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インスタント・ポータル内は盛況としか言いようがない様相だ。
空中戦力が主力であるとはいえ、ドラゴンのような大型の召喚モンスターもいる。
それにお互いの召喚モンスターを見比べて楽しむプレイヤーも多い。
ログアウトは交代で行っているようだが、むしろ臨時の交流会が目的じゃないの?
まあいい。
装備の修復を終えたら布陣を見直そう。
スパッタとイグニスは帰還だ。
召喚するのはナインテイルとパンタナールです。
布陣はどうなった?
ナインテイル、蒼月、アイソトープ、メジアン、パンタナールです。
ドラゴン3体で揃えた訳だが、意外にバランスはいいのかもしれません。
空中機動力でやや不安があるけど、どうせユニオン編成であるのだ。
移動距離は気にしなくていい。
それにドラゴンが主な相手になるのであれば、この方が向いているだろう。
「ピュッ!?」
周囲に多くの召喚モンスターがいるのを不思議そうに眺めるパンタナール。
ナインテイルは定位置となってしまっているパンタナールの頭上に鎮座する。
だが、ナインテイルだけじゃない。
パンタナールの頭上に妖狐、白狐が他にもいるんだが。
何かパンタナールの頭上には狐系の召喚モンスターを引き寄せるだけの魅力があるのかも?
そう思えます。
「こう並んでいると壮観ですね」
「もう戻ったの?」
「ええ、小休止ですから」
ゼータくんが手を伸ばしてパンタナールの鼻面を撫でている。
怖くないのかな?
アイソトープやメジアンと比べたらそう剣呑じゃないけどさ。
「少し時間はあるかな?」
「はい?」
「対戦に付き合ってくれ」
「えっと。1対1ですか?勝ち目ないんですけど!」
「たまにはいいじゃなの」
鞍馬と対戦でもいいんだけどね。
他のプレイヤーと対戦する機会は少ない。
いいじゃないの。
単なる暇潰しをするにしても、時間は有意義に使わないとね!
《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》
「キースさん!そろそろ、出発しないと!」
「おお、そうだな」
対戦相手が次々と増えてしまっていた。
最初はゼータくんだけだった筈。
途中から駿河と野々村が加わり、ヒョードルくんも追加。
最後の方ではドワーフも2名、追加していたりしたけど。
オレの得物は何の変哲もない木製の杖だ。
他のプレイヤーとの対戦、しかも複数を相手にするのは久々かな?
おかしい。
彼等の力量もかなり向上している、と思うのだが。
少し物足りない。
得物が杖だと捌き切れないかと思ったものだが。
結構、すんなりと対応出来てしまっている。
呪文も武技も使っていないんだけどな。
「さ、差が縮まっているかと思ってたんですが」
「そう?」
オレとしても意外でした。
対戦相手に不足があったと思えない。
前衛のドワーフ2名とゼータくんは盾を手にして壁役、その連携も悪くなかった。
後衛的な位置から駿河、野々村が槍で介入するタイミングも悪くない。
ヒョードルくんもオレの後方から何度も牽制攻撃を続けていた。
ミスらしいミスは無かったと思う。
でも、物足りない。
どうしちゃったんだろうね?
「あ、ありがとうございました!」
「全部、負けてるけどスキルはレベルアップしてますし」
「いや、種族レベルまで上がっちゃってるけど、どうなってるの?」
それは良かった。
でもね。
対戦如きで満足して貰っては困るのです。
そろそろ運営には強敵を用意して欲しい。
エリアポータルもついでに用意して欲しい。
何にしても、オレを楽しませてくれる相手を!
無いようならこのまま、王城に攻め入ってしまうぞ?
魔人の指輪ならあるのだ。
このプレイヤーの数を賄えるほど、多くは無いけどね。
どうにか、大規模な軍勢を潜入させる手段はないかな?
やはり審判の石版だろうか。
便利は便利なんだけど面倒なんだよね、アレ。
天命のタブレットで変身するにしても数が無い。
おっと。
今は移動だ。
E12マップを目指すのです。
果たしてオレが望んでいる展開があるかな?
