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「ヌンッ!」


 抱え込んだサンタの頭を捻る。

 だが不満だ。

 捻り切れていない。

 まあ無理なんだけど、気持ちはそれ位のつもりです。

 しかし脆い。

 すぐに沈むな、サンタ!

 面白くないだろう?



((((((((((((((((((ディストーション・ジャベリン!))))))))))))))))))

(ミラーリング!)


 周囲に攻撃呪文を放ちつつ、獲物を探す。

 すぐにサンタが見付かるのはいいんだが、魔神はどこにいるんだ?

 こっち側を攻撃している様子は無い。


 まさか、戦う気を無くして逃げたとか?

 格闘戦じゃなくていいから!

 弓矢で狙撃でいいから!

 オレと、戦え!



「ッ!」


 ガルムに蹴り。

 その爪先は目を抉る形になってガルムの胴体までも吹き飛ばしたんだが。

 もう次のガルムとビッグホーンリザードが迫っている。

 話にならんな。

 ああ、使いたくないのに、使う事になるのか?



(メイズ・フォレスト!)


 森の中を迷宮化する。

 でも目の前の魔物達とは接近し過ぎていて確実にオレを狙って来る。

 まあ望む所だ。

 防御が飽和しない程度に続々と襲ってくれるのが理想だ。

 ついでにこっちから襲えるともっといい。



(フォレストバス!)


 これも使っておこう。

 まあ保険だ。

 で、魔神はどこだ?

 地形が森の中だけに難しいかも?

 ヴォルフに頼るしかないかもしれません。






《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》

《【杖】武技のマジック・ブースターを取得しました!》

《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【投げ技】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【追跡】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヴォルフ』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 時刻は?

 午後3時50分か。


 一応、魔神はいた。

 でも戦う様子を見せないから嫌な予感はあった。

 その予感は的中してしまっている。

 幻影だったのだ!

 ヴォルフもここで匂いを辿れなくなっている。

 恐らく既にどこかへ跳んでしまったのだろう。


 逃げたか。

 いや、逃がしたか!

 挑発しただけ逃げるとか、オレの一番嫌いなパターンだよ!



 ヴォルフのステータス値で既に上昇しているのは敏捷値でした。

 もう1点のステータスアップは器用値を指定しましょう。



 ヴォルフ 大神Lv35→Lv36(↑1)

 器用値 41(↑1)

 敏捷値 96(↑1)

 知力値 40

 筋力値 55

 生命力 55

 精神力 40


 スキル

 噛付き 疾駆 跳躍 回避 遠吠え 裂帛 神威

 霊能 霊撃 念動 隠蔽 追跡 夜目 気配遮断

 魔力察知 自己回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]

 MP回復増加[中] 耐即死 耐魅了 分身




《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『モジュラス』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 どうも魔神って奴等とは波長が合わないな。

 今の猟師姿の魔神もどうしてくれよう?

 やはりあの仮面は剥がして素顔を拝んでやろう。

 あのドワーフの魔神と同様、醜い素顔になっているのかも?

 素顔を見て笑ってやる。

 もうそうすると決めましたよ?



 モジュラスのステータス値で既に上昇しているのは敏捷値でした。

 もう1点のステータスアップは精神力を指定しましょう。



 モジュラス アラクネダッチェスLv33→Lv34(↑1)

 器用値 61

 敏捷値 62(↑1)

 知力値 60

 筋力値 30

 生命力 30

 精神力 61(↑1)


 スキル

 噛付き 弓 捕縄術 回避 掘削 振動感知

 反響定位 熱感知 夜目 気配遮断 奇襲 追跡

 自己回復[小] 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中]

 MP回復増加[中] MP吸収[中] 出糸 罠作成 縫製

 吸血 時空属性 光属性 闇属性 風属性 土属性

 水属性 氷属性 変化 毒 麻痺 魅了 耐石化

 耐魅了




《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『清姫』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 それにしても死体はどうしよう?

 美味しそうな相手がいない。

 ベリルビーストがいれば良かったんだが、それもいない。


 おのれ。

 収支は大幅にマイナスな気がしてきた。

 既に森の中ではプレイヤー達の掃討が進んでいるに違いない。

 サンタを屠れているけど、それでも納得出来ない。

 どうしてくれよう?


 杖武技のマジック・ブースター、というのも気になる。

 一定時間、魔方陣と魔法円を描き、その中にいる限り魔法技能の効率アップ、となるらしい。

 マジック・フォートレスと同じパターンで動けないじゃないか!

