三人の子供 -3-
○○月○○日
寝床の近くに何かが飛んできた。爆発していろんなものが崩れた。そこに自分たちのものがなくてほっとするばかりだ。まぁもっとも自分たちのものなど数えるほどしか存在しないが。
○○月△△日
また寝床の近くで爆発が起きた。そろそろニアピンでは済まされずに寝床に何か飛んできそうなので、また場所を移そうと思う。
○○月□□日
何かいいものはないかと何日かぶりに前の寝床へ行ってみた。前寝てたところは大量のがらくたが積みあがっていた。移動して正解だった。がらくたの中から腕みたいなのが見えたのはたぶん幻覚だろう。幻覚だろうが現実だろうが知ったこっちゃないが、後味の問題で幻覚ということにしておこう。
△△月●●日
前の月よりも銃声がより多く聞こえる。戦線が移動してきたみたいだ。さて、どちらの陣営側に移動すべきか慎重に見極めなくては。間違えたら激戦に巻き込まれかねない。
△△月□□日
何とか比較的安全な所へ逃げ延びた。代償として、食料をいくらかなくしたがまぁ、命と比べれば安いもんだろう。
これが日常。日々戦火から逃れ続ける。日記っぽく書いているが紙や鉛筆なんざないので全部頭の中に綴られている。もちろん一か月前の内容なんざ大雑把に覚えていればいいほうだ。生まれた時から周りは戦い、戦いだ。十五年の人生で記憶している限り同じところに半年以上寝泊まりしたことなどない。ちなみに両親は読み書きや言葉を教えてくれたのち別れた。戦いに巻き込まれてばらばらの方向に逃げた後会うことはなかった。当時は年相応に親探しなんぞをやったものだがそんなことより飢えが重要な問題になったのでやめた。以降親探しをしたことはない。むこうも生き延びていたならいつか会うことも万に一つの可能性であるだろう。
戦争のことを少し話そう。詳しいことは知るわけもないが、要は二つの国が何かのきっかけでドンパチし始めた。たぶん些細なことだろう。で、ここのあたりは戦線の中でも特に戦闘が激しいところらしい。断定しないのはほかの地域に行ったことがないから。日々戦線が変わるので他のどちらかの国の地域に行こうものならスパイと疑われるか差別に合うかその他もろもろ、要するにろくなことにならずに最後は人生ジ・エンドということだ。
こんな場所で俺たちは暮らしている。近くにはいつだったかの戦いの後出会ったのち一緒にいるレイナとコハク。そして俺はレン。コハクと俺が同い年でレイナはひとつ下。いつもこの三人で食料探しと寝床探しに明け暮れて、それでも楽しい日々を過ごしている。