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オレの師匠は召喚術師、サモナーの筈だ。
【識別】で見てもそれは確実である。
オレニュー Lv.???
サモナー 作業中
さっきまで【識別】できなかったのに僅かだが情報が読み取れた。
でも間違いなくサモナーらしい。
副業でポーション作成をしているんでしょうか、師匠。
それにしても凄い量のポーションがあっという間に出来上がっていく。
薬草である傷塞草1本につきポーション2本、鍋にして一回あたり10本のポーションが出来上がっていく。
1ロットで10本、鍋にして20回分、都合200本のポーションが机上にある。
薬草にして100本分、麻袋2つ分が消えてしまっていた。
液体を瓶に詰める作業のほうが手間がかかってますが何か?
町でポーションの売値が30ディネだったから、6,000ディネ分のポーションが目の前にあるって事になる。
本当にポーションだよね?
【回復アイテム】ポーション HP+8%回復 品質C レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね10分。
間違いない。
【鑑定】で見ても確かにポーションだ。
「まさに魔法ですね」
「うん?そうでもないがの」
師匠は薬草の残骸を入れた鍋に何か粉と水と油を入れていた。
一体何を?
再び何かに集中するかのように目を閉じる。
「短縮再現!」
すると今度は鍋の中に丸くて緑色の物体がいくつも転がっていた。
数えてみると20個ある。
【回復アイテム】回復丸 継続回復[微] 品質C レア度3 重量0+
飲めば継続的にHPを回復する丸薬。継続時間は概ね10分。
呪文のリジェネレートと同様の効果となる。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね1時間。
おお、これは便利そうだ。
確かレムトの町でも売っていたけど高くて手が出なかった奴だ。
「興味がありそうじゃな?」
もちろんだ。
思わず頷いていた。
「ワシのやり方は邪道じゃよ。だが今は冒険者ギルドも邪道であっても頼らざるを得ないと見える」
ん?どういう事だろう。
「薬師が廃業しかねないからの」
ああ、そうか。
薬師が苦労して作成するポーションがこんなに簡単に作れるとなると確かに問題だ。
一気に値崩れしてしまうことだろう。
デフレって怖いよね。
「錬金術はお主も持っておるじゃろ。短縮再現は錬金術のうちの一つじゃよ」
「短縮再現ってさっき使ってた奴ですね?」
「うむ。材料さえあれば作業工程を全て省いて結果を即座にもたらすメイキング技能じゃな」
メイキング?
脳内ヘルプで検索してみると、生産職にとっては武技や呪文に相当するもののようだ。
そんな便利なのがあるのか。
後で錬金術のヘルプは読み込んでおこう。
「だがちゃんと条件もある。必ず一度は自分自身の手で作業しておらんと使えんのじゃ」
「なるほど」
理に適ってはいるな。
「では最初から、基本通りに作ってみるんじゃな」
え?
「私が、ですか?」
「当たり前じゃ。お主は既にワシの弟子なんじゃからの」
どうやら師匠はスパルタ気質らしい。
息が抜けそうもないな。
でも答えは決まっていた。
「やります。やらせて下さい」
ポーション作成の手順は実に簡単なものだった。
1.傷塞草を乳鉢で擂り潰す。
2.水で溶いて抽出する。
3.固形物を濾紙で濾し取る。
4.抽出液を熱して5分ほど沸騰させる。
5.常温に冷やす。
6.液体をギルド指定の瓶に入れる。
鍋を熱するのには簡単な火鉢を使って炭に火を熾した。
素材の草の量と水の量は指定された配合でやればいいだけなのだが。
最初の試作は何故か失敗してるし。
どうやら薬効成分が足りなかったようだ。
最初から大鍋でやらなくて良かった。
「擂り方がいかんな」
師匠がバッサリと切り捨てた。
ちなみに水は師匠が水魔法で作成したものを使っている。
できるだけ純水に近いほど良いらしい。
2回目にチャレンジする。
今度はちゃんとポーションが出来たようだ。
2本のポーション瓶が目の前に。
【回復アイテム】ポーション HP+6%回復 品質D+ レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね15分。
品質がD+か。出来たはいいが性能的には物足りない。
「もう少し挑戦させて下さい」
「うむ」
師匠は師匠でポーション作成を進めている。
うん、早くああなりたいものだ。
6回目の試作でようやく品質C-のものが出来上がっていた。
そこで望んでいたインフォが来た。
《これまでの経験で取得が可能な生産スキルに【薬師】が追加されます》
必要なボーナスポイントは2だった。
否はない。早速取得して有効化する。
よし。
再度挑戦してみる。
【回復アイテム】ポーション HP+8%回復 品質C レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね10分。
2本とも品質Cで作成できた。
「どうでしょうか?」
師匠に見せてみた。
「ふむ、普通に使えそうじゃな」
一応は2本とも合格らしい。
次は錬金術に挑戦してみるか。
師匠が使った短縮再現ができるのだろうか?
