611
「あー!負けたっ!」
「お疲れ様」
「まあ善戦だったんじゃない?」
ミオを先頭にしてアデル達も屋台裏に戻って来た。
一気に騒がしくなってきたな。
「あれ?キースさん?」
「試合は見たよ。惜しかったな」
アデルはミオと同様、悔しがっているようだな。
イリーナも春菜も此花も納得している様子を見せている。
優香は良く分からないな。
超然としているし。
「キースさんは勝ち上がってるんですよね?」
「どうにかね」
「既に掲示板でネタになってるみたいですけど?」
掲示板ですか?
もう見なくなって久しい。
いや、見るのが怖くなりつつあるのです。
「うわ、ヒョードルの所のチーム、勝ち上がってる!」
「なんだとー!」
春菜の声にアデルが反応する。
ほう。
ヒョードルくん達も勝ち上がっているのか。
第四回戦、という事はベスト16になる。
何だか次は顔見知りと対戦になってもおかしくないな。
そんな予感がします。
「では、そろそろ時間なので」
「いってらー」
「応援してます!」
「見てるわよ?」
色んな声があるけど、皆一様にリラックスした雰囲気になっている。
そうだな。
オレも気楽に挑むとしよう。
どこのチームが相手でも、平常心で。
それでいいのだ。
一旦、辞去して新練兵場へ向かう。
次の対戦相手は誰だ?
誰でもいい。
楽しめたら、それでいいのだ。
「試合が前倒しで進んでいるんですが、今からいいですか?」
「え、もうですか?」
控え室に入るまでもない。
いきなりギルド職員さんに告げられたのが、これだ。
拉致同然に試合会場に連れて行かれないだけ、マシかな?
時刻は午前9時40分。
かなりハイペースで試合が消化されているらしい。
判定に持ち込まれるような試合が減っているのだろう。
職員さんに付いて行く。
試合場は新練兵場E面だ。
雛壇からはやや遠い。
それでもオレに気がついているのか、ジュナさんが手を高く掲げて振っているのが見えた。
相変わらずだ。
この大会を通じて冒険者ギルドに所属するプレイヤーの戦力を見極めたい、と言ってましたっけ?
とてもそうは見えない。
単に楽しんでいるだけ?
まあそれでもいいけど。
こっちも楽しむだけだ。
??? Lv.25
ドルイド 待機中
??? Lv.25
ドルイド 待機中
??? Lv.27
ドルイド 待機中
??? Lv.25
アークサモナー 待機中
??? Lv.24
コンジュラー 待機中
試合場の対角線に対戦相手がいる。
5名しかいないけど、レベルがかなり高い!
それもその筈。
槍を手にしているのは駿河と野々村。
剣に盾を持っているのはゼータくんだな。
杖を持つコンジュラーは間違いなくヘラクレイオスくんだろう。
そして矢筒を背負い弓を手にしているのはヒョードルくんだ。
全員サモナー系で揃えた訳か。
成程、かなり強力だな!
これはこれで面白そうです。
その戦い振りを知っているだけに、興味もある。
オレとの本気の対戦だとどうなりますかね?
戦い方は、どうする?
変えない。
その必要は無いのだ。
手にする得物は神樹石の杖。
搦め手で他の武器も使う事になるだろう。
特に断鋼鳥のククリ刀ですね。
駿河、野々村が使っている槍は、銛だ。
投擲を前提としている。
それに投網まで持ち込んでいるのが見えた。
海中ではその全貌を見る機会は無かったが、地上戦で何度も見ている。
厄介であるのは間違いない。
距離を詰める前に牽制でククリ刀を使う機会はあるだろうな。
ゼータくんがこっちに気が付いたようだ。
一礼してます。
遠目でも分かる。
駿河も野々村も、驚く様子なのだが。
それは、いいから。
先鋒は、誰だ?
対角線に残ったのはヒョードルくんです。
異様に緊張しているのが、分かる。
安心していい。
普段通りですから。
手抜きとか、そんな失礼な事はしません。
互いに。
礼。
「始め!」
ヒョードルくんが右手に持つのはフルーレ、だな。
それに左手に弓を持ったままだ。
その意味は?
