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異世界魔王、日本に転生して侵略者を迎え撃つ  作者: 遠野空
第三章 侵略を阻止したい(希望)
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九郎の決断

 やがて、画面がいきなりブラックアウトし、紋切り型の「しばらくお待ちください」という素っ気ないメッセージが出たままになると、九郎はようやく息を吐いた。

 知らず知らずのうちに緊迫して見ていたらしい。


 内容からして、当然ではあるが。

 むしろ、自分でも意外だったが、基本的に冷静ではあった。





「連中の狙いが、だいぶ読めた気がする」


 ぽつっと呟くと、すかさず麗が反応した。


「同朋への信頼度の低下、それに政府への不信感を植え付ける、さらにはパニックを煽ること……でしょうか?」

「うん、そんなところかなと。でも多分、俺が気付いてないようなことも、後に控えている気がするけどね」


 九郎は上の空で答えた後、一拍置いて明確に宣言した。


「こいつらは、俺達が止めないと。まだ混乱中の政府任せだと、まずい事態になる気がする」



「仰せのままに!」

「ご命令、承りました」



 なぜか麗とユウキが同時に答え、九郎は逆に驚いた。


「俺自身にもまだ考えがまとまってないのに、即答かっ」

「九郎さまがご命令を発した以上、臣下の者は従うのが当然ですわ」


 麗は至極当然のように言い、ユウキも狼形態のまま頷く。


しゃくに障りますが、こればかりは麗の言う通りでございます。我が君が方針を決めた以上、我らに否やはございません。……して、手始めになにかご指示はありますか? 特にないようでしたら、私は独自に敵を探して、各個に殲滅せんめつしていきますが」

「いや、ちょっ、ちょっと待って!」


 今にも、自分の言った行動指針を実行しそうなユウキに、九郎は慌てて手を振った。

 まさかとは思うが、彼女は既に辻斬りに等しいテロ行為をやらかしていたヤツを、倒しているのだ。

 本気なのは疑い得ない。


「各個撃破もいいけど、効率が悪すぎると思う。せめて、連中の拠点を見つけないとな……どうせ、日本に来てる時点で、どっかに司令部みたいなのがあるだろうし」


 ちらっと二人を見たが、これについては即答はなかった。

 当然、まだそこまでは――ということだろう。


「時間をかければ、見つけることはできると思いますが」


 麗がためらいがちに言う。


「おそらく敵の拠点には、魔力を持つ者が集中しているでしょうから、そこを探せばいいわけです」


 そこでなぜか麗は、ちらっと上目遣いで九郎を見た……何かを期待するように。


「問題は、都内のどこかにあると仮定しても、探す範囲が広すぎることでしょうか」


 ユウキが悔しそうに補足した。


「それなら、もっと上手い手があるな」


 別に自信はなかったが、九郎はためらいがちに言った。


「今度、どこかで連中が騒ぎを起こしたら、俺達が出向いて敵をとっ捕まえるんだ。拠点の場所はそいつに訊けばいい」



「よきお考えかと思います、九郎さま。さすがですわ!」



 両手を合わせて、麗が讃美するように褒め讃える。


「どうせ麗も、それくらいは思いついただろうに」


 さっきの謎の視線を思い出し、九郎は苦笑した。

 この子はどうも、徹底して九郎に花を持たせようとしている節がある。


「いえ……まさか」


 否定はしたものの、その表情を見て九郎は自分の推測が正しかったのを悟った。

 ユウキは嫉妬したような目つきで麗を睨んでいたが……とにかく、当面の方針は決まった。



 しかし……九郎達三名も、まさか敵の方から彼らに迫りつつあるとは、まだこの時点では思ってもいなかった。


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