 使えん!

 いや、使える武技なんだろうけど、オレには無用だ。

 殴りに行けないようでは意味が無い。

 何で杖武技って使えるのと使えないので差が大きいのだろう?

 困った事だ。



 清姫のステータス値で既に上昇しているのは敏捷値でした。

 もう1点のステータスアップは精神力を指定しましょう。



 清姫 白蛇姫Lv33→Lv34(↑1)

 器用値 48

 敏捷値 72(↑1)

 知力値 47

 筋力値 48

 生命力 47

 精神力 48(↑1)


 スキル

 剣 弓 小盾 噛付き 巻付 回避 受け 夜目

 匂い感知 熱感知 反響定位 気配遮断 魔力遮断

 変化 奇襲 跳躍 軽業 自己回復[中] 物理抵抗[小]

 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] MP吸収[中] 吸血

 時空属性 光属性 闇属性 火属性 土属性 溶属性

 猛毒 沈黙 魅了 耐魅了



 森の中はもう放置で。

 空中戦?

 それもいいけどゲルタ婆様に見付かったら怒られそうだ。


 いっそ、ここから離脱して浮き島の様子を見に行こうか?

 その方がいいかもしれません。


 ゲルタ婆様は王城に突っ込むなと言ったのだ。

 様子を見るだけなら、いいよね?

 そういう事にしておきましょう。

 布陣は少し変更しておくか。

 バンドルは帰還、言祝を召喚しました。

 さて、護国谷の様子はどうかな?

 行ってみるとしましょう。





 護国谷に到着。

 上を見上げると浮き島は無い。

 翡翠竜の拠点も無くなっていた!


 門番役はブラックドラゴンにプロンズドラゴン。

 軽く一礼しておこう。



『おお、小さき者か』


「ども。既に師匠は王城に向かったので?」


『うむ』


『我等が主達も同行しておるぞ』 


「王女殿下も?」


『いや、谷の広間にいる筈だ』


『老死霊術師もいる』


 ジュナさんは王女殿下の護りの役割を続けているのか。

 おお、そうそう。

 建国王の宝冠、なんて物があったな。

 この機会に渡しておこう。





「おお?キースちゃん!」


「ども。ご無沙汰してます」


「装備が変わってる?」


「ええ、まあ」


 ジュナさんは両手を広げて熱烈歓迎、のように見えるが。

 その目は怪しい。

 実に怪しい。

 そして朗らかに過ぎる。


 抱擁、と思った次の瞬間。

 投げ飛ばされてました!

 綺麗な一本背負い。

 綺麗過ぎて受身も取れたし、ダメージは無い。



「投げるのはいいわー、装備が変わっても関係ないし!」


「同感です」


 まあ抵抗せずに投げられてみた訳だが。

 ジュナさんのこういった所にも慣れてしまった。


 まあ今日、用件があるのはジュナさんではない。

 王女殿下だ。

 そのサビーネ王女は他の竜騎士達と共に金紅竜と水晶竜の前にいた。

 彼等の騎竜は長老格のエルダードラゴン、それにブロンズドラゴンと共にいる。

 それにかつて王城で見た護衛役の戦士らしき者もいた。

 サビーネ王女は王家の戦力を糾合していると聞く。

 数的に言えば順調かどうか、判断しかねる数だな。



「オレニューちゃんなら浮き島でお出掛けしてるわよ?」


 ジュナさんの笑顔のままだ。

 でも目からは笑いが消えた。

 今、浮き島を王城に落とす件を話したらどうなるだろう?

 きっと厳しい説教に折檻があるに違いない。

 そしてオレはマゾでは無かった。



「そうですか。入れ違いになりましたね」


「残念!」


「お見せしたかった物があるのですが」


 そしてゆっくりと、《アイテム・ボックス》から建国王の宝冠を取り出す。

 肩の高さに掲げてみると、かなり重く感じる。

 貴重品で落としちゃいけない、と思うと重圧が両肩に掛かるのだろう。


 戦士達の間からどよめき。

 ジュナさんの顔から笑みが消えた。

 サビーネ王女の顔も蒼白だ。



「それ、どこで手に入れたの?」


「魔人ステンテレッロ、いえ、元王弟殿下が持ってました」


『確かに建国王の宝冠であるな。我が間違える筈もない』


 金紅竜、ルチルドラゴンの顔が近くに。

 圧倒的な威圧感だが動けない。

 宝冠、落としたら大変!



