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グーディは慌てる様に付いて来ているようだ。
今もパーティ編成もしてないし『ユニオン』もしてない。
彼にもオレにも困る点がある。
回復呪文や支援呪文の届く距離が極端に短くなるなど、不利な点もあるのだ。
まあそれも仕方がない。
経験値の割り振りを公正にしたければ、色々と不都合も受け入れるべきだ。
それに想定している相手はオークである。
1体だけであればそんなに強い魔物ではない。
問題は数だ。
まあそれもどうにか出来そうではある。
森の気配が深くなってきていた。
木々が邪魔な上に非常に暗い。
ヘリックスを帰還させてジーンを召喚した。
オレ自身は視界確保にはノクトビジョンを使う。
グーディはと言えば自前でフラッシュ・ライトを使っているようだ。
ノクトビジョン、かけてあげようかと思ってたんだが。
まあいいか。
早速、森の奥へと向かおう。
オークを狙っての行動だったのに最初に遭遇したのがインコだった。
しかもオレの出番はない。
火喰いインコは火を吹く暇もなかったのだ。
翼は剥いだがあまり嬉しくないのですよ。
オークはまだか。
そのオークを黒曜が見付けていた。
群れだ。
こっちには気がついていない。
木陰から様子を窺う。
10匹、いるな。
数が多い。
今はグーディもいるから無理は禁物なのだが。
どうにも昂揚感が鎮まらない。
体が戦いたがっている。
気がついたらオーク共を目掛けて駆け寄っていた。
ここは森の中なのだ。
数が多いからといって不利とは限らない。
ロッドを《アイテム・ボックス》に入れておく。
背中のトンファーを手にしていた。
うむ。
ここならこいつの方が戦いやすいだろう。
最初の1匹は木に押し付けてから蹴りを腹にぶち込み首を捻って折った。
寄って来るオークは木が邪魔になってすぐに寄ってこれない。
無論、黒曜とジーンが空中から牽制しているのも大きい。
次だ。
肘撃ちの要領でトンファーの先端を口の中に叩き込む。
脇の下にもトンファーを撃ち込んだら、オークが武器の棍棒を落としてしまう。
その棍棒がオレの足の上に直撃した。
なんて事だ。
痛いじゃないの。
ブーツが在って本当に良かった。
お返しに金的を蹴り上げてやる。
いささか大げさにも見えるほど痛がっていた。
すぐに痛くないようにしてあげよう。
前蹴りで頭を下げさせたら首に腕を回して体重をかける。
そして捻ってあげよう。
「アキャ?」
気持ち良さそうな声であの世行きとなった。
さあ、次だ。
まだまだ足りない。
もっと強い奴、いないのか?
4匹目を殴り殺した所でオークの群れは全滅していた。
グ-ディも2匹ほど倒していたようだ。
まあそれはいいとして。
最後になんか大きな影が迫ってきていた。
オークだ。
オークなんだけれども。
今までのオークよりも一回り以上はデカい。
武器は持っていなかった。
ただその腕は長く、拳は大きくゴツゴツとしている。
腹が大きく出っ張っていた。
メタボ体型とは。
こいつはなんなの?
オークリーダー Lv.???
魔物 討伐対象 アクティブ
わお。
レベルが見えない。
つまり間違いなく格上って事か。
ちょっとワクワクしてきた。
「ゴルゥ!」
短く叫ぶと魔物はオレ目掛けて襲ってきた。
足が短いせいか、ヨタヨタとした足取りに見える。
オレは呪文を選択して実行しながら魔物に立ち向かう。
まるで岩のようなものが目の前を通過していた。
魔物の拳だ。
だがその軌道はちゃんと見えていた。
「ルート・スネア!」
オレと魔物が交錯すると同時に呪文を発動させる。
足元が不確かな魔物は簡単に転がってしまっていた。
反転して魔物に迫る。
起き上がろうとしている魔物の顔に思いっきり蹴りを喰らわせた。
ビクともしない。
HPバーは大して減っていなかった。
ではこうしてやる。
右足を抱え上げてスイープした。
上半身が半ば起き上がっていたのがまた転がってしまう。
太っているせいか、腹筋は弱いのか?