メイキング技能、と脳内で念じると別枠で仮想ウィンドウが開いた。
錬金術関連、薬師関連と二択表示だ。
なんか今までと表示形態が違っているな。
錬金術関連に目を凝らすと更に新しい仮想ウィンドウが開いた。
リストが表示されるんだが、なんか長い。
練成 物質を全く異なる物質へと変性すること。物理常識は無視される。
合成 物質を化学反応に従って異なる物資に変質させること。物理常識に従う。
抽出 混合物である物体から特定の物質のみを取り出すこと。
希釈 水溶液濃度を溶媒で薄める。
濃縮 水溶液濃度を高める。
破砕 物体を粉々にする。
濾過 液体中の固体を濾し取る。
分析 物質の持つ効能・特性を見極める。
酸化 酸化反応を起こす。
還元 還元反応を起こす。
恒温 物体温度を一定に保つ。
恒湿 気体湿度を操作して一定に保つ。
液化 気体を液体に凝縮させる。
気化 液体を気体に蒸発させる。
固体化 液体を固体に凝固させる。
溶融化 固体を液体に融解させる。
昇華 固体から気体へと一気に変化させる。
反復 一定の工程を繰り返す。
反応促進 反応速度を加速する。
作業記憶 一連の工程を記憶する。一度自分自身の手で全工程を実施する必要がある。
短縮再現 作業記憶した工程を再現する。
なんだってこんなに長いんだよって話だが。
簡単な説明が付記されているのがせめてもの救いだ。
ヘルプで『メイキング技能』『新規』で調べてみる。
すると生産系スキルのメイキング技能は、スキル取得したら全部習得してる事になるらしい。
但し生産物の出来栄えは完全にスキルレベルに依存するようだ。
それに作業工程で自動的に効いている技能もあるそうだ。
まあ試してみたら分かる、よな?
作業記憶を選択する。
《最新のポーション作成作業を記憶できます》
《Yes》《No》
当然《Yes》を選択する。
次に短縮再現を選択。
リストにはポーション作成作業だけがある。
材料となる水と傷塞草を手に持って準備した。
選択して実行する。
短縮再現、と小さな声で呟いた。
すると掌に載せた薬草がボロボロと崩れた。
鍋の中にはポーションの液体が残っている筈だ。
「ほほう」
師匠が面白そうな声で興味深くオレの作業を見ていた。
瓶に注いで2本完成である。
出来栄えはどうだ?
