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 東へと戻る途中でも魔物達は容赦がない。

 だが召喚モンスター達も容赦はしない。


 ラプターはリグを貼り付かせて地道に仕留める。

 ツルはヘリックスが地上に落としてヴォルフが仕留める。

 オレは見てるだけだった。


 楽だな。

 サモナーとしてはこれが正しい姿なのだろうが。


 今までと少しだけ違ってきている事もある。

 ラプターは都合3匹を狩ったのだが、古代石1個を得ていた。

 補助スキルの【解体】はまるで育ってないのだが、多少は効いているような気もする。


 森の迷宮に到達する頃にはステータス異常はほぼ解消していた。

 ここで残月とヘリックスは帰還させ、ジェリコと文楽を召喚する。

 文楽には護鬼が使っている弓と矢筒を持たせた。

 ウッドパペットはあまり戦闘向きではない。

 とはいえレベルアップを図るには戦闘もやらせておきたかった。

 スケルトンやブランチゴーレムを相手にするのであれば弓矢はあまりいい手段ではないが、この際仕方がない。

 オレもいるしヴォルフやジェリコだっている。

 同時召喚できるモンスターの数が増えているのだ。

 戦力が低下している訳ではない。



 スケルトンどもを蹴散らして洞窟を踏破して森の迷宮に到達した。

 ジェリコがいるからその歩みはやや遅くはあったが。

 その中で分かった事がある。

 スライムのリグなんですが、スケルトンとは相性が悪いようだ。

 スケルトンは2箇所の人魂部分を散らして破壊すれば撃破となる。

 ところがリグの溶解能力は骨だけのスケルトンにまるで通じなかった。

 無論、スケルトンの攻撃はまるでリグに通用していない。

 スケルトンの人魂にもリグは触れている筈なのだが、人魂を散らす事もできないらしい。


 互いに延々と戦い続ける事になる。

 これは互いに相性が悪い、と言うべきかな?


 文楽の弓の腕は悪くない。

 淡々と攻撃を当ててくれていた。

 護鬼と比べたら矢の威力はステータス相応に見える。

 連射は護鬼ほど速くもない。


 但し命中率は素晴らしいものがある。

 器用値が高いからだろう。

 後衛で使っていく分には十分に戦力になるな。



 森の迷宮はややプレイヤーが多くなってきていた。

 広間でキノコやブランチゴーレムを相手にしてみる。

 リグの溶解能力はキノコには効きが悪く、ブランチゴーレムは更に効きが悪かった。

 スケルトンもそうだが、どうやら肉を持つ魔物が相手でないと具合が悪いようだ。

 ただ物理攻撃を無効化する能力は非常に有効である。

 ジェリコに貼り付いて防御に大活躍でした。


 オレもリハビリがてら前衛に立って戦闘に加わっている。

 ここではロッドも持たずに最初から素手で戦う方が向くのだ。

 存分に暴れさせて貰った。

 たまに他のパーティに見られていたりするんだが気にしたら負けだ。



 レギアスの村には夕飯前に着けばいい。

 そう思って森の迷宮で狩りを続けていった。

 ここならば戦いなれているし全滅の危険も少ないだろう。


 狩りを続けていく。

 重視したのは文楽の経験値稼ぎみたいなものだったのだが。

 それとは関係なく気がついた事がある。

 補助スキルの【解体】だ。


 数多く剥ぎ取りをしてみた事で分かったのだが。

 たまにだがアイテムを2つ、剥ぎ取る事がある。

 キノコで2個以上のアイテムを入手、というのは記憶になかった事だ。

 微妙に、だがちゃんと効いているらしい。



《これまでの行動経験で【解体】がレベルアップしました!》



 成長もしてくれている。

 だが1つだけ誤算があった。

 原木も余計に拾ってしまうのだ。

 重たいです。

 まだ《アイテム・ボックス》には余裕はあるが。


 先々で色々と重たいアイテムを拾う事を想像するとどうだろう。

 色々と悩ましい事になるかもしれない。



《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『文楽』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 キノコの群れを全滅させた所で文楽がレベルアップした。

 文楽のステータス値で既に上昇しているのは器用値だ。

 任意ステータスアップは精神力を指定しておく。



 召喚モンスター 文楽 ウッドパペットLv1→Lv2(↑1)

 器用値 25(↑1)

 敏捷値  8

 知力値 18

 筋力値 12

 生命力 12

 精神力  7(↑1)