トンファーは持ったまま、持ち上げた足をヒールホールドで極めておく。
右足で魔物の左膝を足で押さえて股裂きにしてやった。
足首をジリジリと捻る。
「グゲゲゲゲゲゲゲゲ!」
やたらと大きく奇妙な悲鳴を上げながら魔物は暴れ始めた。
暴れるほど痛い筈なんだが。
それより涎を撒き散らしながら暴れる様子が醜すぎて見ていられない。
偶然なのだろうが、振り回した拳がオレの太ももに当たった。
おい。
ちょっと怒りに火が点いちゃいましたよ?
足首を更に深く捻った。
膝関節が、そして股関節が壊れる音がした。
同時に腱と筋肉のいくつかは伸び切ったであろう。
ブチブチ、と何かが切れていく感触を体全体で聞いていた。
股裂きを解いた足で蹴りを股間に入れてやる。
壊しきった右足を離すと魔物の左足に取り付いた。
足首を捻ってやったら痛みに耐えかねてうつぶせになる。
その魔物の足をオレの足で挟み込んでロックした。
体重を掛けていく。
即席のステップオーバー・トーホールドだな。
但し今のオレは手にトンファーを持っている訳で。
フェイスロックはせずに殴り放題に。
なりませんでした。
胴体が長くて頭まで手が届きません。
これじゃない。
トンファーを利用して足首を引っ掛けて捻ってやる。
今の音は折れた、な。
魔物の足を手放して爪先蹴りを股間に喰らわせて一旦離れた。
魔物は涎を泡のようにして吹きながら地面を暴れまわる。
汚いって。
その両手で地面を掻き毟るようにして苦しんでいる。
片手が木の根元を掴むと皮を毟ってしまっているし。
まだパワーは無視できないか。
油断ならんな。
「パラライズ!」
安全な距離を保ちながら呪文を放つ。
1発目では麻痺しなかったが、2発目が効いた。
ようやく暴れなくなったか。
仰向けになった魔物に護鬼が寄って来ていた。
何を期待しているのか、まあ分かっちゃう訳でして。
許可しました。
護鬼は手にした鉈で喉を裂いた。
いや、潰した、と言えばいいのか?
どっちにしろ魔物は血の海に沈んでいった。
グーディは自らが倒した2匹のオークから宝石1つを剥ぎ取っていた。
アイオライト、なんだろうな。
そしてオレ達で倒したオーク8匹からは収穫はゼロ。
運営め。
何かの呪いか?
そしてオークリーダーだがこっちからはちゃんとアイテムが得られた。
【素材アイテム】ツァボライト 品質C+ レア度3 重量0+
緑色のガーネット。赤色系のガーネットよりも希少価値がやや高い。
透明度の高いものは魔法発動用に人気があり高額になり易い。
アイオライトよりいいじゃないの。
ついでに、といっては何だが、魔石も1つ剥いでいた。
ちゃんとセットで調達させるとか、どんな親切設計なんだ?
運営のこういう所が分からない。
「凄いです!」
「そうかな?」
グーディはそう言うがオレには少し不満がある。
もうちょっと、魔物が強いと戦い甲斐があるんだけどなあ。
森の中をマグネティック・コンパスとマップを頼りに西へ向かう。
この森はオークとインコしかいないのか?
そこまで単純じゃなかろう。
夜もあるしな。
そう、夜もあるのだ。
今まで巡って来た新マップだって夜はどうなるか、分かったものではない。
夜の方が厄介な仕様なのは5つある初期マップで共通している。
当然、疑っておくべきだろう。
興味はあるのだけれど、補給をどうするか。
宿泊用の装備もまだ揃えていない。
明日辺り、レムトの町にでも調達しに行こうかな?
ん?
レムトの町と言えば何かを忘れているような。
何だっけ?
ああ、思い出した。
ギルド長に顔を見せに来いって言われていたんだっけ。
新しい建屋に引越しでもしていそうだし、その手伝いでもやれとか?
