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異世界魔王、日本に転生して侵略者を迎え撃つ  作者: 遠野空
第四章 蘇った魔王、全面対決を決意する
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最初から麗が狙いだったか!

 スタジオ内での騒ぎを危惧した九郎だったが、幸い、麗が真顔になったのはほんの一瞬のことだった。


 すぐに元の明るさを取り戻し、「とにかく、このリングを嵌めると不思議なものが見えたりするので、もし他に拾った人がいたら、試してみて、どうだったか教えてくださいね~」と笑顔を振りまき、その後は普通に「なぜ今、歌いたいか」という説明に戻った。


 九郎としてはため息をつきたい気分だったが、しかし、麗が一瞬とはいえ注目した男……すなわち、観客席の最後尾でむすっと座る若者が気になりだした。


 だいたい、まだ九月だというのに、なんであいつは分厚いジャケット姿なのか?

そいつが微かに魔力を帯びているのが見え見えなので、余計に怪しく思う。九郎とて、本来は麗と同じく普通の人間ではないので、リングなど着けなくてもわかるのだ。


 それに、そいつの席はすり鉢状になった段々の最後尾に当たるので、他から注目されにくいのも困る。


「このままあの男が、番組終了まで自重してくれりゃいいんだが」


 画面を睨みながら呟くと、ユウキが真面目に意見した。


「ですが我が君、あいつがあそこにいること自体、なにか行動を起こす予兆かもしれません。なんでしたら、私が向かいましょうか?」

「そう願いたいところだが、あいにく今からじゃ遅いだろう……俺の力がもう少し戻れば、転移など楽々こなせるんだが」


 ユウキを創造した遥か昔に、この子にその手の能力もつけてやるべきだったと、九郎は大いに反省した。

 いざ戦闘となると、ユウキの戦闘力は絶大なのだが、そういう補助系の能力は付けず仕舞いだったのだ。


 まあ……麗だって、見た目を裏切る実力者だし、大丈夫だろう……大丈夫のはずだ。


 心配しながら注目するうちに、スタジオの中が少し暗くなり、麗が中央ステージに上がって、歌い始めた。

 即席スタジオとはいえ、ちゃんとバックダンサーや演奏担当の者達が揃っていて、スポットライトが麗に当たる。


 前奏が終わった瞬間、両手を一瞬だけ虚空へ伸ばし、麗が普段に似合わぬソプラノで歌い始めた。



『再び貴方に遭うためなら、わたしはどんな犠牲でも払うわ! 決して、決して、諦めたりはしない~♪ 死が二人を分かとうと、あるいは全世界が滅ぼうとぉー。ええ、わたしは諦めたりしないの!』



「うっ、駄目だ」


 九郎は思わずソファーを立った。

 というのも、スタジオ内が薄暗いのを良いことに、観客席後部に座った男がふいに立ち上がり、通路へ出たのだ。


 そのままジャケットの懐に手を入れて、ゆっくりと降りてくる。

 さすがに歌声に聞き入っている場合ではなかった。


「馬鹿、さっさと止めろよ、ガードマン!」


 元の中坊に戻ったかのように、九郎はいらいらと吐き捨てた。

 散々、テロ騒ぎが起こっているのだから、警戒くらいはしているだろうに。

 ……九郎の声が聞こえたはずもないが、ようやくスタジオ脇から制服姿のガードマン二人登場して、慌てたように通路を駆け上がっていった。


『おい、そこのあんたっ』

『席を立たないでくれ!』


 声は潜めていたが、ちゃんと彼らの警告の声がマイクに入っていた。


「よしっ。そのまま上手く取り押さえて――うおっ」


 剛毅な九郎も、思わず声が洩れた。

 というのも、問題の若造がいきなり通路を駆け出し、大きく跳躍してガードマン達の頭上を跳び越えたからだ。尋常な能力ではない。



「霧夜麗ぃいいいいいいいっ」



 明確に麗の名を叫びつつ、ジャケットのふところに手を入れ、銃を抜き出す。

 あれはおそらく、魔導弾装備だろうっ。


「最初から麗が狙いだったか!」


 麗の影響力は大きいし、当然、この番組の視聴率も普段より跳ね上がっているだろう。つまり、敵が見せしめに殺そうとする可能性も否定できない。

 これまで、番組の中で暗殺された者がおおむね政治家ばかりだったとはいえ、警戒はしておくべきだったのだ!


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