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洞窟の様子はずっと変わらないように見えた。
但し、緩やかに傾斜しているようで、僅かながら登っていくようである。
途中で分岐する洞窟があったが、全てスルーしている。
分岐する洞窟の方は降って行くようになっていたからだ。
広域マップで見ると、W2マップの北にあるN1W2マップにもう少しで行けそうなのだ。
W2マップからW3マップには森の迷宮のような関門はなかった。
ここもないのかもしれない。
洞窟はいくらか蛇行はしているようだが、基本的に北へと伸びているようだ。
そして僅かに登っている。
魔物はあれから遭遇しないな、と思っていたら奇襲があった。
頭上からだ。
よりにもよって戦鬼に、である。
「グァラァァァァァァ!」
洞窟はそこそこ広い。
でもその叫び声は耳を塞ぎたくなる程に響き渡って正直五月蝿いです。
戦鬼は頭上のアリの頭と胴体を掴むとそのまま左右に引き千切った。
ポーズがまるで筋肉アスリートです。
頭上から槍衾。
なんと頭上に穴が開いていた。
そこからアリが次々と沸いて出てきている。
これでは黒曜も気付かない訳だ。
混戦になった。
ロッドでは手数が追い付かないか。
背中のトンファーに持ち替えて戦闘を続けていく。
壁に押し付けてからアリの頭をトンファーで潰す。
同じく、前蹴りで壁と挟んでから蹴り潰す。
段々と慣れてきた。
まだ上の穴からアリが沸いて来る。
突き出される槍を結構器用に避けながら戦鬼が次々とアリの頭を捻じ切っていく。
ん?
捻じ切ってるよね?
そういう戦い方を覚えたのか。
護鬼も鉈と盾を交互に振り回してアリを屠っていく。
さすがに戦鬼ほどパワーがないので手数勝負だ。
隙が出来かける事もあるのだが、そこは黒曜がフォローしてくれているようである。
自然と召喚モンスター同士にも連携プレイが出来上がっていく。
いい感じだ。
この時点で言うのも何だが、イビルアントのようにこっちから呼び寄せて経験値を稼ぐのも遠い先の事ではあるまい。
あと2匹、という段階で大きなアリが出現した。
明らかに重量級の大きさだ。
これまでのアリと違ってかなり重たそうである。
得物は何も持っていない。
そしてその動きは鈍いようだが。
そう思ってたらオレに突撃してきやがった。
いきなり速いって。
軽く吹き飛ばされてしまいました。
アントマン・ルーク Lv.2
魔物 討伐対象 アクティブ・激昂状態
戦鬼達には残りのアリの相手をさせるとして。
こいつは戦い甲斐のありそうな相手だ。
トンファーを握り直して魔物と正対する。
来い。
突撃して来い。
当方には迎撃の用意がある。
呪文を選択して実行しておきながら構え直した。
呪文の詠唱は終わるが発動はせずに溜め込んでおく。
次の呪文も選択して実行しておき機会を待った。
魔物が姿勢を低くしたその瞬間。
呪文を発動した。
「ルート・スネア!」
アリの前脚は木の根に絡まれてしまい、突撃してきた勢いのままにひっくり返ってしまっていた。
すぐさま次の呪文を発動する。
「ブランチ・バインド!」
オレの左手側から木の枝が伸びて魔物の体を絡めて行く。
拘束完了。
だが魔物の動きを一時的に封じているに過ぎない。
アリの頭側に回り込むと絶道を喰らわせる。
但しトンファーを装備した状態で、だ。
無抵抗な所に思いっきり撃ち込んでいるのだが、魔物のHPバーは半分も減っていない。
おお、いいぞ。
もっと根性を見せろ。
拘束している木の枝が幾つか、引き千切られているようだ。
凄いな。
パワーでは勝負になりそうもない。
踵を魔物の頭に落としてそのまま地面に叩き付けた。
口から何か吐こうとしただろ?