『王女よ、我等と王家の誓約を繋ぐ証は戻った訳だが』


「お待ちを金紅竜様。私にはまだその準備が出来ておりません」


『汝に今すぐ、建国王が如き英雄となれとは言わぬ』


「形から入ってから、女王らしくなればいいんだし!」


 ジュナさんがオレの手に在った宝冠を手にする。

 す、素早い!

 そしてジュナさんの雰囲気がいきなり変わる。

 まるで聖女のように。



「汝、王家の血を継ぐ竜騎士よ。汝は王家に与えられし義務を果たす事を誓うか?」


『汝、王家の血を継ぐ竜騎士よ。汝は我等、竜との誓約を真摯に守る事を誓うか?』


「汝、王家の血を継ぐ竜騎士よ。汝は全ての民を我が子とし、国の繁栄へと導く事を誓うか?」


『汝、王家の血を継ぐ竜騎士よ。汝は我等、竜の領域を守る事を誓うか?』


「お待ち下さい!私は!」


 サビーネ王女の後方に控えていた竜騎士3名は無言のまま片膝をついて頭を垂れる。

 戦士達も同様に拝跪して、敬意を示すようだ。

 突っ立ったままなのはオレだけ?


 ジュナさんを見る。

 その視線だけで呪われそうだよ!

 聖女みたいな雰囲気が一転、悪魔みたいだ!


 でも片膝ですか?

 やった事がないんで正座でどうでしょう?

 その上で軽く頭を垂れて敬意を示す。

 ジュナさんの呪眼のような視線は収まったようだ。

 良かった。

 どうやら呪われずに済みそうです。



「我が身は既に竜騎士、その任すら果たせておりません!」


『何事も完璧などない。より向上する事を目指す姿勢こそが尊いのだ』


「しかし」


「今、王家のみならず民の危急存亡の時。竜騎士も王も果たすべき義務に大差はないわよ?」


 ジュナさんの言葉の調子は優しい。

 でも言っている事はぶっちゃけ過ぎじゃないですかね?



「お受けなさい。貴方を支える方々は多い」


『王となるべき者の資質でもあるな。建国王もまたそうであった』


「大丈夫よ、中興の祖とか言われてた王もいたけど結構適当に生きてただけだし」


 ぶっちゃけ過ぎ!

 ジュナさん、ぶっちゃけ過ぎ!

 いや、王家の権威が下がりませんか?

 そんな心配をしてしまう。



「でも」


「王家の外戚に竜騎士と認められし者は貴方以外にいない。今は武威を必要とする時よ!」


『受けるがいい、若き王女よ』


 永遠にも思える静寂。

 だが次に聞こえた声は?



『おお、小さき者ではないか!久しいの!』


『ちょ、長老様!』


 あの長老格のエルダードラゴンがオレに向けて挨拶してました。

 時間差にも程があるだろ?

 厳粛な雰囲気は一瞬で砕かれてしまっていた。




「あー、もう何だか力が抜けたわー」


『済まぬ。長老様がいつ反応するのかは我にも読めぬ』


「あー、そうね。そうなのよねー。それにしても、重たいっ!」


 完全に脱力したジュナさんは両手に掲げていた宝冠をサビーネ王女の頭上に乗っける。

 やはり早業だ。



『汝を正当なる女王として認めよう』


「あー、民と共に繁栄あれ?」


『真面目にやれぬかな?老死霊術師よ』


「もうダメ!限界!」


 ジュナさんはその場で座り込んでしまう。

 その様子はまるで子供だ。

 以前から思ってますけど、この人って何歳なんだろう?

 黙っていたら上品な若奥様みたいなんだけど。

 聞けない。

 ある意味、死を覚悟すべき?

 そんな恐怖感が未だにある。



「あ、あの」


『どうした?若き女王よ』


「え?え?」


『既に汝の身は女王である』


「あの、もう?」


『多少、厳粛ではなくなったがな』


 金紅竜には訂正を求めたい。

 完全に厳粛では無くなったよ!

 やらかしたエルダードラゴンの長老様は目を細めて半分寝ているような有様だ。

 太平楽、だな。



『これを機に王笏も作ろうか?』


「いいわねー、それ。でも今から考える事ではないわねー」


『無論だ』


 急に井戸端会議みたいになっているけど。

 竜騎士達、それに戦士達は拝跪したままだ。

 脱力している者はいない。

 いや、いる。

 オレだよ!



