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テイマーになろう!

 

「……はぁ」

 

 あの管理者、人が丁寧な対応をしていれば、最後に力技で送りこみやがって……。

 本当はまだまだ聞きたい事もあったし、そもそも俺はまだ了承をしていない。

 

「……はぁ」

 

 再び、ため息が漏れる。

 そんな俺の目前に広がるのは、すがすがしいほどのファンタジー風景。

 

 町並みが中世ヨーロッパみたいな感じで、馬車が走っている所なんて初めて見た。

 また、行き交う人々の中にはチラホラと獣みみ、尻尾が生えている人や、耳が普通よりも長いような人がいる。

 

 ファンタジーだなぁ。

 

「はぁ、来てしまったものはしょうがないか……とりあえずどうしよう」

 

 俺は3回目のため息を吐くと、そろそろ現実を見る事にした。

 

 とりあえず今の現状把握から始めよう。

 

 まず俺が送られた場所だが、初めから街の中だった。

 看板やらが色々と立てかけてあるが、文字が一切読めない。ただし、聞こえてくる会話はなぜか理解できたので、言葉は大丈夫そうだ。

 

 次に俺の見た目だが、随分とファンシーな格好になっていた。

 布製のシャツとズボン、そして腰には短剣が差してある。そしてズボンのポケットには、謎の硬貨が10枚ほど。

 ……多分管理者が気を利かせたのだと思うが、それならもっとあの空間で、色々と聞いておきたかった。

 

 で、目の前には大きな建物がある。

 そこには俺と同じような格好をした人が、次々に中へと入っていくのが見えるが……多分これ、俺もここに入れって事だよな?

 

「……はぁ」

 

 ここで止まってても仕方が無いし、入ってみますか。

 俺は最後に深くため息を吐くと、建物へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 俺は受付らしき所へまっすぐに進むと、そこに立っていた18、9歳くらいに見える綺麗なお姉さん・・・・が声を掛けてきた。

 

「どのようなご用向きでしょうか?」

「えぇと、ここって何なんですか?」

「はい?」

 

 受付嬢さんが変な顔をして固まってしまった。

 

 あ、そりゃそうだよな。

 普通目的も無くお店に入って、ここって何? なんて質問はありえない。

 

 何となく同じ格好の人が入ってたから何も考えずに続いたのだが、これは最初から躓いてしまったみたいだ。どうしたものか。

 

「……ここは冒険者ギルドです。冒険者の登録をした方が依頼を受けたり達成の報酬を受け取ったりします。逆に、依頼をする事も可能ですが、いかがしましょうか?」

 

 俺が困っていると、受付嬢さんは丁寧に説明をしてくれた。

 何て良い人なんだ……!

 

 さて、冒険者か。

 俺の小説など読みかじった知識だと、魔物を倒したり、街の便利屋さんとして活動したりして金品を得る職業だった気がする。

 

 確か大抵の物語では、皆登録してたよな。

 

「すみません、文字が読めないもので……良ければ登録をして貰いたいのですが」

「はい、大丈夫ですよ。ちなみに登録料は銀貨2枚となりますが、そちらは問題ないでしょうか?」

「えぇと、これで大丈夫すか?」

 

 俺はそういって、ポケットにあった硬貨を2枚取り出して見せる。

 

「はい、問題ありません。それでは……」

「あ、よろしければ、通貨の価値についても教えてもらえませんでしょうか?」

「わかりました」

  

 受付嬢さんは俺の質問に少しもいやな顔を見せず、丁寧に説明をしてくれた。

 この人すごいな。顔も性格も美人って、きっとすごくモテるんだろうなぁ。

 

 それはさておき。

 硬貨の価値だが、具体的に何がどのくらいの値段かまではわからなかったものの、ざっくりとしたものは分かった。

 どうやらこの世界には、銅貨、銀貨、金貨の3種類の通貨が出回っており、それぞれ銅貨100枚が銀貨1枚、銀貨100枚が金貨1枚の価値になるようだ。

 

 そんでもって、俺が今もっているのは銀貨10枚。内2枚は今登録料で引かれたので、残り8枚しかない。

 うーん、登録料でこれだけするなら、食料だけ購入しても、もって数日くらいだろうか。これはなるべく早く収入の目処を立てなければまずそうだ。

 

「丁寧な説明、ありがとうございました」

「いえ、他にもお困りの事があれば仰って下さいね」

「はい、ありがとうございます」

 

 にこっと笑顔でそんな事言ってくれたので、俺も平静を保ちつつ笑顔でお礼を返す。

 くぅ……気を抜くと惚れてしまいそうだ。

 

「では登録に移りますね。文字の読み書きは難しいようですので、代筆でしましょうか」

「はい、お願いします」

「では代筆代が銅貨2枚になります」

 

 え、金とるの!?