すぐに分かるだろう。
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」
『スナイプ・シュート!』
矢が飛んで来る。
いきなりだ!
弓矢の持つ射程の利を活かすつもりなのだろう。
矢は腕カバーで弾いて床面に落ちたのだが。
その矢尻には見覚えがあるぞ?
従魔蠍の矢、だな。
状態異常を持つ、恐るべき代物だ!
「メディテート!」「ブレス!」「インテリジェンス・アタック!」
いいぞ。
汚い手は大歓迎だ。
本気で仕留めに来るようでなければ面白くない。
『ボンナバン!』
((((((八部封印!))))))
((((((九曜封印!))))))
【呪文融合】で組んだ封印術詰め合わせは?
僅かに間に合わなかったみたいだ。
ヒョードルくんの姿が霞のように消え、オレの視野の左端に出現する。
ほう。
右手にフルーレを持ったまま、弓矢で攻撃するつもりなのか?
面白い!
当然だが再び距離を詰めに行く。
オレの右手には断鋼鳥のククリ刀。
その手順、どこまで続けるつもりかな?
もっと続けていい。
工夫している様子で大変満足である!
でも封印術の呪文で封じに行きますけどね。
『ボンナバン!』
再びオレの目の前から消えるヒョードルくん。
だが。
その動きは読めていた。
右か?
左か?
それとも距離を詰めに来るのか?
左でした。
再び出現した所でククリ刀を投げる。
勿論、牽制だ。
直撃コースだったククリ刀は腕で弾かれた。
いや、少し裂いたかもしれない。
動きが一瞬だけ、鈍っている。
普段から痛覚に慣れてないといかんよ?
((((((八部封印!))))))
((((((九曜封印!))))))
今度は外れなかった。
状態異常を示すマーカーが重なっているのが見えている。
さあ。
ここからだ。
ここから、どうする?
姿勢をどうにか立て直すと矢を番えようとして、止めた。
間に合わないと判断したようだ。
半身になってフルーレを構え直した。
うむ。
では、神樹石の杖で相手をしよう。
ここからは呪文も武技も無しだ!
フルーレが突き出される。
その軌道の下へ、潜り込むように突っ込んだ。
いや転がった。
足首に杖を引っ掛けると左腕で右膝を抱え込む。
そのまま、密着しながらヒョードルくんを転がした。
体格の差もあるのか、簡単に転がってしまう。
右足の裏で左膝を踏み付けて股裂き状態に。
抱え込んだ右足は?
爪先を脇の下に固定してヒール・ホールドだ。
これなら回転して逃がすような事はない。
フルーレの間合いの中だ。
気にしなくていいかもだが、ヒョードルくんの右手にフルーレは無かった。
小剣が握られている。
素早いね!
でも極まるのが先だ。
脇に固定した右足。
その踵を抱えて、捻る。
膝が、そして股関節まで、可動域ではない方向へと捻られて行く。
右足にもより力を込めて股裂きでも痛めつける形だ。
ヒョードルくんが手にしていた小剣を手放して防御しようと動く。
だがそれ、間に合ってないよ?
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
悶絶する様子は一瞬であったのか。
それとも長い時間であったのか。
それはオレには分からない。
確かなのはインフォがオレの勝利を告げた事だろう。
ヒョードルくんのHPバーは残り1割になっている。
関節技だけでこのダメージ?
少し力を込め過ぎたかもしれないな。
技を解く。
ヒョードルくんは?
どうにか立ち上がったが、まともに歩けそうにないようだ。
ギルド職員さんが手助けする形でどうにか退場する。
うーむ。
刺突剣を手にしたまま、矢を放つのか。
面白い戦闘スタイルだ。
オレには参考になりませんけど。
オレのダメージは?
殆ど無い。
最初の矢は腕カバーで弾いたからダメージがあっても微々たるものであったのだろう。
大丈夫。
まだまだ、やれる。
で、次の相手は誰かな?
前に進み出たのは野々村だ。
銛、それに投網。
あの漁師兄弟、二郎と譲二と同じ戦闘スタイルだ。
傍目で見ているし、知ってもいる。
対戦で使っている所も見ている。
搦め手込みの相手だ。
得物は変えた方がいい。
転生獅子のレイピアで。
接近戦に持ち込むまで、工夫が要る。
対角線上の野々村の様子が、おかしい。
そんなに緊張しなくてもいいのにね。
対戦、楽しもうよ?