 スキル

 弓 料理 魔法抵抗[微] 自己修復[微]



 器用値の突出ぶりが凄い。

 他の数値と揃えるのは少し無謀だろう。



 文楽がレベルアップした所で森の迷宮は後にした。

 ジェリコとリグは帰還させてヘリックスと黒曜を召喚する。

 黒曜石の矢はいくつか、矢尻部分が破損してしまっていたので、ダウジングを使う。

 森の中では適当に狩りをしながら黒曜石も少し拾っていった。

 オレのステータスも元に戻っているようだ。



 村へとゆっくり進んでいく。

 その行程で少し気になることもあった。

 ヴォルフが、ヘリックスが、黒曜が普段以上に警戒しているのだ。

 何かいるのか?

 彼らにも確信がある訳ではないようだ。

 少し、気になる。

 だが森の領域を抜けて村に入ったら危険はあるまい。

 レギアスの村には早めに入る事にした。



 村の中ではヴォルフ達の警戒レベルは普段通りに戻ったようだ。

 何だったのか。

 またPKとか?

 確かにその可能性はある。


 リックがいるであろう露店を探すとすぐに見付かった。

 優香も屋台にいる。

 NPCのお客がいるので目礼だけを済ませて屋台裏に回った。

 まだ時刻は午後4時半といった所だ。

 夕食にするにはまだ早い。



「キースさんいらっしゃい」


「どうも」


 ヘルガが店番を買って出たようで、リックが来てくれた。

 レン=レンも同席である。


「フィーナさん達は西に向かいましたけど会いました?」


「ええ。エリアポータルで会いました。私は死に戻りもあって仕切り直しですね」


「それはまた、大変でしたね」


「装備品の受け取りもありますし」


「ああ、そう言えばマルグリッドさんが来てましたね。もうログアウトしてるかと思いますが」


 ありゃ。

 やはり入れ違いになっているのか。

 明日の朝、また来るとしよう。


 改めて溜まっていたアイテムを《アイテム・ボックス》から取り出していく。

 無論、幾つかは残しておくのだが。


「へえ、これはいいな」


「この皮も何かに使えそう」


 リックはインコが落とした極彩色の翼に喰い付いたようだ。

 レン=レンは茶色熊の毛皮や水玉狐の皮に注目している。

 ん?

 そう言えばレン=レンは服飾職人だったな。


「これで防寒着って出来ます?」


「1つで十分。硬革にする訳じゃないから作成もそんなに時間はかからないし」


「え?じゃあ防具にするには?」


「かなり手間。サキさんみたいなレザーワーカーじゃないと」


 そうか。

 なんか微妙に生産職では被ってくる領域があるんだよな。

 皮だって防具にも服にもなるし、仕方がない部分もあるけどさ。


「どこか寒い場所にでも行く予定が?」


「まああるような、ないような」


「じゃあこっちの狐の皮、マフラーみたいに加工できるけど?」


「ほう」


 いかんな。

 手持ちの金額が目減りしているのに依頼を出したくなる。

 だがリックが気を利かせてくれた。

 アイテムの買い取り額から加工費を引いて精算してくれるようだ。

 助かります。

 そうなると手元に持っておきたいアイテムも出てくる。

 怒鶴の嘴だ。

 3個は残しておく事にする。

 そうなると持ち出しがあるか、と思ったがむしろ戻ってきました。

 リック曰く、極彩色の翼は港町では非常に高く扱われているのだとか。

 どうやら贅沢品として海向こうと交易品にされているそうだ。

 それでか。

 インコ狩りはちょっと面倒そうだしな。



 レン=レンにオレのサイズを測って貰う。

 今の装備の上から着る事にしたからかなり大きなものになりそうだ。

 それでも熊の毛皮だけで賄えそうである。

 まあデカかったしな。

 防寒着の細部を少し話しておく。

 オレの装備は革装備で突起物もなかったのは幸運だった。


「あと注意点。多分だけどかなりモコモコすると思う。何かのステータスにマイナス補正があるかも」


「了解」


 まあそれは仕方がないよな。

 納期は3日となった。

 レン=レンはリアルの関係で遅くまでログインできないそうである。

 それでも納期3日って速いよね?


