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「全員、無事か?」
『い、今、確認します!』
目の前には港町レジアの防壁。
無事に全員、生還したと思えるが確証は無い。
乗り遅れはいませんよね?
『点呼、終了しました。全員います!』
「そうか。それは良かった」
個人的には全然良くない。
あの魔神を目の前に、殴りに行くのをどうにか耐えていたのだ。
オレの中で何かが溜まっている。
解消せねば、気が済まないぞ?
結果的にどうだったんだろう?
皆、大いに経験値を稼げたのは確実だ。
全員、レベルアップしているように思える。
召喚モンスターのクラスチェンジもあるようだ。
アデル配下の金狐が妖狐に。
イリーナ配下のディアナオウルがミネルヴァオウルになってますね。
戦力アップを果たしているのはいいけどね。
オレとしてはすぐにでも空中に浮かぶ島に行きたい所なのだ。
結界?
知るか。
魔人の指輪を使ってもいい。
あの魔神はあの島にいる可能性は高いのだ。
死に戻っても構わん。
それと引き換えにしてでも、あの顔が歪む位、殴って差し上げたい。
この気持ちは純粋なのだ。
ならば従うしかあるまい。
「もう一度、様子を見て来る」
『キースさん、無茶ですよ!』
「無茶はしないさ。様子を見に行くだけだ」
うん。
嘘だ。
このまま様子を見に行って唯の偵察で済む訳も無い。
分かっている。
冷静でいない事は自覚しているのだ。
「報告は任せるよ」
『せめて誰か同行した方がいいんじゃ?』
「皆、消耗している。無理はしない方がいい」
ダメだ。
ゼータくんの言う事も分かるけどね。
一緒に連れて行くと思い切った行動が出来なくなる。
それではダメなのだ。
「ユニオンから抜ける。後の事は頼むよ」
傍にいた面々を見回す。
皆、言葉が無い。
さて。
上手く表情を取り繕う事が出来るかな?
少しだけ、笑ってみた。
「キースさん、顔!失敗してますよ?」
「そうか?」
やっぱりダメだったか。
イリーナの指摘する通り、女性陣が皆引いている。
でもねえ。
こういう時って安心させる為に笑うものじゃないのかね?
笑ってはいけないとなると、後はどうしたらいいんだろうか?
テレポートでE9マップのエリアポータル、生贄の神殿に到着。
布陣は?
蒼月はこのままで。
消耗は大きいがもう少しだけ、頑張ってくれ!
マナポーションを与えておこう。
ヘザー、言祝、折威、アイソトープは帰還だ。
スパッタ、イグニス、スコーチ、ルベルを召喚しました。
移動速度を優先した布陣だ。
さあ。
空中に浮くあの島の移動速度は遅い。
その方向は港町サリナスから西方向だ。
ここからであれば、すぐに捕捉出来るだろう。
まだ戦力が島に残っていたのは見た。
その上で雲母竜だっている可能性がある。
でも知った事ではない。
オレの目標はあの魔神だけだ。
邪魔するようなら排除するのみ。
排除出来ずに死に戻ったら?
オレのリベンジ対象リストに大文字で記録しておくとしよう。
では、行こうか。
どこまでやるかは現地に行ってから決めよう。
当面、容赦無しで。
それだけは譲れませんな!
《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐寒】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐暑】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【気配察知】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐麻痺】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『蒼月』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
今のは何だ?
気が付けば海面へと落ちて行くニュートドラゴンの死体が見える。
どうやって仕留めたんだっけ。
何となく夢の中で戦っていたような感じがする。
いかんな。
折角のニュートドラゴンとの戦闘を白昼夢扱いしてはいけない。
それにビートルドラゴンにスタッグドラゴンもだ。
少なくない数が出てきたと思うが全部、撃墜。
死体は海面を漂っている筈だがアイテムを剥ぎ取りに行く気は無い。
それにしても魔人共め、姑息な奴等だ。
こっちが少数だからなのか、島からはそこそこの戦力が繰り出されている。
でも雲母竜はまだだ。
グリフォン、ヒッポグリフは出撃して来ない。
無論、魔人もだ。
舐めやがって。
ドラゴン共を寄越すだけで魔人は結界の中に閉じ篭もっているつもりか?