気楽に行こうよ?
互いに。
礼。
「始め!」
さあ、再び戦いだ。
楽しめそうな予感がします!
《只今の戦闘勝利で【刺突剣】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【武技強化】がレベルアップしました!》
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
楽しめてますか?
勿論です。
呪文は封印術しか使ってないけど満足だ。
野々村は?
【刺突剣】の武技、ボンナバンを駆使して接近戦に持ち込んで裸絞めで仕留めた。
ヘラクレイオスくんは?
呪文を封印、杖同士で叩き合う形になったけど、場外に吹き飛ばして終了。
駿河は?
試合開始直後、投擲された銛の直撃を喰らっている。
でもダメージは軽微だ。
お返しにボンナバンで一気に距離を詰め、地面に投げてそのまま寝技で仕留めた。
さあ。
最後に控えるのはゼータくんだ。
その右手には剣。
左手には盾。
得物はどうする?
敢えて選択したのは転生獅子のレイピア。
それに断鋼鳥の刀。
変則の二刀流になる。
転生獅子のレイピアは武技の為に持っているようなものだ。
本命は接近しての剣戟であるのです。
互いに。
礼。
「始め!」
さあ、対戦だ。
今迄にも何度かやっているのと変わらない。
変えない。
得物が本気なだけだ。
ゼータくんも十分に強くなっている筈。
楽しみです。
「シッ!」
『ッ!』
戦況は?
有利も不利もない。
ゼータくんは完全に防御からのカウンター狙いだ。
盾を上手に使っている。
そしてここまで、呪文どころか武技も使っていない。
お互いにだ。
完全にかつての対戦と同じ構図になっている。
オレの得物は?
断鋼鳥の刀だ。
その攻撃は盾で凌がれてしまっている。
目立ったダメージはまだ与えられていない。
そしてカウンターで放たれる反撃はどれも回避はしている。
狙いはカウンターだけではない。
盾を前面に置いて突進もして来る。
面白い。
組み合わせに工夫が見られる。
オレの死角、盾の裏で剣を持ち替えてオレの足首を薙いで来るとか、実に汚い!
いや、上手い!
それは有効である事を意味する。
いいぞ。
もっと楽しませてくれ。
危ない場面がある事に喜びがあるとか、おかしいかな?
でもね。
そうでなければ面白くないのです。
盾で防がれた所で距離を置く。
そろそろ、この展開にも飽きた。
断鋼鳥の刀を構える。
平正眼の構えから左足を前へ。
刀を体側に寄せて、八双の構えに。
いや。
刀を掲げるかのように、上に。
蜻蛉の構えだ。
さあ。
後は撃ち降ろすのみだ。
「キィヤァァァァァァァァァァァァッーーーーー!」
狙いはゼータくんの肩口。
だが撃ち込んだ切っ先は盾で防がれて。
弾かれる事は無かった。
切っ先が盾に喰い込んでいる。
いかんな。
両断出来るような鋭さが出ないとは、修練が足りていない証拠だ!
普段から修羅刀に慣れているせいでもあるだろう。
武器に頼るのは良くないな。
武器は用いるべきなのだ。
「チェァァァァァァァァァァッーーーーー!」
逆蜻蛉の構えから撃ち込んだ一撃は剣で受けられた。
だが。
その剣は弾け飛んだ!
でも終わってない。
ゼータくんの右手は盾の裏側に伸び、何か得物を手にしていた。
トンファーだ。
使っている所は見ているけど、そう多くは無い。
盾が横合いから迫る。
ダッキングで避けるが、これで終わる筈も無い。
次に迫るのは右手のトンファー。
頭を掠るけど気にしない。
「シャッ!」
斜め上に跳ね上げた切っ先は盾に弾かれる。
だが。
その盾は既に半壊状態だ。
ゼータくんが盾を手放す。
そして左手にもトンファー。
ほう。
そう来ますか?
オレは今、きっと笑っているに違いない。
そうかそうか。
殴り合いがいいのね?
