829
「人魂が9つか。どうします?」
『今の状況じゃ触れないわね』
『これ以上の連戦は無理だから!』
まあそうか。
そうだよな。
そうですよね。
そう思いつつ祭壇に近付いて人魂を見る。
うん。
そんなオレをアデルとイリーナが横から覗き込んでいる。
大丈夫だって。
触らないから!
それにしても人魂は9つか。
9回楽しめそうと思えばお得感があるなあ!
『ここで小休止にしましょう』
『オッケー!じゃあインスタント・ポータル、使うよー!』
レイナがインスタント・ポータルを使うようだ。
ああ、オレは不要なんだけどな。
それに魔人に無力化されてしまう可能性がある。
外で待ち伏せしつつ、待ってみてもいいんだけどな。
まあいいか。
布陣変更をして、インスタント・ポータルの外に出てしまえばいい。
全員、帰還で。
逢魔、モジュラス、清姫、待宵、キレートを召喚しました。
『キースさん?』
『外、出ちゃうんですか?』
「ああ。魔人にはインスタント・ポータルを無効化する奴もいるしな。念の為だ」
『まさか、人魂に触るつもりじゃないでしょうね?』
「うん?そんなつもりは無かったんだがな」
それ、いいかも!
そんな事を考えてしまっていたけどね。
アデルもイリーナもジト目です。
あ、信じてないな?
確かにオレもオレ自身を信じてません。
「心配しなくても獲物を先に奪うような真似はしないから」
『そっちの心配じゃないんですけど!』
おっと。
アデルに叱られちゃいました。
そっちじゃなきゃどっちなんだろう?
『キース?』
「ユニオンを一旦、抜けます。念の為、周囲を警戒してますので」
『いいけど、大丈夫?』
「ええ」
フィーナさんに断りを入れるとユニオンを抜ける。
そしてインスタント・ポータルの外に出た。
さて。
どう待ち伏せしよう?
インビジブル・ブラインドを連続で使うとするか。
正直、効率は悪いけどね。
入り口に一番近くにある祭壇の隙間にでも潜んでいるとしよう。
モジュラスと清姫は天井だな。
いや、その前に一仕事をして貰おう。
「モジュラス、罠だ」
オレの呟きにモジュラスは笑顔で応じる。
本来の姿ではないが、顔に浮かんだ笑みの迫力が凄い。
そして半人半蜘蛛の形態になると早速作業を始めたようだ。
何をしているのかはまるで分からないけどね。
清姫もまたその姿を変化させている。
半人半蛇へ。
そして完全に白蛇となると地面から壁に這い回る。
どうも奇襲するのにいい場所を探しているようだが。
蛇身が見えなくなった。
祭壇周りのどこかに隙間でもあったのかな?
鎌首だけが一瞬見えた。
そして消える。
では待宵だ。
キレートの姿を写し取らせる。
共にオレの影の中に潜んでしまう。
(インビジブル・ブラインド!)
オレは狼形態のままの逢魔と共に姿を隠しておこう。
場所は広間の出入り口近くだ。
得物は?
神樹石のトンファーだけでいいか。
念の為、グレイプニルも肩に掛けておくとしよう。
では。
待っている間は逢魔の毛並みを堪能しておくか。
アデルみたいなモフモフ好きじゃないけどね。
済まないな、逢魔。
ちょっとの間、オレの暇潰しに付き合って欲しい。
時刻は午前9時10分。
逢魔は体を横たえて目を細めている。
オレはと言えばそのお腹を撫でてやっている訳だが、視線は広間の中央を彷徨っている。
既にモジュラスの姿は無い。
天井にも何か罠を仕掛けていたようだが、それも終えているようだ。
オレの目ではどこに潜んでいるのか、確認出来ません。
仮想ウィンドウでは全員、揃っているのは明白だ。
でも近くにいるのは逢魔だけという不思議な構図です。
分かっている。
これって暗殺者スタイルだ。
待つのは苦手だから、たまにしかしないんだけどね。
どうやらそんなに待たなくて済んだみたいだ。
広間に侵入者。
魔人だ!