根性の無い奴等だ。
(((((((((((((((ファイア・エクスプロージョン!)))))))))))))))
結界があると分かっているけど撃ち込まずにいられない。
魔人め、出て来いや!
魔神め、いるなら出て来い!
何だったら雲母竜も出て来い!
今なら相手をしてやる。
勝ち目が無い?
知った事かよ!
蒼月のステータス値で既に上昇しているのは筋力値でした。
もう1点のステータスアップは生命力を指定しましょう。
蒼月 麒麟Lv25→Lv26(↑1)
器用値 39
敏捷値 79
知力値 45
筋力値 41(↑1)
生命力 41(↑1)
精神力 39
スキル
噛付き 頭突き 踏み付け 体当たり 疾駆
耐久走 奔馬 蹂躙 飛翔 蹴り上げ 遠視
広域探査 強襲 天啓 空中機動 霊能 霊撃
騎乗者回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]
MP回復増加[小] 光属性 闇属性 風属性
土属性 水属性 雷属性
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『スコーチ』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
ステータス操作は手早く済ませよう。
島から魔物が出て来る気配が無い。
こうなったら最後の手段だ。
魔人の指輪を使おう。
潜入?
今更、こっそり侵入出来るとは思っていません。
気付かれてもいい。
今日は真正面から喧嘩を売りに来たのだ。
むしろ襲って来ていいぞ!
スコーチのステータス値で既に上昇しているのは知力値でした。
もう1点のステータスアップは生命力を指定しましょう。
スコーチ ミネルヴァオウルLv22→Lv23(↑1)
器用値 36
敏捷値 81
知力値 49(↑1)
筋力値 50
生命力 50(↑1)
精神力 36
スキル
嘴撃 無音飛翔 回避 遠視 広域探査 夜目
反響定位 空中機動 監視 看破 強襲 隠蔽
追跡 気配遮断 危険予知 天啓 睡眠 混乱
自己回復[小] 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中]
耐混乱 耐即死 耐魅了 耐睡眠
では。
中に入らせて貰おうか。
得物にしていた双角猛蛇神の騎士槍を《アイテム・ボックス》に仕舞い込む。
そして魔人の指輪を取り出す。
どの名前になるのかはどうでもいい。
魔人の指輪を身に着けたまま、魔人の振りをするつもりは皆無だ。
結界を通り抜けられたらそれでいいのです。
(フライ!)
蒼月から離れて空を飛ぶ。
召喚モンスター達は全員、帰還だ。
魔人の指輪を嵌めると湖畔に向けて降下する。
オレの目には魔物の姿は見えない。
ドラゴンもだ。
どこに隠したんだ?
出て来なさい。
これ以上、オレを怒らせない方がいい。
無差別に破壊するけど、いいのか?
結界はアッサリと抜けてしまい、湖畔に着地したのだが。
この島の雰囲気は?
芳しくないな。
どのドラゴンの姿も見えない。
グリフォン、それにヒッポグリフの姿も見当たらない。
魔人もだ。
魔神、それに雲母竜の姿も無い。
センス・マジックはまだ有効である筈だが、魔力の痕跡を見る事が出来ない。
いや、魔力は感じ取れるのだが周囲のどこからも魔力を感じ取れてしまう。
判別出来ない、というのが正確だ。
島そのものに魔力が込められているのか?
湖畔にあるのは森と神殿。
さあ、どっちに隠れているのかな?
そうそう。
魔人の指輪は不要だ。
外してしまおう。
布陣はどうする?
匂いを辿る事が出来るかも知れません。
それに余計な戦闘が発生する事もあるだろう。
エリアポータル解放戦に準じた形で挑むとしようか。
但し【英霊召喚】もエクストラ・サモニングも無い。
そこは覚悟せねば。
召喚したのは?
ヴォルフ、護鬼、戦鬼、鞍馬、ノワールだ。
神殿の大きさはそこそこ、戦鬼でも不便はないだろう。
いや。
破壊していい。
むしろ推奨するぞ!
呪文の強化を進めつつ、ヴォルフの様子を見る。
匂いは辿れるかな?
ヴォルフは地面近くの匂いを追い始めたようだ。
いいぞ。
そのまま、隠れているであろう連中を追って欲しい。
ヴォルフが辿り着いたのは神殿の内部、大広間かな?
