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《運営インフォメーションが2件あります。確認しますか?》



 朝、ログインしたらまたも運営インフォだ。

 しかも2件。

 件名だけを表示して見るとこんな感じだった。



《闘技大会開催のお知らせ:申し込み期限は本日までとなります!》


《試験運用のお知らせ:闘技大会に併せ戦闘ログ取得機能を実装します!》



 うん。

 中身まで見なくていいか。

 フォルダーに放り込んで出発の用意をする。

 3日後にはもう闘技大会の予選か。

 なんかズル休みしたくなる気分なんですが。



 今日も昨日、一昨日に引き続いて出勤である。

 出勤?

 うん、意味的にも間違ってない。


 残月、ヘリックス、黒曜を召喚してレムトの町へと向かった。

 いつものように街道を行く。

 今日は更にプレイヤーの姿が多かった。

 もうなんなの。


 本格的に狩りをする訳ではないのだが、残月もヘリックスもここの所は活躍の場がない。

 少しは運動しないと太っちゃうじゃないの。

 いや、それはないんだろうけどさ。



 レムトの町に到着する。

 屋台で適当に食事を済ませて臨時の作業場と化している弓射撃場へと向かう。

 馬留めに召喚モンスター達を留守番させて中に入ると、昨日もいた夜勤明けらしきメンバーがいた。

 2人1組になって掛け声をかけながら大型の棚を搬出している所だった。

 鬼気迫る勢いに見えた。

 そうだ。

 大昔に引越し業者でバイトした事もあったっけ。

 その後も引越しの手伝いは何度もやったものだ。

 昨今の引越しでは減衰率の高い防震材を傷防止のシートとして使っていたりする。

 時代は変わるものだ。

 昔は新聞紙や段ボールを使ったりしたものだ。



「やあ、おはよう」


「おはようございます」


「夜勤組で相当挽回したからね。今日は暫く一緒に作業しようか」


 ニルスさんの様子はサッパリとしたものだ。

 どうやら今朝まで徹夜はしていない様子である。

 いや、そうでないと困るけどね。

 労働災害とかマジ勘弁。



 さて、本日のお題だが。

 部材を砥の粉により表面処理して磨く作業。

 部材をワニスで表面処理する作業。

 組み立てる手前の段階だ。

 但し、作業場所は対角線に離れた場所で行っている。

 ワニスはコハクを油で溶いたもので、油が揮発すると樹脂分が表面を硬化することになる。

 つまり、油が揮発する間、粉が付着すると大変な事になるわけだ。

 作業の流れ的に効率が悪いのだが、これは致し方ないのかもしれない。


 そして油が揮発するものだから匂いもすごい。

 ちょっと頭がどうにかなりそうな位だ。

 埃を拾うから風通しを良くし過ぎてもいけない。

 かといって密閉空間だと作業する人間がたまらない。


 いや、常習性のある溶剤は使っていませんから。

 普通にテレビン油だと思うが。


 作業の難易度としたら、面取りとどっこいどっこいといった所か。

 呪文による底上げも木工のメイキング技能も必要なかった。

 品質Cの部材を品質Cのまま次の工程に送り出す。

 単純作業だ。

 いや、作業そのものは単純であるのだが、ニルスさんと世間話をしながらだと難易度がアップする。

 オレの作業スピードは目に見えて落ちたがニルスさんは落ちない。

 倍とまで行かないが、それに近い数をこなしていた。

 それでいて品質は落ちない。

 単純作業なのに。


 く、悔しくなんかないからな!



