表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

旭図加春秋

私気予報

作者: 弥生 久

 テレビが喚いている。


 昨夜消し忘れてそのまま眠ってしまったせいだな、とまだぼんやりしている頭で考える。寝ぼけ眼で枕元の時計を見ると、もう九時過ぎだった。


 テレビが喚く。


 記録的猛暑が。熱中症対策を。晴れるでしょう。

 晴れるでしょう。

 晴れるでしょう。


 ちらりと窓に目をやる。カーテンが閉まっているけれど、隙間から明るく差す陽光ははっきりとわかった。薄暗い部屋のなかを漂う埃が光に照らされている。


 晴れてなんかない、と思った。


 相変わらずテレビは喚き散らしている。晴れるでしょう。二度寝を決め込んで布団のなかに潜り込んでもまだ聞こえてくる。消せばいい話だが、リモコンが遠い。起き上がるのも億劫だった。


 じっと騒音に耐えて目をつぶっていると、次第にうとうとしてきた。テレビの声が遠くなっていく。ぐるぐると螺旋を描いて落ちてゆく感覚。晴れるでしょう。晴れるでショーってなんだっけ、それとも晴れるで賞だったか。ハロルド賞みたいだ、誰だよハロルドって一体、ハロルド、螺旋、深い闇のなかに落ちていく感覚、


 そして、



 そこで目が覚めた。テレビはついていなかった。寝ぼけ眼で時計を見ると五時過ぎだった。

 気まぐれにのたりと体を起こし、カーテンを開けて、窓も開け放つ。


 まだ日は出ていなかった。けれど東の空は白んでいる。蝉が一声、じわりと鳴いた。


 たぶんいま、わたしは笑っている。


 大きく伸びをして、それから小さく呟いた。




「晴れるでしょう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