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ログインしたのは午前6時ちょうどだった。
装備を整えてまずは朝飯を摂りに行こう。
残月、ヘリックス、黒曜と召喚してレギアスの村に向かう。
途上でパッシブの魔物も見掛けるが今日は移動優先だ。
スルーで。
レギアスの村に到着。
昨日とまるで変わらない様子である。
そしてミオの屋台もフィーナさんの露店も同じ位置で営業を始めていた。
有難いです。
既に幾人かのプレイヤーが買い込みに並んでいたので、その最後尾に並ぶ。
今日のメニューも昨日と同じ馬肉料理だった。
【食料アイテム】香味馬肉サンド+ 満腹度+35% 品質C+ レア度3 重量0+
生命力微上昇の効果約1時間
スライスした馬肉を魚醤と酢とハーブ類で漬け、パンで挟んだ料理。
非常に腹持ちがいい。
おいおい、何か変な効果が追加されてるぞ。
生命力微上昇か。
これから狩りにいくのなら包んで持って行きたい所だ。
野菜と卵のスープで流し込むような真似はせず、味わって食べていく。
うむ。
旨いんだがもっと脂の旨みが欲しいのですよ。
分かって下さいよ。
やはり馬肉を食うには馬刺に限る。
「おはようございます。今日の料理はどうですか?」
「ああ、おはよう。なかなかいいね」
優香がにこやかに挨拶をしてきてくれた。
何かいい事あったのかな?
「暴れ馬の方の馬肉です、それ」
「ほほう」
それで何やら効果が付いていたのか。
それなら納得だ。
そこにお客の対応をしていたレイナが割って入ってきた。
「大会予選の結果は?」
「まあ何とか勝利を拾ったって所かな」
「へえ、良かったじゃない!」
そこからは雑談になった。
優香は主に聞き役で、レイナがオレに質問責めにする形だ。
露店の店番をしている不動を助けなくていいのか。
そこに援軍が来た。
フィーナさんを始めとしたいつものメンバーだ。
「おはようございます」
「「「「おはよう」」」」
「おはよう。あら、キース、大会予選はどうだった?」
また最初から話をする羽目になった。
まあそこは仕方ないよな。
「今日は第二回戦でしょ?皆もあまり邪魔しちゃダメよ」
「えー」
いつの間にか優香とミオがポジションチェンジしてました。
気が付かなかったよ。
「ああ、そうだ。レイナさんに聞きたい事がありました」
「あ?なになに」
「矢です」
少し時間を割いてもらって矢の作り方を教わった。
矢の棒の部分は、木製で一本もの、先端側を硬い木材で継いだ継ぎ合せのものとがあるようだ。
但し後者は高価なので出回っていないそうだが。
先端には矢尻素材を組み込む切込みを入れ、矢羽を固定するのに細い溝がある構造だ。
目の前で作って貰った。
固定するのに糸と膠を使っているようだ。
先端の組む際には素材側に溝を掘って固定させていた。
羽は半分に割いて、飛ぶ時の回転が干渉しないように組み合わせていく。
作業そのものは簡単なものだ。
「糸と膠はレギアスの村では流通してないからレムトの町で買ってね!」
「はい」
どうせレムトの町には行く予定である。
試合前にでも買い込んでおこうか。
「もしかして木工、とってるでしょ?」
「ええ。依頼達成に必要になっちゃいまして」
「ガラス工でも依頼やってたのよね?」
「ええまあ。いやそれって何処で知ったんですか?」
「生産職の連絡網からは逃げられない!」
ああ、そうか。
フェイなんだろうな。
まあ目くじらを立てるような事じゃないからいいか。
おっと、いかん
結果的にレイナの朝飯を邪魔してるじゃないの。
「教えて頂いてすみませんでした。それに食事の邪魔までしちゃって」
「いいのよ!あと今日も大会でしょ?がんばってね!」
「はい」
机の上に昨日の獲物を並べていく。
いつもの邪蟻の針に甲、ギンケイの卵、縞狸の皮といった所だ。
蝙蝠の牙と黒曜石は矢の作成用に残しておいた。
銀鶏の翼と草原鷹の翼も同様の理由で残しておく。
朝食を終えたフィーナさんが計算して提示した金額はまあまあって所だろう。
量も少ないし。
「どうも昨日の暴れ馬の馬肉は久々の当りだったわね」
「へ?」
「貴方がさっき食べた分で最後よ。昨日の昼に売り始めたじけど夕方にはちょっとした騒ぎになったわ」
「そうだったんですか」
「食事で支援効果は貴重ですもの。呪文の効果と重ねられるのも大きいわね」
「そうですね」
そういえば。
フィーナさん達は森の迷宮はクリアしたんだろうか?