 時計では午前10時を過ぎた頃。

 作業台に併設してある棚にあった部材は全て接合部分を除いて表面処理を終えていた。


「うん、いい感じで全部終わったねえ」


「ですね」


「それじゃちょっと休憩入れたら次の工程に行って見よう」


 一旦、新鮮な空気を求めて作業場を出る。

 新しい練兵場の方ではNPCの衛兵の皆さんが訓練をしていた。

 もう練兵場、使っているのか。

 石塁の上や門の警備、それに西の森と草原の境界にある櫓にもいるのは見ている。

 だが改めて訓練の様子を見ていると、熟練に差があるようだ。

 なんか一目見ただけでオレでは勝てそうもないNPCも何人かいたりするし。



 おっと、休憩は終わりにしておこう。


「では次の工程だね。組み立てをやろうか」


「はい」


 使う部材は昨日までにNPCが作成したものだ。

 表面塗装は乾燥済みになる。

 どれを見ても品質Cで揃っているあたりはさすがだ。


 組み立ては木槌で行うのだが、ほぞ穴部分には接着材に樹脂を使うようだ。

 ロジン、つまりは松脂になる。

 単純に組み合わせるだけかと思いきや、木槌で叩いて圧着させる作業がやけに難しいのだ。

 樹脂がはみ出てしまったり、上手く圧着しなかったりする。

 特に栓打ち構造になっている接ぎ部分の難しさときたらもうね。

 最初に出来上がったものの品質はD+である。

 これはダメだ。


 部材を分解、組立て部分を拭ってやり直しだ。

 今度は底上げをしておこう。

 フィジカルエンチャント・アクアで器用値を底上げしておく。

 そして木工のメイキング技能の組立を使った。

 結果はどうか。

 そこまでやってようやく品質Cである。


 ちょっと凹んだ。

 難しいぞ、これ。


 だが品質Cは譲れない。

 フィジカルエンチャント系は15分程度しか持続しない。

 MPには余裕がある。

 効力が切れていくが順次継続して使っていく。



《これまでの行動経験で【水魔法】がレベルアップしました!》

《これまでの行動経験で【識別】がレベルアップしました!》



 さすがにかなり使ってきているしレベルアップしてくれた。

 でも召喚魔法の成長に比べたら遅々たるものだ。

 次にレベルアップするとしたら土魔法だろうか。

 前に土魔法がレベル3になったのがかなり昔に感じてしまう。


 そして識別もレベルアップしている。

 まあ自分が関わった物の品質は適宜確認してたしな。



「じゃあ後は任せていいかな?」


 大量に出された昼飯を片付けたらニルスさんにそう指示される。

 当然、受けて立とうじゃないの。

 現状、椅子を1脚仕上げるのに1時間以上を掛けている。

 目の前に積まれている部材は果たして何脚分あるんだろうか。

 今日中に全てを仕上げる事は無理なのだとしても、より多く仕上げて見せよう。

 さて、やるか。



「今日はここまでにしようか。キースはもう帰っていいよ」


「え?」


 ニルスさんにそう言われた時間は午後2時だった。

 終業とするには早すぎる。

 当然、作業は全て終わらせてはいない。


「何かあったんですか?」


「練兵場の会場設営でこの場所を使うそうだ。一旦椅子作成は中断かな」


「時間は余裕がありますし別の手伝いもできますが」


「いや。キースはここまででいい」


「え?」


「聞いてるよ。大会に出るんだろう?ならば色々と準備する時間もあったほうがいい」


 ありゃ。

 気を使わせちゃったかな?