本来であれば祭壇があり、神像なり仏像なりがあるべきなのだが。
そこには何も無い。
何かが破壊された後のようで、岩塊が転がっている。
そして大広間の中央に佇む人影。
だがオレが望んでいた奴ではない。
イル・カピターノ ???
イベントモンスター 魔人 ???
??? ???
かつては侍従長であった人物だ。
以前、見た時には護衛役のスペクターロードがいたと思ったが。
一応、邪魔者が出現する事を想定しておこうか。
で、あの魔神はどこだ?
無論、行き先を知っていそうな相手は目の前にいる訳だが。
聞き込みをしないといけないのか?
でも簡単に教えてくれそうな雰囲気は無い。
オレを見る視線は侮蔑の色に満ちていた。
そうか。
説得しろって事ですね?
『身の程を知らぬ愚か者め、ここで死ぬがいい』
「はあ?」
アホか。
そんな事を言ってる暇があったら襲って来いって!
この大広間そのものが戦場になるであろう予感はあった。
罠?
大歓迎だ。
アンデッドのスペクターロードが現れるとか、そんな展開まで読めている。
スペクターロード Lv.6
イベントモンスター 魔物 アンデッド
??? ??? ??? ???
読み通りじゃねえか!
それにレベルが見えているって事が意味するのは?
経験値的に期待出来ないって事だ。
まあいいか。
魔人も同時に出現している。
変態魔人も混ざっているけど妥協しよう。
加えてガルムにベリルビーストだ。
トライホーンリザードにビッグホーンリザードの姿もある。
こっちを包囲済みであるようだ。
どこかに隠れていたのかね?
目玉は?
ドラゴンスペクターだな。
何体かいる。
こいつ等が頼みの綱だろう。
レベルが見えていない。
でもね。
怒っていいかな?
どうしてニュートドラゴンがいない?
やり直しを要求する!
(サンシティフィ・アンデッド!)
(サンシャイン!)
(((六芒封印!)))
(((七星封印!)))
(((十王封印!)))
(ホーリー・プリズン!)
(グラビティ・プリズン!)
(ファイア・エクスプロージョン!)
(ミーティア・ストリーム!)
アンデッド用に組んだ【呪文融合】による呪文詰め合わせだ。
但し背後に回り込んでいた魔人と魔物には効力は及んでいない。
まあそっちはヴォルフ達に任せておこう。
取り敢えず、元侍従長は確保しておきたい。
(ショート・ジャンプ!)
一気に元侍従長の目の前に跳ぶ。
驚愕の表情は一瞬。
その右手が腰にあった刺突剣に伸びるが、遅い。
抜剣などさせるか!
柄頭を右手で抑えて頭突きを喰らわせる。
続けて左拳が顎に炸裂。
おっと。
蘇芳羂索!
梱包するのを忘れちゃいけません。
このまま撲殺する所だったぞ!
冷静になれ。
今は堪えろ。
魔神の居場所を聞き出さないといけないのだ!
《只今の戦闘勝利で【耐暗闇】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐沈黙】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【耐即死】がレベルアップしました!》
アンデッドはタフな相手だが、対策さえあれば面倒は無い。
魔人も一部を除けばウェルカムだ。
経験値的に美味しい。
そんな両者に組まれたら?
今の戦闘みたいな事になる。
ドラゴンスペスターを仕留めるのに集中し過ぎたのは失敗だったな。
魔人のうち、デモンズクラウンが大広間を跳び回る事になってました。
それに呪禁導師。
久々に沈黙の状態異常を喰らってしまった!
そして召喚モンスターのレベルアップは無い。
まあ、そうだろうな。
だからこそニュートドラゴンを用意して欲しかった。
この大広間はかなりの規模がある。
入れなくはないと思う。
実際、複数のドラゴンスペクターが戦えていたのだ!
オレの怒りの視線の先には名前持ちの魔人が蘇芳羂索で梱包されている。
ジリジリとHPバーが減っていた。
まだ足掻いているのか?
無駄な事をするものだ。
(ダーク・ヒール!)
イル・カピターノと呼ぶべきか?
元侍従長と呼ぶべきか?
