日常 -2-
今日も俺たちは食料探しをしていた。賞味期限の切れた携帯食料でもいいし、戦死した兵士の持ったものなど見つかればなかなかの上物だ。たまに流れ商人から買うこともあるが、値が張る上にそもそも会うことが少ない。今日は銃声が聞こえないのである程度安心して食料探しに集中できる。
「おーいレーン。そっちはどうだ?」
「だめだな。最近の兵士は食料もなしに戦場へ出てくるらしい。」
「いや、そういうわけじゃないらしい。」
「?そっちは何かあったのか?」
「何も特別なものがあったわけじゃない。表面が泥でコーティングされた食料が少々。」
「あぁ、なるほど」
「そ、商人かなんかが荒らしていった後ってことさ。」
「なら汚れの激しいところだけさっと洗って移動しますか。」
「そうだな。」
いうなりコハクは少し離れたところにいるレイナを呼んだ
「おーいレイナーここはもう荒らされた後だー。移動すんぞー。」
「えー...ちょっと待って。この辺に何かあると私の勘が...」
「だから何もないっての。ほら、行くぞ」
「ちぇっ。さみしいなー」
「俺たちが来るのが遅すぎただけでしょ...」
「もー、レンは諦めがよさすぎると思うよ。」
「無意味なことはしたくないだけですー。」
話しながらも俺たちは新たに食料がありそうな場所を探す。こんな風に俺たちは毎日を過ごしている。食料がすぐ見つかればいいが今日みたいに見つからないことも多い。貯蓄がないわけではないが安心して食料探しをさぼれるほどじゃない。
「んー...暗くなってきたしそろそろ戻ろうかー。」
新たに見つけたポイントでの捜索もしばらくたったころレイナが言った。
「んー。もうそんなになったか。コハクー、どうしようかー。」
「あぁー?なにをー?」
「もー、今の会話が聞こえてるわけないでしょ。」
レイナがあきれた声で言った後
「もうだいぶ時間たったし帰ろうかってことー」
と叫び返す
「うーん...まぁそうするかー」
コハクがこっちへやって来ながら言う
実のところ太陽はまだ空にいて空がもう少しで赤くなりそうかというぐらいなのだが、俺たちは引き返す。本当に暗くなると強盗なんかに襲われるリスクが増すし、寝床に空き巣とかがいても気づきにくくなる。この地域で夜中にのこのこ出かけるやつなど皆無だ。出歩いているのはチンピラか強盗、もしくは飢えが限界に達して身の危険を冒してまで外に出歩くやつ、他にもいろいろだがどいつもこいつもろくなのがいない。これがこの地域の夜。そんなわけで俺たちは早々と寝床へ戻った。
「よーし!今日の成果を祝って!いただきまーす!」
寝床で元気にレイナが叫ぶ。
「成果って言ってもねぇ...。」
僕がつぶやくと
「もーレーン。気分が下がることを言わない!」
レイナに叱られた
「食料があるんだから有難がって食おうぜ。」
「ねぇコハク。それは私にもう少し食べ物を貴重に思って食えって言ってる?それともレンに食料があるだけいいって言ってる?」
「どちらも正解。」
「えー。私は貴重なご飯はいい気分で食べようって思ってやってるのにー」
「俺だって大漁でもないのに、ってだけで有難く思ってないわけじゃないんだけど」
「はいはい、さいですか。」
「あー、信じてない」
「いいから食え」
「うー」
本日の俺たちの食料は微々たるものだ。いつものことなので嫌にはならない。ただそろそろぼそぼその携帯食料は飽きてきた気もする。まぁ贅沢は言えない。俺たちは日々これで生きているのだ。
こうして夕食を終え、俺たちは床についた。