この至近距離でやらせる訳にいかない。
そのままアリの複眼を纏めてトンファーで潰してやった。
左右とも、である。
続いて触覚らしき突起物の根元にトンファーを打ち込んで潰してやった。
これでどうだ。
潰し終えた所で魔物は木の枝の呪縛から解き放たれていた。
オレは一旦、距離を置く。
魔物の動きはどうだ?
どうにか起き上がった魔物だがいきなり突撃してきた。
但し、方向は滅茶苦茶で壁に向かって突っ込んでしまったのだ。
頭が壁にめり込んだ状態である。
そしてそのままご臨終とか。
最後はあっけなかった。
ちょっと物足りない気もする。
他に残っていたアリも戦鬼達が殲滅してくれていたようである。
なかなかの戦果だろう。
《只今の戦闘勝利で【連携】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【精密操作】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『護鬼』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
ここの所、色々とレベルアップが多くてもう覚えきれない。
順調に戦力アップしているのは間違いないのだろうから、問題はない筈だ。
覚えきれないだけで。
それはいいとしてステータス画面に集中すべきだ。
護鬼が成長しているんだし。
ステータス値で既に上昇しているのは生命力だった。
任意ステータスアップは筋力値を指定する。
護鬼 鬼Lv3→Lv4(↑1)
器用値 18
敏捷値 13
知力値 10
筋力値 18(↑1)
生命力 18(↑1)
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
かなりステータス値が美しく見えるようになったな。
この調子でいこう。
魔物の死体の数は30匹あたりから数えなかった。
死体が多過ぎです。
剥ぎ取り作業だけで20分ほどの時間がかかっていた。
死体を集めるのは戦鬼と護鬼が手伝ってくれてこれだ。
一応、戦果はあった。
今回は蟻人の蜜蝋を7個剥いでいる。
そしてアントマン・ポーンからは別のアイテムも剥げるようであった。
【素材アイテム】蟻人の蜜 原料 品質C レア度2 重量0+
アントマンが群れの幼虫に与える蜜。食用になるが糖度は低めである。
蜜袋はアントマンの皮膜となっていて、水筒に転用できる。
蜜か。
蜜袋を少し押すと蜜らしきものが出て来ていた。
指先にとって嘗めてみる。
ちゃんと甘かった。
ただ蜂蜜ほどには甘いように感じない。
なんだろう、人工甘味料のような違和感がある。
ついでに戦鬼と護鬼にも嘗めさせてみた。
どちらにも好評のようである。
分かったからゲヒゲヒと言い合うのは止めて。
オレもそう叫びたくなるし。
因みに黒曜は完全に無視であった。
まあフクロウだしな。
で、肝心のアントマン・ルークですが。
何も剥げませんでした。
ビショップといいルークといい、何か残して欲しいものだ。
目の前に光が見えた頃にはアントマンとの戦いにもかなり慣れてきていた。
小規模のアリの群れを3つほど殲滅してきている。
アリだけでお腹いっぱいです。
MP消費を抑えてHP回復はポーションでどうにか賄って来ている。
今日は夜も新マップのいずれかでやろう。
そう思うようになってきていた。
洞窟を抜けるとそこは高原でした。
その風景はN1W1マップにも似ている。
山の位置が東側に見えるだけの差だ。
樹木はこっちの方がより多いかもしれない。
時刻は午後4時を少し過ぎている。
ここのエリアポータルを探索したくとも時間に余裕がないな。
広域マップでは現地点はN1W2マップにちゃんとなっている。
さて、どうするか。
このマップにいる魔物と戦ってみてから戻るのもいいか。
夜の探索はW2マップに戻ったあたりでちょうどいい時間になるだろう。
森の中を進む。
フォレスト・ウォークは使わなかった。
1回、魔物と戦ってみてすぐに戻ることにしていたからだ。
それにしても。
オレ、戦鬼、護鬼で森の中を駆けていく様子は、傍目で見たら蛮族か何かに見えかねない。
黒曜は空を飛んでいるからいいが。
で、森の中で待望の魔物を見付けました。
どうやら熊の模様。
ブラウンベア Lv.3
魔物 討伐対象 パッシブ
ブラックベアをツキノワグマと見做すのならば、このブラウンベアはヒグマって感じだ。
ちょっと強いかな?