どっちでもいいけど、ブツブツと呪詛めいた言葉を吐いている。
聞き取れないけど。
呪文詠唱も試していたみたいだが、その場合は急速にHPバーが減っている。
そして全ては失敗、徒労に終わっていた。
いや、自殺でもしたかったのか?
ならば舌でも噛めばいいのに。
「そろそろ、喋る気になったかな?」
『人間風情が!我等が主は寛大だが罪に与える罰は厳しいぞ!我を解き放つがいい!』
あのね。
悔しそうな様子でそんな台詞を言われて縄を解く訳が無い。
そこまで愚かではないのです。
どうしたものか。
時間は掛けたくないんだけどね。
やはり説得するしかないみたいです。
気が進まない。
その光景は老人を虐待しているようにしか見えないだろう。
何故だ。
説得が芳しくない。
【禁呪】の呪文、ファントム・ペインも結構使っている。
カーズド・ワームとアイアン・メイデンと組みで使っていた筈。
【闇魔法】の呪文、ダーク・ヒールもです。
レベルアップしてくれてもいいのに。
それはこの元侍従長が小物であるのか。
オレがレベルアップし過ぎているのか。
両方なのか。
どうでもいいけど怒りが募る。
口を閉ざしたまま、何も話そうとしない。
途中で気絶していたりもしていたけど。
それはオレの責任の範疇にない、と思う。
そしてこの元侍従長、魔人の指輪が外せない。
気絶中に外そうと思ったんだが。
肉に食い込んでいるかのようで、どうしても外せないのだ。
全く、どうなっているんだか。
時刻はもう午前11時を過ぎてしまった。
無駄な時間を過ごした気分だ。
頬を張って意識を取り戻した元侍従長のMPバーはもう殆ど残っていない。
そろそろ切り上げる頃合いだろうか?
《これまでの行動経験で【捕縄術】がレベルアップしました!》
《これまでの行動経験で【ロープワーク】がレベルアップしました!》
最後は裸絞めから元侍従長に首を捻って終わらせたのだが。
レベルアップはこれだけか。
切ない。
だが元侍従長の死体が消えると魔人の指輪だけが残された。
これはイル・カピターノになる筈。
折威が装備している奴と同じですね。
「ガゥ?」
ヴォルフがオレを見上げて首を傾げている。
パンタナールから発した仕草だが、こうして見ると可愛いものだ。
そのヴォルフの雰囲気が一瞬で変化した。
ノワールもだ!
周囲を警戒する。
魔物が来るのか?
そう期待しつつオレも身構えたのだが。
変化は、無い。
いや。
体が浮くような、この違和感。
それに振動。
地震ですか?
いや、それにしてはおかしい。
何が起きているのだろう?
神殿の外に出て、ようやく理解した。
空中に浮いているこの島だが、落下中であるらしい。
島の端では風切り音と共に暴風が壁となって立ち塞がっていた。
マズい。
このまま島が海面に落下したら?
何が起きるか、分かったものではない。
(リターン・モンスター!)
召喚モンスターを一気に帰還させる。
ここは逃げよう。
落下する島に巻き込まれて死に戻りとか、無意味だ!
(フライ!)
上空に浮くように空を駆けるのだが。
おかしい。
何かが邪魔をしていて、島から離れられない!
これ、結界か?
魔人の指輪を適当に取り出して急いで指に嵌める。
だが状況に変化は無い。
(テレポート!)
呪文は失敗?
転移先の指定先が出ない。
失敗を知らせるインフォすら無かった。
これもダメか。
何故、という疑問はある。
ここは覚悟を決めよう。
このまま海上に一緒に落ちるだけだ。
「真降魔闘法!」
島に着地。
臨時になるけど、防塁を築くとしよう。
(トーチカ!)
何が飛んで来るか、分からない。
それに足元の地面だって怪しいものだ。
最後に頼りになるのは、オレ自身の肉体って事になるだろう。
(フィジカルエンチャント・ファイア!)
(フィジカルエンチャント・アース!)
(フィジカルエンチャント・ウィンド!)
(フィジカルエンチャント・アクア!)
(メンタルエンチャント・ライト!)
(メンタルエンチャント・ダーク!)
(グラビティ・メイル!)
(サイコ・ポッド!)
(アクティベイション!)
(リジェネレート!)
(ボイド・スフィア!)
(ダーク・シールド!)
(エンチャンテッド・ライト!)
(ファイア・ヒール!)
【呪文融合】で強化を進める。
次の瞬間。
全身に衝撃。
そして意識が遠のく感触。
これは死に戻り、かな?
頭の片隅で諦めの言葉を呟く。
次に見る風景はどうなるのか?
死に戻っているなら召魔の森になっているのだろう。
気絶の状態異常ってこんな感じなのか?
短い時間だったが視界が真っ暗なままだ。
何の感覚も無い。
それは一種の拷問だろう。
短い時間で気が付いたのは幸運だっただろうか。
気が付けばオレの体は瓦礫に埋まっていた。
オレが築いたトーチカは跡形も無い。
視界にあるのは瓦礫だけだ。
どうも生き埋め状態?
どうにか息は出来るが埃が酷くて息苦しい。
それに体のあちこちが痛い!
HPバーは一気に7割程、削られている。
リジェネレートで回復はしているようだが、それよりもこの状況をどうにかしたい。
(トンネル!)
頭上に向けて穴を穿つ。
どうにか空が見えた。
そして息が少し、楽になったか?
ここはまだ島である筈。
どんな状況になったのか、気になる。
確認しておくか。
確認してみた。
広域マップによると、ここはN1E8マップの東側だ。
港町サリナスからも近い。
そして眼下に見える島の様相は酷いものだ。
かつてあった湖畔は原型を留めていない。
瓦礫の様相から神殿のあった場所がどうにか分かるけど。
オレってば良く生きてたな!
ダメージこそあったけど気絶だけで済んでいる。
補助スキルの影響もあるのだろう。
瓦礫の上に立って島を見回すのだが。
この島の目的は一体、何だったのか?
知る術はもうない。
それにしてもアレは何だったのか。
この島の周囲から出られなかったのは結界、だったのだろう。
魔人の指輪も通じなかったというのが少々気になる。
今も出られない、というのは困る。
まあ試すしかないよね?
フライの呪文を継ぎ足して使おうとした、その時。
地面に振動、続いて巨大な音だ!
まだ何かあるのか?
雲母竜 スカラブドラゴン ???
??? ??? ???
??? ???
オレが最初に思った事は?
いたんだ、雲母竜。
そしてオレの期待は大いに膨らむ。
あの魔神は、どこだ?
いた。
雲母竜の目の前の瓦礫を蹴飛ばして現れたのだ!
HPバーは全快。
ならば遠慮は不要。
フライの呪文で魔神の目の前へ着地。
瓦礫の上で足元は良くない。
それでも構わん!
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」「リミッターカット!」「ブーステッドパワー!」
一気に武技を注ぎ込むと魔神に迫る。
ああ、もう堪らん。
その顔を歪ませてやる。
それも今すぐだ!
「シャッ!」
魔神の頬にオレの右拳が喰い込む。
いい手応え。
でも撃ち抜けていない。
『ヌヌッ?』
オレの体は魔神に抱えられてしまった。
瓦礫の中に叩き付けられるが、構わん。
脇を差し込んで肘を取る。
両腕をロックしていたけど狙いは別だ。
スイッチで後方に回り込む。
瓦礫が擦れて邪魔だが、どうにかいい位置を確保出来たか?
右の掌底で耳を打つ。
そのまま頭を抱え込もうとしたんだが、吹き飛ばされてしまった。
魔神、ではない。
雲母竜だ!
そうか。
オレのリベンジ対象リストに記録だな。
フォントはゴシックで、フォントサイズも大きくしてやる!
だが今の一撃は痛い。
HPバーは半分を割ってしまった上にステータス異常だ!
このまま戦うには痛過ぎる!
『控えよ!』
魔神の一喝はオレではなく雲母竜に向けられたものであったようだ。
そして雲母竜はオレに追撃する事もなく、動きを止めてしまう。
上下関係は魔神の方が上なのは何となく把握していた。
この魔神の力量もまた雲母竜よりも上ですか?
人間相手に上から目線になるのも分かるけどね。
力量の差など知った事ではない。
ステータス異常?
それが、どうした!
『貴様も今は止せ。戦いを拒みたくは無いのだがな』
「なら続きだ」
魔神は動かなかった。
オレの肘打ちを腹に受けて平然としている!
それに両腕を抱え込まれてしまっていた。
相撲で言えば閂に極められた形になる。
動きたくても動けない!
