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73

 朝が来た。

 但し曇り空のようである。

 時刻は午前6時だが周囲はかなり暗い。


 さて。

 今日はレギアスの村に顔を出す予定がある。

 その前に新しい召喚モンスターを追加できる訳だが。

 どれにするか?


 装備を身に着けて庭に出る。

 残月を召喚しておき、次は新しい召喚モンスターを呼ぶことにした。

 とりあえず9列目の空欄を指定して召喚リストを見てみる。



 ウルフ

 ホース

 ホーク

 フクロウ

 ウッドパペット

 バット

 ウッドゴーレム

 ビーストエイプ

 鬼

 赤狐

 タイガー

 バイパー

 スケルトン

 スライム



 候補は増えていない。

 牛あたりが増えているかと思ったがないようだ。

 精霊も同様である。

 ガスクラウドにはやや興味があったのだが。

 精霊召喚はエルフにのみ許された特権らしいからおとなしく諦めておこう。


 で、結局何を選んだのかといえばスライムである。

 何故か。

 前衛はいるし空中位置もいる。

 後衛が欲しい所だが、空中位置で代用できる。

 問題は迷宮のような狭い場所だ。

 搦め手で活躍できるモンスターがいてもいいだろう。


「サモン・モンスター!」


 そして現れた半透明の塊のようなスライム。

 名前も付けておいた。

 


 リグ スライムLv1(New!)

 器用値 10

 敏捷値  6

 知力値  5

 筋力値  5

 生命力  8

 精神力  5


 スキル

 溶解 形状変化 粘度変化 表面張力偏移 物理攻撃無効



 わお。

 ステータス低過ぎだろ。

 でもスキルに注目だ。

 物理攻撃無効、という文字が燦然と輝いている。

 これこそスライムの持つ最大の意義、と言えるだろう。


 こういった特性はスライムだけではない。

 完璧ではないが、ナメクジもそうだった。

 そしてあのガスクラウドも。


 普通の武器では攻撃が効き難い、というだけで十分に脅威になりえるのだ。

 それが通じないとなると凶悪ですらある。

 ただこの魔物の足は遅い。

 それに知性といった面ではまるで心許ないのが気がかりではある。

 まあウッドゴーレムのジェリコもいい感じで動いてくれている。

 やらせてみなくては分からないだろう。


 今日は森の迷宮を南へと抜ける予定でいる。

 昼間探索するのであれば鷹のヘリックスの出番だ。

 ヘリックスを召喚する。

 森の迷宮はさっさと通過するだけとしたい。

 昨日は召喚と帰還を繰り返し、MPを消耗し過ぎた。

 ガスクラウドとの戦闘でMPに余裕がなかった主因なのだから少し自重したい。



 レギアスの村への街道に出ると自重しながら進む。

 スライムであるリグはどうしてるか、と言えば、半分がオレの背中に張り付いている。

 もう半分は残月に張り付いている形になる。

 邪魔にはなっていないのだが、たまにプレイヤーの視線が痛く感じる事がある。

 襲われている、と誤認されかねないよね。


 今日は朝からレギアス周辺にプレイヤーが多いようだ。

 恐らくは森の迷宮に挑むパーティが多くなっているのだろう。

 あそこが混みあうのは地味に困るのだが大丈夫だろうか。


 村に入るとまた奇異な視線が飛んでくる。

 残月の上に鎮座するリグの外観はまるで巨大な葛饅頭だ。

 実際に触れてみると適度な弾力があってプニプニである。

 よく見ると、体の内部に大きな気泡のような物が見えていた。

 合理的に考えると、自らの体内の水分を低下させて粘度が高まっていると思われる。

 気泡のように見えるのは体中から集まった水ではあるまいか?


