた方がいいだろうな。処刑場とやらが駅周辺のどこかはまだ不明だが、もし本当にこれが罠なら、あちらさんは、俺を倒す算段が付いているわけだ」


 九郎が独白すると、ユウキ達がそっと顔を見合わせた。


「しかし、父上には絶対支配空間とも言える、攻防一体のギフト『サンクチュアリ』があります。アレをそう簡単に破れるとは、思えませんが?」

「それが本当かどうかは、明日になればわかるさ。――待機場所はあそこにするか?」


 いつもの秋葉原よりずっと薄暗い街並みになっていたが、それでも眼下にUDX……レストランやオフィスが詰める、複合ビルを見えてきた。百メートルを超える高さの高層ビルだが、今はいつもより各窓から漏れる明かりがごく少ない。


「レストランはどうせほとんど閉店中だろうし、会社オフィスもそうだろう。問題があるとしたら、連中がなにかに使ってないかだが……降下して、まずはそれを確かめよう」

「了解です!」


 ユウキが張り切って述べた。

 空調の室外ユニットが整然と並ぶビルの屋上に、九郎達は急降下していく。


「麗、落ち着ける部屋が見つかったら……悪いが、待機してタイムスケジュール通りに頼む」

「お任せを」


 並んで降下しつつ、麗は微笑した。


「時計も持参していますし、時刻厳守でいきます……九郎さまのお役に立てて、嬉しゅうございます」


 決して楽しくない役割のはずなのに、麗の笑顔に陰りはなかった。九郎のためだからというのは、どうも本気らしい。


 九郎はそっと麗の腕に触れ、感謝を示した……いつか埋め合わせをしようと思う。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