オレも大好きだ!
断鋼鳥の刀を手放す。
素手だ。
素手でいい。
素手なのが、いい。
正面から応じましょう。
ここからは殴り合いだ。
『ハッ!』
ゼータくんが気合を発しながら殴り掛かってくる。
蹴りも交えての連続で、だ。
ほう。
いいぞ!
「ッ!」
左足で前蹴りに来た所で、その足を右腕で抱える。
上に、跳ね上げた。
同時に左手で喉元を突く。
喉輪だ。
そのまま地面に押し倒し、抱えた左足を捉える。
膝十字固めだ。
オレの足にトンファーの攻撃が来ているけど、気にしてはいけません。
そのまま、極めに行く。
さあ、楽しい寝技の時間だ。
裸絞めはゼータくんに教えてあるんだが。
膝十字固めは実地で学び取って欲しい所です。
ほら、ディフェンスが間に合ってませんよ?
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
膝十字固めはそのまま外れる事は無かった。
攻め切った形になる。
どうにか外そうとしていたゼータくんも粘っていたけどね。
体重が乗っていない打撃では外れないし外しません。
それにしてもゼータくん、中々の強敵になったものだ。
何よりもディフェンスがいい。
自分なりの戦闘スタイルも見出しているのだろう。
普段から前衛で戦っていないと出来ない動きだ。
成長しているようで実に喜ばしい。
《本選第五回戦に進出しました!第五回戦は本日午前11時00分、新練兵場B面の予定となります》
《四回戦突破によりボーナスポイントに1ポイント加算されます。合計で48ポイントになりました》
ふむ。
次の試合までの時間は短い。
控え室が空いているといいんだが。
ゼータくんはどうにか自力で動けるようです。
良かった。
職員さんから回復も受けられるだろうし、今後に支障は無いだろう。
対角線上で、互いに礼。
いい対戦だった。
色々と確認出来たのもいい。
皆、強くなってます。
間違いない。
「ああ、キースさん!お久し振りです」
「おや、これから試合かな?」
「ええ」
控え室に余裕があったので中に入ったのだが。
入れ替わりで紅蓮くん達だ。
今から試合らしい。
「勝ち残ったら当たるかな?」
「それはそれで怖いですよ!」
まさか。
ここまで勝ち残っている面々は皆、かなり強くなっている事だろう。
どの相手も油断出来ない強さであるのは間違いない。
「対戦出来る事を願ってるよ」
「よして下さい。先刻のような試合をされたら困りますから!」
まあ社交辞令はいいか。
互いに軽く一礼するとその場で別れた。
さて。
少し時間があるけど、試合を視聴しておこう。
出来れば生で観たいんだが。
まあ、いいさ。
仮想ウィンドウでもそこそこは楽しめる。
そうだ、紅蓮くん達の試合を見てみよう。
どんな感じになるのかな?
驚いた。
紅蓮くん達は惜敗。
相手は間違いなく、オレが以前に戦ったチームだろう。
色違いでお揃いの鎧兜を身に着けた、戦隊が相手だった!
その戦い振りだが中々見応えがある。
ふむ。
次の対戦相手になって欲しいものだが。
念じよう。
念じてみましょう。
オレの日頃の行いが良ければ、きっと叶う。
叶う筈だ。
気が付けば控え室の中は人が減っている。
同室に残っているプレイヤーはどうも無差別級以外に参加のプレイヤーであるらしい。
寂しい。
他にも控え室がある筈だが、オレの対戦相手になるチームはそっちにいるのかな?
「キースさんですね?試合時間が早まりますけど、宜しいですか?」
「え?あ、はい」
またか。
まあ、いいけど。
待機するのは不得手であるのだ。
「試合進行が早いですよね?」
「ええ。あ、第五回戦は同時に開始になる予定です」
「ほう」
「出場者の中から優勝者が出る事になりますね」
成程ね。
8チームを4つの試合会場で一斉に対戦させる訳か。
盛り上がるんだろうな。
一番面白い対戦は?
決勝、準決勝よりも準々決勝という人は多いだろう。
オレも同意見です。
だから頼む。
戦隊が相手でありますように。
??? Lv.16
バーサーカー 待機中
??? Lv.16
スナイパー 待機中
??? Lv.16
バトルマスター 待機中
??? Lv.16
ピットファイター 待機中
??? Lv.17
メイズパイロット 待機中
??? Lv.16
ヘビーランサー 待機中
青のスナイパーが弓矢。
黄のバトルマスターが杖。
桃のピットファイターが無手。
黒のヘビーランサーは槍。
赤のバーサーカーは鞭。
緑のメイズパイロットはブーメラン。
いつかどこかで見たようなプレイヤー達だ!
いや、見た目だけで言えば全然変わってないよ!
クラスチェンジしているのが違っているのは明白だ。
それにですね。
彼等の戦闘の様子は既に見ているのです。
出てくる順番も承知だ。
黒、青、赤、緑、桃、黄である筈。
何となくだけど、どう戦うのかの方針は定まっている。
普段通りです。
周囲を見渡してみましょう。
隣の試合場は?
漁師兄弟と宗雄の姿が見える。
その対戦相手が何と与作の所だ。
その向こう側は?
遠目では分からないけど、攻略組同士の対戦であるのだろう。
後姿しか見えない連中が凄い。
重武装で馬上槍を持っている奴がいる!
その対角線にいるであろうチームは視線が通らなくて見る事が出来なかった。
最後の組み合わせは?
あ、いけね。
視線が合ってしまった。
しかも顔見知りだ。
兜をまだ装備していなかったので分かってしまった。
ガヴィ、それにリディアの所のチームですね。
その対戦相手は一部の横顔しか見えない。
一番端にいる奴は刀を使うようだな。
ソードマスターであるようだ。
ちょっと、興味があります。
まあ、アレだ。
試合に出ている間は観戦が出来ない。
対戦相手の戦隊もまた楽しそうな相手ではあるけれど、他の対戦カードを生で観戦出来ないのは惜しいな。
全く。
観客でいられたら気楽だったろうに。
これもまあ仕方ないのだろう。
対角線上に残ったのは長柄の槍を持つヘビーランサー。
やっぱりか。
ではオレも槍を使わせて貰おう。
亜氷雪竜の投槍ですけどね。
槍には槍で。
杖には杖で。
無手で来るなら無手で相手をしよう。
弓矢、鞭、それにブーメランはどうしようか?
まあ遠い間合いを潰して戦うだけだな。
何にしても対戦の一つ一つを確実にこなす事だ。
そしても楽しむ事が大切だろう。
この相手だと飽きる事は無さそうな予感がします。
戦い慣れていない戦闘スタイルが混じっているのは有難い。
いいえ、この場合は面白い、だな。
互いに。
礼。
「始め!」
開始と同時に手にした槍を持ったまま前へ。
先行、そのまま押し切るのがオレの流儀だ。
得物が何であってもそこに変更は無い。
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」「スナイプ・スロー!」
武技を連続で繰り出す。
亜氷雪竜の投槍は射程が長い。
その利は大きいと思うのだ。
((((((八部封印!))))))
((((((九曜封印!))))))
次はククリ刀、だな。
最後は接近戦になったらいい。
オレの目論見通りの展開になりますかね?
《只今の戦闘勝利で【投槍】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【武技強化】がレベルアップしました!》
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
これで残り2名だな。
オレの目論見は?
色んな意味で外れてしまっている。
最初の黒は投槍の一撃が太股を貫通、そのまま詰んだ。
次の青は投槍こそ避けたものの、ククリ刀がまともに胸元を直撃、詰んでしまった。
その次の赤は鞭の間合いをキープしたまま、粘りを見せたけど最後は場外に吹き飛んで終了。
そして今の緑もブーメランを使う前に投槍が直撃だ。
それでもブーメランを投じたのは見事だったけどね。
いかん。
投槍の射程が長いのがいけない。
楽しさ半減だ。
だがここからが本番であるかもしれない。
以前の対戦で桃と黄のプレイヤーとは格闘戦を繰り広げたものだ。
桃は打撃がメインだったな。
黄は投げも使うプレイヤーであった筈。
収支はプラスになってくれないと、困る。
今の所はマイナスだ。
亜氷雪竜の投槍が全部悪い。
それを選択したオレはもっと悪いのだ。
控えましょう。
次の相手は格闘戦スタイル。
しかも女性。
ベースは間違いなく、ムエタイ。
紅蓮くん達との戦闘では以前よりも動きが格段に鋭くなっていた。
最後の黄のバトルマスターの出番まで回さず連勝、勝ち越されていたのを逆転していたのだ。
真正面から格闘戦を楽しめそうな予感がします。
それも打撃戦だ。
対角線上に桃色の鎧兜を身に付けたピットファイターがいる。
体格はオレよりもやや上。
リーチも間違いなく上であろう。
以前はどうやって勝ったんだっけ?
もう覚えていません。
まあ、いい。
流れるままに、楽しめたらいいのだ。
互いに。
礼。
「始め!」
さあ、始まった。
どうする?
どうなる?
何も決めていません。
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」
『降魔闘法!』
さて、と。
武技も使ってくるのは当然か。
面白い。
でもエンチャントブレーカーの効果で早々に散らさないと分が悪過ぎる。
序盤が重要だ、
間違いない。
『ッ!』
「ムンッ!」
また蹴りだ。
左ミドルが連続で撃ち込まれている。
交差法で脚を砕くだけの隙は無い。
実に鋭い蹴りだ!
ダメージ覚悟で脚を取るのもいいんだが、今はいい。
純粋な打撃戦なのだ。
もう少し楽しみたい。
前へ出て追い突き。
間合いを詰められても対応が以前より徹底しているようだ。
肘が飛んで来る。
膝も飛んで来る。
近い間合いでもこっちに攻撃が出来るだけの手の内がある。
それでいてリーチの差を活かした距離で積極的に攻めに来る。
オーソドックスと言えばそれまでだが、確立した戦闘スタイルだろう。
何よりもエンチャントブレーカーで降魔闘法の効果が無くなっているのに、強い。
いや、速い!
素の状態でもオレよりも速いかな?
オレの場合、強化は武技の真降魔闘法とエンチャントブレーカーだけだ。
呪文で強化はしていない。
使った呪文は【呪文融合】の八部封印と九曜封印だけだ。
防具の差は確かにあるが、攻防の駆け引きは純粋に面白い。
面白いが悠長に構えていられない。
後続の相手もいるのだ。
飛んで来る右肘。
だが本命はその次に飛んで来るであろう左膝だろう。
その手順はもう何度も見ている。
飛んで来た肘を上にいなし、右脇を抜ける。
左膝蹴りのモーションに既に入っていて、こっちの動きに付いて来ていない。
だが。
背中に衝撃。
肘でも落としたのだろう。
だが気にしていられない。
背中側に回り込むと、そのまま裏投げ。
最初の投げは腰を落として凌がれた!
素晴らしいバランス感覚だ!
だが残念。
膝裏を蹴って体勢を崩すと、頭を両腕で固めに行く。
そのまま、体重を掛けて挫く。
一気にHPバーが減って行くのが分かった。
いや。
気絶、しちゃったかな?
済まない。
もう少し打撃に付き合っても良かったんだが、次もあるのです。
ここらで退場願おう。
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
どうにか意識を取り戻した桃色ピットファイター。
当然、無事です。
別の機会があればまた打撃戦を楽しめたらいい。
そんな機会があれば、ですけど。
さあ、次がラストだ。
ここまでの対戦時間は全部足しても10分とないだろう。
次は試合時間ギリギリまで、粘ってみようかな?
他の試合場も観戦したい気持ちもあるんです。
まあそれも相手次第だ。
黄色のプレイヤーは杖使いか。
得物無しでもいいんだが、どうなんだろう?
なあ。
杖って無くてもいいよね?
手放してくれたら、オレも杖を手放すからさ。
なあ。
無しでも良くないか?
まあそんな事は口に出来ない訳ですが。
粛々と、次の試合が始まろうとしています。
オレのダメージは?
HPバーの減りはそう目立った量になっていない。
8割をキープしてます。
結構、桃色ピットファイターが頑張って打撃を撃ち込んでましたからね。
まあ、こんなものだろう。
さあ、黄色のバトルマスターを相手にするのだが。
期待して、いいよね?