まあ行ってみたら分かる事だ。
それから2回ほどオークの群れに遭遇した。
いずれも10匹以上の規模である。
どうやら個体としては弱い分、数は多目に出現させているようだ。
そういう理解でいいのだろう。
無論、狩るのは問題がない。
問題は相変わらずアイテムに当りがない事なのだ。
グーディは宝石のアイオライトを1つ、自ら倒したオークから剥いでいる。
オレ無残。
そんな悲劇を乗り越えた先は平原のようだ。
所々に樹木の群生がある。
起伏はやや大きそうだが、馬の残月で移動するには問題はなさそうだ。
現地点を広域マップでも確認しておく。
S1W1マップの西の端といった所だ。
切り上げるならここでいいか。
時刻は午後1時半。
ちょっと早いが転移しておくとしよう。
「今日はこの辺にしよう。時間はいいかな?」
「ええ、大丈夫です」
その顔には少しだけ安堵の色が見えていた。
そりゃ心配にもなるだろう。
今日出会ったばかりなのだから当然だ。
グーディにパーティ編成メニューから申請を出す。
承諾して貰ったのを確認したら、リターン・ホームの呪文を選択して実行した。
「リターン・ホーム!」
次の瞬間には目の前の風景が消えていった。
またいつかここに来る事になるだろう。
まだ見ていない風景が沢山あるのだ。
師匠の家の前に転移した。
オレにはもう見慣れた風景だが、グーディにはそうではなかったようだ。
「え?本当にレギアスの村の近くだ」
彼も広域マップを見ているのだろう。
実際に転移したのが信じられない。
そんな顔をしているぞ?
「そう。ここからなら徒歩でも1時間とちょっとでレギアスの村に行けるかな?」
「昼間の森ならソロで来た事もあります。もう平気です」
それはどうかな?
はぐれ馬や暴れ馬もいるけど本当に大丈夫か?
まあ本人がそう申告しているのだし、いいのかもしれない。
仮想ウィンドウのパーティ編成画面からグーディの名前が消えていった。
まあ妥当な所だろう。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
グーディはそう言うと両手で握手してきた。
オレも思わず両手で応えた。
何かを渡された、気がする。
「これで御礼になるかどうか分かりませんが」
オレの手に残されたのは宝石であった。
アイオライトだ。
御礼にしてはちょっと。
「済みません、ちょっと時間がないのでこれで失礼します」
そう言うとさっさと森の中にある細い小道に小走りで向かっていった。
ちゃんと急いでいる理由があったのか?
それとも極端な恥しがりやさん?
いずれにしても過分な御礼を断る機会を失ったようだ。
追い掛けるのもなんか大げさだし。
困ったものだ。
さて、どうするか。
かなりポーションも消費しているので、師匠の家で作成をしよう。
それに今回の探索で思うところがある。
ポーションのクーリングタイムだ。
今後は出来るだけ品質の高い物を用意しておいた方がいいだろう。
錬金術の短縮再現ならば大量生産に向くが、必要なポーションの数はそこまで多くもない。
とりあえず10本、作っておこう。
無論、出来るだけ高品質を狙いたい。
余った時間でより高い品質のポーションを狙ってみるのもいいだろう。
地下の作業室で早速ポーション作成を開始した。
フィジカルエンチャント・アクアで器用値も底上げしておくのも忘れてはならない。
傷塞草も錬金術のメイキング技能の破砕を使ってから抽出を行う。
ポーション2本分を丁寧に作り上げた。
【回復アイテム】ポーション HP+13%回復 品質B レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね5分。
今まで作成のポーションで最高の物だろう。
だがそれでも上には品質Aがあるのかと思えばまだまだなのだ。
何が足りないのか。
いや、何を上乗せしたらいいのか。
何か決め手に欠けているような気がする。
これを更に4回、繰り返す。
全て品質Bで揃った。
品質B+はない。
きっとある、と思っているのだが、そうそう簡単に到達できるものではないようだ。
【回復アイテム】ポーション HP+14%回復 品質B レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね5分。
【回復アイテム】ポーション HP+13%回復 品質B レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね4分。
但し、効能には僅かながら微妙な差があるようだ。
そんなに気にしなくてもいいのかも知れないような差に見えるが。
多少は性能に幅があるものなのか?
今までまるで気にしていなかった。
まあそういうものだと思っておくか。
《これまでの行動経験で【水魔法】がレベルアップしました!》
3回目のフィジカルエンチャント・アクアを使った所で水魔法もレベルアップした。
昨日今日とでかなりの技能がレベルアップを果たしているように感じる。
まあそれだけ濃密な時間を過ごしているって事なのだろう。
おっと。
忘れてはいけない。
濾過した固形分で回復丸も2つ分、作成しておく。
どちらも品質B+である。
以前作成した最高記録は品質B+だから変わっていない。
これはちょっと残念である。
一応、探索に持っていく分のポーション作成は終わらせた。
矢でも作ろうか、と思ったが、忘れている事がある。
氷魔法と木魔法の新しい呪文をまるで確認していない。
全部で6つ、あった筈だ。
レジスト・アイス(氷魔法)
スケーティング(氷魔法)
フリーズ・バレット(氷魔法)
レジスト・プラント(木魔法)
フォレスト・ウォーク(木魔法)
ブランチ・アロー(木魔法)
まあレジスト系は大体において各属性に対する抵抗力強化と考えていたらいい。
実際、説明を読んでみたらその通りだった。
で、スケーティングって何?