 そんな考えはさて置きその感触を楽しんでみる。

 アリだな。


 だがオレのその意見は全否定された。



「いや、スライムとかでいいんですか?」


 イリーナは屋台の手伝いをしながらオレの選択に難色を示していた。

 いいじゃないの。

 遠目から見てもまるで葛饅頭である。

 触っても良し、である。



「おはよう、キース。あれが新しい召喚モンスターな訳?」


 イリーナから受け取った朝飯を食べているとフィーナさんからそう声を掛けられた。

 食事を飲み込んでから答えて置こうか。


「おはようございます。まああんな召喚モンスターを使うのもアリかと思いまして」


 食事をさっさっと片付けると昨日の探索で得たアイテムを見せてみた。

 量は少ない。

 実際、売る意思があるのは牛肉と雪猿の骨だけだ。


「雪猿の骨、ね。自力で魔物のいる場所に到達したって訳ね」


「まあそうです」


「こっちの肉も初見ね」


「ミオに渡してやって下さい」


「無論、買い取らせるわ」


 そこからは少し雑談した。

 宝飾職人のラピダリーが来るのが遅れているようなのだ。

 その雑談の中でいくつかの情報を仕入れている。

 主に各方面の攻略状況だ。


 まず北方面。

 鉱山とそれに隣接するようにダンジョンの如き旧ドワーフの洞窟があったのだが、一部が突破されたようだ。

 広域マップで言えばN2、N1E1の2方向になる。

 どちらもまだエリアポータルが見付かっていないそうだ。


 東方面。

 こっちは船がないと攻略が進まない場所があって、プレイヤーの数が少なく攻略が滞ると思われていたそうだ。

 だが、昨日のうちに突破したパーティがいて、エリアポータルも見付かったらしい。

 そのパーティが2人組の漁師なのだとか。

 思い当たるプレイヤーがいます。

 闘技大会で見た彼だ。

 片方は間違いなくそうだろう。


 そして最後に南方面。

 最近になってようやく石切場の近くにエリアポータルとして使えるキャンプが出来たそうだ。

 そして見付かった鍾乳洞のダンジョンはそこそこ広域らしく、攻略は進んでないらしい。

 ただ突破したのではないか、と思われるパーティがいるそうだ。

 掲示板に書き込んでないそうだが、ギルドメンバー繋がりの情報らしい。

 フィーナさんは商人らしいが、プレイヤーの指向からすると情報収集を重んじるタイプのようだ。

 よく情報を仕入れてますな。



「おはようございます、フィーナさん。遅れましたか?」


「いいのよマルグリッド。ああ、キース、この娘が例のラピダリーよ」


「どうも。サモナーのキースです」


「こちらこそ。ラピダリーでマルグリッドです」


 見た所、魔法使いのような格好をしている。

 地味目に見えるがその瞳には知性を感じられた。

 この娘、目が大きいな。


「動画は見ました。なんというか、あれを見てしまうと悩んじゃいます」


「悩む?」


「宝石があるにしてもどういった強化にすべきか、です」


「キース。まずは宝石を見せてみて」


 フィーナさんに促されてブルースピネルを取り出す。

 今まで死蔵になっていたものだ。

 改めて【鑑定】してみる。



【素材アイテム】ブルースピネル 品質C- レア度3 重量0+

 八面体の結晶を為す半透明鉱物。

 希少価値はさほど高くないが、加工次第で魔法発動の助けになる事で知られている。



 どんなものなんでしょ?


「珍しくはないですけど惜しいですね。もうちょっと大きかったら品質Cはあったと思いますけど」


「加工は?」


「カット、それに研磨。ですが問題はキースさんの戦闘スタイルです」


「そうよね。ロッドも魔法の補助どころか殴る為に持ってるようだもの」


 フィーナさんが受け応えしている内容が分からない。

 そんなオレにマルグリッドが説明をしてくれた。


 宝石を使う主な用途は、魔法技能において呪文の効果を強化する為の装備となる。

 プレイヤーが宝石を唯の装飾用に持つのではあまりに勿体無い。

 普通の使い道は杖に嵌め込んでM・APの底上げにするのが一般的であるようだ。

 そして魔力付与には魔石を消費する。

 宝石を嵌め込む装備に圧倒的に杖が多いのは、単にそれがも最も効果的であるのが理由だそうだ。

 で、効率で杖の次は、となると、指輪になるらしい。


「例えばこんな感じですね」


 マルグリッドが見せたのは彼女のメイン装備の杖だ。

 断りを入れてから【鑑定】させて貰う。



【武器アイテム:杖】若楡の杖+ 品質C+ レア度4

 AP+0 M・AP+10 破壊力1 重量1 耐久値90

 若いニレの木の枝で作られた杖。

 やや捩れた形状で殴って使うのは向いていない。

 [カスタム]