逢魔がいつの間にか立ち上がり、いつでも襲い掛かれる様子を見せている。
少し待て。
魔人達はこっちに気付いている様子は無い。
インスタント・ポータルに対してもだ。
その理由は単純、呪禁導師がいないからだろう。
【識別】してみると?
ソードダンサー、ビーストメンター、マッドクラウン、パントマイムメンター、アクロバットメンター。
嫌な相手が混じってやがる!
パントマイムメンターは鬼門なのだ。
そして最後尾にマッドサンタ。
殺意が一気に膨らむけど、今は止せ!
抑えろ。
連中の動向を探る方が優先だ。
追従する戦力は意外に少ない。
デーモンロード・ヴァイカウントにデーモンロード・ヴァイカウンテスだけだ。
ちょっとした違和感がある。
《フレンド登録者からテレパスです!会話が可能となります》
誰かと思えばフィーナさんだ。
この状況では気が気じゃないだろうな。
『キース。見えてる?』
「ええ」
『こっちはまだ半分近くログアウトしたままよ。戦闘になっても支援出来るのも限りがあるわ』
「了解。でも襲いませんから」
『ここで何をするのか、見極めるのね?』
「ええ」
『了解。インスタント・ポータルの無効化が行われるかもだけど、その時はどうにか出来ると思うわ』
テレポートの呪文はフレンド登録者をターゲットにして跳ぶ事が可能だ。
再集合もそう難しくはない。
オレがユニオンから抜けているのだから、それを利用したらいいのだ。
死に戻りしなければ、ですけどね。
何にしてもインスタント・ポータルを無効化する様子を見せたら問答無用で奇襲するぞ!
「了解です。このまま静観、監視を続けます」
『お任せするわ』
テレパスを切る。
さて、ここからが大変だ。
殺意を抑えつつ、観察せねばならない。
インビジブル・ブラインドはまだ有効だな?
でも今のうちに継ぎ足しておこうか。
何が起きるのかな?
それを確かめておこう。
魔人達は等間隔で5名、広間の中央に向き合うような形で佇んでいる。
その足元には幾つかの魔法円と魔方陣が重なって行く。
魔人達の互いの距離が徐々に離れて行くようだな。
徐々に広間の壁側へと後退しているのだ。
魔法円と魔方陣はその動きに従って、より広範囲になっている。
それだけではなく、新たな魔法円と魔方陣が追加されているようだ。
これ、何かの儀式であるらしい。
ビーストメンターが祭壇の人魂に触れた。
おい!
それ、いいのか?
広間の中央に魔物が出現した。
ドラゴンスペクターロード、ドラゴンゾンビキング、スケルトンドラゴンキング。
3体のアンデッド系のドラゴンドか!
中々の戦力になる。
実に美味しそうです。
経験値的な意味で。
アンデッド系のドラゴン達は魔人を相手に襲う様子はまるで見せない。
襲っていいのに。
そんな事を考えていたけど、どうもこの構図は以前に見たのと一緒かな?
N1W7マップへと抜ける洞窟内部で似た事をしてたし。
それにどうやらこれで終わりじゃないようだ。
ビーストメンターが別の祭壇の人魂に触れる。
今度はデモンズスタッグの群れが出現する。
やはり戦闘にはならない。
ビーストメンターがまた別の祭壇に触れる。
今度は悪魔達だ!
アークデーモン、デモンズアポストル、デーモンロード・バロン、デーモンロード・バロネスからなる群れです。
だが不満だ。
デーモンロード・バロン、デーモンロード・バロネスが少ないだろ!