あって欲しいものです。
《只今の戦闘勝利で【馬上槍】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【闇魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【追跡】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『蒼月』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
E12マップの地形もまた牧歌的に見える。
所々に農村が連なる、実に微笑ましい風景であるのだが。
出現する魔物の主力はドラゴン。
ついでにグリフォンに騎乗する魔人まで出現するようになった。
いたんだ、魔人。
あの浮き島で結構な数を屠ったんだが。
魔人か。
どうも元々は王国の住人で、何らかの方法で魔人に変じているみたいなんだけど。
魔神も関係しているのだろう。
そこまでは読める。
そして元人間だからと言って手を抜く事はしません。
多少は心苦しく思うけど、かと言って死に戻りをするのは願い下げなのだ。
それに統率者がいるというのはやはり違う。
ビートルドラゴンやスタッグドラゴンも数段、手強くなる傾向になる。
連携が良くなるし、魔人の支援も中々のものがあるからだ。
先制で封印してしまえば問題無いけど、気が抜けない対象が増えた事も間違いない。
ユニオン編成だから、ある程度は安心です。
誰かが必ず捕捉して攻撃をしてくれている。
そもそも上空で戦況を確認して戦闘をするのが基本になっているのだ。
死角はかなり少なくなってます。
蒼月のステータス値で既に上昇しているのは知力値でした。
もう1点のステータスアップは精神力を指定しましょう。
蒼月 麒麟Lv32→Lv33(↑1)
器用値 42
敏捷値 82
知力値 48(↑1)
筋力値 42
生命力 42
精神力 42(↑1)
スキル
噛付き 頭突き 踏み付け 体当たり 疾駆
耐久走 奔馬 蹂躙 飛翔 蹴り上げ 遠視
広域探査 強襲 天啓 空中機動 霊能 霊撃
騎乗者回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]
MP回復増加[小] 時空属性 光属性 闇属性
風属性 土属性 水属性 雷属性
『このE12マップですが、全域が村みたいなものでしょうか?』
『農地に牧草地に放牧場、それに村が点在してますし』
「だが今は人影は無し、か」
『イベントっぽいですね』
戦闘を終える毎に地上に降りて状況を確認しているのですが。
このマップ、魔人絡みの魔物しかいない。
空中であればドラゴン達にグリフォンに騎乗する魔人達。
地上では?
一番多いのがガルムだろう。
オブシディアンビーストにベリルビーストの群れ。
トライホーンリザードにビッグホーンリザードの群れ。
これらは魔人が統率している場合が殆どだ。
これ以外にいるのが天然のスウォームを形成する連中だ。
レッドマンティス、ジャイアントセンチビート、巴蛇、神魔蜂、神魔蜂女王、プリズムスラッグ。
アデルの顔色が悪くなりそうな相手だが、こっちは空中戦が基本であるのだ。
対抗するのは容易い。
蜂には要注意ですがね。
『全域が村みたいなものとなれば、エリアポータルも無いとか?』
「それはない、と思いたいけどね」
周囲を見回す。
ここまでプレイヤーに死に戻りは無い。
ステータス異常もいません。
今の戦闘で召喚モンスターに死に戻りが出たのは残念だったが、それでも損害は軽微だ。
戦力も低下していない。
皆、レベルアップしているからだ。
MPバーに消耗は当然あるけど、それだけと言える。
大丈夫。
より強力な相手にも戦える、と思う。
エリアポータル解放戦に期待しよう。
では、少し布陣を変えよう。
蒼月は帰還だ。
召喚するのはアリョーシャです。
得物も断鋼鳥のデスサイズに切り替えよう。
『何だか凄く様になってますね』
「そうか?」
ヘラクレイオスくんの場合、空中戦で騎乗しているのはグリフォンだ。
まだグリフォンロードにクラスチェンジしていないけどもう少しかな?
レベル27になってます。
空中戦をする機会が少ない事が影響しているんだろうな。
これに対し、アデル、春菜、ゼータくんの騎乗馬はもうモノペガサスになっている。
ヒョードルくんのペガサスも次のレベルアップでクラスチェンジするだろう。
イリーナ、此花のヒッポグリフはクラスチェンジしないパターンで成長しているようだが。
それにしても、ペガサスが多いな!
騎乗馬の半分以上が、ペガサスです。
7割を超えているんじゃなかろうか?
そう言えば麒麟がいません。
蒼月だけだったみたいだ。
ちょっと寂しい、と思う。
突撃するにはいい選択だと思うのですが、どうなんでしょう?