 ピンクスピネルを嵌め込んで強化してある。

 ※火属性魔法にのみ知力値+1の補助効果



 なにこれ凄い。

 特殊効果も火属性魔法限定ながら追加効果があるようだ。


「それを鑑定したら分かると思いますが、魔法使い用の杖は殴ることを前提にしません」


 そう。

 問題があるのはオレの戦闘スタイルだ。

 そこに尽きる。

 カヤのロッドは殴る為に使っているようなものだ。

 あまり普段は気にしてなかったが、呪文攻撃力の底上げになっているんだっけ。

 すっかり忘れてました。

 トンファーも同じく、である。

 その上、素手で戦っているのと同時に魔法も使っていたりするから目も当てられません。


 つまり、仮にロッドに嵌め込んでみた所で歪みが生じて宝石が外れたりする危険が考えられると言うのだ。

 素手で戦うに至っては意味がなくなる。

 無残。


「杖以外、となるとポピュラーなのは指輪ですが、それもオススメできませんね」


 ですよね。

 拳で殴ってますから。


 他の選択肢も装飾品の類になるが、どれも効率が落ちるのだと言う。

 更なる問題もある。

 指輪もそうだが、台座が銀でないと効果が落ちてしまう。

 つまり銀を使うが故に高価になってしまうのだ。


 念のため、オレが使っているロッドとトンファーをマルグリッドに見せてみた。

 ざっと見ただけでダメ出しである。


「細すぎますね。嵌め込んだ箇所が弱くなると耐久性を損ねますよ?」


 ダメか。

 こうなると自分の戦闘スタイルが恨めしくなる。


「可能な範囲でお金は用意します。効果は低くてもいいので他の装飾品で出来ますか?」


「出来ます。少し説明が長くなりますがいいですか?」


 そこからはレクチャーの時間になった。

 生徒はオレとフィーナさんだ。

 フィーナさんも商談に必要だから聞いておきたいらしい。



 装飾品で一番多いのは指輪。

 材料費が安く済むが、宝石のカットと研磨、それに台座加工の腕がシビアに品質に影響するそうだ。

 MP回復速度上昇の効果が付き易いらしい。

 オレの場合、拳で殴る事を前提とするからパス確定だ。



 次に額飾りのサークレット。

 指輪にするには粒の大き過ぎる宝石ならこれがオススメなのだとか。

 効率では指輪に劣るものの、加工はやり易く品質も安定するそうである。

 但し銀製のチェーンなど台座が高価になり易いようだ。

 MP消費減少の効果が付き易いらしい。

 オレの場合、頭突きだってやるからこれも好ましくないな。



 イヤリング。

 粒の小さい宝石で指輪以外となるとこれになるそうだ。

 ただ強くオススメはしないそうである。

 単純に冒険だと引っ掛けたりしてケガをする事もあったりするからだとか。

 魔法攻撃などに対する耐性が付き易いらしい。

 ちょっとピンとこないな。



 腕輪と足輪。

 メインが防具目的になるので宝石を付けて強化するのは稀なのだそうである。

 腕輪だと武器の攻撃命中率アップ、足輪だと敏捷度アップが付き易いらしい。

 追加効果には興味がある。

 だが既に両手両足の装備と干渉してしまう。

 パスだな。



 首輪。

 これも防具目的で宝石を付けて強化するのは稀なのだそうである。

 状態異常に対する耐性が付き易いらしい。

 普段から身に着けていない装飾品だと気になるかもしれない。

 保留としておこう。



 最後にネックレス。

 これが一番ややこしいものだった。

 そもそも銀のチェーンが必要でありサークレットと同様に高価になり易い。

 そしてネックレスは複数の宝石を組み合わせて使う事もあるのだとか。

 後付で宝石を追加する使い方も出来るようである。

 そして特殊効果なのだが。

 これには分からない所があるらしい。



「まあどの装飾品でも必ず特殊効果が付くとは限らないんです。期待されても困るんですけど」