「うちのプレイヤーズギルドのいい所は仲間が多い所ね。下職って事になるけど」


「ああ、成程」


 そういえばオレが装備している革鎧もそうだったような。

 生産職も人数をかけたら効率良く注文を捌けるのは当然だ。

 性能が十分に発揮できているのなら問題ない。


 アイテムを大幅に整理できたのでかなり《アイテム・ボックス》に余裕が出来た。

 キノコみたいなものは兎も角、原木がなくなってくれたのは大きい。


 問題が1つ残っている。

 古代石だ。

 リックも首を捻っていた代物である。

 オレも売るのは保留にしていた。

 2個で重量4もあるから微妙に荷物になる。

 出来れば処分したいのだが。


「魔石と同じで魔力を伴ったアイテムみたいね」


 レン=レンがセンス・マジックの呪文を掛けた上で古代石を眺めていた。

 オレもそれに倣う。

 因みにこの状態で【鑑定】しても結果は変わりない。


 2つの古代石には確かに魔力が込められている様に見えた。

 魔力はその色を微妙に変えながら揺らいでいるようである。

 なんだろう。

 気になるよね?


「石ノミってあります?」


 気になってしまったら仕方がない。

 露店の売り物になっていた石ノミを1本、購入した。

 生産職のストーンカッター向けに在庫にしていた代物らしい。

 うん。

 手に持ってみるとなかなかいいぞ。


 大工道具から金槌を取り出した

 古代石に石ノミを向けて金槌で叩いてみる。

 手ごたえ、最悪。

 傷も付かない。

 あれえ?


「キースさん、もしかして魔力が影響しているのでは?」


「え?」


 ああそうか。

 魔力を発しているような代物なのだ。

 ただの工具では通用しないのだろう。

 ではこうだ。


「エンチャンテッド・ウェポン!」


 魔力には魔力を。

 これでどうだ?

 金槌を振るうと僅かだが石片が飛んでいく。

 だがここでやると迷惑だよな。


「ちょっと周囲に迷惑だから後でやってみますよ」


「そうですか」


「何かが中にありそうですよね」


 うん。

 今日は師匠の家に戻ったらポーション実験をするつもりであったが。

 先にやっておきたい事ができたようだ。

 ちょっとだけ楽しみである。


 かなり早い時間だが優香の屋台で夕食を買い込んでテーブルで食べておく。

 ついでに調味料も露店で買い込んだ。

 海塩、岩塩、黒糖、胡椒、ビネガー、オリーブオイルといった所になる。

 料理道具はパスだ。

 錬金術で使う道具で代用はできるだろう。

 まあ文楽に作らせて見て不都合があるなら買い足せばいい。



 レギアスの村から師匠の家にと戻る帰路、ヴォルフ達の警戒は一段と強まっていた。

 やはり何かある。

 警戒している、というより何かに困惑している風にも見える。

 何だろうな。

 オレも警戒しておくとしようか。

 魔物は見かけてもパッシブなら戦闘は仕掛けずに進んだ。

 黒曜石は幾つか拾う事が出来ている。

 地味だが収穫があるとうれしいものだ。


 師匠の家には問題なく到着していた。

 だが普段と違う事もある。

 マギフクロウがオレの左肩に飛んできた。

 左肩に止まっていたヘリックスがオレの左腕に移って場所を譲る。

 森の中を索敵しに飛び回っていた黒曜がオレの右肩に戻ってきた。

 だがもう普段の指定席は埋まっているのだが。

 黒曜はオレの右肩に強引に止まっていた。

 まさに止まり木。

 そんな状況に陥ってしまっていた。


 師匠のマギフクロウがオレにここまで絡んでくるのは珍しい。

 なんとなくだが、オレを護衛しに来ているようにも見える。

 いや、本当に何なの?



 師匠の家に入ると召喚モンスター達も安心したようだ。

 オレも少しだけホッとした。

 彼らの緊張感がどうしても伝わってしまうからなんだが。

 いや、本当に何があるんだろう?


