表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔王、日本に転生して侵略者を迎え撃つ  作者: 遠野空
第四章 蘇った魔王、全面対決を決意する
42/96

予定にないぞ!

 

 九郎はその頃、ヘリでのユウキとの作業を終えて、既に部屋に戻っていた。


 作業といっても、強制調達したヘリで都内を飛び回り、二人で魔法付与のリングをばらまいただけである。

 リング自体は、魔力のお陰でごくゆっくりと地上に落ちるし、下界で誰かが怪我をするということもない。


 今頃はあちこちで大騒ぎだろうが、九郎としては満足のいく作業だった。


 ただ、計画はこれで終わりではなく、今度は第二段階として、麗がテレビで「魔法のリングを告知」をする手筈なのだ。

 そこで九郎は「おそらく麗は、俺に見て欲しいんだろうな」と思い、真っ直ぐに部屋に戻り、リビングのテレビ前に陣取っているわけである。





 一応、ユウキもソファーの隣に座っていたが、横目で見たところ、すこぶる機嫌が悪そうだった。


「……ユウキは、アイドルの麗なんか見たくないのか?」

「はい」


 至極はっきりとユウキは頷く。


「なにが良いのか、さっぱりですし」


 なら、俺の隣に座らなくてもいいんじゃないかと思ったが、九郎が実際に口にする前に、派手な紹介と共に麗が登場した。


『それでは皆さん、拍手でお迎えください! スーパーアイドル、霧夜麗ちゃんですっ!!』


 途端に、スタジオに設えた観客席の客達から、どっと拍手が起こった。

 この番組は、普段は若者が好みそうな流行ネタを提示し、コメンテーターが解説する番組なので、もちろんスタジオに来ている客も若者が多い。

 そのせいか、「麗ちゃぁあああああん!」と声を揃えて大声を上げる即席応援団までいて、なかなか派手だった。



「皆さん、こんにちはぁあああ!」



 豪奢なゴシックドレスを纏ったまま、麗が明るい声と共に、両手を広げる。

 スポットライトが当たり、華麗に舞った長い銀髪がきらきらと煌めく。


「お会いできて、麗、とても嬉しいでーーっす!」


 観客席の男共からは、「わああああ」という感嘆にも似た声が重なり、女の子達からも、ちらほら「きれい」「可愛い」「うらやましー」「肌が白いっ」などと、羨望と憧れの声が飛んだ。

 銀髪碧眼というと、なかなか日本では見られないので、麗の美貌に一層拍車がかかって見えるのだろう。事実、見慣れている九郎の目から見ても、この子はアイドルというか、スターのオーラで溢れている気がする。


「なんですか、あの寒気のするぶりっこ声はっ」


 ……隣のユウキは違う意見らしく、早速毒づいていたが。


『ところで麗ちゃん、今日来てくれた理由を、ぜひ麗ちゃんの口からっ』


 司会がマイクを差し出すと、麗はわざわざそのマイクを受け取り、ふいに表情を改めた。



「お、最初から告知するつもりだな、麗」



 九郎が呟いた途端、その予想に応えるかのように、麗が声を張り上げた。


「その説明をする前にぃ、実は麗がこのスタジオに来る途中、空からこんなリングが降ってきたんですよっ!」


 手にした銀色のリングをさっと掲げる。

 当然、カメラがそのリングを拡大表示した。予定にないことらしく、司会があわあわしていたが、麗は笑顔でどんどん続ける。


「空から落ちてきて、なんだか不思議だなぁって麗は思ったんです。それで、なんとなくこのリングをこうして着けてみたら」


 説明しつつ、右手の薬指にリングを嵌めた……なぜそこなのか? という疑問はあるが、まあそれはいい。

 

「そうしたら、なぜか赤く染まって見えるようになった人がちらほらいて、それってどういう意味でしょうね、不思議ですねー!」


 そして……リングをしたままの麗の視線が、観客席の一点で止まった。

 途端に、すうっと麗の笑顔が消えた。


(お、おいおい、予定にないぞ!)


 九郎は息を詰めるようにして画面に見入った。

 万一、スタジオ内にポゼッションされたヤツがいるようなら、実演は避けろと事前に言ったはずだが? 

 

 まさか――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