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 異世界転移。

 ひょっとした切っ掛けで偶然赴く。もしくは向こう側からアクションがあって呼び出される。神の導きにより誘われる……等、異世界に行く方法は様々だ。

 もっとも、今羅列したのはフィクションでよくみられるものだ。実際に起きる訳がない。あくまでもフィクション。現代の地球では到底発現しないような事象や空想上しか存在しない生き物をさも当然のように闊歩させ、読み手(読者)を、もしくは遊び(プレイヤー)を空想世界へと一時的に浸らせる役割を持つ。

 最初からその世界の住人ではなく、自分達と同じ世界から別の世界へと向かった者が主人公となると、こちら側からしても感情移入がしやすくなる……と思われる。

 昨今だと、そんな小説が多く散見される。やはり、そういったファンタジー世界にあこがれを持つ者が多くいるから、それだけ多くの種類の小説が生み出されているんだろう。

 さて、前置きはこれくらいにしておこう。

 俺――津奈木勇希は異世界に来た。正確には、知らず知らずのうちに来てしまった、だ。

 異世界転移なんてフィクションの中だけ……少なくとも十分前まではそう思っていた。

 だが、学校帰りに突如地震が発生し、それが原因で運悪く頭に何かが落下してきた。そこから少し記憶が飛んで、気が付いたら見知らぬ場所に俯せになっていた。

 中世の西洋の田舎。西洋ファンタジー系統のゲームで始める時最初に主人公がいるような村だった。

 ついつい頬を抓って夢じゃないかと確認したが痛いだけだった。

 そして、夢じゃないと分かると俺は回れ右をして走り始めた。

 何故かって? そりゃ、目の前にゾンビがいたからだ。眼が白濁していて、皮膚も気味悪い程に青白く、所々に苦学され落ちて骨が露出し、口元に血っぽいものがこべりついていた。それも、三人。いや、三体?

 更に、辺りの臭いも気分が悪くなる腐臭っぽいので充満していたし、ゾンビの足元には生き物の生れの果てが横たわっていた。

 夢であって欲しいと言う儚い願いは聞き届けられず、逃げなければ恐らく殺される。そんな状況下で逃げない訳がないじゃないか。どっかの映画の撮影なんて言う線は最初から考えてない。状況から考えて有り得ないから。

 まぁ、足が竦まなかったのは運がよかった。ホラーゲームの実況とか、ホラー映画観て耐性が知らず知らずに出来ていたみたいだ。

 で、ここはファンタジー世界と言うよりは某生物兵器が蔓延する作品の四番目に近い所だった訳で、そうなると死に方は悲惨極まる事も予想される。

 民家に逃げ込むのは愚策だろうと思い、走って村から離れる事にした。民家に入って新たなゾンビと鉢合わせ。あら、こんにちは。今日も天気がいいですねなんて会話をする暇もなく食される可能性があったからな。こちらが、あちらに、食される、という。

 って、自分で言っといてなんだが現在ここの空は曇天だから天気はお世辞にもよくはない。

 後ろを振り返ってもゾンビは走る事無く、ゆっくり歩いてこちらを追い掛けるのが見えた。走って追っ掛けてくるイレギュラー化はしていないようで少し安堵するも、速度を緩める事はしなかった。

 幾分か走り、村を抜けて森へと出た。まばらに木が生えて障害にしかならないが来てしまったものは仕様がない。このまま村に戻ってゾンビの熱い歓迎を受けるよりもゾンビがいないかもしれない森の中を突き進んだ方がマシだ。

 そう思って森の中を走った。途中木の根に足を取られそうになったり、ぬかるみに嵌まって転びそうになるも怪我らしい怪我はせずに済んでいる。

 そして現在。

「はぁ、はぁ、何だ、こりゃ?」

 森の中を進んでいたら遺跡っぽい所に辿り着いた。

 石を彫って作られた入口に両脇に聳える柱。二等辺三角形の傾斜が付いた屋根。それらは苔が生えたり蔦が走っていたりと、明らかに手入れはされていない。

 結構大きいな。体育館くらいはありそうか? 見た目はゲームだと大抵神殿って呼ばれてる感じだな。

 ここに入るべきか入らないべきか。下手に入ると大量のゾンビがお出迎えという悪夢が待ち構えている可能性もあるから、入らない方がいいかもしれない。

 ただ、走って疲れたから座って休みたい気持ちもある。流石にぬかるんでる森の地面に直に尻をつけるのは気が引ける。なので、中に入って少し休息を取ると言うのも手ではある。

 いや、中にあまり入らずに入口に腰を掛けるだけでもいいか? そっちの方がまだ安全か?

 パキッ。

「ん?」

 とか思案していたら、背後で枝を踏む音が聞こえた。

 恐る恐る振り返って見れば、そこには所謂ゾンビ犬が二匹。涎を垂らしてよたよたとこちらに近付いてくるのが見て取れてしまった。この世界にはゾンビになったワンちゃんもいるようだ。

 そして、二匹は僅かに前屈みになる。味方によっては脚に力を溜めているように見えなくもない。あ、これはヤバい。

 嫌な予感がしたので、即座に前を向き直って遺跡の中へと全力ダッシュ。



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