 とはマルグリッドの弁。

 彼女もブルースピネルはいくつか装飾品で手掛けているそうだが、特殊効果付きはないそうである。


 一通り説明を聞いた後で少しだけ悩む。

 最も現実的なのはネックレスだろう。

 普段は鎧の下になるのだし。

 格闘戦でも邪魔になり難いだろう。


 他はちょっと躊躇してしまう。


「ネックレスで出来ますか?」


「え?」


「他ではちょっと私の戦闘スタイルに合いそうもないので」


「費用対効果がかなり悪くなりますよ?」


「結構です」


「承知しました。では細部と費用の条件を決めておきましょう」


 平均的な予算額を聞いたが、現在の手持ちの金の半分といった所だった。

 銀製チェーンに台座といった材料費、それに加工費込みである。

 意外に安くなっている理由もある。

 魔石だ。

 既に入手してある魔石は全て提供している。


「これだけあれば追加強化もできますけど、何がいいですか?」


「お任せで」


「いいんですか?」


 このマルグリッドの瞳が更に大きく見える。

 彼女が見せた初めての感情だ。

 興味に満ちて何かを期待している事が丸分かりだった。


「ええ。追加で費用も出しますが」


「いえ、追加強化の出来映え次第でどうでしょう?」


「まあそれが合理的でしょうね」


 商談になるとフィーナさんも会話に割り込んでくる。

 さすが商人。


「マルグリッド。納期はどんな感じ?今日は狩りに行く予定だったでしょ?」


「あ、フィーナさん。今日の森の迷宮行きはキャンセルで」


「そう言うと思ってました」


「納期は明後日って所かな?台座とチェーンの作成からやるし」


「早いわね」


「そうでもない。ブルースピネルは八面体で作るし」


「そういえば貴方って台座やチェーンも作れるの?」


「鍛冶技能もあるし問題なし」


 マルグリッドの視線は早くもブルースピネルを品定めしているようである。

 実に楽しそうだ。


「追加強化って具体的に何をするの?」


「台座とチェーンに彫金。紋様にもよるけど付与できる魔力が増えるのだけは確実なの」


 ほほう。

 どんな物が出来上がるんだろうか。

 お任せにした分、楽しみにしておこう。


「そうそう、フレンド登録はしておきたいけどいいかしら?出来上がったら連絡するわ」


「はい」


 女性の連絡先をゲットする瞬間は少しだけ緊張する。

 ニヤけるなオレの表情。

 反射的な反応が出てしまっているかもしれない。



 フィーナさんから肉と骨を売ったお金を受け取る。

 そのお金で携帯食料を3食分、朝食で食べた串焼きとパンを2食分、買い込んでおいた。

 遠征するにしてもオレには料理スキルがない。

 料理センスもない。

 不味い飯を作る才能しかない。

 情けないがそれが事実である。



 レギアスの村を出て森の迷宮に向かう。

 オレ達以外にもいくつかのパーティを見かけていた。

 森の迷宮は経験を積むにもいい場所だろう。

 キノコ2種とブランチゴーレムしかいないから対策も立て易い。

 オレもいい稽古が出来ていたし。

 そう遠くない時期に森の迷宮を突破するパーティがもっと増える事だろう。



 森が深くなって残月での移動が難しくなった所で戦鬼と交代させた。


「グゲ」


 スライムのリグを見ての感想がそれでした。

 ヘリックスはオレの肩に止まったままにしてある。

 速やかな移動をするには足の遅いリグを戦鬼に運んで貰わないといけない。


 リグを戦鬼に担がせた。

 するとリグが何やら変形し始めて戦鬼の体中を這い回っていく。

 戦鬼は這わせるに任せたままだ。

 リグが自分のポジションをようやく定めたようである。

 首の後ろから背中全面を膜で覆うように変形して定着した。

 まるで臨時の鎧だ。


 いいのかね?

