第一話 冒険の始まり 1
何にも考えてないのでエタる可能性大です。
それが異常事態だと乗客たちがはっきりわかったのはシートベルトを締めて衝撃に備え、添乗員の指示に従うように放送が流れたからである。
広い海の真中で動力の大半が制御不能に陥り、10分以内に墜落してしまう見込みであるという悲痛な放送がながれて、機内はパニック寸前となった。
搭乗員たちが冷静な行動を喚起しながら、脱出用パラシュートと、救命胴衣を配っていく。
「マジかよ。不時着とかできねぇの?」
今は真冬で、機体はおよそベーリング海の上空を飛んでいる。まだ昼のうちであるとはいえ、とても海に入りたいと思えるような時期ではない。
修学旅行でニューヨークへ行くことになっていた学生たちは、これからの予定に対する高揚感から一気に絶望へと落とされていた。中には泣き始めてしまったものもいる。
「やめろよ、まだ死ぬって決まったわけじゃねぇし」
亜久間正義は隣の席で親にお別れのメールを打とうとしている級友からスマホを取り上げる。
「大体、……繋がんねぇだろ? かっこ悪いことすんなよ」
「亜久間はなんでそんな落ち着いてるんだよ!?」
「おめぇがパニくってるの見て冷静になったわ」
そう言って亜久間は努めて冷静を装いながら周囲の様子をうかがった。
添乗員たちの顔色も悪い。どうにか乗客の混乱を押しとどめてはいるが、添乗員とて実際に墜落の経験がある人間などほとんどいないだろう。緊張が、乗客にも伝わってきている。
当然ながら、のんきに構えていてよいという状況ではないので、多少の緊張はあってしかるべきなのだが、声と体を震わせながら乗客に呼び掛けている新人と思しき人は、奥に行って人前に出ないようにするべきであろう。見ているだけで乗客は恐怖感を募らせてしまう。
そうした乗客たちの不安と恐怖をよそに、機長は海面に不時着を試みることに決定したようである。グッドラックの言葉で締めくくられた機内放送の直後にさらなる異変が機体を襲った。
「そ、空!?」
今にも墜落しようとしていた航空機が真っ二つに割け、亜久間の前方には大空が広がり、同時にものすごい突風が機内に吹き荒れる。
機体は一瞬で平衡感覚を失い、驚いた乗客たちが悲鳴を上げた次の瞬間には爆散し、海の藻屑となった。
その日のうちにその事故はニュースで大々的に放送され、救助隊が結成されたが、生存者の見込みは限りなく薄い。そう報道された。
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某人気漫画のキングを見て感銘を受け、俺yoeee作品推進中です。