いや、かなりの強敵だろう。
黒曜のおかげで魔物がこっちに気がつく前に捕捉できていたのも大きい。
戦鬼も護鬼も声を出さずにおとなしくしている。
いや。
オレを待っている。
戦う意思を示すのを待っているのだ。
カヤのロッドを《アイテム・ボックス》に放り込むと背中のトンファーを手にした。
呪文を選択して実行しておいて駆け出す。
無論、戦うためにだ。
戦鬼が、護鬼が、黒曜が同時に動き出す。
まさに狩りの時間だ。
「ブランチ・バインド!」
木の枝がオレの左手側に生じてクマを覆いだす。
ここでようやくクマはこっちに気がついたようだ。
オレに威嚇してくるクマだが。
その頭上から黒曜が襲い掛かっていた。
ナイス奇襲。
戦鬼が横合いから殴りつける。
まともに喰らわせた筈だ。
どうだ?
魔物のHPバーは1割も減っていない。
わお。
強そう。
クマは絡んでくる木の枝を少しずつだが排除しつつある。
パワーファイターらしい。
さすがにクマだな。
「ディフェンス・フォール!」
溶魔法の呪文を試してみた。
うまく掛かれば防御力の低下になる筈だが。
クマのマーカーに状態異常を示す小さなマーカーが重なっている。
いけるか。
戦鬼の拳が再びクマに叩き込まれた。
今度のHPバーの減りは大きい。
最初の攻撃の倍ほどはHPバーを削っただろう。
迂回して半包囲する位置から護鬼が矢を放つ。
オレはクマの正面から戦いを挑んだ。
無論、まともにやりあうつもりはない。
攻撃は召喚モンスターに任せてオレは足止めと牽制だ。
両手のトンファーでクマの攻撃を凌ぎながら時間を稼ぐ。
まだクマは片手しか攻撃に使えていない。
ブランチ・バインドがまだ効いているのだ。
隙を見て前蹴りもクマの腹に喰らわせる。
トンファーで攻撃に転じたくもあるが、ここは無理をしなかった。
既に有利な状況は揺るがないだろう。
リスクを負うこともあるまい。
止めを刺したのは黒曜の嘴だった。
眉間に攻撃を喰らったクマが倒れてく様子はいささか滑稽にも見える。
口から舌が力なく飛び出している様子は無残にも見えるのだが。
「ギギガ!」
「ゴヘ!」
戦鬼と護鬼が珍しそうにクマを小突いている。
死人に鞭を打つような真似はよしなさい。
そういうのは日本人のメンタリティにはないのですよ?
でも剥ぎ取りナイフは突き立てるオレって。
鬼畜の所業です。
【素材アイテム】茶色熊の掌 原料 品質C レア度3 重量1
ブラウンベアの掌肉。柔らかく味も良い。
【素材アイテム】茶色熊の毛皮 原料 品質C レア度3 重量3
ブラウンベアの毛皮。毛深く保温効果も期待できる。
このクマからは2つ剥げた。
目出度い。
そして保温性のある毛皮が追加ですか。
実に強いメッセージだな。
毛皮で防寒着ね。
やっぱり作っておくべきなんだろうか。
もう1匹、殺っておくか?