「森の奥はどうです?」
「ダメだわ。どうしても連戦をクリアできないわね。まあレベルアップにはいい狩場だしいいんだけど」
「そうですか」
「まあ私達は生産職だしゆっくり行くわ」
他にも雑談をしていたらもう午前7時半を過ぎてしまっていた。
いかんな。
試合もあるが、他のプレイヤーの戦いも見ておきたい。
その場を辞去してレムトの町へと急ごうか。
草原エリアに入るとレムトへと向かうプレイヤーも多いが、野犬狩りもまた多かった。
闘技大会開催時に攻略を進めるプレイヤーもまた多いようだ。
似たような事を考えているプレイヤーがそれだけいるって事か。
おかげでこっちを襲ってくる魔物がいない。
ステップホークも襲ってこなかった。
うん。
これはこれで何か寂しい。
結局は戦闘なしでレムトの町に到着した。
時間は午前8時半過ぎだ。
驚いた事に試合はもう始まっているようで、歓声が地面を揺らすような錯覚を覚える。
盛り上がってるようだ。
オレも馬留めに残月達を留守番にして選手入口へと向かう。
職員さんの【識別】を受けて控え室に入った。
今日は控え室のすぐ傍の壁際を陣取って試合を観戦することにした。
幾人かの職員さんが変な視線を投げかけたが、出場予定者と知れたのだろう。
スルーしてくれていた。
うむ。
観戦を楽しむとしようか。
昨日に引き続き似たような戦闘スタイルのプレイヤー同士の対戦が多い。
中でもドワーフ同士の肉弾戦は凄まじい盛り上がりを見せていた。
まさに肉弾戦。
いや、互いに片手斧と盾で殴り合ってたんだが。
うん、殴り合いだよな、あれ。
盾が互いに潰れて斧は刃こぼれして唯の鈍器と化していた。
最後の方では本当に素手で殴り合いになっていたのだ。
勝敗は10分時間切れで判定となった。
いや、観客の声援も凄かったです。
こう言ってはなんだが、応援席で酒でも売っているんじゃないだろうな?
昨日も見た吟遊詩人の女性は善戦したようだが敗北してしまっていた。
相手はエルフ女性だ。
最初は歌と演奏で戦況を優位に進めようとしたのだが、どうやらレジストされてしまったようだ。
攻撃呪文のウィンド・カッターをまともに喰らってしまい、後は劣勢のまま押し切られた。
強いキャラであっても常に優位であるとは限らない。
そんな試合に見えた。
他の試合もそれぞれに見ごたえがある。
観戦していても感じる事だが、プレイヤーはいずれもが大なり小なり戦闘狂のように見える。
気のせいだと思いたい。
試合開始予定時刻の午前10時30分になった。
例の水晶に手を置いてHPMPを全快にして貰って試合場に立った。
オレのいる角の対角線に対戦相手がいる。
装備から見て判断すると、また魔術師だ。
しかもイケメンである。
エルフじゃないのに生意気だぞ!
初戦の相手は火魔法の使い手だったがこの男はどうだろう。
試合相手を【識別】してみる。
??? Lv.7
ソーサラー 待機中
初戦と同じだ。
でも中身は明らかに違う。
中央に立った審判が開始の合図を出すのを待つ。
その前にやるべきことも済ませておこうか。
互いに。
礼。
「始め!」
「メディテート!」「ブレス!」
『メディテート!』『ブレス!』
互いに杖武技を使う。
そして互いに呪文詠唱に入った。
違うのはオレが一直線に突っ込んでいく事だけだ。
試合場の中央を過ぎた所で先にオレの呪文が完成した。
「メンタルエンチャント・ライト!」
予想していた攻撃呪文はこない。
どうした?