どうやら読めて来ました。
人魂は言わば魔物を呼び出してしまう罠だ。
魔人はここで魔物を強制的に呼び出し、配下として従属させているのだろう。
主導しているのはビーストメンターのようなのだが。
他の5名の魔人の様子が少々おかしい。
MPバーが半分以下に減っているからだ。
どうも魔法円を維持するにも消耗があるようです。
それはいいんだけど。
最も規模の大きい祭壇にある人魂にビーストメンターが触れた。
出現したのはデーモンロード・カウントとデーモンロード・カウンテス。
対で合計2体だ。
数が少ないけど、戦力で言えばアンデッド系のドラゴン3体よりも格上だろう。
タフネスの面で残念な点があるけどね。
大きさこそ違うけど、天使で言えばヴァーチャーに匹敵しかねない強敵なのだ。
弱い筈など無い。
ビーストメンターは?
どうやらこれ以上、戦力を増強する様子を見せない。
他の魔人5名のMPバーが一気に逼迫、2割程度になっているからだろう。
何だ。
もっと増量を希望する!
頑張れ!
もっとだ!
お前達、魔人だろ?
やれば出来る子だろ?
オレが名前付きの魔人か魔神ならこれで許さないけどね。
ギリギリ、気絶する寸前までやれよ!
だが危険が迫っていた。
ナメクジの魔物、デモンズスラッグが地面から壁に伝って移動している。
モジュラスと清姫はどこかに潜んでいるけど、見付かる可能性があるだろう。
いや、そもそもオレに迫っているし!
どうする?
先手を取られるのは好みじゃない。
殺られる前に、殺れ。
それがオレにとっての正義だ。
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」「リミッターカット!」
「メディテート!」「ブレス!」「インテリジェンス・アタック!」
武技を使い一気に駆け出す。
狙ったのはこっちに背中を見せていた魔人、マッドクラウン。
後頭部に神樹石のトンファーを撃ち込みつつ【呪文融合】で組んだ呪文詰め合わせを喰らわせた。
(((((((六芒封印!)))))))
((((((七星封印!))))))
((((((十王封印!))))))
(ミラーリング!)
地面に倒れ付したマッドクラウンの延髄に膝を落とした所でHPバーが砕け散った。
次々に魔物が殺到しようとしているけど、その動きは一気に鈍る。
蜘蛛の巣が魔物の群れを絡め取っていたのだ!
気付かなかったけどモジュラスは一体どんな規模で蜘蛛の巣を仕掛けてあったのか?
天井から幾つもの蜘蛛の巣が重なるように降って来てます。
(サンシティフィ・アンデッド!)
(サンシャイン!)
(ホーリー・ライト!)
(((六芒封印!)))
(((七星封印!)))
(((十王封印!)))
(ホーリー・プリズン!)
(グラビティ・プリズン!)
(フラッシュオーバー!)
((パラレル・シムーン!))
((ミーティア・ストリーム!))
(ディストーション・ジャベリン!)
(ミラーリング!)
アンデッド対策も当然だけどしましょう。
アンデッド系のドラゴン3体だけじゃない。
バンパイアデューク、バンパイアダッチェスもそこそこの数がいるからな!
「ガッ!」
逢魔が短く吠えて周囲に無数の光の槍を放っている。
既にその姿は半獣半人。
その全身に雷撃を纏う姿は実に派手だ!
蜘蛛の巣に絡められつつアークデーモン2体が迫るが、そのHPバーが一気に砕ける。
首だけが奇妙な角度に捩れている。
キレートか、そのキレートの姿を写し取った待宵なのか?
それは不明だがいい支援だ!
(ショート・ジャンプ!)
動きの止まったデーモンロード・カウンテスの背後に跳ぶ。
悪いけど速攻で仕留めるべきだろう。
手にしたグレイプニルで首を絞め上げ、続けて胴体を縛り上げる。
両足首まで簡単に梱包出来たのはモジュラスの糸で絡まっていてくれたからだ。
その糸はオレには全く影響していません。
実に有難い。
デーモンロード・カウントがオレに迫る。
相方を縛り上げられたからなのか、実におっかない表情になってます。
封印は?
効いている。
効いているけど得物の剣を引き抜く事もせず、爪を伸ばして襲って来る!
だけど動きは緩慢だ。
健気だな。
でも死ね!
爪を伸ばしている右手だが、楽々と避けつつ懐に入る。
右腕を肩に担いで一本背負いに!
出来ませんでした。
糸が絡んでいるから当然でした!
方針変更、肩に担いだ腕を首も使って固定だ。
右手首を捻って肘関節を極めに行く。
トンファーを持ったまま、左腕でデーモンロード・カウントの肘を上から撃ち付けた。
折れた?
いや、折った。
悪魔だけどちゃんと関節構造は人間に準じていて助かるよ!
左腕を振り回すのを頭を下げて避けつつ脇を抜けて背後に回る。
オレの右手には金剛杵。
悪魔の耳に押し当てて光の刃を展開した。
一発で仕留めたか?
いや、まだHPバーが残ってやがる!
悪魔の急所ってこどなんだろう?
デモンズアポストルに至っては訳が分からんけど、こいつの場合は人間と一緒と思いたいが。
金剛杵の刃を解除。
今度は胸元に先端を押し当てて再び刃を展開。
これでどう?
まだ残っているんかい!
((((エナジードレイン!))))
((((ディメンション・ソード!))))
((((パルスレーザー・バースト!))))
((((フォースド・ドライング!))))
((((ディクレイ・ヒート!))))
(ミラーリング!)
金剛杵で咽喉を貫きながら【呪文融合】で接触型呪文の詰め合わせをプレゼントだ。
どうにか仕留めたみたいです。
ようやくか。
だが戦況はどうだろう?
数を減らしに行かないと洒落にならんぞ?
((((((((((((((((((((バックドラフト!))))))))))))))))))))
(ミラーリング!)
適当に呪文をバラ撒きつつ掃討しよう。
天井からはモジュラスと清姫の支援が続いている。
空中位置にいた悪魔達もモジュラスの糸の罠に絡め取られて地上で四苦八苦していた。
逢魔、待宵、キレートが次々と着実に仕留めている。
任せていいかね?
オレは大型の奴を始末しよう。
アンデッド系ドラゴン3体だ。
特にドラゴンスペクターロードは危険だ。
雲散霧消を使わせずに仕留めておきたい。
それに糸の罠を抜けつつある魔物がいる。
デモンズスラッグ。
ナメクジの魔物だからなのかね?
広間のあちこちで爆発が連鎖するように生じていた。
バックドラフトの効果だ。
魔物が次々と吹き飛ぶ中、ドラゴンスペクターロードの姿が消えた。
クソッ!
もう封印が外れたか?
((フラッシュオーバー!))
((ディストーション・ジャベリン!))
((ライトニング・ブラスト!))
((パラレル・シムーン!))
((プリズムライト!))
((ミーティア・ストリーム!))
((アシッド・レイン!))
((ヘイルストーム!))
((スウォーム!))
(アースクエイク!)
(マグマ・オーシャン!)
(ミラーリング!)
気にせず追撃を喰らわせつつ、目の前のデーモンロード・バロンを蹴り飛ばす。
ドラゴンスペクターロードはどこだ?
まだ姿を現してくれません。
(ショート・ジャンプ!)
逢魔の肩に手を置いてドラゴンゾンビキングの背中に跳ぶ。
そこから見えた風景がもうね。
高笑いが漏れそうになる。
モジュラスの罠、効き過ぎ!
数で言えば圧倒的不利だが、戦況はこっちに圧倒的有利という矛盾。
奇襲、そして先手を打てたとはいえここまでの成功になるとは思ってませんでした。
おっと。
成功、とするのは早計だ。
全滅させるまで保留で。
ところで、ドラゴンスペクターロードは?
怒らないから姿を現しなさい!
封印して屠ってあげよう。
悪い事は言わないから!
それに魔人だ。
いつの間にか全滅してやがる!
サンタはオレが直々に仕留めたかったんだがな。
まあいい。
パントマイムメンターを相手にする事も無くなったし帳消しだろう。
(((((((八部封印!)))))))
((((((九曜封印!))))))
((((((イビル・アイ!))))))
(ミラーリング!)
ドラゴンスペクターロードが現れると同時に封印だ!
それに忘れちゃいけない。
足元のドラゴンドンビキングもいるのです。
ああ、何と幸福であるのか。
まだまだ、戦闘を楽しめそうです。
《只今の戦闘勝利で【剣】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【封印術】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【隠蔽】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【気配遮断】がレベルアップしました!》
うむ。
美味しかったかどうかは別だけど、美味しかったと言うべきだろう。
それにしても死体が多いな!
ベリルビーストは惜しいけど放置で。
正直、全部剥ぎ取れるとは思えない。
インスタント・ポータルが解除されたみたいで続々とプレイヤーの姿が出現する。
その殆どが呆れ顔だ。
「どうやらこの広間の仕組みは判明したみたいね」
「ええ、まあ」
「魔人が手駒を増やすのに利用かあ」
「でもプレイヤーだと普通に戦闘になるんだろう?」
「確認、しておこうか。それに延々と戦闘が出来ると思うし」
オレの発言に全員の視線がオレに向く。
えっと、何?
「ここの洞窟の入り口は2箇所。そこを封鎖したら戦力を大きく削げるかな?」
「それが出来ればだけどねえ。人員がもっと要るわよ?」
「伝手を使ってもいいけど。頼りたくはないのよね」
あの。皆さん。
オレの意見は?
「人魂、触っちゃダメですかね?」
「「「「「「「ダメ!」」」」」」」
「えー」
そんな!
いい遊び場だと思うよ?
闘技場と違ってアイテム要らずだし。
「今の状況だと魔人が来た時、大変でしょ!」
「そこはホラ、待ち伏せ出来るし」
「ここだと逃げ場もないし、相手次第で詰んじゃう!」
「適当な所でテレポートなりで跳べばどうだろう?」
「気持ちは分かるけど、今はE16マップの周辺を探索しましょう。ここにはいつでも来れるんだし」
「はあ」
確かに探索を優先すべきであるのは同意です。
仕方ない。
ここにはまた、改めて来てみるとしましょう。
「では、ここからどこに行きます?」
「N1E16マップのエリアポータルよ。紅蓮達がつい先刻、解放したって連絡があったわ」
「ほう」
「そこを拠点に周辺の探索を引き継ぐ事にしたいんだけど、どう?」
「了解です」
法騎士が率いる先遣隊は王城跡地から見て北東方向から来ているようだ。
N2E14マップのエリアポータル、ターニャの砦と同様にN1E16マップ周辺に戦力が迫っている可能性はある。
期待していいかもしれません。
出来れば更に隣接するマップの偵察も出来るだろう。
N1E16マップのエリアポータルに到着。
広域マップで見てみると、妖神の墓標となってます。
名前が不穏だって!
その様相は?
最初に目に飛び込んで来たのは古墳のように盛り上がった小さな丘だ。
その周囲は堀のようになっていて水が張ってある。
堀の外側もエリアポータル扱いなのだろうけど、結構な広さがあるようだ。
そしてN1E16マップの地形は?
森のようです。
しかも結構、深いようだな。
「紅蓮は?」
「ここです!」
紅蓮はいた。
だがその緑のマーカーに状態異常を示すマーカーが重なっている。
ステータス異常か。
かなりの激戦があったのだろう。
「平気なの?」
「見ての通り、ダメですね。死に戻りも4名出てますから」
「エリアポータル解放戦で?」
「いえ。解放を終えた後に襲われました。恐らくPK職です」
「撃退はしたのね?」
「ええ、どうにか」
紅蓮の表情は苦しそうだ。
同時に悔しさも滲み出ている。
「九重が単独で追ってます、危険ですし引き継ぎするか撤退の支援をお願い出来ますか?」
「了解。貴方は休んでいていいわよ」
「気を付けて!この周辺には魔人が率いる魔物もいます!」
「分かったわ」
紅蓮くんは一礼すると仲間達の元に戻って行く。
彼等もまた消耗が酷い。
半分に状態異常を示すマーカーが見えていた。
かなり酷くやられたのだろう。
「最初に私達のパーティが跳ぶわ。他のパーティは私をターゲットに跳んで!」
「「「了解」」」
フィーナさんのパーティがテレポートで消える。
少し経過してから、オレ達もテレポートで跳ぶ。
一気に合計8つ分のパーティの増援だ。
さて、九重は大丈夫かな?
そこは薄暗い森の中だった。
早速、ユニオン申請が来ていたので受諾、ウィスパーでの会話を可能にしておく。
周囲の様子は?
見えませんね。
『九重!ステータス異常になってるじゃない!』
『まだ軽いから大丈夫。それよりも見付からないように隠れて!』
跳んだのはいいけどね。
全員、どこに誰がいるのやら把握しきれてません。
それでもどうにかイリーナの春菜の姿は確認出来た。
イリーナはキングバジリスクと白蛇姫に撒き付かれたまま樹上にいる。
春菜はオレのすぐ傍にいる。
獣形態の逢魔を両手に抱えてモフモフしてます。
ま、いいけどさ。
程々にしておけよ?
「何かいるのか?」
『ああ。PK職だと思うが魔人と同行してインスタント・ポータルにいる』
『どこ?』
『あの辺り、茂みが途切れている所だ』
ふむ。
インスタント・ポータルか。
それでは見える筈も無い。
「魔人と?」
『PK職で魔人側に寝返った連中だろう。【識別】出来ていないけど多分そうだ』
『戦力は?』
『プレイヤーは2パーティ分7名だが【識別】まで出来なかった。魔人の戦力は分からない』
『7名?』
『サモナー系がいるんだ』
成程ね。
召喚モンスターがいる、となると色々と対応が難しいな。
間違いなく地の利を得ている布陣にしているだろう。
『ここから引き継ぐわ。九重はもう戻って』
『戦力が要るだろう?』
『大丈夫。仮想ウィンドウを良く見て。誰が来ていると思う?』
九重の反応は分からない。
無言の状況が続いている。
『分かった。一旦、紅蓮と合流する』
『そうして。進捗があればメッセで送るから』
どうやら九重は撤退するみたいだ。
改めて周囲を見回すけど、
ここって森が深い!
どうにか匍匐前進で他のプレイヤーの位置を確認する。
いるかな?
いる。
でも茂みに隠れていて判別し難いな。
「どうします?」
『位置は分かる?包囲して様子を見たいけど』
「襲う、というのはどうです?インスタント・ポータルも強制解除出来ますが」
『キース?』
『相手の戦力が分かってないですよ!』
『それにログアウト中だと逃がしちゃいますよ!』
おっと。
それもそうか。
インスタント・ポータルでログアウト中に無効化されたらどうなるんだっけ?
直近でログインしたエリアポータルか中継ポータルに飛ばされる扱いになった筈だ。
そうか。
魔人だけなら問題ないんだけどな。
インスタント・ポータルが解除されるのを待った方が無難か。
「少し距離を置いて監視。そんな所ですかね?」
『それが現実的でしょうね』
『人数を絞る?』
『今のうちに援軍を、というのもあるけど?』
『このままでいいと思うわ。時間的に小休止の可能性もあるし』
「ずっとログアウトしている可能性もありますよ?」」
『多分、それはないと思う。魔人も同行してるみたいだし』
うーむ。
待つ事になりそうだ。
正直、苦手なんだけどね。
それも仕方ないか。
待ってみるとしましょう。
オレもフィーナさんの位置から少し離れて茂みの中に潜み、監視を続けてます。
布陣は変えていません。
逢魔、モジュラス、清姫、待宵、キレートのままだ。
オレの位置からは右に春菜と此花が見えている。
布陣は各々、変えていたようだがここからは見えない。
確実なのは春菜が抱き枕にしているホワイトファングだ。
左に見える茂みにはアデルとイリーナが潜んでいる筈だ。
オレの位置からだと茂みから脚が出ていて隠れきれてませんけど。
ついでにホワイトファングの尻尾も見えてます。
アデル、お前もか!