【回復アイテム】ポーション HP+7%回復 品質C- レア度1 重量1
一般的なポーション。僅かにだがHPが回復する。
飲むとやや苦みが舌先に残ってしまう。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね12分。
2本ともなんか微妙に劣化しているようだ。
それにオレのMPバーは7割程度まで回復していたのが4割近くにまで減っている。
「駆け出しにしては筋が良い方じゃろ」
「はあ」
正直、出来については意気消沈なんですが。
「ま、お主が自分で作成したポーションじゃがな、出来のいい分はお前さんからギルドに納品してもええじゃろ」
そういうと品質Cのポーションを示す。
つまりは品質C-以下のポーションは納品不可ってことだ。
「納品します。ではこっちは?」
ダメ出しされた方のポーションに視線を移す。
「お主が使うなりするとええじゃろ」
うん、ちょっとだけラッキーかもしれない。
「瓶はちゃんと返すように、な」
しっかり釘は刺されました。
そこからは錬金術は使わずにポーションを作成していく。
但し数量は増やしてみた。
師匠は薬草5本を使ってポーション10本作成を1ロットでやっている。
さっきまでオレは薬草1本でポーション2本を1ロットでやっていた。
一気にそこまでやれる自信はない。
そこで倍の薬草2本にしてみました。
出来上がったポーション4本の品質はいずれもC。
問題なさそうだ。
さらにもう1回。
今度は4本中にC-が1本混じっていた。
さらに繰り返す。
次は4本とも品質Cだ。
好調好調。
錬金術のメイキング技能リストから作業記憶を選択して、今の作業工程を保存しておく。
次は回復丸だ。
師匠の作成している所を見ていたから、ポーション20本分の傷塞草(抽出済)で2つが作れる勘定だ。
「おお、そっちもやっておいて損はないのう」
師匠に教わった基本的な作り方は以下のようなものだった。
1.傷塞草(抽出済)に同量の小麦粉(薄力粉)と少量のオリーブオイルを混ぜる。
2.少しづつ水を加えながら火を掛けて炒める。
3.滑らかになった状態で3分以上炒め続ける。
4.粘り気が生じ、指で押しても付かない程度に水気がなくなったら火を止めて冷やす。
5.丸薬状態に整形する。
まるで料理だ。
実際に作ってみると草の持つ独特の匂いが鼻についたが、我慢できる範囲である。
狼であるヴォルフにはちょっと匂いがきつかったようで、作業台の机からは一定の距離を置いていた。
すまぬ。
すまぬ。
すぐに終わらせるからな。
【回復アイテム】回復丸 継続回復[微] 品質C レア度3 重量0+
飲めば継続的にHPを回復する丸薬。継続時間は概ね10分。
呪文のリジェネレートと同様の効果となる。
※連続使用不可。クーリングタイムは概ね1時間。
一発で品質Cが出来上がった。
まあ失敗が少なそうな作り方だったから当然なのかも知れない。
「傷塞草の成分で副作用を生むものは熱を加えることでなくなっていくのじゃよ」
「はい」
「だが熱を加え続けると肝心の体力回復効果も低下してしまうのでな、程々を見切るのがコツなんじゃよ」
成程ね。でも質問したいことが出来た。
「錬金術なりで成分を分離できないものでしょうか?」
「確かに抽出できればいいのじゃがな。あれは対象成分の正体を見極めきらねば使えんのじゃ」
そうなのか。
錬金術もそこまで万能ではないってことなのか。
その師匠はと言えば、オレの相手もしながらポーション瓶を机上に大量に並べている。
そしてそれだけの数のポーションが師匠の《アイテム・ボックス》に一瞬に消えてしまう。
いや本当に無限に収納できるんじゃないの?