「あ、あの、ジュナ様?」


「何でしょう、女王陛下?」


「え、あの、その、本当に?」


「ええ。皆が陛下のお言葉を待ってますよ?」


 サビーネ王女が広間を見回す。

 いや、もうサビーネ女王陛下だ。

 傍系の王女様とは聞いていたけどな。

 王弟曰く、直系の王子王女は全て始末されているらしい。

 こうなる事が自然であるのだろう。


 女王陛下の視線が泳ぐように見える。

 いきなり重責を背負わされたようなものだ。

 困惑するのも当然だろう。


 その視線がジュナさんを捉える。

 次に金紅竜。

 その次に、オレだった。

 何でオレにまで?

 頷いて見せる。

 そして視線は床に落とした。



「金紅竜よ!王家の血に連なる竜騎士として、その義務を果たそう!」


『それで良い。そうでなくては、な』


「「「女王陛下、万歳!」」」


 覚悟を決めたのか、新たな女王の力強い声。

 応じる金紅竜の声は安堵している様子が窺えた。

 竜騎士達と戦士達の唱和も続く。

 広間はドラゴンの体格に相応しい広さがある。

 竜騎士達と戦士達は合計でも30名に満たないだろう。

 それでも広間に共鳴して何倍にも感じられる。


 ああ、何と言う事だ。

 耳が、痛い!





 サビーネ女王が金紅竜と共に在る姿を見て感極まったのか、竜騎士プリムラは号泣していた。

 ある意味でこれは戴冠式。

 まあ気持ちは分からなくも無い。


 一方でオレはジュナさんに宝冠を得た経緯を説明する事になっていた。

 王弟を屠った事についてのお咎めは無し。

 そこは少しだけ不安でした。

 だって他人様の獲物を横取りしたようで、ずっと悩んでいたからだ。



「後は王城よね」


「上手く行くので?」


「魔神共々、というのは難しいでしょうねー」


「あの場所を壊滅させてでも早期に奪還しなければいけない理由でもあるんですか?」


「あるのよねー」


「それは?」


「今は、ダメ。そのうちに分かるでしょうね」


 そう言うとジュナさんがオレの肩を叩く。

 但し、軽くだ。



《称号【老死霊術師の誓約】を得ました!》


 うん?

 称号、だって?



「さすがはオレニューちゃんの弟子!面白いわー」


「はあ」


「今後とも、宜しくね!」


 どうなんだろう?

 このノリに今後も付き合えって事ですか?

 調子が狂いそうなんですけど。



『小さき者よ、我からも礼を言わねばならぬな』


『我もまた汝に祝福と新たな誓いを立てるとしよう』


「いえ、たまたまでしたから」


 今度は金紅竜と水晶竜だ。

 オレの頭上に金紅竜の前脚の指が掲げられている。

 水晶竜も同様に指を重ねている。

 アレがそのまま落下したら?

 きっと、死ねる。

 装備が更新してあっても尚、一撃で死ねそうな気がします。



《称号【金紅竜の盟約】を得ました!》

《称号【水晶竜の誓約】を得ました!》


 おいおい。

 こっちもか!

 いや、このパターンだけど、注意を要する。

 ドラゴンパピーが召喚出来ているようになっている可能性があるぞ?



『おお、それで良い、それで良いのじゃ!』


『長老殿、もう終わっておりますぞ?』


 長老格のエルダードラゴンの時間軸は相変わらずだな。

 さて。

 早く、確認したい!

 ドラゴンパピーが召喚可能になっているかどうか、確認したい!

 それに浮き島は王城に迫っている筈。

 その様子も見てみたい。

 怖いもの見たさ、というのも否定出来ません。



「では私はここで」


「あら、女王陛下へ謁見は?」


「済みません、急ぎますので」


 その女王陛下に対戦やら狩りやらで色々と酷い事をしてますからね。

 ちょっと怖いですよ?


 そのまま一礼を残して護国谷の出口に急ぐ。

 早く、早く!

 確認したい事もあれば行きたい場所もある。

 夕方まで時間も限られている。

 急がねば!




 護国谷の入り口で全員を帰還させました。

 そして召喚リストを確認してみたら?

 あった。

 ドラゴンパピーがあった。

 これはすぐにでも召喚したくなる!

 だが今は少し待て。

 ポータルガードの兼ね合いもあるのだし、追加の召喚モンスターも考えないと!