『状況は?』
『変化なし』
『こっちもです』
『同じく』
「異常なし。いや、少し待って!」
2つの仮想ウィンドウに表示してあるのはモジュラスと清姫の見ている風景だ。
高い位置から俯瞰している形になる。
不自然に蔦が切れて落ちた。
清姫の見ている場所だ!
『何か来てるみたい!うーちゃんが警戒してる!』
『こっちも!』
逢魔を見る。
僅かに牙を向けて警戒している様子が分かる。
やはり何かいるのだろう。
「多分だけど姿を消して移動している。蔦が不自然に切れて落ちている」
『本当?』
『みたいだな。分かり難いけどこっちでも確認した』
『数は分からん。だがそこそこ多いみたいだぞ?』
「そうみたいだな」
動きが無くなった次の瞬間。
姿を現したのは魔人では無かった。
遠目で個々の【識別】は出来ないけど、見覚えのある姿があった。
全身、白の鎧兜ローブを左肩にだけ掛けている。
あれ、法騎士じゃないか!
『インスタント・ポータルの解除を確認!』
『魔人がいるよ!』
『魔物もいます!』
「奇襲ならいけますが」
『キース、PKを何名か確保出来る?』
『難しくない?』
「やってみましょう」
グレイプニルを使うまでもない。
こっちにはモジュラスと清姫がいる。
それだけで2名、確保出来るだろう。
おっと、一応は確認しておこうか。
仮想ウィンドウに現在の布陣を表示しておく。
これでユニオンを組んでいる面々に共有化が出来るだろう。
「サモナー系各位へ、現在の布陣を相互に確認!」
『了解!』
『ヤァ!』
「役割分担を徹底!それに向こうにも召喚モンスターがいる筈だ。そいつは見付け次第始末しよう」
殺伐とした指示になるけど仕方ない。
そうすべきなのだ。
一気に戦力を減らすにはそれが手っ取り早い。
拘束役は?
オレの配下ではモジュラスに清姫。
アデル配下のアラクネダッチェス。
イリーナ配下の蜘蛛神、メデューサ、キングバジリスク、白蛇姫。
春菜配下の青竜。
此花配下の白蛇姫
イリーナの布陣がちょっとおかしいけど森の中であれば納得だ。
『召喚モンスターの変更は?』
「今はもうダメだ。察知されるリスクがあるからな。それに数は十分、足りている」
『何か厄介そうなのもいますね』
「ああ。こっちも見えた」
イリーナに指摘されるまでもない。
デーモンロード・カウントとデーモンロード・カウンテスがいる。
森に隠れてもっといるかもだが、厄介なのは別の理由がある。
森の中では全体攻撃呪文が使い難い事だ。
まあどうにかしよう。
どうにかなるだろう。
いや、どうとでもなれ!
「私が先行します。いいですか?」
『お願いするわ』
さて。
奇襲だ。
大好きだ。
蹂躙できれば文句は無いのだが。
護衛役の悪魔が邪魔だな。
それに地形も幸か不幸か、深い森なのだ。
工夫せねばなるまい。
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」「リミッターカット!」
「メディテート!」「ブレス!」「インテリジェンス・アタック!」
武技を使う。
この距離だし気付かれる可能性は低い。
まあ気付かれても時既に遅し、ですがね。
(ショート・ジャンプ!)