 まあ任せておいていいのだろう。



 森の迷宮に突入する。

 オレ達以外のパーティも常に目にする程度に混み合っているようだ。

 広間は問題ない。

 通路なんですよ。


 どうにか通過して南方面の洞窟に抜けていく。

 ここまで戦闘がなくて、リグの戦いぶりを見ていない。

 この洞窟にはゴブリンが出る。

 戦いぶりを見るのであれば適当な相手だろう。

 そしてそのゴブリンに遭遇した。



 ゴブリンは7匹いた。

 適当に戦って数を減らしてからリグの戦い方を見ようと思ったのだが。

 戦鬼が全滅させかねない勢いでゴブリンを屠っていく。

 待て待て待て待て。

 オレも1匹しか倒してないってのに。


 戦鬼が戦おうとするのをやめさせてリグをけしかける。

 いや、戦鬼が片手で頭を押さえつけているゴブリンに這い寄っていく。

 戦鬼の腕を伝ってゴブリンの頭の上に到達。

 途端にゴブリンが苦しみ始めた。

 リグがゴブリンの上半身を覆い尽くす。

 リグの体は半透明ではあるのだが、ゴブリンの苦しんでいる顔は何故かはっきりと見えていた。



 リグがゴブリンに攻撃を仕掛けて1分程度すぎた辺りで勝負は決した。

 その死体はボロボロである。

 肉が爛れていた。

 生きながら消化されて喰われているようなものか。

 無論、リグはダメージを喰らってなどいない。


 悪夢だ。

 物理攻撃しかしてこない相手ならば無敵じゃないのか?

 相手が生体であれば、という条件付きではあるが。

 少なくともオレは魔法なしで相手にしたくない。


 更にゴブリンの群れ2つを蹂躙しつつ進むと洞窟を抜けた。

 剥いだアイテムは石ころしかなかった。

 無残。

 当然、回収はしない。

 どうもゴブリンとは相性がとことん悪いようだ。



 洞窟を抜けた。

 広域マップではS1W1、になっている。

 半分と少しが火山地帯、残りが森林地帯といった感じの地形になる。

 火山地帯は荒地同然で馬で駆けるのは難しいだろう。

 森もかなり深い。

 召喚モンスターの編成は変更せずに出来るだけ踏破し易そうな場所を通って南へと向かおう。


 マグネティック・コンパスの呪文を唱えて方位を確認する。

 広域マップも常時表示しておいた。

 荒地を真っ直ぐに歩く訳ではないのだ。

 さすがに迷子になりたくはなかった。



 火山地帯で最初に遭遇した魔物は何やら虫のような奴だった。

 動く岩のようにも見える。

 【識別】してみたらビンゴである。



 ロックワーム Lv.1

 魔物 討伐対象 アクティブ



 問題はその数だ。

 何匹いるんだ?

 赤いマーカーで目の前が真っ赤になりそうだ。

 どう見ても50匹以上はいる。


 ヘリックスが気が付かなかったのか?

 いや、上から見たら岩のように擬態する魔物のようだ。

 結構な大きさの丸い石に見える。

 高さはオレの膝を超える程度だ。


 戦鬼が突っ込んだ。

 オレも肩を並べて突っ込む。

 戦鬼が傍にいた1匹に拳を叩き込んだ。

 次の瞬間には魔物を抱えて上げて地面に叩き付ける。

 そのボディスラムで魔物が息絶えたようだ。

 HPバーが消し飛んでる。

 あれ?

 こいつってば弱いのか?


 近い位置にいる1匹に蹴りを見舞ったがビクともしない。

 むしろオレの脚が痛い。

 オレのHPバーの方が減ってるし。


 戦鬼を真似て持ち上げてみようとしたんだが。

 重たい。

 持ち上がる訳がない。


「フィジカルエンチャント・アース!」


 既に詠唱を終えていた呪文でオレの生命力を強化する。

 魔物の動きは?