回復丸も同様に消えていく。
「ワシの方は明日にでも冒険者ギルドに納品に行くが、お主はどうする?」
「自分で納品します」
「では明日の朝にでも一緒に行くとしようかの」
今日のポーション作成作業はこんな所か。
師匠と手分けして作業場を片付けたら地下を出た。
本日の成果をまとめるとこんな感じだ。
ポーション 品質C 15個(冒険者ギルド納品はok)
ポーション 品質C- 4個
ポーション 品質D+ 9個
回復丸 品質C 2個
背負い袋に入れても余裕があった。
ただ数が数だけに重たくて背負うとズシリと肩に食い込んだ。
だがそれも苦になるまい。
低品質とはいえ自由に使えるポーションが確保できているのは安心感がある。
それに道具さえあればいつでも作れそうだし。
いや。
何から何まで師匠に頼るようでは、いつでも作れるというのは言いすぎだ。
道具の鍋やら濾紙、それに瓶はともかく、水は自分でも調達出来るようにした方がいい。
水魔法をボーナスポイント2を支払い取得し、有効化した。
呪文リストを呼び出してみる。
サモン・モンスター(召喚魔法)
リターン・モンスター(召喚魔法)
フォース・バレット(共通攻撃魔法)
センス・マジック(共通知覚魔法)
フラッシュ・ライト(光魔法)
メンタルエンチャント・ライト(光魔法)
エアカレント・コントロール(風魔法)
フィジカルエンチャント・ウィンド(風魔法)
ダウジング(土魔法)
フィジカルエンチャント・アース(土魔法)
リキッド・ウォーター(水魔法)
フィジカルエンチャント・アクア(水魔法)
リキッド・ウォーターはちゃんとあった。
思惑通り。
町に行ったら鍋を買おう。
あとは濾紙、なければ茶濾しみたいな奴を探そうかね。
瓶は使い終わったものを再利用したらいいし。
冒険先でもポーション作成が出来ればかなり大きな助けに出来るだろう。
「では明日朝、早めにまた来ます」
「ん?なんじゃ、泊まる所はあるのか?」
「町の宿を使うつもりです」
「阿呆めが」
あれ、師匠ってば怒ってます?
「この家に泊まれ。内弟子ってやつじゃな」
《老サモナー宅をプレイヤー・キースさんの中継ポータルに設定しました!》
え?
いきなりインフォ、しかもYesかNoかの選択肢なしですか。
まあ願ったり叶ったりなんですが。
「上の家部分は好きに使っていいぞ。地下も3階層までは自由に出入りして宜しい」
お墨付き頂きました。
「お世話になります」
「うむ。ワシはこれから地下の塔にこもる。夕食まで自由にしとってええ」
「はい」
地下の塔?
ああ、確かに地上に建てた塔を地下に作ってるような構造ではある。
なんか納得した。
まずは拠点となる家の中を一通り確認しておこう。
地上部分の家は簡素ながらも最低限の設備は整っていた。
トイレもちゃんとある。手桶に水が入っていてこれで流すのだろう。
台所もちゃんとあった。何気に立派。
天板を手で触って【鑑定】したら御影石みたいだ。
傷を付けたらヤバイな。
包丁も刃が欠ける可能性もあるから粗雑な作業は厳禁だ。
寝床は天井裏になるようだ。
フカフカと柔らかいベッド、かと思ったが乾燥した牧草に麻袋と毛布を敷いたものだった。
一応寝てみる。
十分に使えそうである。つか寝心地は柔らかくて気持ちいい。
ヴォルフも簡易ベッドに登ってきた。
添い寝添い寝。
抱き枕抱き枕。
おっといけない。
一応、借り物の《アイテム・ボックス》と背負い袋にドロップ品とポーション類を確認しながら分けて入れていく。
夕食時にはまだ早い。
近場の森の中でも狩りに行こう。
MPバーは全快には程遠いが半分近くは残っている。
HPに関してはポーションがある分、心強いのも大きい。
門番代わりであろうマギフクロウに手を上げて挨拶して門を出た。
来たときと同様、門は自動で開閉する。
謎だ。
「よし、行こうか」
ヴォルフも外に出るのがうれしそうに見えた。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv3
職業 サモナー(召喚術師)Lv2
ボーナスポイント残7
セットスキル
杖Lv2 打撃Lv1 蹴りLv1 召喚魔法Lv2
光魔法Lv1 風魔法Lv2 土魔法Lv1 水魔法Lv1(New!)
錬金術Lv1 薬師Lv1(New!)
連携Lv2 鑑定Lv3 識別Lv2 耐寒Lv1 掴みLv1
装備 初心者のロッド 簡素な服 布の靴 背負袋 アイテムボックス
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv2