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異世界魔王、日本に転生して侵略者を迎え撃つ  作者: 遠野空
第四章 蘇った魔王、全面対決を決意する
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魔王陛下は我と共にあり(ドヤっ)


 フォートランド世界において、かつて一度は全大陸の覇権を握っていた魔族は、まだ新興国と言っていいハイランド帝国に侵略され続け、一昔前の栄光は地に落ちている。


 当然、敗戦続きのお陰で領土も縮小の一途を辿り、もはや全大陸の二割ほどの領土を死守しているに過ぎない。






「本当にもう……情けないわねっ!」


 四将軍の証である漆黒のマントを纏ったジャニスは、最前線の砦にあって歯軋りしていた。

 城壁から見えるのは、彼方まで敵の軍勢ただ一色……ハイランドの本隊が主な戦力だが、他にも、かつては魔界に臣下の礼をとっていた国々の軍勢も多々、見られる。

 昔と変わらず魔界に臣従の意を示す国は、もはやかつての王女レイフィールが治めていた、ファルナス王国ただ一国である。


 そのファルナスでさえ、王女レイフィールが自害した今では、いつまで魔界に忠義を誓ってくれるか、わかったものではないだろう。



「陛下が世を去ってから十数年、小癪な新興国に甘い顔を見せたお陰で、今やこのザマよっ。冥界で魔王陛下の足元に這いつくばり、謝罪する日もそう遠くないかもしれないわ」

「おいっ。ここならいいが、そういうことを、兵士達の前で言うなよ?」



 肩を並べて城壁に立っていた朋輩――同じく四将軍の一人であるサイラスが、顔をしかめて警告する。


「特におまえは、激情するとすぐに泣き出す癖がある……いい年して、幼女かっつーの。士気がダダ下がりになるだろうが」

「私は泣いてなど、いないっ」


 素早く手の甲で目元を乱暴に拭い、ジャニスが大声で言い返す。

 風が吹いて真紅の髪がなびき、涙の粒が散った。


「だいたい、私の肉体年齢は十六歳よっ。いい加減に覚えなさい!」


 上位魔族が、己の肉体を好きな年齢に固定できるのは周知の事実なので、サイラスは一々言い返さない。しかし、女はどうして、そこまで若さに拘るのかという、尽きない疑問はある。堂々と歴戦の戦士をアピールした方がいいと思うのだが。




「まあ……確かに今回の大戦も終局に近付いてるかもな」


 内心をおくびにも出さず、サイラスは呟く。


「パワーバランスはとうの昔に崩れた。今の俺達は、ただ滅び行くことが確定している魔界を、一部の戦士の力で、無理矢理延命させているようなものだ」

「亡き魔王陛下に恥ずかしくないのっ!? 既に、負け犬根性じゃないっ」


 柳眉を逆立て、ジャニスがサイラスを睨む。

 薄赤い瞳は、八つ当たりの相手でも見つけたかのように、ぎらついていた。


「いや、元々はおまえが言い出したこ……と」


 言い返す途中で、サイラスは口を噤んだ。


「なによっ。最後まで言いなさいよっ」

「それより、前を見ろ、ジャニスっ。ヤツらが動き始めた!」

「えっ」


 たちまちジャニスも、前方の布陣に向き直った。

 ……確かに、兵士達の動きが慌ただしくなっているが……これは、攻めかかる前兆ではないように見える。


「なんだぁ? 撤退準備に見えるが……俺の目がイカれたかね?」


 サイラスが独白した途端、それに答えるように伝令が走ってきた。


「将軍っ。両将軍っ」

「なんだよ? 俺達二人宛てか?」


「ははっ」


 息を弾ませた伝令は、派手に喉を鳴らした後、こう述べた。


「つ、つい先程、レイフィール様……向こうではレイ(麗)と名乗っておられるらしいですが、とにかくあのお方からマジックボイスが届きました」

「……ファルナスの王女は、魔王陛下の後を慕って自害したでしょっ」


 嫌なことを思い出したわっという顔付きで、ジャニスがバトルスーツの腰に片手を当てる。


「それが……どうも、異世界において健在らしく」

「それで、なんと言ってきた?」


 また口を開けたジャニスを手で制し、サイラスは促してやった。


「は、はい。……レイフィール元王女によれば、『魔王陛下は我と共にあり!』と、誇らしげに三度続けて通信してきた後、コンタクトが途切れました」


 一瞬にして、その場に沈黙の帳が降りた。 


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