「いいから。今日は早めに仕事を切り上げていいよ。報酬はどうせ変わらないよ」


「はあ」


 どうしようか。

 まあ時間を潰したければ狩りをしたらいいだけなのだし。

 有難く早上がりしようか。


「分かりました。お言葉に甘えさせて貰います」


「うん。では明日の朝も宜しく」


「はい」


 早速だが作業場を辞去する。

 最近は残月とヘリックスの狩りの機会が減ってしまっている。

 西の森の街道あたりで狩りでもするか。



 レムトの町を出てレギアスの村へと向かう。

 狙いは街道沿いで暴れギンケイ狙いだ。

 運が良ければはぐれ馬も遭遇できるかもしれない。



《運営インフォメーションが2件あります。確認しますか?》



 残月の馬上で移動中に運営インフォが来ていた。

 また2件か。

 件名だけを表示して見る。



《闘技大会申し込み終了!参加人数が満数となりました!》


《闘技大会参加者へのお知らせ》



 まあ1件目も一応、目を通しておく事にした。


《闘技大会への参加申し込み人数が満数に達しました!参加者各位には別途、個別に試合日程を通知します》



 これだけか。

 次のも見ておこう。



《キース様へ:第一回戦は予選初日9時30分、新練兵場G面で開始の予定です》



 添付された画像データは新練兵場への案内地図だった。

 知ってます。

 さっきまでいました。



 メッセージ画面を閉じて、街道沿いに駆けていく。

 獲物はまるで寄ってこない。

 皆、周囲にいるプレイヤーが狩ってしまうからだ。

 やはり草原は狩場に不向きな状況になってしまっている。

 森の領域に入るとようやく狩りができるようになった。

 レギアスの村の手前と森の見張り櫓の間を行き来しながら狩りを続けた。

 暴れギンケイ(メス)ばかりが相手だった所に願ってもない相手と遭遇した。

 いや、強引に見つけて引っ張り出したと言っていいだろう。


 はぐれ馬だ。

 コール・モンスターで呼び出した奴になる。


 強引だが、この周辺で戦い甲斐のある魔物はこいつが一番手頃だろう。

 いや、こいつが一番、タフであるのは間違いない。


 早速、こっちに突撃してくる。

 オレはといえば既に準備してあった呪文を唱えた。


「フィジカルエンチャント・アクア!」


 こいつを相手に馬上戦闘ともなると器用値の底上げはまだまだ必須だ。

 そして次の呪文を選択して実行する。

 向かってくる魔物の突撃をなんとか残月が避けた。

 この魔物は相変わらず早い。

 まあ馬だし。


 魔物を追走しながら呪文を放つ。


「ウィンド・カッター!」


 後脚に直撃して少しだけだがはぐれ馬の脚が止まった。

 そこにヘリックスと黒曜が上空から牽制攻撃を仕掛ける。

 追走していた残月の体当たりをまともに喰らったはぐれ馬は横転してしまった。

 そのまま街道を逸れて森の中に突っ込んで、木の根元にまで転がっていく。


 立ち上がろうとするはぐれ馬をヘリックスと黒曜が追撃していく。

 オレも残月から降りると追撃に移る。

 左手に持っていたバチを隠し爪に持ち替えた。

 はぐれ馬の首元に馬乗りになって隠し爪を握りこんだ拳で殴りつける。

 軽く刺さった所で思いっきり引き裂いた。

 隠し爪のような暗器なら定番の使い方だ。


 首を持ち上げようとするのを右掌で抑えて捌きながら更に左手の隠し爪を使う。

 そして追加でもう一度。

 繰り返して攻撃をしていくうちにはぐれ馬の動きが鈍ってきていた。

 魔物のHPバーは2割減ったあたりだ。

 隠し爪だと大きくHPバーを削るには向かないよな。

 でも状態異常を与えただけでも十分であろう。


 はぐれ馬の首元に右膝を乗せる。

 口元を左腕で抱えて体重をかける。

 一気に捻った。


「よいしょっと!」


 掛け声一閃。

 体を前傾して梃子の原理で捻る。

 そして体ごと前転して一気に捻りきる。

 ボキリ、といい音が響いた。

 はぐれ馬のHPバーは一気に消滅する。

 うん。

 はぐれ馬が相手ならこの戦法で止めを刺すのが楽でいい。

 オレ達のダメージはほぼなかった。



《技能リンクが確立しました!取得が可能な魔法スキルに【氷魔法】が追加されます》



 え?

 この戦闘では何もスキルがレベルアップしていない。

 それなのに取得可能な魔法スキルが増えた。

 氷魔法?


 急いで取得画面を確認してみる。

 確かに【氷魔法】はあった。

 必要なボーナスポイントは3か。

 どうする?

 どうするって。

 取得するに決まってるじゃないですか。


 早速、有効化してみる。

 呪文リストも覗いてみた。



 フリーズ・タッチ(氷魔法)

 メルト・アイス(氷魔法)

 ディレイ(氷魔法)