 それには時間が要る。

 今はドラゴンパピーが召喚可能である事を確認するだけでいい。

 今からでは促成栽培も出来ないしな!


 では、移動だ。

 目指す場所は王城。

 移動速度を考慮した布陣にすべきだろう。

 黒曜、蒼月、スパッタ、イグニス、アイソトープにしました。

 時刻は午後4時30分。

 王城までなら明るいうちに辿り着けるだろう。



「では、また」


『武運を』


『そして幸運を』


 片手を揚げて門番のドラゴン達に返礼しつつ、蒼月を駆って空へと飛ぶ。

 さあ、ちょっと急ごうか!

 呪文の強化は大いに奢る事になりそうだ。





 後方を振り返る。

 アイソトープのシルエットが見えていた。

 日が傾いている。

 これ、間に合うのか?



(シンクロセンス!)


 スパッタの目を借りる。

 東の方位に浮き島は?

 見えない。

 恐らくだがその姿を消して移動しているのだろう。

 王城近辺に何か異変が起きている様子は見えない。

 オレもそうすべきだろう。



(インビジブル・ブラインド!)


 これでいい。

 王城までまだ距離はあるけど念には念を入れるべきだ。


 それにしても、だ。

 浮き島が王城に落下する光景ってどんなものになるのだろう?

 想像出来ない。

 そして見てみたい。

 ここは少し高度を取って先を急ごう。



(レジスト・アイス!)


 呪文を使って寒さに備える。

 それでも寒くなるけど仕方ない。

 既に【耐寒】は上限になってしまっている。

 これ、どうにかなりませんかね?






 時刻は?

 午後5時20分。

 オレはと言えば、インビジブル・ブラインドを継ぎ足して王城から距離を取って周回をしていた。

 その変化じはいきなり現れた。

 王城の上空の風景が大きく歪み続けている。

 次に生じたのは衝撃波だ!

 アイソトープまでもが体の軸がズレるような、強烈な代物だった!

 ダメージは?

 全員が喰らっている。

 どうにかステータス異常は避けたようだが無視出来ないぞ?



(ファイア・ヒール!)


 どうにか衝撃波のダメージから回復を図る。

 でもダメだ!

 防具で全身を固めているオレでも全快には程遠い。


 王城の上空に浮き島が姿を見せていた。

 恐らくは結界と接触しているであろう最下部は赤熱化を通り越して白く輝いている。

 その光景もまた歪んでしまっていた。

 凄い。

 恐ろしい程の魔力の激突だ!



 その魔力と魔力の激突は暫く続いていた。

 いや、徐々に浮き島が沈むように落下しているのが分かる。

 次の変化が起きようとしていた。

 より一層、風景が歪んでしまう。

 そして一気に何かが爆発したようだ。

 噴火?

 桜島の噴火でも見た事が無いような規模だ!

 噴火では有り得ない規模のキノコ雲が生じている。

 その根元にあった王城は?

 見える訳が無い。


 最初の衝撃波は?

 恐らくだが、結界が破壊された際のものだろう。

 では、目の前で生じているこの小惑星衝突のような有様で生じる衝撃波は?

 これから襲って来るのだろう。

 マズい。

 テレポートで跳んで逃げるか?

 それが一番確実なのだろう。


 それでも見たい。

 凌ぐにはどうする?

 やはり呪文に頼るべきだろう。



「蒼月!」


 蒼月を駆って一気に急降下する。

 王城から距離を取っていて良かった。

 本当に、良かった!


 遠目にだが火砕流のような何かが迫っているのが見えている。

 呪文で言えば溶魔法の呪文、パイロクラステュック・フローだな!

 でも規模は洒落にならない差がある。

 桁で言えば何桁違うのだろう?

 いや、アレをどうやって、凌げばいい?



(ルミリンナ!)


 地表に着陸する寸前に氷の城を作り上げる。

 だがこれで足りるとは思えないぞ!


 召喚モンスター達が全員、氷の城の中央に着地したのを確認。

 懸念すべきはアイソトープの巨躯だが。

 ままよ!



(トーチカ!)


 済まないな、アイソトープ。

 ちょっと、いや、かなり狭いだろうけど耐えてくれ!



 直ぐにトーチカに降り注ぐ噴石の音が始まった。

 それはあっという間に大音響となってトーチカの中を打ち鳴らす事になった。







 時刻は?

 既に午後6時30分になってました。

 何度もテレポートで跳ぼうって思ったものです。

 それでも耐えたのは?