魔人達の頭上の枝に跳ぶ。
もう手順は決まっていた。
次はこれだ!
(((((((六芒封印!)))))))
((((((七星封印!))))))
((((((十王封印!))))))
(ミラーリング!)
枝から飛び降りつつデーモンロード・カウントを狙う。
あ、忘れちゃいけません!
(メイズ・フォレスト!)
神樹石のトンファーをデーモンロード・カウントの頭上に食らわせつつ地表に降りる。
最初の獲物は?
墜落しているデーモンロード・カウントです。
丁寧に、殺ろう。
さあ、魔人側になったPK職の皆さんはどうする?
逃がしません。
逃がしたとしても追跡するまでだ。
テレポートで逃がす事も許さん。
特に事情を知っていそうな連中は逃がさん。
全員、仕留めてやる!
あ、仕留めちゃダメでしたっけ。
金剛杵をデーモンロード・カウントの目に押し当て光の刃を展開する。
いい感じで貫通したけど、これで終わるような悪魔じゃない。
((((エナジードレイン!))))
((((ディメンション・ソード!))))
((((パルスレーザー・バースト!))))
((((フォースド・ドライング!))))
((((ディクレイ・ヒート!))))
(ミラーリング!)
これでどうでしょう?
まだ僅かにHPバーは残っていた。
膝蹴りを追加した所でようやく沈んだみたいだ。
戦況は?
混乱の極みだが悪魔達は冷静に防御に徹している。
近距離だとメイズ・フォレストの効果も薄くなるのだが。
襲って来ていいんですよ?
早速、悪魔達が襲って来るけど目論見通り。
PK職を殺さず、悪魔達を仕留める。
それには今の状況は実に都合がいいのだ!
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv126
職業 サモンメンターLv15(召喚魔法導師)
ボーナスポイント残 5
セットスキル
小剣Lv95 剣Lv97(↑1)両手剣Lv99 両手槍Lv103
馬上槍Lv104 棍棒Lv93 重棍Lv94 小刀Lv97
刀Lv98 大刀Lv97 手斧Lv72 両手斧Lv68
刺突剣Lv95 捕縄術Lv98 投槍Lv101
ポールウェポンLv103
杖Lv107 打撃Lv115 蹴りLv115 関節技Lv115
投げ技Lv115 回避Lv124 受けLv124
召喚魔法Lv126 時空魔法Lv113 封印術Lv113(↑1)
光魔法Lv109 風魔法Lv109 土魔法Lv109
水魔法Lv109 火魔法Lv109 闇魔法Lv110
氷魔法Lv109 雷魔法Lv109 木魔法Lv109
塵魔法Lv109 溶魔法Lv109 灼魔法Lv109
英霊召喚Lv6 禁呪Lv112
錬金術Lv96 薬師Lv24 ガラス工Lv27 木工Lv56
連携Lv100e 鑑定Lv94 識別Lv105 看破Lv96
耐寒Lv80e
掴みLv80e 馬術Lv105 精密操作Lv80e
ロープワークLv98 跳躍Lv50e 軽業Lv50e
耐暑Lv80e 登攀Lv60e 平衡Lv100e
二刀流Lv97 解体Lv93 水泳Lv64 潜水Lv80e
投擲Lv50e
ダッシュLv60e 耐久走Lv60e 追跡Lv97 隠蔽Lv96(↑1)
気配察知Lv97 気配遮断Lv96(↑1)暗殺術Lv60e
身体強化Lv60e 精神強化Lv60e 高速詠唱Lv50e
無音詠唱Lv60e 詠唱破棄Lv60e 武技強化Lv101
魔法効果拡大Lv100 魔法範囲拡大Lv100
呪文融合Lv100
耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv80e 耐混乱Lv80e
耐暗闇Lv80e 耐気絶Lv80e 耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e
耐沈黙Lv80e 耐即死Lv80e 全耐性Lv25
獣魔化Lv24




