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 およそ三日で着くと言っていたが、あれは間違いだった。

 いや、正確には間違いじゃなかったんだけど、実際には一週間以上かかった。何せ、イクロックの言った三日は不眠不休で歩き続けた場合の三日だった。休息を入れ、歩行速度も一定せず、あとゾンビを相手にしなければいけないので軽く倍以上の時間を要した。

 さて、召喚陣のある都市――ロネクへと到着した俺とイクロックだが、最悪の出迎えを受けた。

「げっ」

『既に溢れている、か』

 都市を守る門からゾンビがふらりふらりと出てきているのが見える。門自体も大破していて、その回りの防壁も崩れかけている。ここに来るまで軽く二百を超えるゾンビをあの世に送ってきたけど、更にゾンビを倒さねばならないようだ。

「因みに、召喚陣ってどこら辺にある?」

『都市の中央だな。外観を見た感じでは依然と変わっていないからそうだと思うぞ』

「中央って……」

 行くまでの障害が凄いな。ゾンビ相手ならイクロックの力を借りて無双出来るけど。

『して、これからどうする? 一度休息を取るか?』

「いや、このまま強行突破で。ここで休んでもゾンビに集られる未来しか見えないし、だったらもうさっさと召喚陣のある場所まで行った方が時間の浪費も少なくて済む」

『分かった。では、さっさと我を被れ』

「了解っと」

 俺はイクロックを被って、幽霊みたいな状態になる。イクロックは俺の身体に入り、背負っていたリュックを背負い直す。食料はもう尽きたから、捨て置いてもいいとは思うけど、一応方位磁石や傷薬とか入ってるからな。何かの時に必要になるかもしれない。

「じゃあ、行くか」

「そうだな」

 俺とイクロックは都市内部へと向けて駆け出す。ここからは目の前のゾンビだけを倒すだけに止めて、早急に召喚陣へと向かう。

 かれこれ一週間以上もゾンビを倒して来たので、もうスムーズに魂を抜き取る事が出来る。すれ違い様に胸に手を突っ込み、駆けながら魂を体から引きはがす。イクロックは俺の後ろを安全についてくる。

 都市と言うだけあり、門の内側は高い建物が乱立しているが、流石に日本の高層ビル群団よりも何段も低い。それらの建物は、窓ガラスが割れ所々壁が剥落、それに半壊してるものもある。ゾンビ相手に抵抗した時の名残か、はたまた別の要因かは分からないけど、不意に崩れる危険があるからあまりここにはいたくないな。

 現在通行中の大通りも石畳で整備されていたみたいだけど、結構抉れて穴が開いてたり、石畳が吹っ飛んでたりしてるから足元に注意しないといけない。

 まぁ、今の俺は注意しなくても躓く事はないけどさ。

「ツナギユウキ、止まれ」

「えっ?」

 進行方向にいるゾンビを順調に無力化していると、イクロックに呼び止められる。

「どうした?」

「ここからは慎重に進む必要があるぞ」

「へ?」

「見ろ」

 少し険しい顔をしたイクロックが右の方を見る。そちらには何もいない……いや、いた。

 半透明でまわりに溶け込んでいる人型の何かが。ぼろいローブを羽織っていて頭はあるけど顔はない。で、ふよふよと宙に浮いている。

 何だあれ? 今まで見た事無い奴だぞ?