 やっぱり見てみたい。

 何度目かで展開したルミリンナとトーチカは良く耐えてくれた。

 狭くて暑苦しいのが難だったが、どうにか全員無事です。

 火山灰を完全にシャットアウト出来なかったのは少々痛い。

 まあオレは慣れているからいいけどさ。


 トーチカ内部に響く音はもう止んでいる。

 噴石はもう概ね、飛んできていないのだろう。

 途中で噴石とは思えない大きな音もしてたけど。

 夕食?

 そんな暇は無い。

 携帯食で済ませました。


 外は恐らく、夜になっているだろう。

 布陣は変更しておかねばなるまい。

 まあそれはトーチカを解除してからにしようか。

 外の様子はどうなってますかね?

 クレヤボヤンスの呪文で何度か見てみたけど、噴石が凄くて外は真っ暗だったが。

 真っ暗なままだとどうしよう?

 それはそれで困る。


 早速、トーチカの呪文を解除してみる。

 もう、訳が分からん。

 細かな火山灰が降っている。

 夕方過ぎで暗くなっているだろうとは思ったけど、真っ暗だ!



(ホーリー・ライト!)


 明かりで周囲を照らしてみるのだが。

 まるで雪。

 でも降っているのは目に入ったら痛い火山灰だ。


 うん。

 ドカ灰だね!

 これで雨が降ろうものなら最悪だ。

 排水路は詰まる。

 ツルツルした場所はより滑る。

 本来であれば出掛けずに家の中に篭もるのが正解だろう。

 でも今は先に進みたい。

 広域マップで場所を確認。

 現在位置はN1E12マップの南東側か。

 確かに離れてはいるけど、そう極端に遠くも無い。

 空を移動は論外。

 それにフローリンのように反響定位に頼っている召喚モンスターも避けるべきだ。


 布陣は全面的に変更で。

 リグ、赤星、待宵、キレート、モスリンにしました。

 火山灰の影響をそう受けそうに無い面々で揃えてみました。

 パナールに騎乗して移動?

 そんな危険な真似はしません。

 目が開けていられなくなるのは自明の理であるのだ。


 歩いて行くしかない。

 灰か。

 久し振りかもしれないけど、やっぱり陰鬱になる。

 オレの瞼も二重サッシ並みの灰対策になって欲しいものです。







《これまでの行動経験で【闇魔法】がレベルアップしました!》


 途中から視界の確保をノクトビジョンに切り替えたのは魔物の襲撃を想定していたからだ。

 でも残念。

 ここまで何も襲って来てません。


 その代わりに襲って来るのは熱気だ。

 この先の地表がどうなっているかが容易に想像出来る。

 周囲に幾つかの建屋があった跡があるのだが、その全ては土台だけだ。

 恐らく爆心地はもっと酷い事にんばっている事だろう。

 レジスト・メルトも使っているけどやはり暑い。

 【耐暑】はもうレベル上限ですけど。

 これもどうにかならないですかね?


 召喚モンスター達は?

 特に問題なくオレに付いて来てくれている。

 まあ文句を言うような連中ではない。


 ところで、地上を這い回るリグを見る機会は少ない。、

 洞窟でも壁か天井だからな。

 敏捷値が高いのは分かっていたけど、オレよっか速いよ!

 いや、この布陣だと一番素早い。

 灰をまるで気にしないのもいいが、葛饅頭に粉砂糖を降ったように見えてしまう。


 熱気にも皆、よく耐えてる。

 いや、どうもオレよりも平気な様子なんだけど。

 まあいい。

 今日は爆心地の様子を確認してログアウトかな?


 時刻は午後10時40分。

 広域マップではもう少しで爆心地、王城のあった場所になるだろう。

 どんな有様かな?

 興味あります。




 爆心地はどうにか、視界を確保出来る状態を保っている。

 灰は地面から吹き上がる気流で吹き飛ばされているらしい。

 でも暑い!

 オレの体はどうにか、無事のままで済んでいる。


 目の前に見えるのは巨大なクレーターだ。

 その規模は視認出来ない。

 反対側のクレーターの縁は見えていないから巨大と分かるだけだ。

 当然だけど王城は跡形も無い。

 そしてクレーターの底はどうにか視認出来る。

 そこには何か、半円球の物体が蠢いていた。

 どうもその模様に見覚えがあるような。



 琥珀竜 モスドラゴン ???