『やはりダメだ。軽い!』
「そうかい」
『汝は楽しめるであろうがな。我が楽しないのでは不公平だ。違うか?』
そう言うと魔神は雲母竜に視線を投げる。
忌々しそうに舌打ち。
それだけで雲母竜が僅かに後退する。
上下関係は厳しそうだ。
『こ奴が介入した件は謝罪しよう。済まぬ事をしたな』
「何?」
『それに汝には興味がある。ゆっくりと話をするのも一興』
魔神は閂に極めた両腕を放すと、瓦礫の山の上で座り込んでしまった。
オレの目の前で、だ!
ふざけるな!
前蹴りを放つが足首を鷲掴みにされて凌がれてしまう。
こいつめ!
片手でそのまま放り投げられてしまう。
どうにか着地出来たが、足元は瓦礫だ。
体勢を崩してしまう。
追撃があっておかしくないのに、来ない。
魔神は座ったままだ。
まさに格の違いを見せ付けるかのよう。
そして手にしているのは?
見覚えがある。
ソーマ酒だ。
『楽しませてくれた礼だ。飲むといい』
そう言うとオレにソーマ酒を投げ渡して来る。
思わず受け取ってしまった。
だってソーマ酒だ。
心情的にはそのまま地面に叩き付けたいけどソーマ酒に罪は無い。
「どういうつもりだ?」
『既に言った。楽しませてくれたからな』
「何?」
『思えば我れが魔神となったのも、戦いをより長く楽しむ為であった』
おいおい。
何を遠い目をしている?
『確かに長く楽しめるであろうよ。だが得た力が大き過ぎた。対等に戦える相手がいない』
「同じ魔神がいるだろう?」
『然りだ。だが奴等と殴り合いは楽しめないのでな』
「そこの雲母竜は?」
『たまに戦っている。だが同じ立場ではない』
おい。
戦っているんかい!
結果は聞かない方が幸せだろう。
いや、聞かなくても分かるけど。
『汝は力量こそまだまだであるが、見所がある。それ故に話したくもあった』
「こっちは話たくもない。殴りたいだけだ」
『ククッ!』
実に嬉しそうな笑顔。
オレと違って上手に笑えるようで大変結構。
手にしたソーマ酒を服用する。
ステータス異常は解消したようだ。
MPバーは消耗しているけどまだ戦える。
魔神に戦う気が見えないのが問題なだけだ。
『どうだ?汝も魔神となってみたくはないか?延々と戦いを楽しめる』
「あんたとか?」
『そうだ。汝であればいい相手になるであろうよ』
結局、自分の為じゃねえか!
二の句が告げない。
それにこの感覚。
どう言えばいいんだろう。
オレは何故、この魔神が気に入らないのか?
言葉にするのは難しい。
難しいけど魔神の申し出に対する答えは既にある。
「断る。知った事かよ」
魔神はより楽しそうに笑う。
その後方で剣呑な様相を見せる雲母竜。
正直、体が動いてくれるかどうか怪しくなりそうな威圧感だ!
『益々、気に入った!だがここで戦うのは止そう』
「何?」
『日を改めてとするか。もっと鍛え直して、挑みに来い!』
魔神が立ち上がる。
その黄色の瞳が雲母竜を射抜く。
強烈な威圧感が消える。
雲母竜は広げていた翼を畳んで小さくなっている。
それでも十分過ぎる大きさですけど。
『この島もこれでは、な』
「結局、この島は何だったんだ?」
『どこぞの町を結界共々、潰すと聞いていたがな。趣味に合わん!』
「何?」
『気持ち良く寝ていて起きたらこれだ。汝が落としたのであろうに』
「え?」
オレが、落とした?
どういう事だ?
『まあ良い。次に逢う機会を楽しみにしておこうか』
魔神の姿が消えて行く。
続いて雲母竜もだ。
残されてたのは瓦礫だらけの島の風景。
クソッ!
どうにも納得出来ん!
《イベント『浮遊島の襲来』をクリアしました!》
《ボーナスポイントに1点、エクストラ評価で4点が加点され、ボーナスポイントは合計87点になりました!》
インフォだ。
ボーナスポイントに加算だ。
そして予想通り、イベントだった訳だが。
やはり納得出来ない。
鬱憤が溜まってしまった。
鍛え直して来い、だって?