『ウォーター・シールド!』
その呪文でオレの目の前に水の壁が立ち塞がった。
いや、この呪文で出現する水の盾は楕円形の筈である。
昨日、見ているのだ。
当然、回避できる訳もなく突っ込んでしまう。
中途半端に足を止めたら更にダメージを喰らっていただろうが、突っ切る事でダメージは最小限の筈だ。
それでもダメージを喰らっている事に変わりはない。
ああもう。
やってくれちゃって。
ロッドで喉元を狙って突きを放つ。
難なく回避される。
いや、見せるだけの攻撃だから回避されていいのだ。
そのまま側頭部をロッドで抑え付けた。
嫌がるように動く所を足止め代わりに蹴りを放った。
腹に直撃。
感触から言って大したダメージじゃあるまい。
目の前に頭が見えていた。
しかも無防備。
ロッドを手放すと右腕を首に回す。
オレの左手は相手の右脇から差し込んで右肘を抱え込んだ。
右腕と右手首を使って気管を圧迫する。
スタンディングのフロントチョークの体勢だ。
軽く持ち上げるだけで相手の体重そのものが喉を潰してくれるから楽でいい。
いや、かかり方が甘いか。
一瞬、絞めを緩めて右膝を腹にぶち込んでおく。
『グゲッ!』
何やら護鬼の声みたいなものが聞こえたが気にしない。
更に絞める腕の位置を修正し、今度は頚動脈を絞めて再度体重をかけてやる。
ジリジリと、確実に対戦相手のHPバーが削れて行く。
ギブアップする様子はない。
もう一押ししようか。
そのままオレ自身の体重を乗せて脳天から地面に落としてやる。
体はそのまま後転させて寝技へ移行する。
勿論、フロントチョークの体勢のままだ。
下半身をパスしてより深い角度で首が折れる体勢に移る。
これでどうだ?
だが望んでいた反応はなかった。
あれ?
いつの間にか気絶してました。
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
《只今の戦闘勝利で【精神強化】がレベルアップしました!》
おや。
試合で勝っても技能スキルがレベルアップするのか。
そういえば大会要綱を斜め読みしてた中にそんな記述もあったような。
《予選第三回戦に進出しました!第三回戦は明日午前9時40分、旧練兵場B面の予定となります》
ついでに明日の予定もインフォで来ていた。
礼を残して試合場を出る。
水晶でHPMPを全快して貰って控え室に戻った。
事前にウォーター・シールドの呪文は見ていたのが良かった。
知らなければ混乱に陥っていたかも知れない。
いや、見てはいたけれども、実際に喰らってみるとイメージとの差異はあるものだ。
思っていた以上にダメージを喰らってしまった。
それにウォーター・シールドを喰らって暫くは体が重たくなった気がする。
油断ならないな。
目に見えない所で足をすくわれるかもしれないのだ。
さて、この後はどうする。
勿論、観戦しよう。
新練兵場は今日も満席の様子だから、旧練兵場を覗いてみようか。
しかし、あれだ。
グレーのマーカーが時々見えるのはどうにかならないものか。
職員さん達と衛兵のやり取りを聞いていると、どうやらスリがいるようなのだ。
どうやらオレが使っている【看破】スキルなのだが、盗みを働いている所にも効いているらしい。
無論、高度な技で以って盗みを働いている奴はオレの看破程度では見抜けないのだろう。
延々と続く追いかけっこだな。
旧練兵場は昨日より少しだけ混んでいるようだ。
観戦するには問題はない。
今日も中々に見ごたえのある試合が続いた。
どの試合にも何かしら見るべきものがある。
昼飯の時間も忘れて試合を堪能した。
遅い昼食を屋台で手早く済ませると再び観戦を続けた。
いやはや、午後の試合に出てきた連中には独特な戦闘スタイルのプレイヤーが混じっていて面白かった。
例えば。
恐らくは漁師。
オレがフィッシャーマンを直接見るのは初めての筈だ。
その装備は一種独特であった。
防具はあからさまな軽装。いや、普段着同然である。
手には銛一本。
だが目に付いたのは肩から背中に背負っていたある物に対してだった。
投網だ。
試合では一気に相手との距離を詰めて、投網で行動の自由を奪って銛で突く。
ただ、それだけ。
攻撃呪文をまともに喰らっていたようだが、まるでビクともしなかった。
まあその、なんというか男らしい堂々とした戦い方だ。
あれを相手にしたら?
オレならどう戦う?