 ??? ??? ???

 ??? ???



 おい!

 直撃、だよな?

 王城の結界を破壊しても尚、地形が変わる威力があった筈だ。

 赤いマーカーを見る。

 HPバーは残り4割。

 MPバーは残り2割。

 かなりの消耗と言えるだろう。


 弱っている所を襲うのってどうなのよ?

 汚くありませんか?

 でも素敵だ。

 弱っているようでなければまともに戦えない、そんな相手なのが琥珀竜だ。

 暑い?

 勿論、暑いだろう。

 呪文で対抗していなければ普通に生きていられない環境だ。


 それも気にしない

 待宵は赤星の姿を写し取らせよう。

 ここは一気に攻撃してみるべきなのだ。

 だが別の問題がある。

 攻撃が可能な所まで近寄れるかどうか。

 クレーターの中はより暑い。

 それでも、やる。

 これってチャンスだよね?






((((((((((((((((((ケラウノス・ジャベリン!))))))))))))))))))

(ミラーリング!)


 射程の長い呪文となるとこの攻撃呪文だったのだが。

 弾かれてます。

 どうやら結界があるみたいだ。

 うん。

 無事な理由が分かった気がする。

 琥珀竜もまた結界があるのでした。


 それでも琥珀竜の結界だけで無事だったとは思えない。

 何か他にある。

 琥珀竜の頭上に人影が幾つか。

 恐らくだが魔神ではあるまいか?


 距離はまだ多少あるものの、オレが攻撃を加えているのは承知している筈。

 なのに反撃は来ない。

 オレを警戒しての事ではないだろう。

 師匠が浮き島を落としたのは明白。

 その護衛役でドラゴン達もいる筈なのだ。

 警戒しているとしたらそっちかな?


 これでは攻撃しても無意味だ。

 ドラゴン達でも琥珀竜の結界を無効化出来る可能性は考え得るけど魔神もいる。

 師匠の目論見では出来るだけ魔人の戦力を削る事だった筈。

 確かに大幅な戦力ダウンになったみたいに思えるけど、肝心の戦力が残ってるよ!


 オレだけではあの結界を抜けられない限り、ここは撤収すべき?

 恐らくだがそうすべきだ。

 攻め手は無い。


 だが。

 目の前に人影。

 あの老人の魔神だ!



「シャッ!」


 相手は老人。

 でも容赦は無い。

 放った蹴りは膝を横から直撃していた筈。

 だが蹴りはそのまま魔神を通過してしまう。

 幻影か。

 全く、やる事がセコいんだよ!



『やってくれたな』


「あんたらもやろうとしてたんじゃないのか?」


『いずれ倍にして返してくれよう、そう伝えるがいい』


 おいおい。

 小物臭いって!



「今、返してくれてもいいんだけど?」


『安い挑発には乗れんな』


「そうかい」


 今度はハイキック。

 勿論、直撃。

 当然だが、透過。

 幻影はオレの前から消えていた。


 琥珀竜は?

 まだいる。

 でも魔力がより一層、高まっているのが分かる。

 琥珀竜の姿そのものが歪んで見えていた。


 その現象は暫くの間、続いた。

 収まった時には何も無くなっている。

 跳んだのか?

 姿を消して飛び去ったのか?

 それは分からない。

 オレの手の届かないどこかに去った事は確かだ。


 しぶとい奴等だ。

 浮き島を落とされて無事とか、半端ないな!


 もう遅い時間だ。

 暑くて堪らん!

 召魔の森に戻ってログアウトしよう。

 王城跡の確認は後回しでいい。

 琥珀竜と魔神達が去ってしまったからな。


 明日以降、どうしよう?

 それは明日になってから考えたらいい。


主人公 キース


種族 人間 男 種族Lv117

職業 サモンメンターLv6(召喚魔法導師)