またしても上から目線だ。
気に入らない!
雲母竜に邪魔されていなければ、という思いもある。
だが実力も伴っていないのは事実。
どうする?
より鍛えるしかない。
更なる強化、となると期待は補助スキルだ。
【英霊化】【獣魔化】【悪霊化】とある。
あの魔神相手に有効なのかどうか、確信は無い。
どれか1つを取得して有効化するまで、ボーナスポイントを稼いでみようか。
当面の目標の1つにしよう。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv102
職業 サモンマスターLv40(召喚魔法修師)
ボーナスポイント残 87
セットスキル
小剣Lv73 剣Lv76 両手剣Lv73 両手槍Lv78 馬上槍Lv81
棍棒Lv73 重棍Lv74 小刀Lv74 刀Lv78 大刀Lv75
刺突剣Lv72 捕縄術Lv78(↑1)投槍Lv77 ポールウェポンLv77
杖Lv88 打撃Lv93 蹴りLv93 関節技Lv93
投げ技Lv93 回避Lv100(↑1)受けLv99
召喚魔法Lv102 時空魔法Lv89 封印術Lv86
光魔法Lv82 風魔法Lv82 土魔法Lv82 水魔法Lv82
火魔法Lv82 闇魔法Lv82 氷魔法Lv82 雷魔法Lv82
木魔法Lv82 塵魔法Lv82 溶魔法Lv82 灼魔法Lv82
英霊召喚Lv5 禁呪Lv85
錬金術Lv73 薬師Lv17 ガラス工Lv24 木工Lv47
連携Lv81 鑑定Lv74 識別Lv81 看破Lv67 耐寒Lv78(↑1)
掴みLv80e 馬術Lv81 精密操作Lv80e ロープワークLv78(↑1)
跳躍Lv50e 軽業Lv50e 耐暑Lv76(↑1)登攀Lv60e
平衡Lv81
二刀流Lv76 解体Lv74 水泳Lv30 潜水Lv66
投擲Lv50e
ダッシュLv60e 耐久走Lv60e 追跡Lv45 隠蔽Lv74
気配察知Lv75(↑1)気配遮断Lv74 暗殺術Lv60e
身体強化Lv60e 精神強化Lv60e 高速詠唱Lv50e
無音詠唱Lv60e 詠唱破棄Lv60e 武技強化Lv75
魔法効果拡大Lv74 魔法範囲拡大Lv74
呪文融合Lv74
耐石化Lv71 耐睡眠Lv71 耐麻痺Lv75(↑1)耐混乱Lv71
耐暗闇Lv72(↑1)耐気絶Lv80e 耐魅了Lv70 耐毒Lv79
耐沈黙Lv72(↑1)耐即死Lv71(↑1)
召喚モンスター
蒼月 麒麟Lv25→Lv26(↑1)
器用値 39
敏捷値 79
知力値 45
筋力値 41(↑1)
生命力 41(↑1)
精神力 39
スキル
噛付き 頭突き 踏み付け 体当たり 疾駆
耐久走 奔馬 蹂躙 飛翔 蹴り上げ 遠視
広域探査 強襲 天啓 空中機動 霊能 霊撃
騎乗者回復[中] 物理抵抗[中] 魔法抵抗[大]
MP回復増加[小] 光属性 闇属性 風属性
土属性 水属性 雷属性
スコーチ ミネルヴァオウルLv22→Lv23(↑1)
器用値 36
敏捷値 81
知力値 49(↑1)
筋力値 50
生命力 50(↑1)
精神力 36
スキル
嘴撃 無音飛翔 回避 遠視 広域探査 夜目
反響定位 空中機動 監視 看破 強襲 隠蔽
追跡 気配遮断 危険予知 天啓 睡眠 混乱
自己回復[小] 物理抵抗[小] 魔法抵抗[中]
耐混乱 耐即死 耐魅了 耐睡眠
召魔の森 ポータルガード
黒曜、ジェリコ、ティグリス、クーチュリエ、モジュラス、雷文
清姫、守屋、スーラジ、久重、テフラ、岩鉄、虎斑、蝶丸、網代
睡蓮洞 ポータルガード
ストランド、ロジット