この後、続々とレベルアップしてクラスチェンジをするようになったら増えるものと期待しよう。
蒼月だって仲間は欲しいと思うに違いないのだ。
『キースさん!確認しました!』
『人魂です!』
「こっちでも確認した。少し距離を置こう」
時刻は午前10時40分です。
E12マップの中央に到達しているんだが、どうやらエリアポータル解放戦がありそうだ。
平凡な村、と見えたが広場に人魂だ。
周囲に魔物がいる気配はしません。
それが逆に不気味でもある。
『空中戦のままで挑みますか?』
「その方がいいだろう」
ここまで空中を移動しながら戦闘もこなし続けている。
連携もいい感じで洗練されつつある。
相手が地上戦力メインであれば有難い。
空中から挑む有利は大きいのだ。
それに【英霊召喚】と【精霊召喚】にエクストラ・サモニングは温存させてある。
一気に序盤に叩き込んで戦況を有利にする事だって容易いだろう。
「【英霊召喚】を使うつもりでいてくれ。順番は?」
『一応、準備だけはしてあります』
『基本は天馬疾駆と太公釣魚、ですね』
「私の分の【英霊召喚】はまだ使えない。昨夜、使ったばかりなのでね」
『了解しました』
上空で戦況確認と指示を出すのはイリーナと此花になるようだな。
まあ妥当な所だろう。
それに周囲では布陣を変更、MPバーの厳しい召喚モンスターを交代させていたりする。
準備はもう少し、掛かるかな?
オレもマナポーションを服用しておこう。
何が相手になるのやら。
こっちはサモナー系プレイヤーばかりの編成のユニオンとなる。
パーティ数にして42、かなりの戦力だ。
その全てをレベルアップさせるだけの経験値を稼げる相手じゃないと許しませんよ?
さあ、何が相手になるかな?
オレにの分の【英霊召喚】が品切れになっているのが後悔するような相手がいい。
そうであって欲しいものです。
《不滅の太陽などない》
《不滅の星もまたない》
《生命ある星の寿命もまた刹那の間に過ぎない》
《その奇跡に感謝するが良い》
インフォはまあいいんだ。
人魂は?
地面に吸い込まれるように消えて行く。
さあ。
何を寄越すのかな?
アリョーシャに急いで騎乗して空へと飛ぶ。
人魂が消えた地表に影が一気に広範囲へと広がって行く様子が見える。
その影から何かが出現しようとしていた。
どう見ても、大きい!
大き過ぎませんか?
ガイアの影 ???
イベントモンスター 巨神
??? ???
??? ???
ユミルの影 ???
イベントモンスター 巨神
??? ???
??? ???
プルシャの影 ???
イベントモンスター 巨神
??? ???
??? ???
ダイダラボッチの影 ???
イベントモンスター 巨神
??? ???
??? ???
うむ。
強敵だね!
巨神達の影が揃い踏みとか、どうなってるんだ?
ガルーダ ???
イベントモンスター 霊鳥
討伐対象 アクティブ
??? ???
アクイラの影 ???
イベントモンスター 英霊
討伐対象 アクティブ
??? ???
白霊鳥 ???
イベントモンスター 霊獣
??? ???
??? ???
ラージャアシパトラ ???
イベントモンスター 魔物
討伐対象 アクティブ
??? ???
お供もちゃんといるじゃねえか!
数も多い。
戦力差は確実にある。
長期戦を覚悟せねばならないのは当然だが、序盤の戦力差を埋める切り札が要る。
絶対にだ!
「【英霊召喚】を使え!」
『は、はい!』
「巨神は後回しでいい!制空権確保を優先!距離を置け!」
『キースさん!何で突っ込むんですか?』
イリーナの問いに答える余裕は無い。
真っ先に去るべき事は?
機先を制する事。
僅かでも空中戦で受身に回ったらあっという間に死に戻りが出るだろう。
ガルーダ、アクイラの影、白霊鳥、ラージャアシパトラといった連中の直接攻撃は怖い。
特殊能力を封じる事が出来ても怖い。
ラージャアシパトラなどは突っ込んで来るだけの魔物だが、こいつは全身凶器なのだ。
むしろ序盤、脅威なのはこいつ等だ!
「人馬一体!」「エンチャントブレーカー!」「リミッターカット!」
数は?
数えたくない。
分かっているのは空中戦をしながら巨神を相手にするのは不利って事だ。
時間が足りない。
空中戦力さえいなくなれば長期戦は必至だが戦える。
勝てるかどうかは話は別だけどな!