「あれは死霊だ」

「死霊って、あれ、霊なのか?」

「あぁ。元は腐肉人だが、魂が長い時間呪いの蠢く身体に閉じ込められると魂にも浸蝕され、肉体を壊して這い出てくる。そして、霊故に今の汝に触れる事が出来る」

「なっ」

 マジかよ、ゾンビ相手だと無敵なこの状態に触る事が出来るのか。無双タイムはここで終了か。

 すると、死霊は俺目掛けて飛んで来た。しかも、結構な速度で。ゾンビ犬と同じくらいの速さだ。

「避けろ」

「うおっ⁉」

 俺とイクロックはすかさず回避し、接触する事は無かった。

「死霊の場合は生者に憑りつき、生気を吸い取って殺しにかかってくるぞ。殺されれば、もれなく腐肉人の仲間入りだ」

「マジすかっ」

「因みに、今の汝でさえあれに触れられたら呪いの影響を受けるぞ。その場合、一定量の呪いで死霊の仲間入りだ」

「げぇ!」

 天敵の出現に首筋に物凄い寒気を覚える。今までが無双状態だったから、余計にあの死霊が怖い。

 と会話している最中に、また死霊は俺達に突っ込んでくる。

「ぎゃあ!」

 それぞれ左右に避けて事なきを終える。

「ど、どうすればいいんですかイクロック先生⁉」

 何時までも避け続けてる訳にはいかないので、打開策はないかとイクロックに尋ねる。「生憎と、今の汝にどうこうする術はない」

 で、まさかの答えが返ってきた。俺が奴に対する対抗手段はないそうです。

「え、今の俺じゃどうにも出来ない?」

「あぁ。先程も言った通り、触れるだけで呪いの影響を受け、死霊に近付くだけだ」

「じゃ、じゃあどうすればぁ⁉」

 質疑応答タイムにも拘らず、死霊は俺達に向かって来たので、即回避。こいつを相手取らずに尻尾を巻いて逃走した方がいいのは分かった。けど、こいつの飛ぶ速度ゾンビ犬並みだから逃げ切れる自信は皆無だ。今は視界から外さずに対峙してるから避けられるけど、背を向けたらその瞬間に終わりな気がする。

「何、対抗策が無い訳ではない。先程から準備もしている」

「準備?」

 見ると、イクロックの右手に何やら淡い青色の靄が集まっているではないか。

「それ、何?」

「我の霊力を物質化したものだ。……よし、これで行けるか」

 淡い青色の靄が完全に右手を隠すのを確認すると、イクロックは死霊へと向かって躍り出る。死霊もイクロック目掛けて一気に飛んでくる。

「ふっ」

 イクロックは靄を纏った右手で死霊の顔面を殴り付ける。すると、死霊は音も無くすぅっと消えたではないか。そして、右手の靄も消え去っている。

「え? 何したの?」

「我の霊力で呪いを浄化し、魂を解放しただけだ。呪いの影響さえなくなれば、魂は自ずとあの世へと向かう」

「……成程」

 霊力って、凄ぇ。

「ただ、未だ汝の身体に馴染んでいない為か、霊力の物質化に時間がかかる。死霊の呪いを浄化する最低限の量を物質化するには十二秒は必要か」

 完全に馴染めば一瞬なのだが、とイクロックは軽く眉間にしわを寄せる。十二秒、か。結構時間掛かっちまうな。でも、死霊が一体だけなら避ける事は出来るし、難とか行けるか?複数と相対してしまった場合はヤバいけど、避けながら霊力溜めればよさそうか?

「それと当たり前だが、我の霊力が切れれば浄化は出来なくなる。それどころか、汝の身体を動かす事が出来なくなる」

「え?」

 今、聞き捨てならない台詞を耳にした。

「我は霊力を持って汝の身体を動かしている。霊力が無くなれば意思のある生き人形になるだけだ」

 ここに来てまさかのカミングアウト。霊力の消費はイクロックの活動時間を削るとの事。つまり、イクロックは勿論の事、俺の身体にも危険が及びやすくなってしまう。

「死霊が出て来たならなるべくは我がどうにかするが、大軍勢が押し寄せて来るならば逃げるしかないな」

「あの速さから逃げるのは……」

「実体がないから、そこらの建物も通過して来るからな。先回りされる危険もある」

「…………」

「そこまで悲観する事はない。今の我ならば六十と七体までは対処出来る。それ以上になると身体を動かす事が出来なくなるがな」

 六十七、か。多いような少ないような。けど、ゾンビの数からして安心出来る数字ではないのは確かだ。ゾンビよりは数は少ないだろうけど、ここまで大量のゾンビがいるから、死霊もそれなりの数がいると考えた方がいいかもしれない。なるべく死霊に遭遇しないように召喚陣へと向かわないと。

「イクロック、死霊に見付からないように行く事って出来る?」

「奴等の感知範囲は我の感知範囲より遥かに狭い。故に、避けて進む事は可能だ」

「よし、じゃあその方向で。因みに、死霊は近くにいたりする?」

「いや、ここらにはもういないな。暫くは直進してもよさそうだ」

「なら、行こう」

 新たな脅威に遭遇しないように、俺とイクロックは都市の中心部へと向かう。


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