なかなか悩ましいが、想像するだけでも楽しいのは何故だ。
例えば。
ドワーフの戦士。
但し片手斧を使った二刀流だ。
いや、持っている斧を片手用と評して良いものか、大きな疑問符がつくような重量級だ。
そのドワーフは斧に振り回されるような有様だったのだが、試合には勝利していた。
力押しだけでなんとかするという強引な戦い方だ。
剛能く柔を断つ。
そう呼ぶにふさわしい。
いや、相手も同じくパワーファイター系のドワーフだったから、剛能く剛をも断つ、と言うべきか。
無茶な奴もいたものだ。
あんなの相手にオレならどう戦う?
もう笑うしかない。
予選二日目が終わるまで見取り稽古を続けた。
いや、違うな。
純粋に試合を楽しんだと言うべきだろう。
時間は午後5時あたりだった。
少し早いが屋台で適当に食事を済ませてレムトの町を出た。
無性に体を動かしたくなっている。
どうにかして鎮めないと。
やはり狩りで発散しないとな。
森の物見櫓を過ぎた所でコール・モンスターを使ってみた。
暴れ馬は引っ掛からない。
やはりホーン『ド』ラビットと同じパターンなんだろうか。
代わりと言っては何だが、はぐれ馬を誘導して色んなものを発散するかのように戦った。
うむ。
ロッドだと騎乗したままでも間合いがとれるので攻撃が可能だ。
いい感じである。
だがそんな楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
もう日が暮れてしまいそうだ。
仕方がないな。
残月とヘリックスを帰還させてヴォルフと護鬼を召喚する。
そのまま森の中に突入だ。
普段通りで行こう。
普段と同じでいい。
ただ今日は妙に血の気が多かったようだ。
色々とダメな狩りを続けてしまった。
イビルアントさんごめんなさい。
首ばかりを捻じり切ってました。なんと残忍な。
暴れギンケイさんごめんなさい。
首を折って殺しまくるとかマジ鬼畜。
しかも卵も強奪してるし。
ブラッディウッドさんごめんなさい。
普段から稽古相手してくれているのに投げまくって壊すとか。
本当に恩を仇で返す行為です。
パラレルラクーンさん。
逃げなくていいですから。
ほら、優しく相手しますから逃げないで。
ヴォルフと黒曜が追いかけて狩っちゃいましたけどね。
うむ。
反省はしない。
狂乱の時間を過ごしていたら午後10時が迫っていた。
熱中しすぎたか。
おかげで傷塞草も黒曜石も拾わずに終わってしまった。
明日も試合があるのだし切り上げておこうか。
師匠の家に辿り着いたのは午後10時半になった。
森の奥の方まで踏み込みすぎたようだ。
でも師匠の家に戻るまでの経路は迷わずに済んだ。
雷魔法の呪文、マグネティック・コンパスを使い、南方向へ戻るだけで良かった。
仮想ウィンドウに方位が約30分ほど表示されるようだ。
ちょっとしたお役立ち呪文だが、時間を無駄にしなくていいな。
探索行では結構有用になるだろう。
ヴォルフ達召喚モンスターを帰還させて2階のベッドに腰掛ける。
うん。
試合観戦は楽しいが、血が騒いでしまうのが困りものだ。
少しだけ反省。
装備を外してベッドに潜り込んでログアウトした。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv7
職業 サモナー(召喚術師)Lv6
ボーナスポイント残3
セットスキル
杖Lv6 打撃Lv4 蹴りLv4 関節技Lv4 投げ技Lv4
回避Lv4 受けLv4 召喚魔法Lv7
光魔法Lv3 風魔法Lv4 土魔法Lv4 水魔法Lv4
火魔法Lv3 闇魔法Lv3 氷魔法Lv1 雷魔法Lv1
木魔法Lv1
錬金術Lv4 薬師Lv3 ガラス工Lv3 木工Lv3
連携Lv6 鑑定Lv6 識別Lv6 看破Lv1 耐寒Lv3
掴みLv5 馬術Lv5 精密操作Lv6 跳躍Lv2
耐暑Lv3 登攀Lv3 二刀流Lv3 精神強化Lv3(↑1)
高速詠唱Lv2
装備 カヤのロッド×2 カヤのトンファー×2 雪豹の隠し爪×3
野兎の胸当て+シリーズ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者
呪文目録
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv6
残月 ホースLv4
ヘリックス ホークLv4
黒曜 フクロウLv4
ジーン バットLv4
ジェリコ ウッドゴーレムLv3
護鬼 鬼Lv2