対角線の先に杖を手にした対戦相手。
ふむ。
杖か。
ではオレも杖にするしかない。
互いに。
礼。
「始め!」
神樹石の杖を手にして前へ。
さあ。
どうなる?
「真降魔闘法!」「エンチャントブレーカー!」
『マジック・フォートレス!』
うん?
おやあ?
ああ、思い出した。
そういう杖武技、ありましたっけ。
即ち、狙っているのは呪文に対する防御力。
しかも飛躍的な向上だ!
((((((八部封印!))))))
((((((九曜封印!))))))
試してみた。
ふむ。
全部レジストされてるみたいだ!
でもね。
その武技、動けないんじゃなかったかな?
『ファイア・ジャベリン!』
(ディメンション・ミラー!)
目の前に迫る炎の槍を時空の壁で弾きながら前へ。
そうか。
このまま判定に持ち込まれたら?
オレの負けになる。
いかんよ?
そういった消極策はオレの好みに合わない。
こうなったらオレの好みに無理矢理修正しよう。
エンチャントブレーカー、効くかな?
効いてくれたらいい。
いや。
強引に接近戦にするだけですね。
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
いや、ゴメン。
停滞の状態異常に気が付かず、頭を思いっ切りぶん殴って気絶させてしまった。
それにね。
結局最後まで、試合場の角から動かないのも良くない。
気持ちは分かるけどさ。
まあ、アレだ。
これで勝ち抜け?
《本選第六回戦に進出しました!第六回戦は本日午後0時30分、新練兵場A面の予定となります》
《五回戦突破によりボーナスポイントに1ポイント加算されます。合計で49ポイントになりました》
むう。
昼食はどうしよう?
携帯食でもいいけどさ。
ギルドの方から差し入れとかあるのかね?
対角線に並んで、お互いに礼。
戦隊は何故かポーズを決めていた。
様になっている。
そして会場内は大いに盛り上がっていた。
受けがいいのか、アレ。
まあオレも観客なら拍手喝采だろうな。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv89
職業 サモンマスターLv27(召喚魔法修師)
ボーナスポイント残 49
セットスキル
小剣Lv56 剣Lv61 両手剣Lv59 両手槍Lv65 馬上槍Lv67
棍棒Lv60 重棍Lv59 小刀Lv55 刀Lv61 大刀Lv65
刺突剣Lv58(↑1)捕縄術Lv56 投槍Lv55(↑1)ポールウェポンLv66
杖Lv77(↑1)打撃Lv79 蹴りLv80 関節技Lv80
投げ技Lv80 回避Lv87 受けLv86
召喚魔法Lv89 時空魔法Lv75 封印術Lv72
光魔法Lv69 風魔法Lv69 土魔法Lv69 水魔法Lv69
火魔法Lv69 闇魔法Lv69 氷魔法Lv68 雷魔法Lv69
木魔法Lv68 塵魔法Lv69 溶魔法Lv69 灼魔法Lv68
英霊召喚Lv5 禁呪Lv69
錬金術Lv61 薬師Lv16 ガラス工Lv23 木工Lv46
連携Lv66 鑑定Lv60 識別Lv66 看破Lv36 耐寒Lv64
掴みLv66 馬術Lv68 精密操作Lv66 ロープワークLv56
跳躍Lv50e 軽業Lv50e 耐暑Lv63 登攀Lv56
平衡Lv66
二刀流Lv60 解体Lv60 水泳Lv29 潜水Lv48
投擲Lv50e
ダッシュLv59 耐久走Lv59 隠蔽Lv58
気配遮断Lv58 暗殺術Lv60e
身体強化Lv60e 精神強化Lv60e 高速詠唱Lv50e
無音詠唱Lv58 詠唱破棄Lv58 武技強化Lv16(↑2)
魔法効果拡大Lv60 魔法範囲拡大Lv60
呪文融合Lv57
耐石化Lv55 耐睡眠Lv52 耐麻痺Lv60 耐混乱Lv58
耐暗闇Lv60 耐気絶Lv63 耐魅了Lv50 耐毒Lv67
耐沈黙Lv53 耐即死Lv50