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お話の終わりと始まり


翌朝。雨は上がったが、まだどんよりと曇っている。

その空を見つめてつぶやく

「うーん。どーも締まらないなぁー。」

「じゃあレンよ、きれいさっぱり晴れてたらそれで気分爽快か?」

「そう言われればそうなんだけどね、こう...なんというか、冒険の始まりにふさわしい天気ってあるじゃないの」

「冒険の始まりって言ってもなぁ、レンよ、これからやろうとしてるのはそんなにいいものか?」

「そうなんだけどね。ま、言い方はなんでもいいよ。不純な動機の正義なんてくそくらえの冒険があったっていいじゃない?」

「あ、そ。で、これからどうするのさ。お話じゃ仇を討ってめでたしめでたしだが残念ながら俺たちはその仇もわからないんだぜ」

「さらには下手すりゃ戦争にたった二人で割り込むんだからねー。どっちを向いても死のリスクだらけだ」

「弔い合戦なんてたいていそんなもんなんじゃねぇの」

「弔い合戦ねぇ」

半笑いしながら言う。

「ん?」

「復讐だとか弔いだとかそんなの結局残された方の身勝手だろ?復讐したら死人が生き返るわけでもない。弔ったところで死人は死人だ。もう幸せもくそもねぇよ。そんなの全部残された奴らの八つ当たりだ。ましてやここは戦場だぜ。死はそれはそれは身近だ」

「そりゃ盛大なブーメランなことだな」

「そりゃそうだろうよ。でももう決めたし今更どうしようもない」

「そーかい。しかしレン、お前ほんと今言動と行動が真逆だな」

「自覚してるからいいんですー」

「ふーん。ところで一つ聞きたいんだが」

「ん?」

「俺らのその冒険?はどこで終わるんだ?」

「あー...さぁ?考えてなかったな...」

「おいおい適当だな」

「うん...でもやらないと」

「!!」


そのレンの横顔に得体の知れない凄みを感じてコハクは言葉に詰まった。レンが言葉を続ける。


「なんというかね。そうしないとこう...区切りがつかない」

「区切り?」

「壊れた世界を直そうとしてもその残骸はそうしない限り片付きそうになかった」

静かに言葉を吐き出す。何となく思いついた言葉だった。

「あ?」

「せっかくお話のまねごとを始めるんだ。それっぽいことを言ってみた」

「そりゃまたへたくそなセリフだな」

「そう?うん、でも確かにこれを片づけないといけないんだ。少なくとも俺にとってはね」

「そこで話が戻るが、俺らのこのお話は何をもって終了なんだ?」

「うーん、気が済むまでかな。これ以上やっても意味ないや、何も変わんないやって思えたら、それが終着点かな」

「ふーん。じゃあとりあえず現状に目を向けてお話の第一歩としようか」


やっぱりコハクはよく現実を見てる。こちとらさっきかららしくない態度や言葉を並べているのに。


―かくして物語は始まった。衝動とそれを与えた悲しみによる物語が。それは、あぁ、なんのための物語だったか。初めから理解できなかったし、おそらく理解しても無駄なのだろう。―


息を吐いて俺はコハクにうなずき返した。

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