『天馬疾駆!』
『太公釣魚!』
『弓矢部隊はガルーダとアクイラの影を!杖部隊は白霊鳥とラージャアシパトラを優先で!』
『ラージャアシパトラは物理攻撃はほぼ通じません!要注意!』
『精霊召喚!』
オレの右横に並ぶ形で手足が透き通った女性の姿の精霊が並ぶ。
ジンニーヤだ!
風の精霊さんだが観賞していられません。
((フラッシュオーバー!))
(((ライトニング・ブラスト!)))
((パラレル・シムーン!))
((プリズムライト!))
((ミーティア・ストリーム!))
((アシッド・レイン!))
((ヘイルストーム!))
((スウォーム!))
(ミラーリング!)
【呪文融合】で喰らわせた全体攻撃呪文の詰め合わせだが。
何という事だ!
相手の展開範囲が広過ぎて全域をカバー出来てない!
「ガッ!」
アイソトープを始めとしたドラゴン達が並んでブレスを吐き続けている。
いや、ブレス攻撃による壁だ!
弾幕と言うには規模が大き過ぎる!
『白霊鳥が、速い!』
『後方に回り込まれてるぞ!』
『慌てないで!攻撃範囲と射程を優先!フォース・ブラストを!』
上空にイリーナと此花。
状況を観察し指揮を執るだけではなく支援攻撃も行っている。
彼女達が要だ。
護衛役にパンタナールとナインテイルを残しているけど大丈夫かね?
(((((((((((((((((ヒート・ウォール!)))))))))))))))))
(ミラーリング!)
熱風の分厚い壁を重ねて展開。
その速度故にまともに突っ込んで来る魔物達。
どうだ?
白霊鳥は瀕死に陥ってくれたが、他の連中はさすがにタフだな!
どれもHPバーが半分も減っていない!
もしかして、相当にレベル高めなの?
(((((((((((((((((プラズマ・ブラスト!)))))))))))))))))
(ミラーリング!)
アクイラの影と交錯。
ビートルドラゴンなら一撃で沈める火力だが、どうだ?
何と、HPバーが残ってやがる。
状態異常を喰らったのか、麻痺したまま地上に墜落しているし、いずれ詰むと思うが。
どうもいけない。
これ、かなりの窮地か?
「急いで仕留めようとするな!どれも手強いぞ!」
『了解!』
『ヤァ!』
『切り札を加えて!エクストラ・サモニングを!』
『オッケー!』
戦力が更に加わる筈だ。
でも全体から見たら僅かなものだろう。
あの巨神達を倒すにはどうしても時間が要る。
その時間をどう短縮すべきなのか?
考えないといけません。
何しろ4体もいるのだ!
考えろ。
だが、その前に制空権を確保すべきだ。
回避はアリョーシャに任せて序盤は支援を手厚くしよう。
「イリーナ!」
『ハイ!』
「全員にアクロバティック・フライトにクロスドミナンスで強化する!」
『この数を、ですか?時間が掛かり過ぎます!』
「構わない!片っ端から【呪文融合】で一気に強化出来る!」
確かに手間だ。
でも長期戦になるのは確実で序盤は厳しい空中戦が続くだろう。
英霊様の支援効果があっても尚、念を入れておく方がいい。
後悔の念はある。
エリアポータル解放戦の前に全員に強化すべきだったか?
こんな相手が出て来ると分かっていたらやっていただろうけどね。
そんな予測など無い。
しかしこれ、どうなっちゃうんだろう?
視野の端に常時表示してある時計を見る。
時刻は?
午前11時になろうとしている。
どうにか空中戦力の排除は進んでいるけど巨神がまだだ。
ほぼ、手付かず。
どうする、あれ?
再び悩む。
この巨神達に対しては【封印術】の呪文も通用する。
ダイダラボッチの影に関しては形態によって通じないけど。
このペースだと午後まで戦闘が掛かるんじゃね?
夕方まで続けるつもりもない。
どうにかして戦闘時間を短縮する手段を見出さないと!