 どうやら鈍い、と思ったら飛び跳ねてきやがった。

 オレの肩を掠める。

 げえ。

 結構喰らったぞ。


 オレに向かって飛び上がってきていた魔物が着地した。

 その魔物にヘリックスが嘴で攻撃を加える。

 だがHPバーがまるで減らない。

 ヤバイ。

 こいつら、まるで石製のゴーレムみたいに重いし固い。

 そして数が多い。

 戦鬼だけはこの魔物を苦にしないようだ。

 リグは?

 いつの間にか地面を這い寄って魔物の1匹を襲っている。

 いや、襲われている。

 だが魔物の攻撃はまるでリグに通じていない。

 逆に魔物のHPバーが徐々に減っているようだ。

 大丈夫みたいだな。


「ストーン・バレット!」


 攻撃呪文を試してみた。

 直撃したか、と思ったら一撃でHPバーが消し飛んで絶命した。

 もしかして。


 魔物が連続で飛び跳ねてくるのをなんとか避けながら次の呪文を選択して実行する。

 詠唱が終了。

 なんか詠唱時間が短いようだが?


「フォース・バレット!」


 攻撃呪文の中でも最初から習得していた呪文だ。

 どうなる?

 呪文が直撃すると魔物のHPバーが吹き飛んだ。

 絶命したようである。


 なんと、まあ。

 極端な奴らしい。

 次の呪文を選択して実行しておきながらヘリックスを近くに呼んだ。


「エンチャンテッド・ウェポン!」


 ヘリックスに呪文を掛けて攻撃に参加させる。

 これでいい筈だ。

 早速、身近にいた魔物に襲い掛かった。

 嘴の一撃だけで魔物が屠られて行く。


 魔法にはとことん弱い魔物のようだ。

 それならば戦い様がある。


 攻撃をなんとか捌きつつ次の呪文を唱えた。


「エンチャンテッド・ウェポン!」


 ロッドで、蹴りで魔物に攻撃を加えていく。

 どちらでも魔物を排除できるようである。

 これでいける。


 そう思っていたが事態は悪化していた。

 増えているのだ。

 間違いなく魔物の数が増えている。

 イビルアントと一緒か。

 これは長い戦いになりそうだ。



 最初の頃、イビルアントと戦った記憶が蘇る。

 いつかは終わりが来るのだ。

 そう信じて戦い続けた。


 スライムであるリグ以外の全員はエンチャンテッド・ウェポンで強化。

 そしてオレはフォース・バレットの呪文も併用して戦い続けた。

 目に見えて減っているのが分かってくると気分も楽になってくる。

 どうにか勝ち抜けるだろう。

 そう確信していた。


 なんと言っても戦鬼の戦いぶりが素晴らしいのだ。

 文字通り、蹴散らしている。

 殴っても屠っているのだが、わざわざ持ち上げて投げ飛ばしもする。

 どうやらその攻撃方法が気に入っているようだ。

 ダメージを喰らっているのも気にならない程の大活躍である。


 余裕ができれば周囲も見えてくる。

 リグはジワジワと魔物を倒しているようだ。

 なんと岩のような魔物の表皮が爛れている。

 時間はかかっているが確実に魔物を倒してくれていた。


 ヘリックスには空中から一方的に攻撃を加えてさせている。

 但し慎重に。

 飛び跳ねて地上に着地した瞬間を狙わせていた。

 そのお陰でダメージをまるで食らっていない。


 途中で戦鬼をファイア・ヒールで回復させて戦闘を継続する。

 最後の魔物はオレの放ったフォース・バレットで息絶えていた。



《只今の戦闘勝利で【蹴り】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【時空魔法】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【身体強化】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『戦鬼』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 うむ。

 大活躍だったしな。

 ステータス値で既に上昇しているのは筋力値だった。

 任意ステータスアップは生命力を指定する。



 戦鬼 ビーストエイプLv2→Lv3(↑1)

 器用値 10

 敏捷値 17

 知力値  4

 筋力値 25(↑1)

 生命力 25(↑1)

 精神力  4


 スキル

 打撃 蹴り 投擲 受け 回避 登攀



 元々、前衛向けのステータスなのだが、益々磨きがかかってきているようだ。

 実に男らしい。

 そしてインフォはまだ続いていた。



《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『リグ』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 こいつもだ。