 っと、いけない。この世界では普通の事かもしれないし、それでこの受付嬢さんを困らせるのも本位ではない。

 

 内心は渋々だが、表情に出さないようにして銀貨を1枚渡す。

 

「はい、では後ほどギルドカードと一緒に釣銭をお返ししますね。それではまずお名前からお願いします」

神童竜也しんどうりゅうやです」

「死んどりゅや? えぇと、すみません。もう一度お願いします」

 

 ちょ、その間違いは酷すぎないか!?

 あーでも、日本人の名前は海外の人に馴染みがないのかもしれない。

 異世界と海外を一緒にする訳ではないが、ここは名前だけの方が良いか。

 

竜也りゅうやです」

「リューヤさんですね。では次に、肩書きはどうしましょうか?」

「モンスターテイマーでお願いします」

「わかりました」

 

 俺は管理者に言われたとおり、モンスターテイマーを選ぶ。

 正直魔法とか良く分からないし、剣術も嗜んでいるわけではないので、迷う余地は無かった。

 

「はい、確認事項は以上となります。冒険者ギルドについての詳しい説明は……」

「お願いします」

 

 受付嬢さんは頷くと、分かりやすく説明をしてくれた。

 まず冒険者のランクは1~10まであるようで、数が少ない程高位の冒険者として見られる。

 最初は10級から始まり、依頼や試験を受けて昇級させていくようだ。

 

 また、冒険者登録から一定期間以内に依頼を受けなければ、除名もあるらしい。

 これは級によって様々なようだが、10級が一番短く1ヶ月だとの事。

 

 その他にも犯罪行為……殺人やら強盗などすると資格を剥奪されるなどもあるらしいが、そんな予定は無いのでこれはあまり意識しないでも良さそうだ。

 

「色々とご丁寧にありがとうございます。とても助かりました」

「いえ、お役に立てたようで嬉しく思います。最後に適正検査がありますので、こちらの書類の上に手を置いてください」

「? こう、ですか?」

 

 先ほどまで受付嬢さんが書き込んでいた書類をこちらへ向けてきたので、戸惑いながらも手を下ろしてみる。

 するとその紙が一瞬淡く光だし、すぐに収束する。魔法かな? 気興味深い。

 

「はい、登録は完了です。それでは10級のカードと釣銭をお渡ししますので、少々お待ちください」

「お願いします」

 

 そういって受付嬢さんは奥へと引っ込んでいったので、暇つぶしにギルドの中を見渡す。

 想像してた通りといえばそれまでだが、主な施設は酒場と依頼が張ってある掲示板が見える。

 

「お待たせしました。はい、こちらをどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 ぼーっと眺めていると後ろから声が掛かったので振り向くと、そこには木片みたいな板と、10箇所に積み分けられた銅貨が置いてあった。

 俺はお礼を言いながら手早くしまおうとして、銅貨の多さにその手が止まる。

 

「……すみません、袋とかありませんか?」

「小さめな麻袋でしたら……銅貨5枚です」

「……お願いします」

 

 うぅむ、何だか行き当たりばったりすぎる気がするが……まぁ徐々に慣れていけばそれで良いか。

 

「ギルドカードと一緒に、銅貨93枚を入れておきましたのでご確認下さい。……そうそう、ギルドカードは本人にしか利用が出来ませんが、それでも紛失されますと、再発行に銀貨5枚の費用が掛かりますのでお気をつけ下さい」

「分かりました」

「……それにしても、お若いのに言葉遣いがとても丁寧ですね。冒険者は少し乱暴な方も多いので、感心しました」

「いえ、そんな……ん?」

 

 俺は荷物を受け取りながら社交辞令を受け流していると、妙な単語が聞こえてきた気がする。

 

「えっと、私若いですか?」

「あ、いえ、気にされてましたらすみません、忘れてください」

「……ちなみに今の私、何歳くらいに見えます? あ、もちろん変な意味とかでは無く」

「そうですね……少し若く見られそうな見た目を考慮しますと……16歳くらいでしょうか」

 

 待て待て、落ち着け俺。

 確かに少しだけ違和感を感じていたんだ。

 

 この受付嬢さんを見たとき、大体の年齢を目測で量ったにも関わらず、俺は無意識に綺麗なお姉さん・・・・だと考えていた。

 本来の俺の年齢……24歳であれば、お嬢さんはあってもお姉さんは無いだろう。

 

「えーっと、姿見ってあります? 全身を映せるものがあれば都合が良いのですが……」

「すみません、ここにはそのようなものは置いていなくて……確か、服を置いている店にならありましたよ」

「ありがとうございます! ご迷惑ついでにその場所も教えて貰えませんでしょうか!?」

「え、えぇ……」

 

 なぜか全身の血がサーっと引いていく感覚がしてきた。

 いやいやおかしい。いくら日本人が童顔だからって、そんなに実年齢と違うものなのか? しかもこの受付嬢さん、結構無理して上の年齢を言っていた様にも見えたぞ。

 

 そしてこのお姉さ……受付嬢さんは俺の剣幕に気圧されたのか、すぐに地図を書いてくれた。

 

「お姉さんありがとうございます! このお礼はいつか必ずします!」

 

 俺はお姉さんから地図を受け取ると、すぐさま目的地に向かって走り出した。

 

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