「戦況はどうだ?」
『もうちょっとで空中戦力を駆逐出来ます!』
「【英霊召喚】はどこまで続けられる?」
『ちょっと厳しいです!』
『天馬疾駆はもうありません!次の分の太公釣魚で最後です!』
そうか。
かなり逼迫している、という事は分かった。
プレイヤーの【精霊召喚】も品切れ。
召喚モンスター達も奮戦し過ぎてチェンジ・モンスターで交代もあったみたいだ。
プレイヤーに死に戻りは今の所は無いが、召喚モンスターに出始めている。
いい傾向じゃないな。
オレの切り札は?
【英霊召喚】は使えない。
エクストラ・サモニングも使えない。
この状態から何が出来る?
考えろ。
考えるのだ!
(((((((((((((((((ペニテンテ!)))))))))))))))))
(ミラーリング!)
巨神の足元に氷の針。
かなり有効な攻撃方法だが、これで戦い続けられるとは思えない。
やはり何か、より大きな打撃力が要る。
どうする?
どうする、オレ?
呪文リストをスクロールさせながら考える。
考えながら、戦う。
まあ回避は最初からアリョーシャにお任せなのだが。
どっちも集中出来なくなりそうだけど、今は必要なのだ。
『ガルーダ撃破!』
『空中戦力は全滅!』
「よし!次は巨神だ!」
『了解!』
ようやくか。
どうにか巨神4体を午前中に狩れませんかね?
攻撃力を。
より強力な、攻撃力を!
何が正解なんだ?
いや、待て。
この手順は使えないかな?
いける。
いけるって!
問題になる巨神がいるけど、どうにかなりそう?
「イリーナ!私だけ地上戦に移行する!」
『えっ?』
『無茶ですよ!』
「いい手を思い付いた!」
アリョーシャを駆って地上へ向かう。
果たして上手く行くのか?
いや。
このまま戦闘を続けてもいずれは詰む。
何か手段を講じなければそうなる。
今は少しでもいいから火力を上げるのだ!
(チェンジ・モンスター!)
アリョーシャを着陸させたら一気に交代だ!
出現したのは戦鬼。
打撃力の高さは間違いなくある。
だが巨神の大きさを考えたらこれでも足りない。
そこはオレがどうにかするしかあるまい。
だからここで終わらない。
使う呪文は、これだ!
(メタモルフォーゼ!)
オレの視線が一気に高くなる。
戦鬼と視線が合う。
いいか?
攻撃手段は鉄球だ。
その投擲だ!
(フィジカルエンチャント・ファイア!)
(フィジカルエンチャント・アース!)
(フィジカルエンチャント・ウィンド!)
(フィジカルエンチャント・アクア!)
(メンタルエンチャント・ライト!)
(メンタルエンチャント・ダーク!)
(クロスドミナンス!)
(グラビティ・メイル!)
(サイコ・ポッド!)
(アクティベイション!)
(リジェネレート!)
(ボイド・スフィア!)
(ダーク・シールド!)
(ミラーリング!)
戦鬼を強化する一方で戦鬼の持つ鉄球を受け取る。
2つ作ってあって、良かった。
本当に良かったよ!
「ガァッ!」
戦鬼が投げた鉄球が外れる事は無い。
恐らくはガイアの影に直撃したのだろう。
ガイアの影の足から溶岩が噴出しているのが見えていた。
「ヌン!」
オレも投げてみる。
感覚はどうか?
大丈夫。
リモート・コントロールと同じだ。
(アポーツ!)
鉄球を回収する。
これを繰り返すのはもう既定路線なのだが。
だがこのスタイルだけで戦闘時間の短縮を目論むのではない。
もっと工夫、出来るよね?
次こそが本命なのだ。
重要なのはタイミング。
今のオレはピッチャーだ。
但しデッドボール必至の殺人ピッチャーです。
出来れば投球速度の計測表示が欲しいぞ?
きっと、とんでもない記録になると思う。
(レールガン!)
鉄球は外れようが無い。
そしてガイアの影の体には大穴が空く。
ふむ。
ちゃんと通じそうだ。
だが問題がある。
ダイダラボッチの影だ。
恐らくはスライム形態になったらこの攻撃は通用しない。
今は【英霊召喚】の太公釣魚が効いているせいか、実体化したままだ。
先に倒してしまうべきだろう。
『えっと、キースさん?』
「気にするな!」
さあ、ここからが本番だ。
鉄球によるレールガンとアポーツの組み合わせも使える時間は限られる。
メタモルフォーゼの呪文の持続時間には限りがあるのだ!