 オレとしてはやれる事を先に済ませておきたい。

 地下の作業場に降りると早速とりかかった。


 最初に消費したポーションの補充を済ませる。

 回復丸も1つだけだが作成した。

 黒曜石の矢も使えなくなった分は補充しておく。


 そしてこれらの作業には文楽も手伝わせていた。

 ある程度、こっちの意図を汲み取ってくれるみたいで実に良くフォローしてくれている。

 有能だ。

 オレよりも遥かに器用値が高いのも頷ける。

 今後は生産活動のお供としよう。



 さて。

 ポーション実験をする前に古代石だ。

 削ってみるか。


「エンチャンテッド・ウェポン!」


 石ノミを呪文で強化して削っていく。

 作業場に反響して音がより大きくなるが気にしない。

 ヴォルフなどは最初のうちは五月蝿そうにしていたが、すぐに慣れたようだ。

 

 コツコツと削っていく。

 時間を忘れて。

 削れなくなってしまってからエンチャンテッド・ウェポンの効果が切れている事に気が付く始末だ。

 コツコツ。

 コツコツと。

 視覚的につまらないのでセンス・マジックの呪文を使ってみた。

 一気に風景が派手になる。

 なにこれ、面白い。


 いつのまにか数箇所に穴を繋げる様に穴を作り、大きな塊を剥ぐように削る事を覚えた。

 そうやって剥いだ石は魔力がもう宿っていないようだ。

 作業を続ける。

 遂に何かが顔を出していた。

 何か宝石の原石だろうか。


 そこからは慎重に作業を進めていく。

 どうにか古代石の中から原石らしきものを取り出していた。



《これまでの行動経験で取得が可能なスキルに【石工】が追加されます》



 一瞬、取得するかどうか悩んだものだがここはスルーで。

 今やっている作業以外に用途が見付からない。

 それよりも原石が問題だ。

 【鑑定】してみる。



【素材アイテム】モルガナイト 品質C+ レア度2 重量0+

 ピンク色のベリル。別名ピンクベリル。

 透明度が高く粒の大きなものは魔法発動用によく使用されている。



 おお。

 ちゃんと宝石だ。

 これは期待していいのか?


 次もやってみるか。

 もう1つの古代石も呪文を駆使して発掘作業を続ける。

 時間は1個目に比べたらはるかに短い時間で宝石を掘り出した。



【素材アイテム】ブルースピネル 品質C レア度3 重量0+

 八面体の結晶を為す半透明鉱物。

 希少価値はさほど高くないが、加工次第で魔法発動の助けになる事で知られている。



 ありゃ。

 ブルースピネルがあったのか。

 レア度から判断すると、こっちの方が当たりっぽいな。

 中々いい収穫になった。



 でもね。



 作業も順調、成果もあったが片付けが大変だな、これ。

 文楽と分担して掃除です。

 いや、作業中は文楽が掃除をし続けていてくれたんですが、それでも石片が散乱している。

 外で出来ないかな、この作業。

 考えておいていいかもしれない。


 さすがに掃除までした作業場をポーション実験で汚す気がしない。

 今日はここで切り上げよう。

 2階に登っていくと召喚モンスター達を帰還させ、ベッドに潜り込むとログアウトした。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv10

職業 サモナー(召喚術師)Lv9

ボーナスポイント残8


セットスキル

杖Lv8 打撃Lv5 蹴りLv5 関節技Lv5 投げ技Lv4

回避Lv5 受けLv4 召喚魔法Lv10 時空魔法Lv2

光魔法Lv5 風魔法Lv5 土魔法Lv5 水魔法Lv5

火魔法Lv4 闇魔法Lv5 氷魔法Lv3 雷魔法Lv3

木魔法Lv3 塵魔法Lv2 溶魔法Lv2 灼魔法Lv2

錬金術Lv5 薬師Lv4 ガラス工Lv3 木工Lv4

連携Lv7 鑑定Lv6 識別Lv7 看破Lv2 耐寒Lv3

掴みLv6 馬術Lv6 精密操作Lv7 跳躍Lv3

耐暑Lv4 登攀Lv3 二刀流Lv4 解体Lv2(↑1)

身体強化Lv2 精神強化Lv4 高速詠唱Lv4


装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 雪豹の隠し爪×3 

   野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+

   雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式


称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者

   呪文目録


召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv7

残月 ホースLv5

ヘリックス ホークLv5

黒曜 フクロウLv5

ジーン バットLv5

ジェリコ ウッドゴーレムLv3

護鬼 鬼Lv4

戦鬼 ビーストエイプLv4

リグ スライムLv3

文楽 ウッドパペットLv1→Lv2(↑1)

 器用値 25(↑1)

 敏捷値  8

 知力値 18

 筋力値 12

 生命力 12

 精神力  7(↑1)

 スキル

 弓 料理 魔法抵抗[微] 自己修復[微]

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