 大活躍とは言えないが、元々レベルが低かったし順当なのだろう。

 ステータス値で既に上昇しているのは器用値だった。

 任意ステータスアップは知力値を指定する。


 リグ スライムLv1→Lv2(↑1)

 器用値 11(↑1)

 敏捷値  6

 知力値  6(↑1)

 筋力値  5

 生命力  8

 精神力  5


 スキル

 溶解 形状変化 粘度変化 表面張力偏移 物理攻撃無効



 こんな所か。

 HPバーが減っていた戦鬼もファイア・ヒールの追加効果で全快になっている。

 オレのHPバーも結構減っていたが、ポーションで9割程度にまで回復できた。


 それにしても時空魔法だが、使っていないのにレベルアップしてくれている。

 フォース・バレットを使う事でセットしてある魔法技能に等しく分散して経験値が入るらしいが。

 まあ結構使っていたからな。

 つかどんだけ使ったのだろう。

 それに高速詠唱の影響なのか、呪文詠唱の完成がかなり速かった気がする。


 MPバーは半分近くまで減っていた。

 だが得るものも多かったようだ。

 おっと。

 魔物からアイテムを剥ぐのを忘れてはいけない。

 ついでに魔物の数も数えておこうか。



 剥ぎ終えるまで30分以上かかった。

 その成果は?

 芳しくなかった。


 何しろ石ころが多い。

 魔物の死体を数えるのも100匹で止めてしまっていた。

 魔物から何も剥げない事もあるのだ。


 そんな中で当りもあるようだ。

 それがこれだ。



【素材アイテム】重晶石 原料 品質C レア度2 重量0+ 

 火山地帯でよく見付かる白色結晶。

 一般的に薬師が薬品として使っている。



 重晶石ね。

 化学組成で言えば硫酸バリウムだったかな?

 火山地帯ならあってもおかしくはない。

 

 それにしても苦労の割りに得られるアイテムがこれ1つだけとは。

 このロックワームといいゴブリンといい、何でオレと相性が悪いのだろうか。


主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv9

職業 サモナー(召喚術師)Lv8

ボーナスポイント残6


セットスキル

杖Lv7 打撃Lv4 蹴りLv5(↑1)関節技Lv4 投げ技Lv4

回避Lv5(↑1)受けLv4 召喚魔法Lv9 時空魔法Lv2(↑1)

光魔法Lv4 風魔法Lv5 土魔法Lv4 水魔法Lv4

火魔法Lv4 闇魔法Lv4 氷魔法Lv2 雷魔法Lv2

木魔法Lv2 塵魔法Lv1 溶魔法Lv1 灼魔法Lv1

錬金術Lv5 薬師Lv4 ガラス工Lv3 木工Lv4

連携Lv6 鑑定Lv6 識別Lv6 看破Lv2 耐寒Lv3

掴みLv6 馬術Lv6 精密操作Lv6 跳躍Lv3

耐暑Lv3 登攀Lv3 二刀流Lv3 

身体強化Lv2(↑1)精神強化Lv3 高速詠唱Lv4


装備 カヤのロッド×2 カヤのトンファー×2 雪豹の隠し爪×3 

   野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+

   雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式


称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者

   呪文目録


召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv7

残月 ホースLv5

ヘリックス ホークLv5

黒曜 フクロウLv4

ジーン バットLv4

ジェリコ ウッドゴーレムLv3

護鬼 鬼Lv3

戦鬼 ビーストエイプLv2→Lv3(↑1)

 器用値 10

 敏捷値 17

 知力値  4

 筋力値 25(↑1)

 生命力 25(↑1)

 精神力  4

 スキル

 打撃 蹴り 投擲 受け 回避 登攀

リグ スライムLv1→Lv2(↑1)

 器用値 11(↑1)

 敏捷値  6

 知力値  6(↑1)

 筋力値  5

 生命力  8

 精神力  5

 スキル

 溶解 形状変化 粘度変化 表面張力偏移 物理攻撃無効

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