『ゼータ!太公釣魚の準備を!』
『タイミングは?カウントダウンを頼みます!残り10秒からで!』
『了解!』
もう最後の太公釣魚の出番か?
随分と早く感じる。
いい感じでレールガンも連発しているが、仕留めたのは1体だけ。
ダイダラボッチの影だ。
今、攻撃を集中させているのはガイアの影です。
巨神はどれも厄介だ。
ダイダラボッチの影の次に何を優先させるべきかが判断が難しい。
ここからじゃマーカーが見えないし。
でも問題は無い。
戦況確認は上空にいるイリーナと此花に任せていい。
HPバーの残りが少ない奴を狙う。
それでいいのだ。
『カウント10、9、8』
此花のカウントダウンを聞きながら周囲を見回す。
巨神に囲まれるのを警戒しているのか、アイソトープ、メジアン、パンタナールが集まって来ている。
ナインテイルが壁を構築してガイアの影から噴出する溶岩を防御してくれていた。
有難い事です!
『3、2、1、今です!』
『太公釣魚!』
『残り時間は13分とちょっとです!』
これで切り札も使い切った訳だ。
メタモルフォーゼの残り時間も半分と無い。
せめて今のうちにもう1体、仕留めたい所だ。
いや、出来れば2体。
いやいやいやいや、全滅させちゃいたい!
ちょっと待て。
今は全力を尽くすべき時じゃないかな?
(ショート・ジャンプ!)
ガイアの影との距離を一気に詰める。
跳んだ先はガイアの影の足元だ。
悪いけど、MPバーの補給に来ました。
レールガンを連発して使っている影響で残り1割近くになっちゃってるのです。
((((エナジードレイン!))))
((((ディメンション・ソード!))))
(((パルスレーザー・バースト!)))
(((フォースド・ドライング!)))
(((ディクレイ・ヒート!)))
(ミラーリング!)
まあMPバーの補給だけで済ますつもりも無い。
この手順も後で何度か、使う事になりそうだ。
レールガンもその威力相応の消耗があるからな!
だが、懸念すべき事態も起きつつある。
鉄球だ。
修復はもう覚悟してたけど、手に持つと熱いのです!
(ショート・ジャンプ!)
再び戦鬼の横に跳ぶ。
周囲はガイアの影から噴出した溶岩が冷えて固まっている。
微妙に足場も悪くなっていた。
全く、どこかに優秀なグラウンドキーパーはいませんかね?
(アポーツ!)
オレの手元に2つ鉄球が戻る。
やはり熱い!
相手がガイアの影であるから、溶岩の熱の影響もあるのかも?
まあ主要因は空気との摩擦なんだろうけどね。
ちょっと冷やした方がいいかな?
(フリーズ・タッチ!)
急速に冷える鉄球。
その筈だけど、急激な加熱と冷却を繰り返すのは危険に思えます。
まあ今それを考えている場合じゃないんだが、考えてしまう。
これも習い性かね?
(レールガン!)
まあ今はやるべき事をやるだけだ。
それでいい筈。
では、限られた時間でやれるだけやろうか。
後はどうにかなる、と信じましょう。
「確認だ、どうなった?」
『ガイアの影が沈みました!』
『プルシャの影、残りHPバーは半分!』
『ユミルの影は残り7割!』
『太公釣魚の残り時間は2分です!』
「一旦、私も距離を置く!援護を頼む!」
『了解!』
そうか。
残り2分か。
もうメタモルフォーゼは解けてしまっていた。
このまま地上で戦い続ける意味は無い。
戦鬼共々、後方に退こう。
だがそれは戦闘から完全に離脱する事を意味しない。
当然だけど、戦い続けますよ?
(ショート・ジャンプ!)
戦鬼に触れたまま跳ぶ。
その戦鬼もかなりの消耗がある。
HPバーの回復があるから戦鬼自身は問題ないけど、装備の消耗は問題が大きいのです。
これは修復させておかないと危ないレベルだ。
でも今は後回しにするしかない。
(リターン・モンスター!)
戦鬼を帰還させる。
リターン・モンスターを使うのも理由はある。
チェンジ・モンスターを使うよりもMPバーの消耗は小さい。
単にそれだけだ。
【詠唱破棄】があるのだし、そう大きな手間じゃない。
戦闘の最前線ではそんな余裕は無いけど、今は援護があるのだ。
(コール・モンスター!)