 呪文は3種か。

 エンチャント系の呪文はない。

 フリーズ・タッチは手に触れるか、かざす距離でしか使えないが、対象を氷点下にまで凍らせる呪文だった。

 ダメージも与えられるようだから、火魔法の呪文パイロキネシスより使えるかもしれない。


 メルト・アイスは氷などを溶かす呪文らしい、

 戦闘では使うような呪文じゃないな。

 土魔法のダウジングのようなカテゴリになる、ちょっとした便利呪文だ。


 ディレイは一応距離の離れた対象にも有効らしい。

 敏捷度阻害の効果を与える呪文だった。

 オレが使っている隠し爪と似たような効果になるのか。

 ディレイの呪文だと詠唱に時間がかかるが、遠距離で使えるのは大きいな。

 フィジカルエンチャントとは逆に戦う相手の戦闘力を下げるための呪文になるのだろう。


 おっと。

 はぐれ馬の死体からアイテムを剥いでおかないとな。

 野生馬の皮に馬肉だ。

 《アイテム・ボックス》に放り込んでおく。


 うん。

 ちょっと整理しよう。

 少し頭が混乱しそうだ。


 【二刀流】は技能スキルがレベルアップした際に取得可能になった筈だ。

 オレの記憶が確かならば【杖】と【精密操作】だったと思う。


 この【氷魔法】の場合、【二刀流】とはまた異なったパターンで取得可能になった。

 一体何があったらそんな事が起きるのだろう?

 ヒントらしいヒントがないように見える。


 謎だ。



 分からない事をいつまでも悩む事はない。

 狩りを続けよう。



 もはや暴れギンケイ(メス)では物足りないので、コール・モンスターを使って狩りを継続した。

 狙っている相手は当然はぐれ馬なのだが、あまりに少ない。

 そういう時は暴れギンケイ(オス)も相手にした。

 場所を移動しながらコール・モンスターを駆使した結果、何匹かはぐれ馬を呼び寄せる事が出来た。

 慣れてしまえばはぐれ馬もなかなかおいしい相手だろう。

 得られるアイテムも良い感じなのも大きい。

 そして4匹目を倒した時、一気に望んでいたインフォが来た。



《只今の戦闘勝利で【杖】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【関節技】がレベルアップしました!》

《【関節技】武技のネックロックを取得しました!》

《只今の戦闘勝利で【召喚魔法】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【連携】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【馬術】がレベルアップしました!》



 さて、このうちの何が嬉しいかといえば召喚魔法だ。

 もう1匹、新規で召喚モンスターを追加できるのだから当然だろう。

 次は何にしようか。

 悩ましい事になりそうだ。


 時間はもうすぐ午後6時になろうかとしていた。

 インフォがあって以降、はぐれ馬が見つからず暴れギンケイ(オス)を狩り続けている。

 銀鶏の極彩翼もいい感じで稼いでいた。


 それにしてもコール・モンスターって便利だな。

 探索行ではMPの無駄遣いはできないが、今日みたいな経験値稼ぎでは非常に有効だろう。

 それはいいとしてだ。


 そろそろ溜まったアイテムは売った方がいいだろう。

 このままレギアスの村に向かう。

 うまくいけばフィーナさんの所でアイテムを売り捌く事ができるだろう。

 それに夕食。

 その後はいつものように夜の狩りをしよう。

 どうせ馬の残月と鷹のヘリックスを交代させるのだから、新たな召喚モンスターもそのタイミングで決めようか。


 氷魔法の件を相談するのもいいだろう。

 少しだけ心が軽くなった気がした。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv7

職業 サモナー(召喚術師)Lv6

ボーナスポイント残8


セットスキル

杖Lv6(↑1)打撃Lv3 蹴りLv3 関節技Lv4(↑1)投げ技Lv3

回避Lv3 受けLv3 召喚魔法Lv7(↑1)

光魔法Lv3 風魔法Lv4 土魔法Lv3 水魔法Lv4(↑1)

火魔法Lv3 闇魔法Lv3 氷魔法Lv1(New!)

錬金術Lv4 薬師Lv3 ガラス工Lv3 木工Lv2

連携Lv6(↑1)鑑定Lv5 識別Lv6(↑1)看破Lv1 耐寒Lv3

掴みLv5 馬術Lv5(↑1)精密操作Lv5 跳躍Lv1

耐暑Lv3 登攀Lv3 二刀流Lv2 精神強化Lv1


装備 カヤのバチ×2 雪豹の隠し爪×3 野兎の胸当て+シリーズ

   雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+ 雪猿の革兜 背負袋

   アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ


称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者


召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv5 お休み

残月 ホースLv3

ヘリックス ホークLv3

黒曜 フクロウLv4

ジーン バットLv4 お休み

ジェリコ ウッドゴーレムLv3 お休み

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