氷限定ではなく、鏡面のように平滑な場所を自由自在に移動できるようにする呪文だった。
摩擦力のコントロール、と理解していいのかな?
大体、氷の上を歩く機会とか、そうそうあるとも思えないのだが。
フォレスト・ウォーク?
森林の中を歩く呪文とか何だ?
これまた中身が良く分からない呪文だった。
森林のような障害物のある場所を踏破するための呪文のようだ。
これは使ってみないとイメージが沸かない。
評価は保留だ。
残り2つは攻撃呪文である。
他の属性の攻撃呪文と同様だ。
射程距離ではブランチ・アローがやや長いようである。
まあそれも風魔法の呪文、ウィンド・カッターには及ばないようだが。
問題がある。
攻撃呪文が多くなりすぎて困ったことになりそうだ。
リストを編集して攻撃呪文だけにしてもかなりの行数になっていた。
ちゃんと戦闘中に選択できるのか?
ちょっと自信がない。
ついでだから呪文リストの整理もしていく。
そこで目に付いた呪文からあるアイデアが閃いていた。
塵魔法の呪文、エイジングがヒントになった。
反応を促進させる呪文。
言い換えるならば老化させる呪文だ。
いや、別視点から考えるのであれば、乾燥する事だって変化になる。
野菜やキノコでも乾燥させることで栄養価に変化が生じるのは良く知られている事だ。
いやいや、他にもあるだろう。
酸化還元反応もそうだ。
凍らせてみるのもいい。
腐らせてみるのもありだろう。
焼いて灰にしてしまったらどうなる?
なんだ。
色々と面白そうな手段が揃っているではないか。
材料は傷塞草。
その前処理。
そして抽出用の水。
抽出するに際して熱をどれだけかけるか、その温度も加熱時間もある。
これに加えうる条件は何か?
草から直接、一気に水を抜くことは?
可能だ。
錬金術のメイキング技能で抽出がある。
抽出の説明では『混合物である物体から特定の物質のみを取り出すこと』となっている。
説明を見る限り可能だろう。
抽出する水を酸性、またはアルカリ性にする事は?
可能だ。
同様に薬師のメイキング技能で、酸性化とアルカリ性化がある。
灼魔法の呪文、アシッド・タッチとリダクション・タッチも利用できるだろう。
薬師のメイキング技能では不活化もある。
薬効成分を不活性化して反応しなくする、とあるのだ。
熱を加えても薬効が落ちないように前処理できるかもしれない。
塵魔法の呪文、エイジングも面白い。
薬効成分が劣化すると思われるが、確かめておくに越したことはないだろう。
しかもこれらを組み合わせて確かめるともなると、莫大な数の条件で実験を繰り返さないといけなくなる。
1つずつ確かめるというのも迂遠な話ではあるのだが。
一気にやるのならば直交配列実験、だな。
各条件による寄与率も分かるし効率的ではある。
そこまで大げさにしていいものかね?
考えるのも面倒だし、普通に1つ1つ片付けていこうか。
どうせ時間はある。
その時間も短縮する便利な呪文やメイキング技能もある。
行き当たりばったりでもいいじゃないの。
まあいい、気楽に興味の赴くままに確かめてみるとしよう。
熱中している場合に限ってこういう事が起きる訳ですが。
気がついたら時刻が午後10時を過ぎてました。
夕飯、ぶっちぎってました。
腹が減っていてなんだか体が変です。
ステータス
器用値 16(-2)
敏捷値 16(-2)
知力値 20(-3)
筋力値 15(-2)
生命力 15(-2)
精神力 20(-3)
やっぱり。
変だと思ってました。
一時的なのだろうがステータス低下が起きていたようだ。
正直、しくじった。
携帯食を水で流し込むように腹に収める。
とはいってもすぐにステータス異常が治る訳ではない。
作業に熱中し過ぎた報いか。
今日はここでお開きにしよう。
で、何に熱中してたか、と言えばなかなか恥しい話になるのだが。
脱線、してました。
最初は傷塞草を火魔法のパイロキネシスで燃やしてみてから水で抽出してみたのだが。
いつもの鍋に入れて作業をしてしまっていたのだ。
これが最初の失敗である。
何かを見落としているなあ、と思ってました。
アルカリの語源ってそういえば。
植物の灰、でしたっけ?