召喚したのは当然だけど空中戦力。
但し、蒼月でもアリョーシャでもない
ラルゴだ!
ここは火力を上げて挑むとしよう。
(フィジカルエンチャント・ファイア!)
(フィジカルエンチャント・アース!)
(フィジカルエンチャント・ウィンド!)
(フィジカルエンチャント・アクア!)
(メンタルエンチャント・ライト!)
(メンタルエンチャント・ダーク!)
(クロスドミナンス!)
(アクロバティック・フライト!)
(グラビティ・メイル!)
(サイコ・ポッド!)
(アクティベイション!)
(リジェネレート!)
(ボイド・スフィア!)
(ダーク・シールド!)
(ミラーリング!)
ラルゴを呪文で強化。
早速、空中へと舞い上がり、ブレスを吐き始めました。
いきなり戦闘に放り込まれては眠っている暇は無いのだろう。
もっと暴れていいぞ!
(フライ!)
オレも空へと飛ぶ。
さて、巨神は残り2体。
数が減った分、戦闘の終わりも見えつつある。
果たして午前中に終わらせる事が出来るかな?
いや、終わらせる。
それだけの戦力はここに揃っているのだ。
心配する時間も無用。
今はただ、戦うのだ!
《創造の為の破壊であるのか?》
《破壊の為の創造であるのか?》
《我等にも分からぬ》
《生命ある刹那の時を感謝するがいい》
《そして奇跡はそう何度も無い事を心に刻むがいい》
インフォが流れている。
ああ、疲れた。
気分的には座り込みたい所です。
時刻は午前11時50分を過ぎた。
午前中で仕留める、という目標はどうにか達成したみたいです。
オレの目の前にあったユミルの影はあっという間に消えてしまう。
影だけあって消えるのも早い。
巨大な相手であるだけに違和感が半端ないな!
《E12のエリアポータルを開放しました!》
《只今の戦闘勝利で【ポールウェポン】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【光魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【風魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【土魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【水魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【火魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【氷魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【雷魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【木魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【塵魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【溶魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【灼魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【禁呪】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【馬術】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【追跡】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法効果拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法範囲拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ナインテイル』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
凄いな、これ。
まあスキルがこれだけ上がるのも納得するしかない。
相手は巨大過ぎる相手だったのです。
呪文をどれだけ使った事か!
全く、困った奴等だ。
そして早速、体が疼いている。
昼食の時間なのだ。
今日は格闘戦成分を補給していません。
これもまた習い性ですね!
ナインテイルのステータス値で既に上昇しているのは知力値でした。
もう1点のステータスアップは精神力を指定しましょう。
ナインテイル 白狐Lv30→Lv31(↑1)
器用値 32
敏捷値 76
知力値 72(↑1)
筋力値 31
生命力 32
精神力 72(↑1)
スキル
噛付き 回避 天駆 空中機動 天啓 霊能 霊撃
夜目 MP回復増加[大] 魔法抵抗[大] 物理抵抗[微]
自己回復[微] 時空属性 光属性 闇属性 風属性
水属性 土属性 氷属性 木属性 耐即死 耐混乱
耐魅了 陽炎
『げえっ!勝ってる?』
『な、長かった』
『本当に、勝ってる!』
良かったですね、皆さん。
大苦戦であっただけに嬉しさも大きいだろう。
オレの場合、スキルのレベルアップは色々とあったけど肝心の種族レベルが上がっていない。
どうしたものかね?
《ボーナスポイントに1点、エクストラ評価で3点が加点され、ボーナスポイントは合計33点になりました!》
おい。
エクストラ評価の方が大きいじゃないか!
どうなっているんだ?
ボーナスポイントに加算があったのはいいんだけどさ。
文句を言う筋合いは無いかもだが、どうしても首を傾げてしまう。
「ピッ?」
いや、パンタナールまで首を傾げる事はしなくていい。
実は何も考えてないだろう!
お前のはきっと、甘えているだけだ!
「では一旦ここで小休止でいいのかな?」
『そうすべきですね』
「フィーナさんへの報告は任せたいが、いいか?」
『それはいいですけど、昼食はどうします?』
『私達で全員分、作るよ!』
「ああ、それも有難いな」
ここはエリアポータルだ。
ここでログアウトしてもいい。
昼食を挟んでゲームを続けてもいいだろう。
オレは?