コール・モンスターでブラウンベアを呼べるか、試してみる。
近場に2匹いたので呼んでみよう。
1匹ずつ呼んで袋叩きにしてあげました。
確かにこのブラウンベア、個体ならばスノーエイプよりも明らかに強い。
だが4対1では明らかにオレ達に有利である。
先制でブランチ・バインドを使って行動を抑制しているのだ。
比較的、楽に狩る事が出来た。
そして2匹からは毛皮が取れている。
掌はとれていない。
頃合だろう。
時刻はまだ午後5時になっていないが戻るとしようか。
アントマンが待ち受けているであろう洞窟を戻って風霊の村に行くのだ。
そしてW2マップの夜に備えておきたい。
洞窟を戻る間、アントマンの襲撃は2回あった。
アントマンはポーンしか出現してくれなかったが。
相変わらず統率だけは一級品だ。
個体はさほど強くないのに倒しきるのが厄介である。
2戦ともアリが仲間を呼ぶ時間を与えないよう、攻撃を重視して戦ってみた。
多少はダメージは喰らったものの、狙い通りに戦えたと思う。
この魔物相手に戦うのにも慣れてしまっていた。
もうちょっとだけ強いとちょうどいいんだが。
アイテム回収率はまあ言わぬが花である。
アントマンのいる洞窟を抜けたらまた暴れキンケイ(メス)のいる森だ。
フォレスト・ウォークは使わずに進む。
MPの節約を念頭に置いていた。
いや、MPバーはまだ7割ほど残っているから使ってもいいのだろう。
でも夜は侮れない。
侮ってはならないのだ。
ただ、暴れキンケイ(メス)は襲ってこなかった。
むしろ数匹で小さな群れを作っている。
オスを中心にして、である。
暴れキンケイ(オス) Lv.4
魔物 討伐対象 パッシブ
パッシブ、という事もあるが、群れているので戦いは挑まなかった。
この行動パターンは暴れギンケイと同じだ。
夜の時間が迫っている。
まだ見ぬ危険が迫っているのが実感できていた。
風霊の村の近くではラプターに遭遇した。
だが魔物は村の近くに接近すると勝手にパッシブになってしまい、別の方向へと去ってしまっていた。
やはり何やら行動がおかしい。
夕日がやけに不気味に見えていた。
村の北側、恐らくは畑であった場所を抜けていく。
そして村の中へ。
黒曜が先行して探っているのだが、やはり何もいないようだ。
適当に廃屋に入るとフラッシュ・ライトを使って明かりを点した。
早めの食事を摂る。
まあ携帯食をガツガツと食らうだけなんだが。
戦鬼と護鬼が揃って建物の屋根の上に登って何かをしているようだ。
追いかけっこらしいが。
建物が時折揺れていた。
食事を終えると護鬼を呼び戻して矢のチェックをする。
黒曜石の矢、邪蟻の矢は使用頻度も高く、回収しながら使っているものには傷んでいる物が散見された。
無論、回収出来なかった矢もあるので、少し数も減っている。
本格的な夜を待つ間、矢の修繕と補充を手作業で進めておく事にしよう。
戦鬼と護鬼は追いかけっこを再開していた。
黒曜はオレのいる建物の上空を旋回して周囲の警戒を続けてくれている。
オレのMPもジワジワと回復してくれるだろう。
それぞれの時間がゆっくりとそれぞれに流れていった。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv9
職業 サモナー(召喚術師)Lv8
ボーナスポイント残9
セットスキル
杖Lv7 打撃Lv5 蹴りLv5 関節技Lv5 投げ技Lv4
回避Lv5 受けLv4 召喚魔法Lv9 時空魔法Lv2
光魔法Lv4 風魔法Lv5 土魔法Lv5 水魔法Lv5
火魔法Lv4 闇魔法Lv4 氷魔法Lv3 雷魔法Lv2
木魔法Lv3 塵魔法Lv2 溶魔法Lv2 灼魔法Lv2
錬金術Lv5 薬師Lv4 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv7(↑1)鑑定Lv6 識別Lv7 看破Lv2 耐寒Lv3
掴みLv6 馬術Lv6 精密操作Lv7(↑1)跳躍Lv3
耐暑Lv4 登攀Lv3 二刀流Lv4
身体強化Lv2 精神強化Lv4 高速詠唱Lv4
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 雪豹の隠し爪×3
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者
呪文目録
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv7
残月 ホースLv5
ヘリックス ホークLv5
黒曜 フクロウLv5
ジーン バットLv4
ジェリコ ウッドゴーレムLv3
護鬼 鬼Lv3→Lv4(↑1)
器用値 18
敏捷値 13
知力値 10
筋力値 18(↑1)
生命力 18(↑1)
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
戦鬼 ビーストエイプLv3
リグ スライムLv3