作業室にあるガラス容器を引っ張り出して、中身をすぐに移しました。
被害は最小限に留まったと思いたい。
金属製の鍋は水で何度も洗いました。
危なかったぜ。
で、問題の中身なんですが。
薬師のメイキング技能、濾過で固形分を濾し取る。
錬金術のメイキング技能、抽出を使って水を抜く。
すると液体に溶けていた物質が現れたのでした。
白っぽい粉?
何だろうか。
【鑑定】してみたらこんな感じになった。
【消費アイテム】減疫散 品質B- レア度2 重量0+
消毒薬。地面に撒く事で疫病を抑える効能がある。
別の手段も使ってみよう。
錬金術のメイキング技能、分析を使ってみる。
粉末状混合物 アルカリ性 徐々に反応中
反応が進んでいる?
なんだろうね?
大昔に習った化学の知識も錆び付いていて久しい。
アルカリ性の物質で水酸化ナトリウムや水酸化カリウムならば吸水していって水溶液になる筈である。
潮解という現象だ。
だがそんな様子はない。
外部リンクからネット検索してみたらやはり違っている。
炭酸カリウム、炭酸ナトリウムあたりだな。
そして炭酸カリウムならば空気中の二酸化炭素と反応が進んで炭酸水素カリウムになる訳か。
いかん。
このあたりは学んでいた覚えがあるぞ。
オレの化学知識は錆び付いているどころではなく崩壊済みなのかもしれない。
同様の物質をメイキング技能の抽出で一挙に作れないかを試みたが失敗であった。
やはり単一物質として同定できなければメイキング技能の抽出は効かないらしい。
無念。
これ、分離できればいいんだがな。
炭酸ナトリウムなら料理にも使えるんだが。
そして暴走した。
錬金術と薬師のメイキング技能を駆使して色々とイタズラをしてみたのだ。
灼魔法のアシッド・タッチとリダクション・タッチも検証した。
強引に酸性、アルカリ性にするってどうなのよ?
水を酸性、アルカリ性にしてみて、メイキング技能の抽出で水を抜いたら何も残らなかった。
敢えて言おう。
詐欺であると。
根拠になる物質がないとか何なの?
まあそれが魔法だって事になるのだろう。
そして傷塞草そのものにも手を加えてみた。
破砕する前に水を抜いてみたのだ。
メイキング技能を使って強引に乾燥させた形になる。
これを燃やして減疫散を作ってみたら、それだけで品質Bになった。
何これ?
面白くなってきた。
結局、ポーション作成から完全に外れてしまってました。
そして夕飯を忘れた挙句にステータス異常でこの様です。
いかんな。
周りが見えなくなってしまっていた。
それに今日の戦闘で折れてしまっていたカヤのロッドのことも忘れていた。
予備がもう1つあるから当面は問題ないが。
これは明日に回そう。
トンファーの予備を作っておきたい。
片付けを済ませると召喚モンスター達を帰還させた。
2階の部屋に戻るとベッドに潜り込んでログアウトする。
個人的には色々と楽しくもダメダメな日であった。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv9
職業 サモナー(召喚術師)Lv8
ボーナスポイント残9
セットスキル
杖Lv7 打撃Lv5 蹴りLv5 関節技Lv4 投げ技Lv4
回避Lv5 受けLv4 召喚魔法Lv9 時空魔法Lv2
光魔法Lv4 風魔法Lv5 土魔法Lv5 水魔法Lv5(↑1)
火魔法Lv4 闇魔法Lv4 氷魔法Lv3 雷魔法Lv2
木魔法Lv3 塵魔法Lv2 溶魔法Lv2 灼魔法Lv2
錬金術Lv5 薬師Lv4 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv6 鑑定Lv6 識別Lv6 看破Lv2 耐寒Lv3
掴みLv6 馬術Lv6 精密操作Lv6 跳躍Lv3
耐暑Lv4 登攀Lv3 二刀流Lv4
身体強化Lv2 精神強化Lv4 高速詠唱Lv4
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 雪豹の隠し爪×3
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者
呪文目録
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv7
残月 ホースLv5
ヘリックス ホークLv5
黒曜 フクロウLv4
ジーン バットLv4
ジェリコ ウッドゴーレムLv3
護鬼 鬼Lv3
戦鬼 ビーストエイプLv3
リグ スライムLv3