当然、続けます。
その前に装備の修復だ。
いや、ステータス異常をソーマ酒で解消だ!
さて、これからの予定は?
ここを拠点に牽制を続ける事にしよう。
どこまで王城に嫌がらせが出来るかな?
それはやってみないと分からない。
まあオレの場合、出来る事をやるだけですけどね。
そうそう、ここのエリアポータル名って何ですか?
スワニーの村、となってます。
村ですか。
そう言えば周囲にも村らしき存在はあったように思う。
強力な魔物が出現するような所に村があるとは思えない。
これ、やっぱりイベントなんでしょうかね?
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv113
職業 サモンメンターLv2(召喚魔法導師)
ボーナスポイント残 33
セットスキル
小剣Lv84 剣Lv86 両手剣Lv86 両手槍Lv89 馬上槍Lv91(↑1)
棍棒Lv83 重棍Lv84 小刀Lv84 刀Lv86 大刀Lv86
刺突剣Lv84 捕縄術Lv90 投槍Lv88 ポールウェポンLv91(↑1)
杖Lv96(↑1)打撃Lv102 蹴りLv102 関節技Lv103
投げ技Lv103 回避Lv111 受けLv111
召喚魔法Lv113 時空魔法Lv100 封印術Lv99
光魔法Lv96(↑1)風魔法Lv96(↑1)土魔法Lv96(↑1)水魔法Lv96(↑1)
火魔法Lv96(↑1)闇魔法Lv96(↑1)氷魔法Lv96(↑1)雷魔法Lv96(↑1)
木魔法Lv96(↑1)塵魔法Lv96(↑1)溶魔法Lv96(↑1)灼魔法Lv96(↑1)
英霊召喚Lv5 禁呪Lv99(↑1)
錬金術Lv82 薬師Lv17 ガラス工Lv24 木工Lv47
連携Lv93 鑑定Lv83 識別Lv93 看破Lv79 耐寒Lv80e
掴みLv80e 馬術Lv94(↑1)精密操作Lv80e ロープワークLv90
跳躍Lv50e 軽業Lv50e 耐暑Lv80e 登攀Lv60e
平衡Lv94
二刀流Lv87 解体Lv84 水泳Lv44 潜水Lv76
投擲Lv50e
ダッシュLv60e 耐久走Lv60e 追跡Lv74(↑2)隠蔽Lv81
気配察知Lv82 気配遮断Lv81 暗殺術Lv60e
身体強化Lv60e 精神強化Lv60e 高速詠唱Lv50e
無音詠唱Lv60e 詠唱破棄Lv60e 武技強化Lv87
魔法効果拡大Lv86(↑1)魔法範囲拡大Lv86(↑1)
呪文融合Lv86
耐石化Lv80e 耐睡眠Lv80e 耐麻痺Lv80e 耐混乱Lv80e
耐暗闇Lv80e 耐気絶Lv80e 耐魅了Lv80e 耐毒Lv80e
耐沈黙Lv80e 耐即死Lv80e
獣魔化Lv13
召喚モンスター
ナインテイル 白狐Lv30→Lv31(↑1)
器用値 32
敏捷値 76
知力値 72(↑1)
筋力値 31
生命力 32
精神力 72(↑1)
スキル
噛付き 回避 天駆 空中機動 天啓 霊能 霊撃
夜目 MP回復増加[大] 魔法抵抗[大] 物理抵抗[微]
自己回復[微] 時空属性 光属性 闇属性 風属性
水属性 土属性 氷属性 木属性 耐即死 耐混乱
耐魅了 陽炎
蒼月 麒麟Lv32→Lv33(↑1)
器用値 42
敏捷値 82
知力値 48(↑1)
筋力値 42
生命力 42
精神力 42(↑1)
スキル
噛付き 頭突き 踏み付け 体当たり 疾駆
耐久走 奔馬 蹂躙 飛翔 蹴り上げ 遠視
広域探査 強襲 天啓 空中機動 霊能 霊撃
騎乗者回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]
MP回復増加[小] 時空属性 光属性 闇属性
風属性 土属性 水属性 雷属性
召魔の森 ポータルガード
ジェリコ、クーチュリエ、極夜、バンドル、ロジット、船岡
守屋、スーラジ、久重、テフラ、岩鉄、キュアノス、ノワール
ビアンカ、虎斑、蝶丸、網代、スパーク、クラック