ボーナスポイント残 41


セットスキル

小剣Lv87 剣Lv88 両手剣Lv88 両手槍Lv92 馬上槍Lv95

棍棒Lv87 重棍Lv88 小刀Lv87 刀Lv89 大刀Lv87

刺突剣Lv86 捕縄術Lv94 投槍Lv94 ポールウェポンLv95

杖Lv100(↑1)打撃Lv106(↑1)蹴りLv106 関節技Lv106

投げ技Lv106(↑1)回避Lv115 受けLv114

召喚魔法Lv117 時空魔法Lv104 封印術Lv103

光魔法Lv100 風魔法Lv100 土魔法Lv100 水魔法Lv100

火魔法Lv100 闇魔法Lv101(↑1)氷魔法Lv100 雷魔法Lv100

木魔法Lv100 塵魔法Lv100 溶魔法Lv100 灼魔法Lv100

英霊召喚Lv6 禁呪Lv102

錬金術Lv87 薬師Lv17 ガラス工Lv24 木工Lv48

連携Lv97 鑑定Lv86 識別Lv96 看破Lv84 耐寒Lv80e

掴みLv80e 馬術Lv97 精密操作Lv80e ロープワークLv94

跳躍Lv50e 軽業Lv50e 耐暑Lv80e 登攀Lv60e

平衡Lv97

二刀流Lv89 解体Lv86 水泳Lv48 潜水Lv78

投擲Lv50e

ダッシュLv60e 耐久走Lv60e 追跡Lv85(↑1)隠蔽Lv85

気配察知Lv86 気配遮断Lv85 暗殺術Lv60e

身体強化Lv60e 精神強化Lv60e 高速詠唱Lv50e

無音詠唱Lv60e 詠唱破棄Lv60e 武技強化Lv91

魔法効果拡大Lv90 魔法範囲拡大Lv90

呪文融合Lv90

耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv80e 耐混乱Lv80e

耐暗闇Lv80e 耐気絶Lv80e 耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e

耐沈黙Lv80e 耐即死Lv80e

獣魔化Lv16


称号

老召喚術師の後継者 老死霊術師の誓約(New!)

森守の紋章 中庸を呼ぶ者 王家の剣指南者

海魔討伐者 鍾乳洞踏破の証 墓守の紋章

魔神討伐者 氷雪竜討伐者 巨人王の謎掛け

巨神掃滅者

金紅竜の盟約(New!)翡翠竜の誓約 柘榴竜の誓約

蒼玉竜の誓約 白金竜の祝福 黒曜竜の祝福

翠玉竜の祝福 水晶竜の誓約(New!)

瑠璃光の守護者 除蓋障院への通行証

冥界門の通行証

魔導王 拳聖 リーサルウェポン

ジェノサイダー 耐え忍びし者


召喚モンスター

ヴォルフ 大神Lv35→Lv36(↑1)

 器用値 41(↑1)

 敏捷値 96(↑1)

 知力値 40

 筋力値 55

 生命力 55

 精神力 40

 スキル

 噛付き 疾駆 跳躍 回避 遠吠え 裂帛 神威

 霊能 霊撃 念動 隠蔽 追跡 夜目 気配遮断

 魔力察知 自己回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]

 MP回復増加[中] 耐即死 耐魅了 分身


モジュラス アラクネダッチェスLv33→Lv34(↑1)

 器用値 61

 敏捷値 62(↑1)

 知力値 60

 筋力値 30

 生命力 30

 精神力 61(↑1)

 スキル

 噛付き 弓 捕縄術 回避 掘削 振動感知

 反響定位 熱感知 夜目 気配遮断 奇襲 追跡

 自己回復[小] 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中]

 MP回復増加[中] MP吸収[中] 出糸 罠作成 縫製

 吸血 時空属性 光属性 闇属性 風属性 土属性

 水属性 氷属性 変化 毒 麻痺 魅了 耐石化

 耐魅了


清姫 白蛇姫Lv33→Lv34(↑1)

 器用値 48

 敏捷値 72(↑1)

 知力値 47

 筋力値 48

 生命力 47

 精神力 48(↑1)

 スキル

 剣 弓 小盾 噛付き 巻付 回避 受け 夜目

 匂い感知 熱感知 反響定位 気配遮断 魔力遮断

 変化 奇襲 跳躍 軽業 自己回復[中] 物理抵抗[小]

 魔法抵抗[中] MP回復増加[小] MP吸収[中] 吸血

 時空属性 光属性 闇属性 火属性 土属性 溶属性

 猛毒 沈黙 魅了 耐魅了


召魔の森 ポータルガード

ジェリコ、ティグリス、クーチュリエ、獅子吼、逢魔、極夜、雷文、守屋

シリウス、スーラジ、久重、テフラ、岩鉄、ジンバル、ビアンカ、虎斑

蝶丸、網代、スパーク、クラック

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― 新着の感想 ―
巨大な結界と結界の相克による激突と破壊、ファンタジーならではの大スペクタクルですね! 鹿児島県民の事情なお話でややズッコケましたがw
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