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異世界魔王、日本に転生して侵略者を迎え撃つ  作者: 遠野空
第四章 蘇った魔王、全面対決を決意する
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麗の対人優先度


 同時刻、スタジオの方では、はらはらしながら見ている九郎と違い、麗自身は落ち着いていた。


 そもそも、魔力を帯びた男が後ろの席に座っていた時点で、「ポゼッションされているかもしれない」と疑っていたし、こうして襲われつつあるのは、想定の範囲内である。

 ただ、いつもと違うのは、今の麗はアイドルとしてステージに立っていることだ。

 そうでなければ、あいつが席を立った時点で、思う存分、先制攻撃をかけていたはずである。


(でも、今はそんなわけにはいかないわ。アイドルの立場なんかどうでもいいけど、いつか、麗と九郎さまの繋がりが、この国の民にも知れるかもしれないものっ)


 ――そうなった時、「あの九郎とかいう元魔王は、冷酷に殺人を犯すような女と知り合いだったか!」などと、九郎が侮蔑の目で見られるようなことがあってはならないのだ。


 麗としてはそう考えている。

 もちろん、九郎の名が知れ渡った時の状況にもよるだろうが、今の時点では、あらゆる可能性を考えるべきだろう。

 麗自身のためではなく、愛する九郎のために。

 そこで麗は、男がガードマン達の頭上を跳び越え、麗の名前を叫んだ時点で、わざとらしく小さい悲鳴を上げた。




「ええっ!? きゃあっ」


 別になにも怖くなかったが、将来的な九郎の評判を心配していたお陰か、迫真の悲鳴を出せたと思う。

 それから、いかにも慌てた風を装い、叫んだ。


「照明を点けてください!」


 これで、照明係が鈍い奴だったら困りものだったが、幸い、そうではなかったようだ。

 麗が叫んだ直後に、ぱっと周囲が明るくなった。


「ぬうっ」


 男は、いきなり全回復した明かりに、一瞬、目を眩まされたようで、麗に向けようとした銃口が少しブレた。まさに、麗の計算通りである。

 このまま男を誘導するように、テレビカメラが映す範囲外まで、脱兎のごとく遁走するつもりだった――のだが。


「や、やめろっ」

「あっ」


(なんてこと!)


 麗は心中で呻いた。

 ここの司会役は最初から気に入らなかったが、どうやら、つくづくこっちの足を引っ張りたる星回りの男だったらしい。

 中途半端な義侠心で敵を止めようと飛び出した挙げ句、モロに銃の斜線を遮る形で立ち止まってしまった。

 いざ動いた途端、途中で怖じ気づいたのだろう。


 視界を回復しつつある男は、大声で「邪魔だ、どけっ」と叫び、そいつを撃とうとしている。

麗としては有り難いことなのだが、先に司会の方が殺されそうだった。


(余計なことをっ)






 麗の対人優先度は、本音の部分では見も蓋もない。


「九郎さま(はぁと)>>>麗>>>>>>>>>>>>>>>>>その他全部」


 ……実にこの程度のもので、九郎のためなら自分を含めてなんだって犠牲にするが、正直、飛び出した奴が死のうが、一ミリも気にならない。

 しかし、先程と同じく九郎の将来の評判が気になり、見捨てられなかった。


(九郎さまのおそばにいるのが麗だと知れ渡った時、あのお方の評判を落とすような行為は避けないとだめっ)


 実にそれだけの理由で、麗は駆け出し、司会を思いっきり突き飛ばした。


「あぶないですっ」


 無論、腹いせに少し余計に力を入れたことは、言うまでもない。

 これも麗の計算通り、司会は素っ頓狂な声を上げ、見事に吹っ飛んだ。

 少し胸がすっとしたが、その代わり、気付けば自分がモロに敵の銃口を見つめていた。


「馬鹿め、死ねえっ」


 敵の指が引き金を引こうとしているのがわかった。


(カメラの前で、目立つギフトは使えないわっ。どうするの、麗!?)


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